◆Ys◆
イースシリーズ第1章



発売日:1988年8月26日   発売元:ビクター音楽産業   ジャンル:アクションRPG
値段:6200円   おすすめ度:3(ゼルダの後にこれは…)


好奇心と勇気に満ち溢れた若き冒険者で、赤い髪の少年アドル=クリスティンは、困難を求めて諸国を旅していた。 そして、小さな港町プロマロックで、呪われた国エステリアの奇妙な噂を耳にした。

それは、『あの国が、呪われた国と言われ始めたのは今から半年位前程で、エステリアは巨大な穴を囲む断崖の山に、 幾つかの坑道を持ち、銀や他の鉱物を産出地として名を知られ、このプロマロックとも貿易をしていた。 しかし、半年前から連絡が途絶え、またエステリアに向かう船はみんな嵐に出会い、誰一人として生きて帰ってくるものはいなくなった。』という。

港町からかすかに望めるエステリアの島、その中央に奇怪に高くそびえる塔、彼の好奇心は異常なまでにかきたてられた。 心配し制止する町人たちを残してアドルは、エステリアを目指して船を出したが、やはりというべきか突然嵐が襲い、気が付いたときには砂浜に打ち上げられていた。

ようやく体力の回復したアドルは、ここがあのエステリアであることに気がついたが、その直後奇妙な音がした。 動物の鳴き声にしては、その音は余りにも気持ちが悪く異常だ、と思う間もなく森の中からこれまで見たことのないものが彼を襲ってきた。

どう戦い、どう傷ついたのか判らないまま、アドルはとある場所で目を覚ますことになる。

「ここは、エステリア唯一の港町バルバドの病院じゃ。モンスターに襲われている君を見つけて、何とか救いだしたのじゃ。危ない所だった。 ところで君は誰で、どうしてここに来たのだね?」

白髪の老人に尋ねられ、アドルはこれまでの冒険や港町プロマロックの奇妙な噂などについて話した。

やがて快方に向かった彼は、改めて老人に一体この国に何が起こったのか訪ねてみたものの、老人からはただ突然、 怪物達が現れ人間を襲うようになり、そしてその謎は判らないという解答を得られただけだった。

遂に、アドルは決心した。このエステリアを救うために、そしてこの謎を解くために、島奥深く冒険をしてみようと。 とりあえず、北の町ミネアに行こうと考えたアドルは、バルバドの町人から贈られた色々な餞別を頂き、ミネアに向かうのだった。


1987年にPCで登場し、20年経った今でも根強いファンを持つシリーズであり、2006年には現時点で最新作の『イース・オリジン』が登場している。 今年(2007年)20周年記念として、開発元の日本ファルコム主催によるイベントも開催されており、いかに多くのファンがいることを物語っている。

シリーズの物語の概要は、アドル=クリスティンを主人公に、様々な大陸を冒険していくという、いわばアドルの冒険記である。 もちろん、最初はイースというかつて存在していた古代王国の謎を解き明かすものだったが、今ではアドル主体の物語になっている。 『イース(Ys)』というタイトルがあるのもこのためで、最初アドルの冒険記ということは考えていなかったらしい。

最初の作品のジャンルは、『ゼルダの伝説』同様見下ろし型のアクションRPGだが、ゼルダのように剣を振り回すものではなく、体当たりで敵を倒すようになっている。 もちろん、そのまま敵にぶつかればダメージを食らうのは目に見えているので、敵の側面か背面に向かって体当たりすればノーダメージで倒すことができる。

また、キャラを半分ずらして敵に体当たりする『半キャラずらし』は、このゲームをプレイするにあたり必須の戦法で、当時の流行語に匹敵する勢いだったようだ。 なお、成長は一般のRPG同様レベル制になっているので、アドルのレベルと敵の能力との差によっては、正面からでもノーダメージになる。

回復は、魔法もなければアイテムも1つしかなく所持数も1つだけで、主に病院での治療やダンジョン以外で動きを止めることで回復するが、 前者は一定量の回復につきそれ応の金額がかかり、後者は1ずつしか回復できずフィールドでは危険(敵に襲われるので)。

唯一の、回復アイテムであるヒールポーションの値段は1000ゴールドと、序盤にしてはかなりの高値で売られている。 レベル上昇と密接な繋がりがある経験値も、高いレベルになると極端に低レベルなザコほど、もらえる経験値が少なくなる。 おまけに、アドルのレベルが低ければ、ボスを倒すことなど不可能に近い。


こうしてみると、イースはかなり難しそうなゲームのように思えるが、謎解きはあまり難しくはないしヒントをくれることもある。 戦闘も、ある程度操作感覚をつかめれば、時間がかかるがレベルアップでき、減少する経験値もボス打倒のヒントとなり、 そのボスを倒すにしても特定の攻略法が決まっているので、確かに簡単ではないがかといって難しくはないという、微妙なバランスが人気を集める要因の1つとなった。

BGMも、古代祐三氏による重厚で軽快さを併せ持ち、PCのゲームサウンドの質を大きく向上させることにつながった。 妹の彩乃氏も、モンスターデザインを手がけ、古代兄妹によるゲームの二人三脚を印象付けた。 兄の祐三氏の手がけたBGMは、後にLPやCDのサントラとして大ヒットを飛ばした。

これらは、メディアミックスと言う形で、数多のゲームの中でひときわその手の戦略が功を奏した作品でもあった。 一方で、ストーリーやキャラクターを題材にした小説やOVAなどは、まだ続編が出ていないこともあってか、TからUまでの間は数が少なかった。


さて、FCに移植されたのはPC版発売から翌年の8月。 この年は、『ドラゴンクエストV』が300万本を売り上げるという大ヒットを飛ばし、まさにドラクエVの一人勝ちを決定的にする時期であった。

さらに2年前には、ディスクシステムから『ゼルダの伝説』が発売され、こちらは150万本以上の売り上げを記録した。 また、ゼルダによく似たゲームは、サンソフトの『アディアンの杖』の他に何本か登場した。

そんな時期に登場したイースは、少々タイミングが悪い形での登場となった。 剣を振り回すことが、アクションRPGの醍醐味の1つであるのに、体当たりで敵を攻撃するのは自殺行為のように思えたのだろう。 もちろん、側面や背面の攻撃が有利なのは、どのアクションRPGでも変わらないので、慣れてしまえばさほど苦労はないのだが。

システムも、PC版とさほど変わっておらず、武器や防具はもちろんリングの類も登場している。 ただ、回復アイテムが1つしか持てず種類も1つしかないため、PC版同様に序盤は立ち止まって回復するか、病院で回復するしかなかった。 ゼルダでは、ハートなどで体力を回復できるのだが、回復手段があまりないイースのシステムは、FCユーザーには厳しかったようだ。

幸い、ポーズを使って敵の動きを見極めることができるが、多用すると面白さが半減するし、ボス戦ではその手は使えない。 それと、PC版のイベントやマップ等も変更されており、イベントについては金の台座など重要アイテムが削除されたため、PC版をプレイした人にとっても違和感があったらしい。


こうなったのも、PCとFCの容量の差が大きく、FCのROMカートリッジも2Mのゲームが続々登場し、FC版もやはり2Mだったが、PCのソフトと比べればまだまだ容量が小さかった。 このため、色々な面でメスを入れざるを得なくなり、ダンジョンのマップをもFCサイズに変更するしかなかったのだろう。

それでも、攻略手順はそんなに変わっておらず、PC版をプレイしていればダンジョンマップや、一部のボスのパターンの変更に戸惑うことはあれど、クリアはたやすかっただろう。 特に、攻撃すると次第に足場がなくなるラスボス戦は、その要素がなくなったおかげで難易度は急激に下がったし、 それより前にはFC版オリジナルのボスが控えているので、いい意味での新鮮もあり、このボスもパターンさえわかればさほど苦労はしない。

賛否両論はあれど、FC移植はそれなりにがんばっているといえ、まだまだ高峰の華でしかなかったパソコンをFCに移植したことは正解だったのかもしれない。 そのFC版を移植したのは、日本ファルコムではなくビクター音楽産業。

様々な、アーティストのCDなどを輩出している一方で、『バナナ』や『花のスター街道』といった奇妙なゲームを制作していた。 そもそも、レコード会社の作るゲームは、大部分が駄作で中にはひどいものもあった。

その状況での、音楽会社の人気PCゲームの移植と、それの評価はそれなりによかったので、しばらく後に音楽会社でも良作ゲームを量産する足がかりとなったといえよう。 ビクターは、FC版イースシリーズの3本を任されることになり、各音楽会社の中でも抜群の存在感を残せるRPGを作り出せるきっかけを得たのかもしれない。 それが、『サンサーラ・ナーガ』シリーズといった良作を作った、下請け会社を呼び込むことができたのだろう。


PC版イースは、未だにプレイしたことがないが、20年ほど前に近くの(車で15分ほど)ホームセンターのゲーム売り場に、 PC版のデモ画面が映っていて、なかなかにきれいだったことを覚えている。

まだ子供だったので、PCの何たるかを全く理解していなかった私だったが、RPGの人気が急上昇する中で、 いまだアクションゲームといった指を動かすことに夢中になってた私は、このゲームをプレイしてみたいと、デモ画面に目を輝かせていた。 しかし、初めてイースシリーズをプレイしたのは、それから20年近くになってのことで、それもSFC版のXが先だった。

FC版イースシリーズ購入は、レビューを書く1年ほど前だったが他のゲームに夢中になっていて、結局FC版をプレイしたのはレビューを書く半年前という遅さだった。 そのFC版だが、デモ画面の内容は覚えていても、肝心の攻撃やアイテム使用などは全く忘れていて、ボタンを押しても剣が出ないことに苛立ちと不安を覚え、 既にニンテンドウ64以前のゼルダシリーズをプレイしていた私は、「これってクソゲーでは?」と一瞬ながらに思った。 それでも、ネットなどの情報で体当たり同然で攻撃し、アイテムは装備してBボタンを押して使用できることを知ったので、半キャラずらしといった戦法を駆使しながら進んでいった。


ただ、ゼルダのイメージが強すぎた上に、Xは剣を振り回すタイプだったので、今でも剣を振り回さないことに違和感を感じている。 それに、回復する手段が少なすぎてそれも一長一短があるため、攻撃方法がわかったとはいえ、ゲーム終了まで苦戦の連続だった。 特にダンジョンは、ヒールリングがなければ回復できないので、何とか敵を回避するためポーズを多用した。

おまけに、その手段はボス戦では使用できず、あっけなくゲームオーバーになるケースが相次いだ。 さらに、限界レベルが24とかなり低く、正直最強装備をしてでも不安があった。 幸いにも、ダンジョンでもセーブができるので、ボスのいる部屋の手前でセーブしてアイテムは極力使わないことにした。

PCユーザーなら、この手の難しさなら普通なのだろうが、私のような万人ユーザーではこれは少々厳しかった。 このレビューを書き終え次第、続編もプレイしてレビューしてみたい。



本日のまとめ



どうやら るすのようだ

(07/6/17レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年5月18日
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