◆YsV ワンダラーム フロム イース◆
イースシリーズ第3章かつイース外伝



発売日:1991年9月27日   発売元:ビクター音楽産業   ジャンル:アクションRPG
値段:7500円   おすすめ度:3.5(プレイしやすいアクションになったか…)


後の偉大な冒険家アドル=クリスティンが、魔法の源である黒真珠に宿っていた、邪悪な生命体ダームを倒し、イースを救ってから3年近い月日が経とうとしていた。 アドルは、親友のドギと旅を続けていたが、既に17歳の少年から19歳の青年になっていた。

2人が、フェルガナ地方の街レドモントを目指したのは、3ヶ月前のことが発端だった。 それは、アドル達より先にレドモントにたどり着いた商人達が、フェルガナ地方に起こっている原因不明の災害に出くわしたことによるものだった。

彼らから、その出来事を聞いたドギは、何かしら感激深い顔つきになっていた。 実は、ドギはレドモントの出身であり、10年ほど前に街を飛び出したきりだった。 ドギはアドルに、当時の思い出も打ち明けた。それほどまでに、レドモントはドギにとって、思い出が多い街だったのだ。 つまり、レドモントを目指したのはこの街に起こっている不穏な事態を調べることの他に、ドギの里帰りという目的もあった。

しばらく後、レドモントにたどり着いた2人だったが、アドルは町全体に流れる異様な気配を感じずにはいられなかった。 というのは、レドモントにたどり着く数時間前、フェルガナの道中でモンスターはもちろん、 何者かの力により理性を失った動物達が徘徊していたのだが、それ以上にアドルを極度の不安に陥れたのは、占い師の一団だった。 アドルは、フェルガナに起こっている異常事態の原因を、若く美しい女性の占い師に占ってもらうことにしたのだ。

だが、テーブル中央の上にある水晶は、恐ろしく不気味な光を放っており、その度合いがますます強くなったと思えば、水晶にひびが入り遂には爆発してしまった。 この衝撃に、占い師は恐れおののき、占い師の仲間達と何か話し合いながらアドル達に金を返し、一団はそのまま立ち去っていった。

2人には、彼らの言葉はわからなかったものの、その中に出た『ガルバラン』という言葉だけは忘れることはなかった。 ガルバランと、フェルガナに起こった異常事態、この2つに何か関係があるのか。 街中に急ぐドギを追いかけたアドルだったが、これから起こるであろう不吉な予感に、様々な思いを駆け巡るしかなかった。


イースシリーズの第3弾だが、イース自体の物語は前作で終わっている。 もちろん、前作の繋がりはあるのだが、この作品からアドルの冒険記に変わっている。 タイトルに、『WANDERERS FROM YS』とあるように、訳すと『イースよりの訪問者』となり、さらに言い換えればイース外伝ともいえるためだ。

前2作との大きな違いは、見下ろし型ではなく横スクロールのアクションになったことだろう。 現に、アクションRPGになくてはならないジャンプと攻撃シーンが、第3弾においてようやくできたのだから。

MPはリングパワー制に代わったが、これはリングを装備することで、それを装備している間はそのパワーを消費することになる。 その効果は、攻撃力を2倍にしたりHPを1ずつ回復したりなど様々だが、前作の魔法と違って攻撃は剣を振り回すことのみになった。

それにおけるアクションもまた、リングの種類以上に多くなり、這いずりやその状態での攻撃、下突きといったジャンプでの特殊攻撃などある。 攻撃はBを押すのだが、レドモントの街では街中の人々に話しかけるようになり、ダンジョンの宝箱もまた上を押して開けるようになっている。 したがって、体当たりで何でもできた前2作とは、かなり異なっているといっていい。

つまり、前2作のようなストーリー重視から、アクション重視へと変貌させており、この作品から様々な要素を取り入れた点において、明らかに差別化を図っている。 だが、この手法について賛否両論が巻き起こったのも事実。

先に述べた、アクションシステムの変化が、批判の最初の槍玉にあげられており、特にPC版ユーザーの批判は大きかったようだ。 何しろ、横スクロールのアクションはPCにはあまりなじめなく、キーボードで操作しなければならなかったので、簡単なアクション操作でも難しく感じたことだろう。


この他に、前2作と違ってやたらアドルがしゃべることと、イース自体の物語は前作で終わっているという批判もある。 このうち後者は、当初『YsV』というタイトルではなかったので、Vがついたのはただのこじ付けではないかという指摘もある。

いずれにせよ、TとUをプレイした人にとってVは異色に見え、批判の度合いも大きかったが、 それは前2作を比べた場合のことであって、それらはあまりの名作のためにVがかすんで見えてしまうほどであった。 したがって、他のゲームと比べれば高水準であることは疑いないことである。

それに、開発元の日本ファルコムとしては、全く新しいイースを作ろうという意気込みがあったものと思われる。 現に、様々なハードに移植されているのだが、そのタイプは2つに分類され、1つはPC版もう1つはX68000版となっている。

そのX68000版は、ラスボスが異様に強いため、イースファンの間では語り草となっているが、それ以外のほとんどは全機種共通である。 なお、難易度設定を導入したことでも有名で、イージー、ノーマル、ハードの3種類が入っている。 それと、Vのメディアミックス作品は、ストーリーが前2作と切り離していることと、人気が(前2作と比べて)あまりよくなかったせいなのか数は多くない。


FC版登場は、PC版登場の1989年から2年後。 この時期のFC界は、数多の大作や良作が次々と出た前年と比べて、先の前年の大豊作の反動に加えてSFCの躍進により、名作は多く出たが主に隠れた名作が多くなった。

そんな中でのFC版登場だが、前作と同じ3MでやはりEDの画像が多く削除された。 画面を見ても、任天堂の『リンクの冒険』やナムコの『ドラゴンバスター』にそっくりで、PC版登場にもそれが指摘されていたが、FC版登場によりそれがさらに指摘された格好となった。 それと、ハードの限界なのか、キャラクターによって身長の差が激しいことでも有名で、チェスター(ドギの幼馴染)とアドルの身長の差は頭1個分の大きさで、もちろんチェスターのほうが高い。

同時に、PC版で好評を呼んだ多重スクロール処理がカットされ、ダンジョンの1部もいくつか変更されたため、PC版より若干違った構成となった。 全機種でいえることだが、ストーリーも前2作と比べてアクションを重視した反面、それが希薄化されたという指摘もあった。 発売のタイミングは、前2作よりも少々よかった感じだが、機種別で見ればかなり知名度が低い上に、SFC版がトンキンハウスから、FC版登場の2年後に登場している。

また、PC版にあった難易度設定が削除され、移植の種類もPC版ではなく難易度が高いX68000版になっている。 しかし、それはボス戦であって、全体的に難易度は下がっている。 特に、ラスボス以外のボスの大部分が、PC版のプレイヤーを悩ませた攻撃をしなくなっている。

例えば、エルダーム山脈の洞窟にいるギルディアスは、アドルが近づくと尻尾で攻撃してくるが、FC版ではそれが削除されている。 ティグレーの採石所の奥深くにいるイスターシバは、本体真下が安全地帯なため、レベルが高かったりパワーリングを装備していれば、短い時間かつノーダメージで倒すことができる。


もちろん、バレスタイン城のデス=ファルシオンは、PC版で通用した攻略法が通じないし、同じ城に登場するツェルフェム=ザム=シュティルガーは、 頭上ジャンプや熱線を吐かないが、それでも強敵なのは間違いないので、FC版なりにバランスよく難易度調整をしている。 当然だが、イースシリーズは低レベルでの攻略は不可能なので、今作の限界レベルがたった12しかないのは、プレイヤーにとって相当不安だったのかもしれない。

プレイの手軽さにしても、やはりFC版が群を抜いている。 コントローラーでの操作はもちろんだが、前2作と違って剣を振り回してのアクションなため、その手のアクションRPGを占めているFCでは、かなりやりやすいことも事実である。

その上、TからVまでのFC版はROMカートリッジなため、PC版などのディスクのように、場面が切り替わるたびにわざわざ読み込む時間はなくなっている。 グラフィックにしても、バレスタイン城の全体がなかなかに細かく描かれているなど、FCながらに頑張っている箇所がいくつかある。 総合的に見れば、PC版より及ばないのは事実だが、FC版は様々なアレンジを組み込んだことにより、快適感ではPC版を凌駕する結果となった。

移植元のビクターにしても、前年同様イースシリーズの他に味のあるRPGを作っており(『虹のシルクロード』)、数年間はゲーム産業も安定していたことを裏付けている。 ただ、FC版でのシリーズがVまで打ち止めになったのは、PC版の影響もさることながら、ハードの限界というものを感じ取っていたのだろう。 SFC版の容量が16Mということを考えれば、まさに月とすっぽんといわざるをえない。


私は今日まで、FC版シリーズ3作品プレイしたが、やはり私はVが一番面白い。 答えは前にも書いたとおり、剣を振り回して攻撃するアクションが、私にとってやりやすいと思ったからだ。 それに私は、『スーパーマリオブラザーズ』などのアクションに触れる機会が多く、自然と頭で考えるRPGをプレイすることが遅くなった。

だからこそ、イースシリーズの中で剣を振り回すVがなじみやすく、反対に体当たりで攻撃するTとUはプレイしづらいのが本音である。 もちろんUは、魔法による攻撃もあるので、ちゃんと攻撃している描写もあるのだが、武器を振り回すのが醍醐味の1つであるアクションRPGの観点から考えれば、 半キャラずらしの戦法があるとはいえ、武器を振り回さないアクションRPGをプレイするのはつらい。

このゲームも、攻略サイトを見てプレイしたわけだが、謎解きのほとんどはボスや重要人物から入手したアイテムで解決できるので、 結果的に謎解きにおけるストーリーよりも、アクションに重点が置かれていることがよくわかる。

また、操作性やアクションの面白さで評価している私なので、長く体当たりで攻撃するゲームをプレイしたあとに剣を振り回すゲームをプレイすると、個人的にかなりほっとする。 体力回復も、町に戻るだけでHPが1ずつ回復できるというお手軽さもいいのだが、宿屋があるのにそれを使えないのはどうも矛盾しているような気がしてならない。


リングパワーは、やはりボス戦といったここぞというときにしか使わなかった。 その中でパワーリングは、冒険序盤で入手できるため、結構お世話になったし、他のリングも少々使っていた。

ショップでリングパワーを回復できるが、私はそんなことは金の無駄になるので、敵を倒してこつこつと貯めることを選んだ。 そのほうが、経験値や金を多く稼げるし、少し離れてまた戻ってくれば復活しているので、その繰り返しで意外と簡単にパワー最大値まで貯めることができるのだから。

それにしても、イースシリーズの定番でもあるアクションRPGより低い限界レベルは、もう少しどうにかならなかったのだろうか。 同じ共通である、HP最大値が255で最大経験値と最大所持ゴールドが65535というのは仕方ないが、Uのようにレベル上昇の間隔を狭くすべきではなかったのだろうか。

限界レベルが12というのは、装備やステータスのことを考えても、これはいくらなんでも低すぎではないか。 もっとも、Uも限界レベルが高いとはいえ、他のアクションRPGと比べれば低いのだが。



本日のまとめ



またきてくださいね。

(07/6/21レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年5月19日
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