◆ゼルダの伝説◆
ディスクソフト第1弾



発売日:1986年2月21日   発売元:任天堂   ジャンル:アクションRPG
ディスク:両面   値段:2600円
おすすめ度:4.5(この1本で、ディスクシステムの優位性が確立)


遠い昔、それは世界がまだ混迷を極めていた時代の物語。 その舞台となるハイラル地方は、いくつもの国がありその1つの小王国には、神秘の力を持つ『トライフォース』と呼ばれる黄金の三角形が代々伝えられていた。

ところがある日、世界を闇と恐怖によって支配しようと企む、大魔王ガノンが率いる魔の軍団がこの国に攻め込み、2枚あるトライフォースのうち『力』のトライフォースを奪った。 ガノンによる邪悪な支配を恐れた、小王国を統治するゼルダ姫は、もう1枚残された『知恵』のトライフォースを守るため、それを8つの小片に分けハイラルの各地に隠した。 同時に、最も信用のおける自分の乳母インパに、ガノンを倒してくれる勇気のある人物を探すように命じ、密かに脱出させた。

これを知ったガノンは激怒し、ゼルダ姫を捕えてインパに追っ手を差し向けた。 森を抜け山を越え、必死の逃走を続けたインパだが、ついに力尽きガノンの手下達に囲まれてしまった。 絶体絶命かと思われたその時、一人の少年が突然現れ、巧みに手下達を混乱させ、インパを救い出したのだった。

彼の名はリンク。旅の途中で、この事態に出くわしたのだ。インパは彼に、事の一部始終を話した。 ハイラルの小王国が、ガノンとその軍団に攻め込まれ、2枚あるトライフォースのうち力の方を奪われた上に、ゼルダ姫までもが捕らえられてしまったということを。

正義感に燃えるリンクは、姫の救出を決意したが、力のトライフォースを持つガノンに対抗するためには、ぜひとも知恵のトライフォースの小片を集め、完成させなくてはならない。 さもなくば、ガノンが根城としているデスマウンテンに侵入することすらできないのだから。 果たしてリンクは、2枚のトライフォースを取り戻しつつ、悪の元凶ガノンを倒し、さらに姫を救うことができるだろうか。


任天堂の著名作品の1つで、ディスクソフト第1弾。今でも最新作が発売されるなど、世界各地で人気の高い作品となっている。 しかし、初代ゼルダ発売当時における任天堂は、主にアクションで占めており様々な仕掛けはあれど、結局はただ単にゴールを目指すというものでしかなかった。

そういった意味で、アクションながらも謎解きが多いゼルダは、異色と見られていた。 現に、初代が圧倒的に人気を誇ったのも、謎解きよりもアクションに人気があったためで、 同年発売されたドラゴンクエストが100万本突破したにもかかわらず、ドラクエシリーズの礎ができるのは、翌年発売されたUであった。 そもそも、初代と同時発売されたディスクシステムもまた、あまり前評判は高くなかったようで、専らゲームソフトといえばROMカートリッジという認識があったらしい。

だが、ディスクシステムのソフトのディスクカードは、FCのROMカートリッジよりも容量は大幅に高かった。 何しろ、最大で1Mのディスクカードは、それだけでROMカートリッジの最大容量(320K)の3倍を持っていたからだ。

もっとも数年後には、ROMカートリッジは最大8Mのゲームを作り出すことに成功するが、それまでは容量を増やす技術は未発展だった。 つまり、8Mという容量の片隅に縮こまったROMカートリッジに対して、ゼルダは1Mの容量を最大限に利用していた。

もちろん、それを無駄に使うのではなく、BGMやマップの広さはもちろん、それの仕掛けやアイデアなどにも使うことで、ディスクゲーム第1弾にして最高傑作の呼び声が高くなった。 売り上げも、約169万本を達成し、ゼルダの好評はそれだけで、ディスクシステムの免罪符という形にもなったといえる。

実は任天堂は、RPGを作ったのは初めてであり、成長するという要素をアクションに融合することで、アクションの任天堂を継続させることができた。 すなわちゼルダは、FCのアクションRPGの第1弾でもあったのだ。


内容は、主人公リンクを操り、8つあるダンジョンを制覇しつつ、その内部にある知恵のトライフォースのかけらを集め、全て揃った上でガノンの居座るラストダンジョンに挑むことになる。 マップの広さは、1画面を繋ぎ合わせて構成しているため、当時のゲームをはるかに凌駕しており、地上マップの広さは縦8×横16に9つのダンジョンのマップをあわせれば、 ゼルダの広さはどれほどのものになるのかお分かりいただけるかと思う。

当然広さだけでなく、マップにある仕掛けも種類が豊富で、仕掛けの内容が1番多いのが、爆弾やろうそくによる隠し部屋の発見。 このゲームには、隠し部屋を見つけるためのヒントがなく、それを見つけたときのサウンドで見分けるしかなかった。 隠し部屋は、店や金をもらうものなど、主に自分に利益のあるものが多いが、弁償しなければならないマイナスの部屋もあった。

その中で重要な部屋が、命の水と命の器があるもので、どちらか取ればもう片方は2度と手に入らなくなる。 特に命の器は、命の水と違って数に限りがある上に非売品、さらにこのゲームは経験値の役目をハートの数で表しているので、 命の器をとればハートの数が1つ増え、結果的にレベルアップの役割を果たしている。 それに、ボス戦や地上で手に入ることを除けば、最大16になるハートの数が12程度になってしまうので、この事実を知ったプレイヤーは命の器のみをとることになった。

レベルアップの要素は、先のハートの器だけでなく、剣や盾のパワーアップもレベルアップの役割を果たしている。 そのうちの剣は、ハートの数で入手できる時期が違うので、序盤でダンジョン以外でハートの器を集めてから剣をパワーアップすることを心がけていた。

ダンジョン以外で、手に入る命の器は5つなので、ハートの数が12必要なマジカルソードは、 最短で4つのダンジョンを制覇するだけで入手できる(命の水だけ取れば、8つのダンジョン制覇したときにようやく入手できる)。


隠し部屋以外にも、敵を倒すための謎解きや用意されていたが、それを助けるための重要なものが、様々な人物によるヒント。 「デグドガニハ キライナ オトガアル」などがそれで、一行それもカタカナだけだったが、ヒントとしては実に的確なものばかりで、リンクが所持しているアイテムなどでまかなえた。

そのアイテムは、ダンジョンの地下通路で見つけることが多く、仕掛けを解いたときに出た階段は、もしやアイテムがあるのではと心躍ったプレイヤーは少なくなかった。 それらのアイテムは、ダンジョンの攻略になくてはならぬもので、9つのダンジョンもレベルがあって、高いレベルほど難しいのだが、攻略に必要なアイテムさえあれば、 いきなり高いレベルのダンジョンに挑戦できるので、この手の自由な攻略指針は、隠し扉やアイテムの発見とあわせて、このゲームの2度目以降のプレイをかきたてる要因の1つとなった。

これ以外の仕掛けとしては、2つの無限ループが地上マップに用意され、攻略法を見つけ出さなければ、新たな場所に進めることができない。 ダンジョンのトラップもまた、リンクを苦しめるのに一役買ったが、こちらは敵と同時に出るので難易度が簡単らしく、ある程度見極めてしまえばそれ程苦労はしなかった。 暗い場所でも、ダンジョンの構図がわかってしまえば別にろうそくを使う必要などないのだから。

それに、トライフォースの位置を知らせるコンパスや、ダンジョンのマップが一目でわかる地図、鍵のかかってある扉を開けるキーの3つを入手すれば、ダンジョンの難易度は一気に下がる。 おまけに、オートマッピング機能もあるので、一度行ったエリアはすぐ表示される。


ただ、キーについては終盤に、何度でも使えるマジカルキーがあり、使い捨てのキー自体は店で購入できる。 さらに、マジカルキーを入手したり店で購入しなくても、ダンジョンの進め具合によっては使い捨てのキーがかなり余ることがある。 マジカルキーの存在でのこの出来事は、ちょっとミスといったところか。

謎解きに戻すが、謎解きの難易度はそれ程難しくはなく、ダンジョンのあるエリア内の敵を全滅させる場合がほとんどなので、謎解きにアクションを融合させた好例といえる。 アクションでも、敵を倒すとたまにルピーの他に体力を1つ回復させるハートや、体力4つ回復させる妖精が出て、時計はエリア内の敵の動きが全て止まり、リンク自身も無敵になる。

回復アイテムも、ハートや妖精に加えて、所持アイテムの命の水や、地上マップのある場所にいる妖精の全回復があるため、ダンジョンの奥深くでなければ、そうやすやすとやられることはない。 つまり、準備を周到に整えていればゲームオーバーになることなどないので、この手の難易度設定も見事といえるだろう。


敵も、特徴あるデザインや攻撃、それにネーミングなど一度覚えたら忘れられないものばかり。 その代表が、リンクの盾を食うライクライクで、ダメージはないが高価な盾を食われるのが精神的に食らうダメージが大きく、その度に買い換えなければならない。

もちろん、店によって値段が違うのだが、金がかかることだけは間違いない。 ボスもまた、プレイヤーを散々苦しめる上に攻略法がボスごとに違っており、終盤のダンジョンではザコ扱いとして登場してくるので、これらも相当てこずらせた人も多かっただろう。

リンクのアクションは、剣を振り回したりろうそくで火をつけたりと様々で、剣を振り回しているとき体力が満タンになっていれば、剣からビームを出すことができる。 また、岩や海などに引っかかっているルピーや爆弾なども、剣を振り回すことで手に入るので、剣は補助アイテムでもあった。 攻撃ではないが、トライフォースや命の器を手に入れたときに、リンクが両手をかざしてそれらを掲げるしぐさは、芸が細かくともなかなかに可愛らしい。

BGMやサウンドについても、海岸のエリアでは波の音が同時に聞こえるなどというように、こちらも芸が細かい。 しかし、BGMそのものの質が非常に高く、ディスクシステム専用の音源を使用しているため、1Mにもかかわらず質の高いBGMを出している。 他に、FCで始めてセーブ機能(ディスクセーブ)を搭載しており、再プレイはゲームスタート時の位置から始めなければならないが、 それでもパスワード自体あまり浸透してない時代でのセーブ機能は、かなり画期的だった。


だがそれ以上に、プレイヤーの間で話題となったのは、『裏ゼルダ』なる存在だった。 一度ゲームをクリアするか、名前登録で『ZELDA』とすればはじめられるのだが、難易度は通常よりもはるかに高い。 隠し部屋の内容やダンジョンの場所などが、がらりと変わってしまう上に、ダンジョンの構図や登場する敵など全て変更されている。

その敵は、序盤のダンジョンにもかかわらず、いきなり終盤近くに出てくるものばかりだ。 確かに難しいが、だからこそ『表ゼルダ』よりも熱中したプレイヤーは多くいた。

他のゲームが、必死になって頂上を目指しているさなかに、ゼルダは既に頂上にいた。今では当たり前の要素を、ゼルダはほとんど取り入れた。 だからこそ、ディスクシステム発展に大きな役割を演じ、続編の『リンクの冒険』にも大きな自信がついたことはいうまでもないだろう。


私も、既に初代をプレイしているのだが、それはROM版でのプレイであり、それもファミコンミニ版であった。 ファミコンミニ版は、発売当日にプレイしているが、ディスク版はディスクシステムを持っていなかったこともあって、21年間プレイしてなかった。

昨年、いとこから多くのディスクゲームをもらった際、初代ゼルダも含まれていたのだが、 SFCの『神々のトライフォース』やGBの『夢を見る島(DX含む)』をもプレイしていたので、いまさら初代ゼルダをプレイする価値などなかった。

結局、ディスク版をプレイしたのもレビューする直前ということで、ファミコンミニ版も既にクリアしていたので、あまりやる気はなかった。 しかし、タイトル画面のBGMを聞いたとき、私が受けた衝撃は大きかった。

21年前のゲームなのに、その音質が非常に高く、それでいて隠し要素を見つけたときのBGMも混ざっているが、 片方が濁らずに両方とも存在感を示して、それも雑音にならないよう絶妙なバランスを出している。 ダンジョンのBGMも、構図にあわせるように暗いものだが、じめじめしたものではなくむしろ高級感を醸し出している。

ファミコンミニ版をプレイしたあとでのプレイなので、ラストダンジョンも余裕とまではいかないものの、楽にクリアできた。 隠された店や金をもらう部屋を見つけつつ、修理代金を取られる部屋を回避し、早めにマジカルソードやシールドも手に入れた。


ただ、裏ゼルダはいまだプレイしていなかったので、『ZELDA』と名前入力せずにちゃんとクリアして挑戦した。 ある程度、裏ゼルダをプレイして絶句したのだが、ダンジョンの構図や敵の種類、それに隠し部屋の位置などががらりと変わってしまっている。

攻略サイトを見てのプレイなので、ある程度はわかっていたのだが、もはや難易度は表の比ではない。 もちろん、難しいバージョンなどクリアできるわけがないので、3つのダンジョンをクリアした時点で投げ出した。

いずれ、暇があれば再び挑戦しようかと思っているが、何度もゲームオーバー寸前まで追い詰められた私にとって、しばらくは裏ゼルダをプレイする気にはなれないと思う。 裏ゼルダをクリアすれば、もしかしたらまた違ったエンディングが見られるのかもしれないが、 やはり表バージョンと同じだったらと思うと、暇があってもなかなかに裏バージョンをプレイすることはないだろう。

ともあれ、やる気がなかったディスク版をBGMで立ち直らせた、あれは思い出すだけでも本当に素晴らしかった。 ディスクシステムと、同時発売されたディスクゲームが1本だけというのは、はっきりいって無謀でしかないのだろうが、 ゼルダ自体が素晴らしかったおかげで、無謀をも平気でやってのけたのではと思う。

とはいえ、発売当時はまだノーマークだったから、任天堂にしてもいささか不安はあったのではないか。 いずれ、ディスク版の『リンクの冒険』も、プレイしてレビューをやってみたい。



本日のまとめ



ミンナニ ナイショダヨ

(07/6/23レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年5月19日
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