長かったスーパーマリオサンシャインの没テキスト紹介ページもようやく最終回です。 前のページではホテル行きの電車に乗る前のイベントのテキストを紹介しましたが、 ラストはゲームのストーリーに関係しそうなヤツです。

ドルピック島にバカンスに来たマリオは島に到着するなり、島で落書きしまくった犯人だと決めつけられ、 物的証拠もないのに拘留され、バカンスのバの字も味わえないまま、特に理由もなく落ちていたポンプを背負い(拾得物横領罪?)、 落書きを消して回りがてら落書きをしていた真犯人を追い詰め、さらわれたピーチ姫を救出してエンディングが流れるも、 マリオが「犯人ではなかった」ということを認められるシーンもマリオを罪に定めた人々からの謝罪も一切ない…という、 文字にするとあんまりなストーリーの「スーパーマリオサンシャイン」。

こんなことになってしまったのは、なにか理由があったはずだ。 なにか、きっと何か納得のいく理由が…随所随所に無理やり感を覚えるこのゲーム、 一体何があったらこんなことになるというのか…!?

そしてついに…元のストーリー、ゲームシステムが垣間見える没テキストを発見。

「あ、あれ?ヒゲ先生? / どうなされたのです?子供たちと / 帰国なされたのでは? /  あ、イヤー 助かった!! / ごらんください このアリサマ。 / ひどいもんです。」

「これじゃあ 今年の / 「観光名所 ★ 評価」は ゼロ… / 10年連続  ★★★★★ の名誉は /  今年で 打ち止めです!」

「ああ、なんで こんなことに… / あんで、わたしが市長の時に… / なんで なんで /  あ、イヤー いやいや / そんなこと 言っている場合では / ありませんな!」

「ヒゲ先生! もうボランティアで / とは 申しません!お願いです!! /  このドルピックタウンを / 元のきれいな町に してください!」

どうやら「ドルピックタウンの市長」さんのセリフのようです。驚きの設定が目白押しです。 ちょっと変わった口調&ドルピック島にお住いの人なので、恐らくこれはモンテ族の方なのでしょう。 (「あんで」というのはデータそのまま、没データなので誤字っていてもやはり問題なし)

マリオを見るなり「ヒゲ先生」と呼んでいるのでマリオと一度は会ったことがある人、 だけど観光客としてやってきたマリオのことを元は知らなかった人ということでもありそう。 そうじゃなかったら「マリオさん」と呼びそうです。

「帰国」という表現から、ドルピック島は「異国」であることも確定です(OPで地図は表示されるものの「南の島」のような表現しかなかったので、 キノコ王国との関係は不明だった)。しかし「子供たちと帰国なされたのでは?」というのが謎。「子供たち」とは一体…? モンテ族の皆様は異国の住民キノピオたちを知らず、マリオより小さなサイズのキノピオたちを子供扱いしていたのか? それともマリオと共にドルピック島に来た全く違う子供がいたのか…?

「もうボランティアでとは申しません」という言い方からは、「以前、対価なしでマリオが町を綺麗にしたことがある」ということが分かります。 つまりこの市長との会話はストーリーの序盤ではなくそれ以降になされたということ。 ゲームの導入部分は終わっているということです。

「ドルピックタウンを元の綺麗な町にしてください」言われたらやはり「はい」と「いいえ」の選択肢が出たようで、 それに対する市長のリアクションは…。

「あ、イヤー ありがとう! / ★評価のため / ・・・いやいや / 町の 安全のために なにとぞ!」

「あ、イヤー なんと! / 先生 そうおっしゃらずに!! / その ポンプが 頼りなのです!!」

町の観光名所評価と名誉のため…ではなく、町の安全の為に、なんとも責任感のある市長さんです。 少々マホロア感が出てきたのは気のせいです。

当然ながらマリオはもうポンプを背負っているようで「そのポンプが頼り」と言われますが このポンプをどういう経緯で手に入れたのかが分からないのが無念…!

ただ、これは個人的な主観だが初期トレーラーや開発中の画像のどれを見てもポンプはあくまで「ただの装備品」であり ノズルの形状もしゃべりそうじゃないし、製品版で「オヤ・マーサイエンス社製」と言われるけど 「スーパーマリオサンシャイン」の時点ではあくまで「ただの設定」であり言ってしまえば「ストーリー上特に意味のない設定」です。

初代ポケモンの時代にはとりあえず解説者や進行役は新キャラ作らずに分かりやすく暇人にしておこう的な感じで、 「メカならオヤ・マー博士にしよう」となったんじゃないだろうか。開発初期の頃はポンプはしゃべらなかったんじゃないだろうか…などと供述しています。

「イヤー ヒゲ先生! 町を 元にもどしてください! / おもいっきり 期待してますぞ!!」

すがすがしいまでの他力本願っぷりですが、マリオへのリスペクトが感じられて喜ばしくもあります。 ドルピックタウンを綺麗にしてくれと言われた後に、まだ綺麗にしきっていないときに市長さんに話しかけた時のセリフでしょう。

「あ!イヤー ヒゲ先生 / たった今、ドルピックタウンの  ★ 評価が 出たそうです!! / ★★★★★ 最高点だそうです!! / イヤー! ありがとう!! /  先生の おかげです!! / 市長になって ほんとによかった!」

「ヒゲ先生 ごくろうさまでした。 / これは 町からのお礼です。 / こっそり お受け取りください。」

微妙に時系列が分からなかったりするんだが、多分この順番で合っているだろう…マリオがドルピック島へ来た(ポンプ入手?)⇒ ドルピックタウンは汚れトラブル⇒綺麗にしてあげる⇒市長に感謝される⇒またトラブル⇒市長に今度はボランティアではなく綺麗にしてくれと依頼される⇒ 綺麗にしたらドルピックタウンの観光名所★評価が最高値になり感謝される …という感じだろうか?

町からのお礼として何かをくれたようですが、ラウニー君がくれたノズルの時のように「〇〇をもらった!」のような システムメッセージのテキストがなく何をもらったのかが分からないのが残念。逆に考えればあえてメッセージを出すまでもないものということであり、 「新しく手に入れたもの」ではないということでしょう。ソルコインか、普通のコインか…?

「ドルピックタウン しちょうせんのせんきょけっか」

というテキストも発見。ドルピックタウンのどこかの看板や張り紙を調べた時に表示されそうです。 「しちょうせん」とか「せんきょけっか」とかやたらひらがながち(存在しない日本語)ですが、市長さんは再選されたのか…?

「あ、イヤー その / 困ったのは 困ったんだが / なにが困ったって? う〜」

「ごめんなさい / ただいま 市長さんは / おはなしに なれません。 / このような 非常時ですから / お察しくださいね。」

お礼のセリフの後に入っていたセリフ。また何やらトラブルがあったようですが、なぜ市長さんが困っているのか不明です。 二つ目は市長さんの秘書的な人のセリフのようです。順番がそうだというだけで、もしかしたらもっと前に表示されるものであり マリオがドルピック島へ⇒ドルピックタウンは汚れトラブル⇒市長さんに話しかけたらこのセリフ、かもしれません(困ってるけど打ち明けられない、的な)。

秘書さん、「このような非常時」って何が起きているのか詳しく…!!

「あ、あれ?ヒゲ先生? / どうされたのです?子供たちは / 無事ですか?」

秘書のセリフの次に入っていたのがコレ。また「子供たち」というワードが登場しています。 ラウニー君は先生と一緒にドルピック島に来ているらしかったし、先生と二人だけということはないだろうから 他にも子供がたくさんいそう、マリオがその子たちとなにか関わりがあったりしたのか…?

ヒゲ先生、どういう状況で市長に話しかけているのです?子供たちは普段一緒にいるのに話しかけている状況では いないから市長に心配されているのですか?それとも子供たちに何かあったんじゃないかと思うような 事件が起きたのですか?分からん…!

「イヤー 聞いてください先生! / たった今、ドルピックタウンの /  ★ 評価が出たそうです!! / そうです!!毎年こうれいの / 「観光名所 ★ 評価」です!」

「10年連続  ★★★★★ をいただき / 今年で11年目。 / それが・・・ / ★★★★★ 最高点です!!!」

「イヤー 一時はどうなるかと… / え? 先生が? そのポンプで?? / ほにゃ ほにゃと? / なんと!! / それは お礼を差し上げないと!」

…というセリフが「子供たちは無事ですか?」の次に入っていました。えーと、えーと、整理すると…。

マリオがドルピック島へ⇒汚れトラブルを綺麗に⇒市長に感謝される⇒またトラブル⇒市長からボランティアではなく依頼をされる⇒ 綺麗にして観光名所★評価が最高値になり感謝される⇒またまたトラブル、子供たちが無事か心配される⇒またトラブル解決、 星5つもらって市長大喜び …という感じだろうか。

「一時はどうなるかと」という辺り、ただ「町が汚れただけ」ではなさそう。「そのポンプでほにゃほにゃと」という辺り、 本来は「ポンプでできそうもないこと」をしてきた感があるかも。もはや「綺麗にした」ではなく「敵を倒してきた」ぐらいの 驚きにも見えます。アクションゲームだし。

もしかしたらドルピックタウンを襲った3度目のトラブルはボス的な敵の襲来のようなイベントであり、 マリオはそのボスパックンみたいなやつを倒してきた…みたいな流れだったら納得です。

「何が困ったって?う〜…」とマリオに打ち明けてくれなかったのは、市長はマリオが歴戦の勇者、偉大なヒーローであることを知らず、 ポンプを背負った便利屋ぐらいにしか思っていなくて「やべー敵が現れたらしいけどどうしようもない、 このヒゲの人になんとかできそうもないし」ということだったら…などと考えました。真実は分かりません。確かなのはテキストデータのみ。

またお礼をくれたようですが、こうやって何か大仕事を終えた後にくれるものだとすると 次のステージへ行く乗車券を買うために必要な「ソルコイン」なんじゃないかなと思います。

それか、初期トレーラーの映像を見る限りではソルコインは町のいたるところに設置されているので割と集めやすそうだから 乗車券だけでなく他にも何か次の駅へ行くための条件があったらそれに関係するもの…とも思えそうだが、 やはりシステムメッセージがないのが…うーん。「背面ノズル(仮)」という、未確定なアイテム名ですら メッセージに入れているぐらいの段階なのだし、とりあえずメッセージを入れておきそうな気もする…。

「ああ…今 電話がありましてな / ほかの町も ひどい状態のようです / イヤー 困りましたなあ。」

というテキストが次に入っていました。他の町もドルピックタウンと同じような状態だ、と教えてくれています。 「他の町も酷い状態」、つまり「他の町も汚れトラブルに見舞われている」ということ。 これにより、明確なゲームのストーリーと目的が判明しました。

ドルピック島は観光名所。ドルピックタウンの他にもマンマビーチ、リコハーバー、シレナビーチなどの駅があり電車の路線でつながっている。 各地で汚れ被害が発生しており、マリオがそれらの汚れをポンプを使って消してあげて、ドルピック島全体を美しい観光名所に戻してあげるのが目的。 マリオは各地を汚した犯人に決めつけられることもなく頼りにされている。 …という感じ。

さらに、各地も綺麗にして回る(もしかしたら、各地の汚れを生み出すボスを倒していく)と 市長さんからこんなことを言ってもらえたようです。

「おお!!今 電話がありましてな / 聞きましたよ!ヒゲ先生!!  各地で 大活躍 だそうですな!! / これで 全島そーごー評価でも  ★★★★★ をとれそうですな!!」

ヒゲ先生は各地で大活躍。「観光名所★評価」のほかに「全島総合評価」というのもあるようです。

地図ではドルピック島の周りにも色んな島が存在しているのが確認できますが、 開発中のこの段階でも周囲に島があるという設定なのだとしたら 「全島」という単語が出てくるのも分かる…だろうか?

残念ながら「全島総合評価」が星5つになったときに市長さんに話しかけた時と思われるセリフは見つからず。 でもストーリーが進むにつれてこれだけセリフが変わる、ドルピックタウンの市長さんは ゲームの中でもまあまあ印象的な存在だったんじゃないかと思います。

マリオを頼ろうとするセリフ回しは少々、製品版の「ホテルデルフィーノ」の支配人のモンテ族に通ずるところがありそうか? さらに「モンテの村」には村長さんがいてまあまあ重要キャラですが、いろいろ苦労なさっている様子は 村長さんに設定が吸収されたところがあるのかもしれません。

何にしてもとりあえず確実に言えることは、開発中のこの段階では 「にせマリオ」はいなかったということでしょう。 「クッパJr.」がいたかは分かりませんが、それも多分いなかったんじゃないか…?

「にせマリオ」は「マリオを犯人に仕立て上げる」ためだけに存在している (ヒミツコースでポンプを奪っていったり、ドルピックタウンでノズルを持って逃げ回るのは 初期トレーラーから判断するに、後付けだと思われる)ので マリオが犯人扱いされておらず各地で大活躍できるこの初期のストーリーでは存在理由がありません。

ただ、そうするとなぜドルピック島が汚れるのかという別の問題も浮上します。島を汚して得する人がいないのです。 マリオの宿敵といえばクッパだが、クッパのいつもの行動といえばピーチ姫をさらっていく、ということ。 町を汚して何の意味があるのか。手下にやらせているのか。マリオの足止め?地味すぎる。

となると、他に汚れの親玉がいるのか?恐らくラスボスの居場所は「コロナマウンテン」。 火山であることは初期から変わっていないだろう。そこにいるラスボスが、 例えばドルピック島から人々を追い出そうとして手下のモンスターを生み出して汚している、とか…? ちょっと邪推が過ぎるか…。

紹介した僅かな没テキストだけでは判断材料が足りませんが、 各地を綺麗にしつつ各地のボスを倒す⇒コロナマウンテンでラスボスを倒す⇒でも汚れが残っている場所がある ⇒ソルコインをコンプで100%クリア という流れだとしたらクッパもピーチも出てこないので 「スーパーマリオ」感が薄くなってしまいそうだろうか。

そこからマリオが落書きを消して回る意味、ピーチがさらわれる理由、(別に汚れてない)コロナマウンテンに マリオが行く理由、クッパをストーリーに絡ませる…などをすべて満たすために 今のストーリーになったのかもしれません。

だが元のストーリーや設定と似た部分を残した結果、 ドルピック島のエアポートに「オヤ・マーサイエンス社」の製品(ポンプ)が放置されていた理由、 「にせマリオ」が「ヒミツコース」でポンプを奪っていく理由とそれを阻止できない理由、 「ヒミツコース」が各地に存在する理由、ヨッシーのタマゴに特定のフルーツを持っていかなければ ヨッシーが現れない理由、ヨッシーが水に落ちると死ぬ理由、ステージのいたるところに 青コインがちりばめられている理由、「シャイン」が失われていて人々が困っているのに 「シャイン」を隠し持っている人物がドルピック島の各地に堂々と存在している理由、 他シリーズと違って花が頭についたままでもハナチャンが怒り狂っている理由、 赤コインを制限時間以内に集めきれないとマリオが即死する理由、 掃除を時間以内に終わらせられないとマリオが即死する理由、 イカサーフィンで海に落ちても地面に落ちても即死する理由、 モンテマンレースに負けるとマリオが即死する理由、 ステージに「オヤ・マーサイエンス社」の製品(ノズル)が大量に放置されている理由、 ラストバトルで今までと変わらない操作をしていたはずなのに突然ノズルが壊れる理由などが ゲームをプレイするうえでは明かされない、ということになってしまったのでしょう。 思いついたの羅列しただけでもめちゃ多いな…。

特に、シャインを持っている人(青コインと交換するために大量に所持している奴すらいる)が 存在していることについては、元が「ソルコイン」が「シャイン」の位置づけだったと考えるととても納得です。 ソルコインは電車に乗るため、次の駅に行くために必要な通貨であり、人々が持っていても問題の無いものだからです。

…しかし、ゲーム製作期間というものは無限ではない。 先ほど挙げた理由が不明な個所を、ストーリーを変更してから全て作り直す猶予はなかったのかもしれません。 思えばゲーム内で流れるデモ動画の中ですらゲームの内容との差異が見られる辺り、 最後の最後まで作り込みの作業が行われていたことが伺えます。

ストーリーを変更し、攻略手順を変更し、新キャラをインパクトのある仕方で登場させ、 コンプ要素を用意し、見事に完成した「スーパーマリオサンシャイン」。

マリオの心には冤罪による深い傷が残った上にそれが癒えることはありませんでしたが、 南の島の経験を通してマリオはまた一つメンタル的にも強くなったのでしょう。 ピーチ姫を救出した後は、楽しみにしていた海鮮料理やトロピカルフルーツを堪能したに違いありません。

よかったですなヒゲ先生!今までにないほどの考察のテキストの多い没テキスト紹介ページになりましたな! 読む気が起きませんぞ!! …割とホントにすんませんでした。

2022年3月18日


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