◆ファイアーエムブレム外伝◆
エムブレムサーガ第2章



発売日:1992年4月20日   発売元:任天堂   ジャンル:シミュレーションRPG
値段:6800円   おすすめ度:4(とても簡単なシミュレーション)


私達が住んでいる世界とは、違う次元にある世界、その世界にはいくつもの大陸があるが、そのうちの1つアカネイア大陸は、 ドルーア帝国の竜人族(マムクート)メディウス皇帝の侵略により、この大陸にある国のほとんどが滅亡していった。 だが、アリティア王国の王子マルスとその仲間達により、メディウスはドルーアと共に滅び、アカネイアに平和が戻った。

同じ頃、バレンシアという名の大陸では、北にある武の国リゲル帝国と、南にある文化の国ソフィア王国が交戦状態となっていた。 この大陸は、はるか昔にやさしさと美しさで自然と調和することを望む地母神ミラと、力と欲望で人類生存を説く邪神ドーマの2人によって創られた。 2人は兄妹であったが、考え方の違いのために激しく争っていたが、北をドーマが南をミラが治めることにより決着がついた。

しかし、決着から長い時の流れ故なのか、平和に慣れたソフィアの人々はミラの教えを無視し、 自然と共に生きることを忘れ豊かな実りは独占した一方で、リゲルでは3年にも及ぶ凶作により次々と人が倒れていった。

リゲルの人々は、豊かなソフィアに助けを求めたが、そこで彼らが見たものはソフィアの民の嘲り笑う姿だった。 戦乱の突入に危機感を抱いた、良識ある王国の家臣や住民は、度々国王リマ4世に進言するもリマ4世は政治に無関心な上に、 リゲルの食糧援助も拒否したため、それがますます事態を悪化させていった。

ソフィアの心にもない仕打ちに、リゲルの王ルドルフは激怒し、ドーマからのミラを封印する命令をあえて受諾、同時にソフィア侵攻のための軍備増強を推し進めた。 そして、ソフィアに対し宣戦布告した後、まずミラ神殿を急襲しミラを封印、これにより長く続いていた2国間の安定は崩れ去り、リゲル軍はソフィアに対し進撃を開始した。

強大なリゲル軍により、ソフィア軍は連戦連敗を重ね、豊かだったソフィアの国土は、戦乱により荒れ果ててしまった。 国土の惨状を目の当たりにしたソフィアの人々は、己の過ちに後悔したが時既に遅く、ソフィアは宰相ドゼーによって牛耳られていた。

ドゼーは手始めに、リマ4世に進言を繰り返すマイセンを謀略で追放させ、続いて王家の人間を次々と殺していった。 さらにリマ4世をも殺し、ソフィアの支配者となったドゼーは、リゲル軍と戦わずに降伏、バレンシア大陸がリゲル帝国になるのも時間の問題だった。

それから10年後、事態は2人の若者によって風雲急をつげる。 リゲル帝国の王子アルムとソフィア王国の王女セリカ、対立する2つの国の王族が共に戦うなど、ドゼーやルドルフ、邪神ドーマも知らなかった…。


FEシリーズの第2弾で、題名に『外伝』と銘打ってあるが、世界観は前作とつながっており、外伝と言うより続編に近いといえる(前作の戦いから間もない頃なため)。 それと、タイトルに『1991』と出るが、これは1991年に制作を開始したか、それとも1991年に完成する予定だったことの2つと思われる。

前作では、戦略SLGにキャラクターと経験値、それに生産不能等を取り入れ、シミュレーションRPGと言う新しいジャンルを構築した。 同時に、死んだら(よほどのことがない限り)2度と生き返らないという設定も取り入れ、豊かなキャラの列伝や顔グラフィックも合わさって、FEシリーズの礎を築いた。

今作では、初代の要素を引き継ぎつつ、同時に新たな要素をふんだんに取り入れた。 まず、フィールドマップが新たに加わり、そこに村や城といった場所が現れており、さながら一般のRPGを髣髴させるが、 自由に進めるわけではなく、進行ルートに敵が配置されており、接触すると初代の戦闘マップに切り替わる。 もちろん村や敵のいない城のマップでは、一般RPGのように普通に移動できる。

物語は5章だが、戦場マップは初代よりかなり多く、敵数が多いマップもあればかなり少ないマップまで色々ある。 戦闘エリアは、野外や場内はもちろんのこと、初めて洞窟や墓場、それに船内といった風変わりな場所まで用意されている。

風変わりなものは、場所の他にユニットも含まれているが、何とゾンビやスケルトンといった純然たるモンスターも登場している。 初代でも、ドラゴンが登場しているが、戦う前はあくまで人間の姿をしているので、事実上人間と同じである。 だが、戦う相手が人間に混じってモンスターも含まれることは、初代に慣れ親しんだプレイヤーにとってシュールでもあった。


人間のユニットでも、風変わりなクラスが用意されており、その中の1つ『村人』は5つのクラスのうち1つだけチェンジでき(1種類しかランダムになれないような選択肢があるが、 『いいえ』を選ぶことで望み通りのクラスにチェンジできる)、そのうち傭兵は魔戦士までチェンジした後また村人に戻るが、これを繰り返すごとに能力が最大までアップできる。

クラスチェンジできる条件は、一定のレベルに達したことと洞窟の奥にあるミラの僕と名乗る像に話しかけることで、レベルは1になるが上昇した能力は据え置かれる。 つまり、ドラクエシリーズにおける『無職』と似通っているが、『村人⇔魔戦士』といったループができないクラスは、 上級クラスになった以上再び下のクラスに戻れないことを考えれば、FFTの要素も含まれているといえる。

初代に引き続いて登場したクラスにも、微妙に違っているところがある。 Pナイトやパラディンといった、主に馬に乗るクラスは、屋内に入っても馬を下りることはなく、屋外と同様に扱える。

アーチャーといった弓を扱うタイプは、移動後に攻撃できることに加えて、隣接しても弓攻撃ができ、弓矢の射程範囲が3になり、 武器によっては5まで伸びるため、初代をプレイした人にとって大きな要素の1つとなった。


武器にしても、一般のRPGのように回数制限がなくなり、同時に金の概念もなくなり、いわば敵から手に入れることになった。 新たに、盾や指輪といった防具も加わり、武具の中には低確率でレアなアイテムも入手することが可能になった。

また、ミラの僕の像がある部屋の両端に顔をかたどった彫刻があるが、これは能力を上げる泉で3回までしか飲めないという制限はあるものの、ユニット強化に一役買った。 中盤には、死者を蘇生できる泉もあり、終盤までそれも手段が厳しかった初代と比べれば、はるかにあっさりと生き返ることができる。 その一方で、初代の僧侶にあたるシスターが蘇生の魔法がないのはご愛嬌か。

そのシスターや魔道士の使う魔法は、初代と違ってHPを消費することで、調子に乗ってバカバカ使かってしまうと、 あっさりと死んでしまうので、初代と比べて使用頻度が小さくなった。

回復手段が、魔法のみになってしまったので、前線に出すことをためらうプレイヤーもいただろう。 それでも種類は豊富で、中には敵にしか使えない魔法もあり、魔道書がなくともなかなかにバラエティ豊かであるものの、 魔法が黒魔法と白魔法の2種利に別れており、クラスチェンジもあわせてややFF調に傾いている感がある。


続いてキャラクターだが、初代のアカネイア大陸よりも小さいためか、登場する国は3つしかないが、そこに出る人物の数はかなり多い。 FEシリーズ初めて、女性を主役にしているが、もちろん男性も主役になっており、何と2人の主人公が存在している。

といっても、終盤になるといつものように男性の主人公が主役となるものの、それでもまだシミュレーションRPGがあまり浸透していない時期において、 2人の主人公が登場し、なおかつ同時に軍を操作できることは非常に珍しかった。

ただし、それは最終ステージのみで、2つの軍が同時に動かせるといっても完全に別行動なので、2つの軍が1つに統合するわけではない。 なお、片方が優秀な武具をもてる一方で、そうではない軍も出てくるが、2つの軍を動かす時期と同じく登場する商人は、 1つのアイテムを介することでもう片方の軍に手渡せることができる。

主役となる国も、ソフィアとリゲルの2つしかないが、主人公のアルムはリゲル出身でセリカはソフィア出身という、いわば敵味方という間柄で、 最初は考え方の違いで一時期訣別に近い形にはなるが、平和を取り戻すという考えは同じで、最終的にはやはり恋仲になる点は、王道ながらも実に感動するストーリーといえる。 その他のキャラも、キャラの間によって色々な関係があるが、両国とも正義と悪になりきれないことも、物語に深みを増している。

その中で、アルムの父で皇帝のルドルフは、ソフィアに攻め込みミラを封印するなど悪行を色々やっているが、それはバレンシア大陸を平和にするためのやむをえない措置で、 ルドルフ自身己を犠牲にする覚悟はあり、敵ながらもアルムとの戦いの後の死は悲劇に値するものである。

一方の、ソフィアの宰相ドゼーは、プレイヤーから見れば味方の国なのに、己の野心のために民を苦しめ王家を滅ぼす極悪人として描かれ、 第1章の最後で倒したドゼーは実は影武者で、本物は王家の秘宝を奪って逃走するなど救いようのないもので、第3章で倒されるあたりは因果応報を裏付けるものといえよう。


仲間になるキャラにしても、初代に登場したキャラの数人が今作に登場を果たしており、初代のリメイク版である『紋章の謎』の重要な足がかりとなった。 初代で、敵の引き抜きに重要な役割を果たした『説得』がなくなり、村や城などで仲間になるキャラに話しかけるだけで仲間になるが、第3章に登場するディーンとソニアは、 どちらかしか仲間にできないので、プレイヤーにとって最大の悩みどころとなった。

もちろん、話しかけなくてもゲームクリアはできるので(ディーンとシニア共々倒すことはできるが、意味はない)、 あえて逆境に挑みたいプレイヤーにとって自由なパーティ作成になった。

ところで、キャラクターの顔グラフィックだが、初代と同じ3Mとはいえ、専用グラフィックがかなり多くなっている。 もちろん、色違いのキャラや顔が一緒、または左右反転のキャラもいるが、初代と違って味方陣営にはそれはほとんどなく、 ソニアについてもそれにあてはまるとはいえ3姉妹ということなので、これは仕方のないことだろう。

質も大幅に上がっているが、これはデザイナーの腕が上がったことを意味しているのだろうか。 初代は、セル画調だった元絵、それを基にしたドット絵共に下手で話題になったが、今作はイラスト調に変化し元に描かれたドット絵も可愛らしく描かれている。 ただ、初代から登場したキャラ全てを新規に描きなおさなかったのは残念だが。


それ以上に、このゲームにおける有名な要素は、難易度が低いということだ。 初代は、経験値や金を稼ぐ以上に、生き残ること自体が命がけだったが、今作ではそういったことはあまり感じられない。

中盤で簡単に生き返ることもそうだが、何よりも経験値を稼ぎやすいことが大きく、経験値を得られにくかったシスター(僧侶)も、 黒魔法を習得しているので、初代より格段に成長しやすくなった(リザイアという相手のHPを吸収する黒魔法は、HPを消費せずに使うことができる)。

そして、イージーモードの存在(『さいしょから』を選んで、記録するファイルを選ぶときにスタートとセレクトを押しながらAを押すと出る)が、 楽になった経験値稼ぎがより一層楽になった(取得経験値が倍になるので)。


それと、軍同士によるアイテム交換が、商人を介さなくてもできるようになり、自由に戦力のバランスが取れるようになった。 しかも、イージーモードを選んでもストーリーに変化は全くないので、気兼ねなく心行くまでキャラを育てることができる。

これこそが、初代からプレイした人特にエムブレマーには不評で、ゲームバランスを崩しかねないという批判を出した。 蘇生が簡単になっていることにも、キャラの命の重みが感じられないといった批判があった。

そもそも、初代になかった『たいきゃく』というコマンドも登場し、不利になれば退却して体勢を立て直すことが可能になった。 さらに、退却前に倒した敵は2度と出てこなくなり、この作品から登場した勝手に行動して自滅するNPCも消えるので (消えてもいつもどおりに村や城などに現れる仲間になれる)、ますます難易度の低さに拍車をかけている。


それでも、初代でかなり弱かった盗賊が、今作で戦士の能力を得ており、モンスターも序盤から歯ごたえのあるものが登場する。 無限に能力アップできるキャラは限られている上に、それを実行すれば恐ろしいまでに時間がかかり、イージーモードでもそれなりの時間がかかる。 そのイージーモードでも、敵の強さは変わっておらず、初代同様詰め将棋のように事前に予測する必要があるなど、イージーモード抜きで考えれば、今作もなかなかに難しい。

何よりも、初代以上のやりこみ要素が生まれた。先に挙げた、『村人⇔魔戦士』のループによる成長がそれで、洞窟内の敵も洞窟を出てもう一度入ればまた出てくるので、 全てのキャラを限界まで育てることができることにより、新たに『育成』というやりこみが誕生した。

だが、知名度的にはシリーズの中でかなり低く、関連商品もあまり発売されていない。 そもそも発売時期自体、1992年の4月とFC末期であり、既にSFCやPCエンジン、MDに主役の座を奪われており、衰えは激しくなっていた。

とはいえ、FC末期だからこそゲーム内容が素晴らしいものが登場することもまた事実。 前作に劣らぬファンを獲得し、イージーモードも相まってシミュレーションRPGが苦手だったファンをひきつけることができた。 ただ、リメイク版がいまだ発売されていないので、マイナーと言う点ではこれからもリメイク版が出ない限り、その地位は動くことはないだろう。


最初に言うのもなんだが、個人的に初代よりもこちらのほうが好きだ。 やはり、イージーモードの存在が大きく、ゲームのほうでついつい楽な方向に走ってしまう私にとって、とてもありがたいものだった。

それと、村人から傭兵とクラスチェンジを繰り返し、また村人に戻ってというやり方は、まさに中毒に値するものにふさわしい。 おかげで、早く終わるはずだったエムブレム外伝のレビュー完成が、大幅に遅れてしまった。

エムブレマーの中には、簡単なFEに否定的に考えている人もいるが、これについては私も同じ考えだと思う。 『魂斗羅』シリーズ然り『ロックマン』シリーズ然り、難しいゲームでパターンが読みやすいほど、熱狂的なファンがいることは歴史が証明している。 だが、任天堂が出すゲームは、主に万人向けに制作されたゲームが多いので、エムブレム外伝は任天堂の方針に沿っているといえる。

もう1つ、初代が好きな要素としては、説得をするためにあえて危険な行動を出す必要はないということだ。 後に仲間になるNPCキャラも、退却で消すことができるし、ほとんどが村や城などで話すだけで仲間になるという、 非常に簡単な軍の増強に惚れ惚れしたと同時にほっとしたりもした。

もちろん、条件によっては仲間にならないキャラもいるが、これは説得の手間の代わりだと思うのでいたし方がないと思う。 私は、必ずソニアを選んでいるが、やはりこのシリーズに多くの女性が戦ってくれることは、華があって新鮮味があるかもしれない。


ちなみに私は、ノーマルではなくイージーでクリアしている。村人クラスを、一気に最強までのし上がらせるには、ノーマルでは役不足だからだ。 それでも、かなりの時間がかかったがために、レビューを完成するのに時間がかかった。

ところで、イージーモードを選んでも、アルム軍とセリカ軍の直接での武具の交換はしなかったし、商人を介しての交換もしなかった。 理由は簡単、戦利品自体少なかったし、敵から入手可能なアイテムも落とす確率が低かったため、全ての戦利品を装備してもまだ装備していないキャラが結構いたためだ。 これは個人的に、もう少し確率を上げてもらいたかったと同時に、不要なアイテムを捨てるといった要素も追加してほしかったと思う。

長時間プレイしたためなのか、やたら文章も長く貼り付けた画像も、初代をレビューした時と同様多くなったが、それだけ私はFEシリーズに大いにはまっているということだろうか。 FC版をレビューした以上、SFCに登場したFEシリーズすべてをプレイしつつ、 レビューも書き上げたいと考えている(さすがに『アカネイア戦記』は、サテラビューでしかプレイできないので無理だが)。



本日のまとめ



ぜんいん とつげきせよ!

(07/5/20レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年5月12日
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