◆月風魔伝◆
源平と似てそうで非なるもの



発売日:1987年7月7日   発売元:コナミ   ジャンル:ACT
値段:4900円   おすすめ度:3.5(ナムコと一時期物議を醸し出した)


西暦一万四千六百七十二年、魔暦元年の出来事において…。地獄界から、魔王龍骨鬼が覚醒、月氏三兄弟が統治する地上界を征服しようとたくらんでいた。 これに対し月氏三兄弟は、代々伝授される3本の波動剣を持って、龍骨鬼に立ち向かった。

波動剣とは、振り下ろす時に精神波を実体化させて放ち、相手に打撃を与える霊剣である。これが3つ揃えば、『大念動波』という強い力を発揮することができるのだ。 この3本と月氏三兄弟の力があれば、必ずや龍骨鬼を倒せるだろうと誰もが思っていた。

だが龍骨鬼の強さは、波動剣を所持した月氏三兄弟をはるかに超えており、三兄弟の長男と次男を殺した龍骨鬼は、月氏三兄弟が所持していた3本の波動剣を奪い取り、 地獄界にある大きな島『凶鬼島』を根城とし、その周りを囲む獄門島、三首島、鬼顔島の3つを、それらの島を支配する魔神達に分け与えたのだ。 三男の風魔は、傷つきながらも一命を取り留めたが、二人の兄を殺された上に波動剣を3本とも奪われたことにより、龍骨鬼に対する復讐の怨念を抱かずにはいられなかった。

早速風魔は、龍骨鬼がいる凶鬼島にたどり着いたが、そんな彼の前に現れた老婆は、龍骨鬼を倒すにはまず奪われた3本の波動剣を揃え、大念動波を放てるほどの威力を得なければならないと語った。 龍骨鬼の力は、もはや波動剣1本では到底太刀打ちできないほど、強大になっていたのだから。 そこで風魔は、凶鬼島を囲む3つの島にあるとされる、3本の波動剣を先に奪い返すことを決めた。

果たして風魔は、奪われた3本の波動剣を取り戻し、伝説の大念動波を生み出すことができるのか。 そして、その力で龍骨鬼を倒し、心半ばにして散っていった、2人の兄の無念の魂を鎮めることができるのだろうか。


月風を、源平と似て非なるものにしたのは、ひとえにRPGの要素を導入したことだろう。 成長と金がそれで、成長は剣の攻撃力を表し、多くの敵を倒すごとにそのゲージが上がっていく。 金については、源平にも金の概念があったが、それは地獄でのゲームオーバー回避という補助的なものであって、月風は島の所々にある店で買い物をする。

アイテムの種類も、命を半分まで回復するものもあれば、敵弾を防ぐバリアなどもある。 これらは、風魔の身を守るためのものであり、初期装備の刀を初めとして、3方向放てる手裏剣や『力』の文字を飛ばす守り太鼓など、こちらも風変わりのものが多い。 このゲームにおいて、武器は『攻める』に、道具は『守る』にそれぞれ分類され、状況に応じて種類を変更できる。


もう1つ、源平と非なるところといえば、ラスボスまでにたどり着く長さ。 源平は、機種がACゆえに鎌倉に向けて、三種の神器を見つけるためにほぼ一本道を行くのに対し、 月風は凶鬼島の周りを囲む3つの島に、龍骨鬼を倒すための波動剣が合計3本あるため、そこに行かねばならない。 それも、ただ行くだけなら問題ないのだが、それらの島に渡るためのアイテムを持っていなければならないため、波動剣に加えて鬼面符を同じく3つ集めなければならない。

しかも、フィールドマップの一部には見える敵が存在し、それに触れると通常のステージ風のアクションに切り替わる(左右どちらかずっと行けばクリアできる)。 ただし、自由にステージ(鳥居)選択や店などに行けるフィールドマップがあるため、ルート次第によっては源平同様に、一度もいかないステージもある。


とはいえ、登場ステージの大部分を何度もプレイしなければならないため、ルートさえわかれば何度も他の国(ステージ)に挑戦しなくていい源平と違って、相当のプレイ時間を余儀なくされる。 このため、パスワードが登場したのだが、ゲームオーバーにならなければ出ないので、せっかくいいところなのにパスワード取るため、わざわざ死ななければならないという理不尽なものであった。

波動剣を取りにいく道中にある、3D迷路の存在も大きい。 といっても、Wizシリーズやメガテンシリーズのようなものではなく、元がアクションゲームなので敵に遭遇しても、しっかりとアクションをしてくれる。

ただ、特定の場所でしか遭遇しないとはいえ、戦闘は通常のものより勝手が違っていて、共通の弱点である頭部に数発当てなければ倒せない(それ以外を攻撃しても硬直するだけ)。 その他にも、何かヒントをくれる人物がいたり、金がもらえるボーナスステージに行けたりなど、ダンジョンRPG同様なかなかにバラエティ豊かなところがある。

そして、迷路を抜けた後に入る三途の川を突破すると、その島の魔神(ボス)と対決し、見事勝てば波動剣を取り戻すことができる。 ここでのボスについて、先に鬼面符を手に入れるために邪鬼と戦うのだが、これを中ボスとするならば、島の魔神は大ボスといったあたりだろう。 ボスとの戦闘は、源平のBIGステージを思わせる造りだが、1画面しかないことと風魔がボスと比べてあまりにも小さいことにより、BIGステージとは違った雰囲気を見せている。

なお、このゲームに登場する敵は、弾よりも体当たりのほうがダメージ量が大きい。 3Dダンジョンやボス戦では、それが顕著に表れており、場合によっては1回の体当たりで何と3分の1のダメージを食らうこともある。 したがって、体当たりを食らうよりは弾に当たったほうがダメージを抑えられる。


このゲームの難易度は、様々なアイテムを駆使しても結構高いので、風魔のテクニックで状況を切り抜けなければならなかった。 斬られた敵は、硬直と同時に一瞬だけ当たり判定がなくなる。

その隙に、走り抜けるやり方を『斬り抜け』といい、2回以上の攻撃で倒せる耐久力があり、横幅があまり長くない敵に対して有効で、風魔の刀のリーチが長いことを利用したテクニックである。 風魔の刀は、実は腰に差してる場合でも当たり判定があるので、追いかけてくる敵に対して逃げずに、腰の刀に誘導すれば勝手に当たってくれるのだが意味はない(リスクが大きいので)。

派生版として、ジャンプの着地位置にいる敵に行う『着地斬り抜け』もある。 この他に、落下中(ジャンプせずに)にジャンプボタンを押せばジャンプが可能な、いわゆる『空中ジャンプ』は、穴の中にあるアイテムを手に入れたり、 飛距離が長いジャンプを出すために有効なテクニックもあり、どれもクリアに有効なテクニックである。

厳密にテクニックではないが、魔性の独楽を装備したときにジャンプすれば、無敵の回転攻撃ができ、大量の敵が出現する地点でこれを利用して、大量の経験値と金を稼ぐことができる。 3方向に同時発射できる手裏剣は、全て敵に当てれば大ダメージを食らわせることができるので、ボスなどの巨大な敵や(しゃがんでの場合のみ)中くらいの大きさの敵に有効だった。

武器に加えてアイテムの活用も、ゲーム攻略に必須で特に3D迷路には、洞窟を明るくするろうそくと洞窟内の方角を示すコンパスが欠かせない。 何しろ3D迷路は、かなり広い上に敵が出現するエリアも結構あるのだから。


それらのテクニックやアイテムなどを駆使しても、このゲームは難しい。 いくら弾の攻撃力が低くても、連続で食らえばひとたまりもないし、3D迷路にしても振り向く動作が少々鈍く、プレイヤーが思った方向に向いてくれないこともあり、結果的に迷いやすくなる。

ほとんどのアイテムも、一長一短の感じが強く、独楽はジャンプ中に無敵攻撃を使えるのはいいが、ジャンプ力が低くなってしまい、簡単に飛び越える穴も飛び越えられないこともある。 同じ敵が、違うエリアごとに耐久力が違うことも、難易度上昇の要因かもしれない。

しかしながら、パターンはある程度決まっているので、アイテムの性能を見極めつつ斬り抜けなどのテクニックを駆使すれば、ある程度は何とかなるだろう。 それに、独楽を選んだ状態でポーズを押して手裏剣を選べば、手裏剣を投げつつ回転攻撃も出せるという、まさに攻守高い風魔を作り出せる。


もっとも、それまでにたどり着くまでが大変なのだが、その手段さえ使えれば高い難易度もぐっと下がり、難易度が高いところは独楽が使えない迷路のみになる。 ここまで書くと、難易度が高いというよりそのバランスが悪いということだろうか。

それでも、アクションが完成されつつBGMの質もよく、オリジナル性が強いとの声が高く、見事に源平との差別化に成功した。 コナミも、このゲームに思い入れがあるのか、コナミの人気キャラが登場する『ワイワイワールド』シリーズに出演している。 シリーズ全作品に登場していることは、このゲームが単体作品であることを考えれば、現在でも根強いファンがいるという証なのだろう。

最後に、『月風魔伝』は『げつふうま−でん』であって、『源平討魔伝』のように『げんぺい−とうまでん』と区切らない。 やはり、源平のほうが知名度がかなり高かったようで、『げつふう−までん』と区切ってしまう人が多かったようだ。


月風発売当時、私はコロコロコミックの他に、ファミマガをまばらに読んでいた。 その中で、月風魔伝の存在というのは、まだ子供だった私にとって深く脳裏を刻むのに十分すぎる何かを持っていた。 特に、大ボスの大きさに加えて、フィールドマップに転がっている人骨に似た骨の多さも、特集記事を見た私に大きな衝撃を受けた。

レビューを書いてる現在で、それが怪物の骨だということを知り、確かに人間にしてはこんなに大きな頭蓋骨はないなと思った。 それを考慮しても、いくら地獄界が舞台とはいえ、その不気味さは源平の地獄よりはるかに超えている。

もっとも、プレイしてみたいという気持ちは、ファミマガの特集と攻略雑誌を読んでからますます高くなり、源平の存在を知った後でもその気持ちは変わらなかった。 しかし、ようやくプレイすることができたのは、レビューを書いている一年前のことだったが。

さて、このゲームをプレイできるといっても初めてのことだったので、どうしたらいいかわからずわらわらと出てくる敵に押しつぶされながら、あえなくゲームオーバーになってしまった。 だが、何度もプレイしたおかげで、効率のいい敵の倒し方やボスの攻略法など、ある程度身につけられた。

ただ、剣のゲージが一体何を示すのかというのは、レビューした際に攻略ページを見て、それが剣の攻撃力を上げる経験値の役目を果たしていることを知ったと同時に、 今までは敵に逃げ腰だったのが、それを知った途端より多く敵を倒すようになった。


いろんな攻略情報を見たおかげで、ラスボスの龍骨鬼を倒すことができたが、龍骨鬼の最終段階を見て、「『迎途荒威(げいとあれい)』になるわけないか。」と苦笑交じりにつぶやいた。 『迎途荒威』というのは、ファミマガに出たウソ技で、岩の剣(アクションステージで通路をふさいでいる岩を砕くのに使う剣)を装備して竜骨鬼の心臓に16回攻撃すれば、 竜骨鬼がまた変身して竜骨鬼以上の巨大キャラになるというもので、当時のプレイヤーは騙された人が多かったらしい。

ただ、迎途荒威の容貌は、竜骨鬼の画像をコピーして反転して貼り合わせたものなので、 よく見れば騙されるはずはないのだろうが、当時はパソコンの普及率が極端に低かったので、画像の反転などはわからなかったらしい。

ちなみに迎途荒威の元ネタは、大きいキャラがリアルに動いたりなどする、いわゆる『ゲートアレイ』というデジタル用語である。 その事実を知った私は、そのウソ技を試したことがなくても、また一歩すごいものを知ったような気がしたが、それでも3D迷路は御免こうむりたい。

色んな3DダンジョンRPGをプレイしたおかげで、月風のような動作が鈍い3Dは、迷路の内容がわかっていてもやはり迷いやすいもので、 ちゃんと正解ルートを取ったと思っても、結局は同じ方向をぐるぐる回っていることが多かったからだ。 それの難易度が低ければ、もう少し私の評価は上がったのだろうが、これは惜しいことだったと思う。



本日のまとめ



もう うるものは ないのう

(07/6/9レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年5月17日
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