◆スパイVSスパイ◆
FC初の友情崩壊に特化したゲーム



発売日:1986年4月26日   ジャンル:ACT   発売元:ケムコ
値段:4900円   おすすめ度:3(事によっては喧嘩に発展)


皆さんは、友情崩壊ゲームといえば、どんなゲームを思い浮かべるだろうか。友情崩壊ゲームは、その名の通り友達との友情を潰すゲームで、当然対戦ゲームに多い。 その代表格は、桃太郎電鉄シリーズで、主に妨害系カードを使ったり、厄介者の貧乏神を他のプレイヤーに擦り付けたりなど、まさに友情にひびが入りかねないものばかりだ。

宣伝ポスターに、『友情崩壊ゲーム』と謳っているドカポンシリーズも、まさにその代表格に当てはまるものであり、そもそも友情崩壊ゲームのほとんどが、ボードゲームのジャンルに収まっている。

もちろん、他のジャンルのゲームも友情崩壊を押し出しており、『ツインビー』におけるパワーアップベルの奪い合いや、 『マリオブラザーズ』における相手の動きを見計らって敵をぶつける手段も、ボードゲームに見られるパターンによく似ている。 ただしこれらのゲームは、友情崩壊させるパターンはあれど、メインが友情を崩壊させるものではなく、 同時に協力体制で敵を倒すパターンも存在するため、一概に友情崩壊をメインとしているわけではない。

では、FC初のボードゲーム以外のジャンルにおける、友情崩壊ゲームは一体何なのか。 確かにマリオブラザーズは、プレイ方法によっては友情崩壊ゲームに値するが、協力プレイもあるのでFC初の友情崩壊ゲームではない。 実のところ、現在のゲーム状況を考えると、ボードゲーム以外のジャンルでの友情崩壊に特化したゲームはほとんどない。

FCに限定すれば、それがさらに顕著になり、本当に数えるものしかない。 ただし、ボードゲーム以外のジャンルといっても、相手を巧妙に妨害する手段があっての友情崩壊ゲームであり、SLGやスポーツゲームなどの類はそれに当てはまらない。 FC初の、友情崩壊に特化したゲーム、それはケムコの『スパイVSスパイ』ではないだろうか。


ストーリーは、ゲーム業界の大元締めである『ジンテンドウ』の開発した、新型のディスクシステムの設計図をめぐって、 ケムコが送り込んだ産業スパイ『ヘッケル』と、ケムコのライバルゲームメーカー『トムコ』の産業スパイ『ジャッケル』が、ジンテンドウの秘密社屋で殺し合いをするというもの。

元々は、1984年に同名の漫画が、アメリカで人気があったことによりゲーム化されたもので、洋ゲーでもあった。 ゲーム版も、同年に海外で発売され、日本版も翌年にセガMk−Vに移植された。FC版の移植は、Mk−V版登場のさらに翌年に登場した。

さて、ヘッケルとジャッケルとの関係は、色と姿によりお互いを永遠のライバルと認識し、その姿はカラスにあらずカササギである。 それと、ジャッケルの所属しているトムコという会社は、言わずもがな移植元のケムコをもじったもので、 2人が狙うジンテンドウのディスクシステムの設計図というのは、FC版が発売された年は任天堂のディスクシステムが誕生した年でもあり、ジンテンドウも任天堂をもじっている。

登場してわずか2ヶ月ほどで、ディスクシステムの設計図を盗むストーリーが出たことは、それだけゲーム業界にディスクシステムに対する衝撃は計り知れなかったといえる。 もっともゲームでは、ただ単に設計図となっており、ディスクシステムの設計図はFC版オリジナルの設定である。

ルールは、建物内にある5つのアイテムを先に入手し、制限時間内に脱出できれば勝ちとなる(脱出できなければ、両方とも死亡となる)。 入手すべき5つのアイテムは、設計図を始めとして、かばん、鍵、パスポート、金で、 設計図以外は入手する必要があるのかという疑問があるが(例えばかばんは、持ち込めばいいだけの話)、ルールの都合上それは閉口するしかない。

なお、かばん以外のアイテムは2つ以上持てないので、先にかばんを手に入れる必要がある。 かばんさえ手に入れば、他のアイテム全て手に入れることができる。

見事、先に入手して脱出できれば、飛行場にあるセスナ機に乗って脱出し、一方の残された相手はいきなり自爆となる。 理由はどうであれ、スパイに失敗は許されないということなのだろう。


このゲームの大きな特徴、それは罠を仕掛けて相手を陥れることにある。 プレイヤーは、4種類の罠を駆使することで、アイテム探しを有利に進める必要がある。 その4種類の罠は、爆弾、スプリング、硫酸、毒ガスで、Bで選択しAで仕掛ける。

見事、相手が引っかかれば死亡し、制限時間が30秒マイナスされ一定時間行動不能になる。 しかも、行動不能中は時間を消費されるので、実質的に自分が行動できるのは約40秒後で、集めたアイテムは全て没収される(最初に配置された場所に戻される)。 このため、自分が勝利するには、できるだけ多く相手を罠に引っかからせることが重要。

ただし、罠によっては設置できる場所が限られている。 爆弾やスプリングは、額縁や机といった主に物があるところ、硫酸は閉められたドアに、毒ガスはどこでも設置できる。 もちろん、これら全て防ぐことも可能で、爆弾はバケツで消火しスプリングはペンチでバラす、硫酸は傘で防いで毒ガスは3秒以内に仕掛けられた部屋から脱出すればいい。 防御アイテムは、必ず部屋のどこかにあるので、全て防げないというわけではない。

同時に、所持しなければならないアイテムは、何度プレイしても必ず同じ場所におかれており、レベルを上げるごとに建物は広くなり、 重要アイテムなどの配置は違ってくるが、同様に同じレベルを何度プレイしてもアイテム配置は変わらない。 これを利用して、あらかじめアイテムが配置してある場所に罠を仕掛け、相手にアイテムを取らせるよう仕向ければ、相手が引っかかる可能性は高い。

特に、このゲームをやりたての人には間違いなく引っかかり、相手の動きを見ずにアイテム入手にいそしんでいると痛い目に遭う。 そして死の直前に見るものは、嘲笑う相手の姿のみ。また、防御アイテムを見つけようとして、そのまま罠に引っかかることもある。


それと、ヘッケルとジャッケルが同じ部屋に入った場合、戦闘モードに突入。 AB同時押しでジャンプする以外は、基本的に殴り合いで、どちらかの体力ゲージがなくなれば、罠に引っかかるときと同様に死亡。

この場合、戦闘前にナイフか棍棒を所持していれば、戦闘時に有利になる。 2つとも、攻撃力や射程範囲に一長一短があるが、拳で戦うより有利なのは間違いない。

これを足し合わせるに、罠や戦いで相手を何度も死亡させてタイムオーバーにしてしまうのが、このゲーム攻略の大きな鍵となる。 もっとも、相手も相当腕を磨いている場合もあり、そのときは相手の行動を読む心理戦に入る。

例えば、バケツが置いてある部屋にスプリングを置いたり、その逆を仕掛けたりなど。 さらに、相手にアイテム全て所持させて、その間に出口に罠を仕掛けて引っかからせるといった共倒れなど、 相手に勝つためには手段を選ばず、ゲームの中で勝てば官軍をやってのけている。

事実、普段は見えない負の部分が、このゲームで垣間見えたことは間違いないだろう。罠の配置等における、双方の行動如何によっては、現実の喧嘩に発展しかねない。 マリオブラザーズでは、相手を貶める手段もあった一方で、一致団結して敵に立ち向かう手段もあったが、 スパイVSスパイは勝利者は自分のみで、相手を貶める手段はかなりあるため、間違いなくFC初の友情崩壊ゲームといえよう。 プレイヤーの評価もなかなかによく、後に駄作のイメージが先行する洋ゲーでは光っていた(各ゲーム雑誌の評価は低かったが)。


ところで、移植元のケムコは、オールドユーザーから洋ゲーを数多く移植している会社という認識が強く、 それがゆえにクソゲーメーカーの1つとして捉えている人も多い(洋ゲーのほとんどは操作性や難易度などが日本人に合わないものだったので)。 その一方で、良作なRPGを多く出している会社としても知られているが、洋ゲー移植と比べればそのイメージは小さい。

現在のケムコは、『コトブキシステム』という会社名として、主に携帯ゲーム(Iモード)などに力を注いでいるが、もちろんコンシューマー系のゲームにも力を注いでいる。 ただ、既にコトブキシステムという名前は存在しており、元々ケムコとコトブキシステムは一緒で、コトブキシステムが『ケムコ』というブランド名を使っていたに過ぎない。 したがって、現在の2つの関係は今と違って、別々の会社(分社した)となっている。

なおスパイVSスパイは、FC版登場の翌年に続編が登場したが、こちらはFC版オリジナルの続編であり、舞台も屋内から屋外に変更された。 そして、前作同様の友情崩壊が再現されることになる。


私は現在、ケムコゲームのほとんどをプレイしていないし、FCソフトならなおさらである。 多くプレイしたGBでも、セレクションシリーズしか思い当たらない。 FCのケムコゲームとなると、スパイVSスパイシリーズしか思い当たらない(SFCだと、意外と覚えているが)。 ケムコが、洋ゲーを多く移植していることを知ったのは、数年前にネットにあった情報を知ってから。

スパイVSスパイの思い出は、20年ほど前に友達の家でプレイしたことがある。 どうも、何となしに買ってもらったということだが、いざプレイしてみると思った以上に面白かった。 適当に仕掛けた罠が、相手に都合よく引っかかってくれて、本気でガッツポーズをしてしまったほどだ。

その一方で、友達が白い目で私を見つめていた、というよりにらみつけていたといったほうがいいかもしれない。 20年ほど前の出来事なのに、これほどにも詳細に覚えているということは、負の記憶を知らぬ間に植えつけられた証なのかもしれない。


それから現在、20年前の記憶をたどってプレイしてみたが、あいにくとプレイする人がいないので、仕方なくCPU対戦となった。 記憶は覚えていても、問題の操作は忘れてしまったので、最初はCPUに何度も苦戦していたが、プレイしていくうちに操作も思い出せるようになり、やはり昔同様適当に罠を仕掛けまくった。 その甲斐あってか、なんでもないようなところに必ずCPUが引っかかってくれて、自分は労せずして重要アイテムを全部獲得できた。

ただ、人間同士の対戦が面白いゲームなので、CPUとの対戦はどうも面白みがない。 もちろん、最初から数回やる程度は面白いのだが、さすがに対人戦と比べれば面白さは対人に譲るしかない。

本当は、人間とプレイしたかったが、あいにくと現実の友達は色々な事情でおらず、もし一緒にプレイしたとしてもこのゲームの性質により、本気で喧嘩に発展しかねない。 結局私は、CPU対戦で満足するしかなかったが、現実の喧嘩のことを考えれば、それはそれで仕方がないのかもしれない。



本日のまとめ



KEKEKE………

(07/6/13レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年5月18日
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