◆YsU◆
イース物語完結編



発売日:1990年5月25日   発売元:ビクター音楽産業   ジャンル:アクションRPG
値段:7500円   おすすめ度:3(いろんな意味でタイミングが悪すぎた…)


時をさかのぼること8百年前、秩序と自由で栄えた国が誕生。 その国は『イース』と名づけられ、美しい2人の女神と、知恵と徳の深い6人の神官によって治められ、全ての魔法の源となった、 『黒い真珠』という名の美しい宝石もまた、イース誕生と共に作られ、その魔力と6人の神官により、クレリアという金属を作りだした。

これによりイースは、今まで以上に繁栄したのだが、クレリアが作られることによって、全てと相反する『魔』がこの世に現れてしまった。 そして人々が、そこから生まれた魔物により、最後の砦サルモンの神殿に追いつめられた時、神官達は『黒い真珠』の力により、神殿を天空へ昇らせ、災いの狂気から逃れることができた。

魔物達は、天空に昇ったサルモンの神殿を追いかけて、魔力を集結してダームの塔を作った。 そのさなか、女神は2人とも姿を消し、しばらく後に魔物の追撃もなぜかなくなった。

一応の平和はもどったが、いつか本当の平和を『イース』の地に復活することを願った6人の神官は、それぞれ6つに分けた『イースの本』を、それぞれの子孫へたくした。 そして、『イースの本』6冊がそろった時、大いなる力が生まれるという伝説を残しながら……。

それから8百年後、後に大冒険家となるアドル=クリスティンが、この地に登場することになった。 この頃のエステリアは、もちろん、2人の女神や神殿の存在といった、8百年後の出来事などは忘れ去られおり、 古代王国『イース』の歴史を知っているのは、神官の家系だけであった。

そんな中、クレリアが『銀』という名の鉱物として掘り出され、かつての『イース』の国が、クレリアによって繁栄したと同じように、 今またエステリアの国は銀によって潤っていたが、『災いの元凶クレリアに手をだすと「魔」が再びよみがえる……。』という古い言伝えの通り、再び『魔』が動きだした。

エステリアの国にあるミネアの町にたどり着いたアドルは、このミネアの町のただならない空気を、敏感に感じとっていた。 ミネアの人々は、町から銀製のものが次々と盗まれ、この町から行方知れずの人が後を絶たないとも言うのだ。 「イースの6冊の本を取り返さなければ……」と言う女占師サラの言葉に導かれ、アドルは『イースの6冊の本』を探しに神殿に向かった。

恐ろしいほどに入りくんだ神殿の地下迷宮や廃坑の中で、魔物達が激しく執拗な攻撃をくぐりぬけながら『イースの本』を一冊一冊集めていくと、徐々に『イース』の歴史が明らかになっていく。 そして、魔導士ダルク=ファクトを倒し、激しく戦いが終わりを告げる時、最後の息を深く吐き出した彼の脳裏に、青く澄んだ天空に浮かぶサルモンの神殿が浮かび、そして消えた…。


イースシリーズの第2弾で、前作終了直後からの続きとなる。 物語は、前作での最後の戦いの後、ようやく6冊のイースの本を集め、それらの本の力により伝説の古代国家イースに飛ばされ、その中のランスの村のリリアという少女に助け出されるというところから始まる。

前作の続きということもあってか、システムはほとんど変わっておらず、一部のアイテムは名称や形を変えるだけでの再登場となった。 また、わずか24しかなかった限界レベルが上昇し、次のレベルまでの間隔が狭くなり、高いレベルでの力押しができるようになった。 とはいえ、他のRPGと比べれば限界レベルの低さは相変わらずだが。

それと新たに、数種類の魔法も加わったが、そのうちの1つであるファイヤーは敵に向けて発射するもので、 ボス戦では大助かりだった(前作のように体当たりで倒さなければならないリスクがなくなった)一方で、ジャンルがSTGになってしまったという意見もあった。

これも、他のRPG同様MPで消費され、こちらはHPと違って自然回復はできず、基本的に体当たりでの攻撃となるので、 ボス戦や強敵のザコと戦うときや、テレパシーやライトのようなイベント通過における使用以外は(ファイヤーもまた、 場合によってはイベント通過に必要な魔法だったりする)、ここぞというとき以外はあまり使わないことが多かったようだ。

だがそれ以上に、このゲームを前作以上の名作になったのは、ビジュアルシーンなどにおけるグラフィックのきれいさや、 ストーリー重視のシナリオが多くの新しいファンを生み出したといってよく、特にグラフィックについては、オープニングシーンにおけるリリアの振り向きが話題になった。

もっとも、今と比べればCGの質は大きく劣るのだが、発売当時(1988年)のことを考えればかなりきれいだった。 ストーリーにしても、リリアを制限時間内に助けるイベントは、緊張の度合いが最高潮に近いものだったが、その分エンディングのできは感動に値するものであった。 もちろん、前作のBGM担当の古代祐三氏が、今作でも再び担当し、やはり高い質のサウンドはプレイヤーの間で好評があった。


しかし、それ以上にイースシリーズを不動のものにしたのはPCエンジン版だった。 それも、CD−ROMでの移植であり、前作とつなげる『イースT・U』としての登場なので、Uは前作をプレイしなければわからないものを、 TをプレイしなければUがプレイできないといった手法は、イースをプレイする人にわかりやすい説明を施したものかもしれない。 何しろ、Uのラスボスを倒せるレベルが60と、他の移植版の2倍以上で(倒すには27のレベルが必要)、明らかにT終了直後Uに突入する雰囲気を出している。

さらに、アニメーション付き+豪華声優陣によるアテレコは、CD−ROMでなければ不可能なことで、細々と出ていたメディア作品を一気に量産するきっかけを作った。 PCエンジンにおいて、『天外魔境』シリーズや『R=TYPE』と共に、『PCエンジン三大キラーソフト』として名を連ね、FC一人勝ちの状態に待ったをかけた。

確かにCD−ROMは、PCの値段にないにしろ相当高く、当時としてはこれも高峰の華だった。 それでも、PCエンジンの発展に大きな功績を残したことはいうまでもなく、 アレンジ度が大きいということでPC版ファンの不興を買ったものの、好意的な評価の前にあまり目立てなかった。


PC版登場から2年後の1990年、FC版にも移植された。 販売担当は、前作同様ビクター音楽産業で、ビクターはまた移植も担当している。

前作は、ドラクエVの大ヒットでイースTは目立てなかったが、Uはそれよりもはるかに目立てなくなってしまっている。 理由は、FC版登場の年は、ドラクエWやFFVを筆頭に、様々な名作や良作などが登場していることと、PCエンジン版イースT・Uによるものだった。

特にPCエンジン版は、前評判も高く発売後にはさらに評価が高くなったので、同時にイースシリーズの人気を押し上げていた。 結局のところ、色んな面でタイミングが悪すぎる作品となってしまった。

もちろん、FC版は決して駄作ではなく、前作と違ってPC版のストーリーやシステムをそのまま導入し、容量も1M増えて3Mとなっている。 リリアの振り向きにおけるOPシーンは、FCのハードスペックから考えればよくがんばっていて、BGMもそれを盛り上げている。 もっとも、EDのシーンの半数近くのCGが削除されたのは、3MになったとはいえPC版と比べればまだまだ容量の差は大きかったためである。

しかし、手ごろに遊べるという点では、FC版のほうが一番上だろう。 PC版は、本体がまだマニア層のものである上に、キーボードで動かすため操作性が悪く、PCエンジン版はPC版のグレードアップに加えて操作も手軽なのだが、 やはり本体のCD−ROMの値段が高く、PCエンジン本体をも買うとすれば実に8万以上の金が必要になる。 となれば、FCに移植したほうが質は落ちるものの、手軽に遊ぶことができる。


前作と違って、レベルが上がればHPやMPは全回復し、移動速度も急激に速くなった。 前作のヒールリングの代役となる精霊の衣は、序盤早くに登場するため、ダンジョンが多くても簡単に乗り切ることができる。 つまり、前作をプレイしていた人にとって、快適感が一層増したことになった。

だが、先に書いた容量の低さのため、エンディングのCGの削除はもちろん、マップの構造の変化やそれにおけるアイテムの位置が変更され、 PC版をプレイしている人にとって違和感があるのはいたし方がないだろう。 それに、FC版登場の前の年に、3Mのゲームがちらほらと登場しているため、移植の時期が遅いと言う声もあるものの、こればかりは少々微妙だったのではないのだろうか。

前年の4月に移植できれば、その不満は和らげることができたのだろうが、PCエンジン版は発売前でも高い評判を得ていたので、 ビクターとしては移植の出来はもちろんのこと、発売の時期でも相当苦労していたのかもしれない。

そのビクター、同年に『サンサーラ・ナーガ』を発売させ、人気も上々だったおかげで、RPG制作に関しては高いレベルに上がった。 イースUのFC版にしても、決して移植度が低いわけではなく、単にタイミングが悪すぎただけなので、今となってはFC版の再評価を考えてもいいのかもしれない。 とはいえ、前作のオリジナルボスにあるような、FCならではの要素が全くないのは、前作をプレイしたFCユーザーにとって少々残念かもしれない。


私は、前作をレビューしている途中から、既にUをプレイしなければと心に誓っていた。 それに、FC版シリーズを3本とも購入していたので、Tをプレイしたら続けてU、Vともプレイして、かつレビューを書かなければとも考えていた。 また、前作での含みを残してのエンディングは、前作をレビューしていたもやもや感(他のゲームをレビューしたいという思い)をかき消してくれた。

さてUをプレイしての感想は、前作よりも難易度が下がっているということで、移動速度が上がったことや、レベル上昇の早さがこのゲームの快適度を上げているといえる。 それと、魔法のファイヤーがなかなかに使い勝手がよく、序盤に精霊の衣を入手できたことも安心感が広がった。 レベルが上がって、ボスの弱点さえわかっていれば、ノーダメージで倒すことが出来るので、久々にごり押しでのプレイが出来てほっとした。

ただ、低レベルではまだまだかなわないことや、謎解きの難易度が前作よりも上昇している。 その1つのノルティア氷壁での、洞窟の通路をふさいでいる氷の壁の取り除き方は、攻略サイトを見ても完全に理解できなかった。 ファイヤーの魔法を使えばいいのだが、ただ単に使うだけでなくアドルのレベルが10以上で、 それも十字キーの左を押しながらの発射でなければ取り除けないため、ようやく取り除けたときはかなり精神を使った感じがした。


同じことで、溶岩の村落でのイベントをこなしたあとのルバと話した後で、橋をかけてもらうイベントがあるが、 自動的にかけてもらうのではなくアドルが崖に向かって、十字キーの右を押してかけるようになっているので、これってビクターの不備ではないかと勘くぐった。

もちろん私は、PC版など全くプレイしていないのだが、もうちょっとヒントや設定をやさしくしてほしかったと思う。 また、攻略サイトで載ってた全ダンジョンの構図もPC版に準じており、FC版をプレイしていた私にとってかなり混乱した。 事実、同じところをぐるぐる回って、時間を無駄にしたことがあるのだから(敵と闘って金と経験値を得られるので、厳密にいえば無駄にはならないのだろうが、序盤はすずめの涙しかないのでつらい)。

最後になるが、これも攻略サイトのことでだが、クリアして思ったことでOPとEDの質が他の機種よりも悪い。 なんというか、FC版のほうがやたらCGの量が少なすぎるのだ。 3Mの容量では、これが限界なのだろうが、私としてはあと1M増やしてCGの量も増やしてほしかった。



本日のまとめ



けんをもったせきぞうがひっそりとたっている。

(07/6/19レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年5月19日
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