発売日:1988年12月2日 発売元:スクウェア ジャンル:SLG
値段:5800円 おすすめ度:3(当時はまともな王子だったが…) ガル・ド・イン新紀1年3月、アルマムーン王国の偉大な国王ダークフリードがこの世を去った。 彼は、知性・戦術・内政に優れていたため英雄と呼ばれるようになり、数多の優秀な騎士団を従え、 同時に不思議な力を持つ卵を使いながら、数百年にわたって続いた大陸を統一し、ようやく平和が訪れた。 だがその平和も、大陸統一の翌日に起こった王の死により、再び崩れ去った。 ダークフリートの死を知った各地の群雄達は、再び自分が大陸を統一できるチャンスとして、一斉に侵略を始めた。 群雄達のほとんどは、ダークフリートによって征服され、 王国は、群雄達の迅速な動きに対応できず、次々と城が落とされ、国王と行動を共にしていた騎士団の多くが討ち死にしていった。 そして今、王国に残されたものは、国王の跡を継いだ若き王子と本城であるアルマムーン城、わずかに残った優秀な将軍数名に、先代の相談役だった大臣セバスチャンのみ。 若き王子は、再び大陸の平和を取り戻すべく立ち上がったが、彼は不思議な卵の使い方がわからなかった。 しかし、知性・戦術・内政は父譲りであったため、アルマムーン王国による再度の大陸統一に支障はなかった。 かくて、半熟な英雄ことアルマムーン王子は、己の知力と気力、それに体力のすべてを賭けた戦いに身を投じるのだった。 スクウェア(現スクウェア=エニックス)における著名シリーズの1つだが、第1作発売当時はファイナルファンタジーUが発売され、次第に『FFのスクウェア』という異名に定着しつつあった。 そういった時期での発売は、ゲームタイトル自体怪しげな雰囲気をユーザーに与えたのかもしれない。 かつてスクウェアは、D.O.Gの盟主で様々なゲームを制作してきたが、一部を除き大部分が低い評価を受けることになった。 古くから、スクウェアを知っていたユーザー達は、また奇妙なゲームを作るのではないかといった不安があったのかもしれない。 2007年5月現在、半熟英雄シリーズは本編に4作、外伝に2作それぞれ発売されており(その1つであるIモード版は終了している)、 シリーズの共通点はアルマムーン王子と大臣、それにエッグモンスターやイベントなど、既に1作目からシリーズの基礎が出来上がっているが、 その要素は1作目と以降の続編と比べて大幅に異なっている。 まず王子について、今でこそ能力以上にバカを輪にかけた存在でしかないが、昔は先代譲りの能力と生真面目さを兼ねそろえていた。 むしろ、王子の周囲(特にイベント)にギャグが多かった程度である。 続いてエッグモンスターは、プレイヤーにとって頼もしい存在として描かれているが、初代はその実力がなく、敵軍に大ダメージを食らうことがザラだった。 場合によっては、先に先制されることもあり、低レベルのエッグモンスターでは一方的にやられることも珍しくなかった。 これは、敵軍が卵を所持していないことへの配慮でもあり、猛攻撃の命中率も高かった。 卵の使用回復方法も、内政で料金を払ってもらうのではなく、大陸にあるモンスターの城に突入し、そこにいるモンスターに勝つと、そのモンスターからお払いと同時に全回復してもらえる。 もちろん、モンスターは種類は違えど強敵であることには違いないが、一度勝てば2回目以降は戦闘せずに、ただで全回復してもらえるのだ。 卵のパワーアップは、使用全回復と同時に行われるが、最初にお払いを受けた将軍がその恩恵の量が大きく、2番目以降はその恩恵がだんだんと小さくなっていく。 ストーリー進行は、ファイアーエムブレムシリーズやスーパーロボット大戦シリーズというような、1つのシナリオをクリアすれば次のシナリオに進めるものではなく、 ガチャポン戦士シリーズのように複数のシナリオを最初からプレイできるようになっていた。 容量の限界か、シナリオ数も3つとかなり少ないものの、全てのシナリオの共通点として、 1年以内に全土を統一すると、エンディングにある国の王女と結婚できるイベントが発生する。 また、敵対する勢力は、マップ上に複数存在していた。 すなわち、何の関係のない勢力が、これまた何の関係のない勢力に潰されていくので、最初のマップでも状況判断に迫られた。 シナリオによっては、最初から複数の城を所持する勢力もいたので、地道に弱小勢力から潰していくか、一気に大勢力を力が出ない序盤に潰していくか、豊富な戦略を選ぶことも可能である。 これ以外にも、商人から購入する切り札は、1回の月1イベントのうち1種類につき1つしか購入できないことや、 男女のユニットのグラフィックが(フィールド上では)一緒なこと、最初のシナリオなのにいきなり強力な敵将軍と出くわすなど、 2作目以降しかプレイしていないプレイヤーが第1作目をプレイすれば、面食らうことは間違いない。 総合的に見ても、第1作目のほうが難易度が高いのだが、それよりも従来のSLGにはなかった色々なアイデアが盛り込まれ、当時のSLGと比べて評価は高かった。 ただ、スクウェアがFFなどのRPG色に染まっていたがために、半熟英雄の続編の登場が遅くなり、ようやく発売されたのが4年後の12月という遅さであった。 その後も、第3弾の登場が何と11年後で、第2弾のWS版登場にしても第3弾登場の前年という、こちらも非常に遅く発売となり、高い人気だったにもかかわらず、 長年にわたってスクウェアのRPG達によって埋もれる格好となってしまった。 半熟英雄の第1作が発売された1988年は、正統派SLG『信長の野望 全国版』が発売されたのを機に、各ゲーム会社がこぞってSLGを作り出し、 SLGブームが到来することになった。スクウェアもまた、SLGブームの波に乗り初のSLGを制作したが、半熟英雄ほど当時の観点から見れば、実に奇抜すぎるアイデアばかりだった。 まず、戦場の状況がリアルタイムで動いていたということ。 今も、SLGの戦闘の大部分はターン制だが、このゲームはユニットの移動や攻撃が全てリアルタイムで動いていた。 このゲームの流れは、大陸にある城から主人公を含めた将軍を出撃させ城に乗り込み、その中にいる敵の将軍全て倒せば、攻め込んだ城は自分のものになる。 ただし戦場は、川あり山あり道路などありで、森や砂漠、皮といった水のあるところや山は、行軍スピードが鈍くなり、平地や道路はそれが速くなるので、 闇雲に敵城に攻め込むだけでなく、いかに早く敵城に乗り込むかが、リアルタイムとあわせて大きなポイントとなった。 当然、自国の城が1つしかない場合に、その城を占領されればゲームオーバーになり、主人公もやられれば同じくゲームオーバーになるので、 リアルタイムとあわせてSLGになかった緊張感を生み出すことにつながった。 そして、一定時間が過ぎれば、今月のイベントがやってきてその後に内政を行うのだが、開墾とか治水といった一般のSLGにありがちなものではなく、 城を増築してその城のレベルを上げ収入を増やすものだけとなっている。 他に、商人から切り札を購入したり兵士を(1人1Gで)補充したり、果ては将軍を募集しその戦力にするなど、見ていて飽きないものばかりだ。 今月のイベント(以下月1イベント)というのは、このゲームは1年12ヶ月で動いており、1ヶ月が過ぎると内政の合間にイベントが発生する仕組みとなっている。 この内容は、豊作や凶作を始めとして、敵の将軍暗殺や地震で城のレベルが1つ下がったりと、まさに発生がランダムでしかない。 戦場にある洞窟に入った時に起こるイベントも、ここで報告され内容もまたランダムに富んでおり、右を向けば大金が手に入り、 左を向けば将軍が死亡するなど、かなりバクチが高いものばかり。これらは、後のシリーズの象徴と呼べるものとなった。 次に戦闘については、将軍同士の戦いもリアルタイムで行っていたことだが、これはリアルタイムというよりアクションに近いといったほうがいい。 というのも、画面下に両軍の戦力と赤いゲージがあるが、将軍同士がぶつかった時にAを連打すると、ゲージを消費する代わりに相手を画面端に追いやることができる。 場合によっては、端にぶつけてダメージを与えることができる。 ゲームに登場する将軍は、一般のSLGと違ってHPと内政力、戦闘力と支払われる賃金(月1イベントの後に支払われる)、それに卵所持の有無の4つの一般ステータスのみ。 また、引き連れる兵士の数や所持している切り札の種類も、将軍が引き連れる軍団というステータスに入っている。 戦闘は兵士の数と戦闘力、それにHPが高いことや卵を所持していれば有利で、切り札も複数所持していればなおいい。 切り札の名前は、『サンダルマ』や『フリノテキ』など、あまりにも胡散臭い名前だが威力は抜群で、主に商人から買うことのほかに、月1イベントで入手することもある。 もっとも、切り札全て使いきりであることと、将軍1人につき3つまでしか所持できないという欠点はあるが、何も持たないよりはいい。 兵士や切り札共に、行軍中の将軍2人以上が集結してできるキャンプで、それを作った将軍同士で介することができる。 つまり、敵との戦闘で兵士や切り札を使い果たした将軍が、他の将軍の持っている兵士や切り札をもらうことで、再び敵と戦うことができる。 これは、能力が低い役立たずな将軍を最大限に利用したやり方で、信長の野望シリーズにおける無能な武将による輸送の原型といえる。 ただし、卵を持っている場合では、その場限りではない。 戦闘でピンチだと思ったときは、卵をつかってしのぐことになっているが、卵を使うと自分より強いモンスターを召喚できる。 これをエッグモンスターと呼び、味方になればこれほど頼もしいことはなかった。 エッグモンスターを召喚しての戦闘は、モンスターが将軍の代わりに戦うもので、戦闘もコマンド方式に急転換する。 攻撃は2種類で、攻撃名も切り札に劣らず胡散臭いものばかりだが、威力や効果は切り札以上に抜群で、一度に数回攻撃できる手段もあり、 例えモンスターがピンチになっても、『たまごにもどれっ!』で卵に戻して、弱体化した敵軍に将軍で止めをさすか、 卵をもう1度使って別のエッグモンスターで攻撃するか、プレイヤーの判断に決められた。 だが、使えば使うほど弱いモンスターが召喚することになり、最終的には最弱のエッグマンになってしまうので、 ここぞというとき以外はあまり使わない人も多く、そもそも卵を所持できる将軍は、主人公を含めても少なかった。 そのエッグマンは、後のシリーズにレギュラーとして登場するも、能力や必殺技があまりにも貧弱で、誰にも負けない正義感を除けば完全に貧弱でしかなかった。 ちなみに、卵によるモンスター召喚は、FFシリーズのV以降に登場した召喚獣の元になったことは、多くの指摘がある。 ギャグで覆われた新しい作品が、シリアスな著名作品に多大な影響を与えたことは、当時のスクウェアスタッフでも予想がつかなかったことだろう。 先に書いたが、2作目以降からプレイした人が初代をプレイすると、非常に面食らったとあるように、私も半熟英雄シリーズを初めてプレイしたのは、初代ではなく2作目のSFC版だった。 もちろん初代については、既に学年雑誌の付録の小冊子で知ることができたが、短い文章だけでどういうゲームなのかはわからなかった。 シリーズの概要がようやくわかったのは、ファミマガの2作目の情報によるもので、これ以降私は半熟英雄シリーズを好きになった。 さて、発売から20年近く経った現在での、初めての初代プレイだが、2作目を飽きるほどやりこんでいたため、 エッグモンスターの強さや2作目にはなかったイベントの数々、最初のマップなのに強力な敵将軍が結構いたことなど、完全に驚きの連続だった。 実は、2作目の攻略本を購入したとき、初代の情報をまた知ることになったが、それでも驚きの連続だったのは、 攻略本に載ってた初代の情報を覚えていなかったことと、攻略本の情報以上に私の知らない要素がかなり見つかったからである。 率直に言って初代の評価だが、当時としては主に画面の数字とにらみ合いながら、のんびりとプレイする一般のSLGと違って、 常にキャラの動きに目を見張りながら一秒の予断を許さない状況を生んだこのゲームは、かなり評価はあっただろう。 しかし、2作目をやりこんだ私にとっては、結構難しいゲームになっている。 特に、進軍方向を決めるときでも時間をとめることができないので、自軍の城に敵が攻めてくると正直パニックを起こしてしまう。 イベントの種類も、右を向けば収入2倍で、左を向けば城のレベルが1下がったりと、FCからのSLGの常識だった運の要素の削除がない(つまり初めから運の要素がある)。 FCで、運の要素がすべてを握るSLGといえば、アスキーの『ボコスカウォーズ』が思い当たるが、 ボコスカがクソゲー呼ばわりされるのに対して半熟が名作と評価されるのは、ひとえにマップ上でセーブができることだろう。 内政の場面ではできないが、それ以外ではいつでもどこでもセーブができる、つまり月1イベント発生直前にセーブして、イベントの内容が気に入らなければすぐリセットを押せばいい。 時間はかかるが、必ず自分に都合のいいイベントばかり来るはずだ。 初期に登場したイベントの半数ほどは、2作目以降では消えてしまったり、存続しても内容やキャラなどが変わったりなど、 初代をやりこんだ人にとってはお気に入りのイベントがあっただろうかと思うが、将軍募集が月1イベントでしか発生しないのは、 私のような短時間でのクリアを目指すプレイヤーにとっては非常につらい。 もちろん、1年での全土制覇は、初期の将軍3人でもできるのだが、それでもいつ他勢力に城を取られないか気が気でない。 ところで私は、最後の城を攻め落とすとき、主人公に強力な切り札3つ持たせて突入したが、余裕を持たせて卵を使った。 だが、卵の使用回数が書かれていないため、気付かぬうちに卵を結構使ってしまったらしく、最後のとどめとして登場したエッグモンスターは、最弱のエッグマンだった…。 本日のまとめ
|