◆2024年1月22日追記◆
このページの内容は動画バージョンを作りましたので どうぞそちらを先にご覧ください。内容は当然かぶってるんだけど、ページを後に読むことを想定したテキストになっています。




ドラクエ1(SFC版)の没データ紹介をしたついでに、 ドラクエ2(FC版)の没データの話をしてしまうことにしました。これを知ったのは本当に大昔で、 ゲーム自体はプレイしていないのに没データだけは知っている、という非常によく分からないことになっていました。

だがついに、というかようやく、自分でもちゃんと出してみて検証してみて改めて紹介してみます。 非常に有名な没アイテムだと思うので先に言ってしまうと、 「しのオルゴール」「みみせん」 という名前の没アイテムです。

これについて元々何となく知っていたのは「ドラクエ3の没アイテムで、敵味方関係なく全員死ぬ効果があった」ということ。 でもドラクエ3については未プレイなので、そういうアイテムがあるんだ、デバッグ用なのかな、 ぐらいにしか思っていませんでした。

だがこの度改めて「しのオルゴール」と「みみせん」について調べてみると、なんかそういうことじゃないっぽいと なってきたので自分でもちゃんとページにしてみることにしたのでした。

まずその二つの没アイテムですが、3については未プレイなので3の没アイテムという観点は保留にするとして、 「ドラクエ2」の没アイテムです。3にもあるんだろうけど、とにかく2の没アイテムです。

まず一つ目の「しのオルゴール」です。 ひらがな表記だけど、間違いなく「死のオルゴール」でしょう。なんとも危険です。

もしや、「ほろびのうた」の元ネタ…!?などという素人の邪推は放っておきましょう。 そもそも没アイテムなのだから、ポケモンへ影響するなどあろうはずがございません。その言い回しこの前もしてなかったか。

フィールド上で使っても「しかし なにもおこらなかった。」と出るだけ。 捨てることは可能で、「〇〇は しのオルゴールを なげすてた。」とごく普通に捨てられます。

戦闘中に使えばあるいは…と思ったが、 「しかし なにもおこらなかった。」となるのみ。ザラキの効果はないようです。 オルゴールの音も何もしません。残念。

こんな何の役にも立たないアイテム、売ってやる!すみません道具屋さん、これいくらで売れますか!

「死のオルゴールですね。それなら2ゴールドで買いましょう。いいですか?」 …って、逆にいいんですか??かなり売値は安いけど、 店主は死のオルゴールを知っているし、その価値も分かっているとは…!

「しのオルゴール」について考える前に、もう一つの没アイテムをさらっといきましょう。

こちら、「みみせん」です。 漢字にしたらまず「耳栓」だろうから、「そうび」して効果を発揮しそうですが持っていても 装備することはできませんでした。

「しのオルゴール」同様フツーに投げ捨てることも可能。2ゴールドで売れるところも同じ。 じゃあ使ってみても同じように何も起こらないんだろうな、と思いきや…。

「〇〇はゴールドカードを握りしめた。 ちょっぴり嬉しさがこみ上げてくる。」と表示されます。幸せを感じている場合か!

という、なぜか福引のレアアイテム「ゴールドカード」を使った時と同じメッセージが表示されます。 ゴールドカードを持っていてもいなくても、「みみせん」を使えばゴールドカードを握りしめて幸せを感じます。なぜだ。

この画像はゴールドカードを所持しているから値引きされているシーンですが、 使うと同じメッセージが出る「みみせん」もゴールドカードを持っている扱いになったりして!と期待しました。

「みみせん」を持っているとて、値引きなどされませんでした。ですよね〜…。夢は破れました。

ところで、「しのオルゴール」については堀井雄二さんが「ドラゴンクエスト3マスターズクラブ (ファミコン必勝本)」 という本で読者から「友だちが “小さなメダル” とか “死のオルゴール” とかゆーアイテムがあるらしい、とゆー話をしていました」、 でも見つからないんですがという質問に対して「“死のオルゴール”は途中メモリーの関係で無くしちゃったアイテムなんだよね。その残骸としてアイテム名だけが残ってる。 戦闘中に使うと、その場にいる全員が死んじゃうってゆーすごいアイテムになるはずだった」という内容の回答をしておられます。(テキストの順を変えたり一部抜粋しています)

これはドラクエ3における話ではあるけれどゲームの没データでよくある「没になった要素を次回作で実現させる」ということが起こりそうだったということではないだろうか。 つまり、アイテム名も全く同じであるから「ドラクエ2でも「その場にいる全員が死んじゃうってゆーすごいアイテム」だった」ということなのではないだろうか。

オルゴールからは聞いた者すべてが死ぬようなメロディーが流れるのだから、「みみせん」はそのオルゴールの音色を遮断するアイテムだったと考えられます。 「みみせん」を装備しているキャラは「しのオルゴール」を使っても死なない。敵は当然「みみせん」はしてないだろうから死ぬ。強すぎないか。 でもローレシアの王子、サマルトリアの王子、ムーンブルクの王女、3人すべてが「みみせん」状態でないと恐ろしくて「しのオルゴール」を使うことはできません。

効果的にはザラキと同じだろうから、ザラキに耐性がある敵は「しのオルゴール」の音色を聴いても死なない、というようなことにはなりそうです。

「ファミコン通信」(たぶん現在の「ファミ通」)の1987年4月17日号には「堀井雄二が語る「ドラゴンクエストU」秘話!!」 というコーナーがあり、複数のオークションサイトなどでじーっとじーっと読ませてもらうと、 「しのオルゴール」と「みみせん」に関することが書かれている企画書っぽい「生原稿」と呼ばれる紙もあり…。

「11月22日

・耳せんをなくしたため、道具屋の売り物から耳せんをはずす。

・サハンの町(町E)宝箱のひとつをからっぽに。(死のオルゴールが入っていた物)

・モンスター別アイテムでリザードフライに「耳せん」が出るのでこれを「ふくびきけん」に。

・その他、もし、宝箱で「耳せん」が指定されているものがあったら、「キメラのつばさ」とかに変更してください。」


と書いてある。宝の山です。ありがとうございます。堀井雄二さん。こういうのいっぱいお願いします。 「サハンの町」というのは恐らく「ザハンの町」のことだと思うが、めっちゃ拡大して見ても濁点が見えませんでした。 「の」がうっすら消えてしまっている部分があるので、濁点も同じように消えてしまっているだけという可能性もあります。

また「町E」という「E」の部分は丸で囲われていてこちゃっとしていて正確にはなんて書いてあるのかはちょっと分からない感じ。 「E」なら14だが、ちょっと数字が大きすぎるから違う可能性DIEです。でも「1」ではないだろうし…。

だが大事なのはそこではなく、開発途中の11月22日に開発スタッフの皆様へ(もしくはプログラマさんへ)堀井雄二さんが ここに書かれている内容を通達したということです。

この開発秘話から分かることは「みみせん」は元々普通に道具屋で売っているアイテムだったし、 リザードフライがドロップするものでもあったということ。「ふくびきけん」に変更する、という言葉の通り 実際のゲームでリザードフライは「ふくびきけん」をドロップします。

その他、宝箱で「耳せん」が指定されているものがあれば「キメラのつばさ」とかに、とのことなので 実際のゲームで「キメラのつばさ」が出てくる宝箱があればそれは元は「みみせん」が入っていた可能性があります。

ドロップについてはリザードフライの話しかしていないので最初から「みみせん」を落とすモンスターは リザードフライだけだったようです。だとするとそこそこレア…というわけでもないか…でもまあまあ序盤に手に入るという感じです。

最も驚いたのは「しのオルゴール」はザハンの町で手に入ったということ。 SFC版では「いのりのゆびわ」が入っていたが、FC版では空っぽです。

これによって、結構納得。

ザハンは小さな漁師町だが、町の面積のかなりを占める巨大な「しんでん」なるものがありました。 ダメージ床が広がっており、左右には「ろうやのカギ」がないと開けられない扉があります。

左には「せいなるおりき」が安置されており、対となる右側には「しのオルゴール」が存在していたとならば非常に「しんでん」っぽいです。 そして最初から「せいなるおりき」のためだけの「しんでん」ならば、ダメージ床の奥のまっすぐ中央に設置しそうなものだけど 反対側に別の一点物のアイテムが入った宝箱が置かれていた、だけど開発途中でそっちは空っぽになった、となればこの配置は非常に納得。

色々ととても腑に落ちたのでした。

ドラクエ2のアイテムデータの並び順は武器などの装備品、「つきのかけら」などのイベントアイテム、「まよけのすず」などの その他の装備品、「せいすい」などの道具屋の売り物、カギ系、「どくけしそう」と「やくそう」、「いのりのゆびわ」、 そして最後が「しのオルゴール」となっています。没アイテムが最後です。

…が、さすがに「やくそう」がこんなに後の方にあることから「アイテムが作られた順」に入っているわけではない…だろう。

必要なアイテムは全て決定したうえでマップを作り、アイテムのデータを入れたはず。もし開発の途中で「しのオルゴール」を思いついて データを入れたから最後にあるのだとしたらザハンの町のマップはもうできていただろうから右の宝箱には元は別のアイテムが入っていて 「しのオルゴール」に変更されたということになる。

そして「しのオルゴール」が没になった時点でその宝箱の中身は元に戻るのが自然。空っぽにする、ということは 最初からそこには「しのオルゴール」が入っていたということでしょう。

あと「みみせん」は「せいすい」、「キメラのつばさ」の次に入っているのでいかにも道具屋で売られるアイテムっぽい位置です。

没アイテムとはいえ、なんからのバグや「ふっかつのじゅもん」で「しのオルゴール」と「みみせん」がプレイヤーの目に触れないとも限りません。 そうなったときのためにデータ容量を食わず、詰みなどが起こらず、アイテムとして必要最低限の挙動だけがあるような変更がされて 現在の「しのオルゴール」と「みみせん」の効果となったのかもしれません。

と、ここまで話しておいて「みみせん」って装備アイテムだと思い込んでいたんだけどもしかしたら店で売られているし リザードフライから複数個入手できなくもなかっただろうし、ひょっとして消費アイテムだったなんてことがあるのかも…と思いついてしまった。

消費アイテム群の最後に入っているし、没になることが決まって効果が変えられたのかもしれない…けど、装備できないのは確かだし。 というかバグで出てきても問題ない効果に変更したとしたら、ゴールドカードを握りしめるテキストが出るのはなんでだ。 問題ない効果なら「何も起こらなかった。」にするものなのではないのか…?

別に何もしてないけどそのテキストが表示されることに後でなっちゃっただけなのか、開発者様の遊び心なのか…?

「みみせん」が消費アイテムで、バトル中に使うことにより「みみせん」をしている状態になれる、というものだったとしたら 二人が「みみせん」を使い、残った一人が「しのオルゴール」を使った場合、「しのオルゴール」を使ったキャラが死ぬ。

3人で1ターン目に「みみせん」を使い、次のターンで「しのオルゴール」を使えば安全だが、必ず敵全員からいいのを頂いてから 使うことになるので危機回避には使いづらい。実際に「みみせん」をたっぷり持って冒険に出て「しのオルゴール」を使いまくった方が レベル上げの効率がいいのかは分からないけど、「しのオルゴール」と「みみせん」が実装されていたとしたらまた攻略方法は がらっと変わっていそうです。



以上、ドラクエ2(FC版)のデータ内に存在している「しのオルゴール」「みみせん」という没アイテムの検証と紹介でした。

ちなみにリメイク作であるSFC版には「しのオルゴール」と「みみせん」のデータは存在していませんでした。 リメイクの時点で復活しそうだった…ということもないようです。なんにしても「死のオルゴール」なんて 大変物騒なので、シドーを倒したら一緒に封印しておいた方がよさそうです。

平和な世界でうっかり鳴らしたら大事故です。没になった方が安全だったのかも…。

2023年12月27日


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