◆ウィザードリィU リルガミンの遺産◆
FC版におけるPC版WizV



発売日:1989年2月21日   発売元:アスキー   ジャンル:RPG
値段:6500円   おすすめ度:3(FC版でも極悪な難易度…)


1981年、世界的に有名なTRPG『D&D』をモチーフにしたコンピューターゲームが、アメリカのパソコンAppleUに登場した。

その名は『ウィザードリィ』。キャラを制作し、最大6人でダンジョンに挑戦するもので、パソコンゲームの黎明期ゆえか、 ダンジョンは線画でモンスターの絵も貧弱、アイテム名に至っては『メイス+2』というように特徴のある名前すらなかった。 その代わり、文章は誇張気味に書かれており、貧弱なグラフィックや特徴的な名前がないアイテムとあわせて、BGMがないこともプレイヤーの想像力を増大させる働きを見せた。

Wizにおける大きな特徴は、種族や能力値、職業や性格などのステータスによるキャラメイキングと、常に潜む死と隣り合わせの恐怖である。 特に後者は、戦闘以外の場面が多く、寺院や呪文の蘇生失敗で灰になったり、テレポーターの罠や移動呪文の座標指定ミスで、壁に埋め込まれて全滅することも当たり前だった。

しかも、このゲームにおけるキャラの死は2段重ねとなっており、先の壁に埋め込まれる全滅を始めとして、灰になったキャラが再び蘇生できなかったり、 戦闘で全滅したパーティが怪物に食われれば、そのキャラは『ロスト』されデータが消える、すなわち2度と生き返えることができず使用もできないため、新たに別のキャラを作る必要があった。

『ドラゴンボール』にも、一度死んだ人間が(魂という形で)もう一度死ぬと、この世とあの世からも存在が抹消されるという台詞があるが、 その対象となったキャラはおらず、結局正義側のレギュラーは(生き返ったことも加えて)最後まで生き残ったことになった。

一般のRPGの常識では、死んでも蘇生できて灰やロストの心配はなく、ごく一部におけるキャラの重大なイベントのみロストされる仕組みになっているので、 お気に入りのキャラを心行くまで育成できた。

ただし、その常識はドラクエシリーズの登場によってできたもので、一般常識前に登場したWizシリーズは、RPGの一般常識を構築したといっても、 あくまでRPGの基礎の原型であるD&Dの要素をコンピューターゲームに組み込んだだけで、蘇生の完全成功や全滅時の救済措置はなかった。

しかしながら、自分で育てたキャラを別のシリーズに転送させたり、先にも挙げたプレイヤーの想像力を増大させた造り、 常に待ち受ける死の恐怖に加えてキャラのメイキングやそれの育成など、難易度が高いにもかかわらず世界中のプレイヤーの虜にさせ、現在も新シリーズが登場するなど、今も世界中のプレイヤーに愛され続けている。


日本語版は、初代登場から4年後の1985年に、FC版はそれからさらに2年後の1987年に発売されたが、 FC版登場の年はドラクエUを始めとして、メガテンやFFなど様々なRPGが登場するという一大ブームまでに発展した。 FC版Wizは、87年の暮れに登場したが、ドラクエシリーズから始まったRPGゲームの基礎が出来つつある中で、万人用とされるFCにPC版Wizの要素をそのまま出すわけにはいかなかった。

このため、壁に埋め込まれる形での全滅を、ロストから通常の死へと変更し、アイテム名も一般のRPGのように個性観を持たせた。 さらに、文章はもちろん全ての単語をも、英語か日本語に選べるのに加えて、ダンジョンやモンスターのグラフィックの質も大幅に進化。 そのモンスターの絵は、末弥純氏が担当し新たにBGMも加えられ、羽田健太郎氏が担当した。

やはり、常にある死やロストの恐怖や、ダンジョンのトラップというような難しさは継承されたので、PC版でないにしろやはり難易度は高かった。 それでもWizの面白さは、FCユーザーにも大いに好評があり、Wizにはまったプレイヤーは続編の移植を期待した。


そして、1年3ヵ月後の1989年2月21日に、UがFCに登場することになった。 だがUといっても、PC版のUではなくVの移植であって、あえてFC版ではPC版Vを『U』として登場させた。

というのも、PC版UはTの続編なのだが、序盤に登場するモンスターが前作の終盤に登場するタイプなので、前作で育てたキャラを転送しなければ攻略は不可能になっている。 これは、むしろ続編というより、信長の野望シリーズにおけるパワーアップキットに近い。

これをFCでプレイしようとすれば、必ず外部記憶装置のターボファイルを使用せねばならず、結果的にUを飛ばしてVを移植することを余儀なくされた。 実際、PC版Uの評価もあまりいいものではなく、低レベルはもちろん高レベルでも簡単にクリアすることにつながったので、全体的に難易度のバランスが悪かった。 とはいえ、Uを好むプレイヤーも多くいたことは事実で、VのFC移植が登場した翌年にUのFC移植が発売されたが、これは後の話になる。


さて、FC版UにおけるPC版Vの特徴だが、ストーリーはTの100年後で、Tで活躍したキャラの子孫が登場する物語となっている。 つまり、Tで育てたキャラをVで転送すると、子孫ということで若干能力が下がってしまい、転送前のレベルではない形での『転生』となる。

システムは、初代とほとんど変わっておらず、ダンジョンについては地下に潜るのではなく、山の洞窟を登っていく形に改められ、階層も10階から6階と規模も小さくなった。 その一方で、キャラの性格により入れる階層と入れない階層が存在し、善の場合は2,4階が、悪の場合は3,5階がそれぞれ入ることができ、1階と6階のみ共通して入れる。 したがって、善と悪それぞれが全ての階層に入れるには、それに必要なアイテムを反対の属性のパーティからもらう必要がある。

中立の属性なら、わざわざそのような手間をかける必要はないのだが、僧侶がいないため回復には傷薬といったアイテムを使用せざるを得ない。 傷薬にしても、ボルタック商店で売られているアイテムの値段は、Tのほぼ2倍となっているため、よほど自信がないプレイヤーでは、中立のみのパーティは危険が大きすぎた。 このため、危険を冒してまで中立のパーティでダンジョンを突破するか、面倒でも2つのパーティを作って安全策をとるのか、プレイヤーの判断が迫られることになった。

実は、善悪の僧侶を1人ずつ作って、残りを中立の職業にすれば、12人作る時間も省かれる上に、レベルの高い僧侶を前面に押し出すことができ、非常に効率がいい。 とはいえ、ゲームを始める前にプレイのスタイルを制限させることになり、これにおけるプレイヤーの評価は高くなかった。 さらに、専門の知識が必要な謎解きも多分に用意されており、先のプレイスタイルと合わせて、システム以上に難易度が高かった。

結局Vは、前作同様評価が低く、WizシリーズはVをもって一旦休息に入る。事実、続編が出るのはV登場の4年後となるためであったからだ。 なお、英語版W登場の年は、日本語版V登場の年でもあり、前作も前年に発売されているので(初代はさらにその前年)、日本語版W登場まで毎年のように登場している。 全ての日本コンシューマーを含めれば、ほぼ毎年にわたって移植版や日本オリジナルの続編などが登場している。


FC版Uは、前作のシステムそのままに加えて、PC版Vのアイテムの名称(『くさりかたびら+1』など)やダンジョンの特徴そのものも導入されている。 また新たに、モンスターの経験値を引き上げつつ、FC版Tに登場した村正・君主の聖衣・手裏剣の3つを引き続き登場させ(これらを『Wiz三種の神器』と呼ばれる)、 PC版にあった専門の謎解きを廃止し、新たにアイテム交換という形に差し替えられている。

やはりFCユーザーには、PC版における専門知識が必要な謎解きは無理だったのだろう。 日本における、パソコンの普及率の低さも、PC版要素変更要因の1つだったのかもしれない。

新たに加わったアイテム交換は、面倒ではあるが重要アイテムを交換することで、PC版の難易度を若干下げている。 前作登場の最強武具が出ていることも、PC版VがFCユーザーにとってあまりにも難しすぎる内容と考えたのだろう。

とはいえ、難易度が高いことに変わりはなく、PC版にあったパーティの最後尾のキャラの属性で決まった、 性格属性制限のフロアのシステムが廃止され、これを利用していたプレイヤーにとってかなりつらいものとなった。 もっとも、入ろうとして城に戻されることで、楽して城に戻れることはできるが。


それと、3つの属性の水晶も、FCユーザーにとって大きなトラップの1つになった。 なぜなら、違う属性の水晶のスペシャルパワーを開放すると、そのキャラは灰になってしまうからだ(死亡扱い)。

終盤のトラップも、非常にいやらしいものがあり(モンスターが出たり、最初から水晶を集めなければいけないもの)、 属性専用フロアのシステムとあわせて、前作以上に難易度が高かった。

それでも、武具の名称の大部分が、本来のWizシリーズに戻ったり、前作で作ったキャラをターボファイルで転送して、 このゲームの世界で転生させるやり方は、PC版を長くプレイした人にとっても歓迎できるものだった。

ファミコン通信といった、ゲーム雑誌の評価も上々で、移植元のアスキーは前作の好評に引き続いて、さらに自信を深めることになった。 この時期は、ドラクエやFFといった大作が発売されなかったことも、さらに評価を上げる1つの要因だったのかもしれない。


Uもまた初代同様、発売から数年程度で知ることになったが、これもプレイしたのが最近という遅さだった。 というより2007年6月現在、Wizシリーズをプレイしたのは、FC版の初代と続編だけだったが。 先に初代をプレイして、ようやくWizシリーズの面白さがわかった私は、UとVを中古で購入した(もちろん箱説明書なしで)。

プレイ前に、雑誌やネットで情報を入手した私は、やはりキャラメイキングで名前を『ア』にしてボーナスポイントを大幅に増やした。 最初は、パーティ分割という面倒さに、中立の属性で挑んだが、あまりの敵の強さにすぐ断念した。

初代で強くなったキャラを、続編で使いたかったのだが、あいにく私はターボファイルを持っていなかったので、やむなく新たにUでキャラを作らざるを得なかった。 転生されるため、若干能力は落ちるとはいえ、レベル1のキャラと比べれば断然初代で鍛えたキャラのほうが強く、ターボファイルを持っていればと己の無力さにただ悔しがるしかなかった。

そこで、12人新たに作ることにしたが、すぐに善悪の僧侶2人で何とかなるという情報も入手したので、7人のキャラでゲームを進めることにした。 入れないフロアのため、わざわざ城に戻るのは面倒だったが、中立パーティで痛い目に遭ったことと、2つのパーティを使っての複雑さを考えれば、こういうことも致し方なかった。 1階などに配置されているショートカットも、既に存在は知っていたが、瓶詰めの舟がなければたどり着けないので、別の意味でUのほうがTよりも難易度が高いことに気付いた。

終盤6階における、3種類の属性のクリスタル使用におけるスペシャルパワーの開放も、危うく仕様を間違いはぐったせいで、1人が灰になりかけるところだった。 宝箱のトラップも相変わらずだが、正体不明のアイテムが入手しやすいので、総合的な面白さはTに譲るが、宝箱の罠を外して戦利品を入手できる喜びは、Uのほうが上といえる。

前作以上に、クリアするのに手間取ったが、その分もう1度再挑戦してみようという気になった。 今度は、中立の属性でクリアを目指したいが、中立の属性では僧侶になれないため、回復はアイテムで代用するしかないし、 宿屋も1週間単位度泊まることになり、金と年齢に神経を尖らせざるを得ないが、挑戦してみる価値はあると思う。 もっとも、通常のプレイでクリアしたばかりなので、今はまだ挑戦する気にはなれないが。



本日のまとめ



ここはなんじらのたちいれぬところ、たちさるがよい!!

(07/6/3レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年5月16日
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