◆ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣◆
シミュレーションRPGの代表作



発売日:1990年4月20日   発売元:任天堂   ジャンル:シミュレーションRPG
値段:6000円   おすすめ度:3.5(手ごわいシミュレーション)


私達が住んでいる世界とは、違う次元にある世界、その世界にいくつもある大陸の1つアカネイア大陸がある。 アカネイア暦元年、アドラ一世が大陸にある諸国を統一したアカネイア王国は、統一から数百年後に7つの国に分裂、アカネイアを始めとして、アリティア、オレルアン、グルニア、マケドニア、グラ、タリスとなった。

その後まもなく、同大陸でドルーア帝国が侵略を開始、手始めにアカネイア王国を滅亡させる。 ドルーアは、地竜族の王メディウスが興した国で、メディウスは同じ地竜族の多くが人間に牙をむいたとき、 ただ1人だけ人間に味方をし神竜王ナーガの元、地竜達に虐げられてた人間達と共に、封印の盾すなわち『ファイアーエムブレム』を用いながら、 地竜族を地底奥深くに封印し、地竜族を封印してある祭壇を長く守っていたのである。
BR> ところが、竜族の衰退と同時に、竜族の多くがマムクートになって人間の姿になりながら、種の滅亡を回避するためにひっそりと暮らすようになったが、 このようなマムクートの弱体化につけこんだ人間達は、かつてマムクートに助けられた恩を忘れ軽蔑するようになった。
BR> これに激怒したメディウスは、散り散りになっていたマムクートたちを集結させドルーア帝国を勃興、 アカネイアを滅亡させ多くの人間達を奴隷のように酷使し、最終的に人間を滅亡する野望をもくろんだ。

しかし、神剣ファルシオンを持つアリティア国王アンリによってメディウスは倒され、アカネイア大陸に平和が戻った。これが、解放戦争である。 それからアンリは、メディウスを倒した英雄としてアリティアをより一層発展させ、 メディウスに滅ぼされたアカネイア王国も再興し、再びアカネイア大陸に永遠の平和が続くかに見えた。

だが百年の後、アンリに倒されたメディウスが蘇り再びドルーアを再興するや、マケドニア・グルニア両王国を併合、 魔道都市カダインの最高司祭ガーネフと手を組み、またしてもアカネイア王国を滅ぼし王女ニーナ以外の王族を皆殺しにする。

そのさなか、アカネイアの救援に向かっていたアリティア王コーネリアスは、友好関係にあったはずのグラ王国に背後から急襲されコーネリアスは戦死し、 妻リーザもマムクートのリーザスに殺された。息子マルスは、辺境の王国タリスに亡命するも、その途中ガーネフに姉のエリスがさらわれてしまう。

この事変から2年後、その間マルスの下に、アリティアに仕えていた戦士達が続々とタリスに入場。 まもなく、タリスを我が物にしようとするガルダの海賊達は、ガザックをリーダーとしタリス城を襲うが、マルス達により壊滅させられる。 海賊達を撃退したマルス達は、これを機にドルーア帝国の壊滅と祖国アリティアの復興、未だガーネフに囚われの身となっている姉を救い出すべく、再び立ち上がるのだった。


シミュレーションRPGを代表する1つであり、いまだ続いているファイアーエムブレム(以下FE)シリーズの第1作目。

タイトルが『ファイアーエンブレム』と呼ばれているのは、ゲームに出てくる封印の盾の名称のことで、 決して炎の紋章を意味する(?)『ファイヤーエムブレム』や『ファイアーエンブレム』、『ファイヤーエンブレム』ではない。

FE登場から2年前に、任天堂初の戦略SLG『ファミコンウォーズ』を発売し好評を得ている。 ファミコンウォーズは、大戦略をFCにアレンジし、なおかつ大戦略にあった運の要素(乱数表示)を廃止、 ジャンケンにあるような兵器の相性や対抗兵器をぶつけ合うなどといった戦略などを重視し、戦闘の結果をあらかじめ予測できるといった詰め将棋のような感覚を与えた。

FEは、ファミコンウォーズをベースに様々な要素を取り入れた。物語の舞台もそうだが、まず世界観ゆえに、現代兵器全てをファンタジーに合った兵器に変更されている。
例えば、高射砲はハンターに、戦闘機BはP(ペガサス)ナイトといった形にに変わっている。当然、ハンターはPナイトに強いといった、兵器同士の相性も踏襲されている。

また、攻撃できる範囲を一定し、攻撃不能が出るのは遠距離攻撃のみとなった。 例え、相手が空にいようが海にいようが、相手と隣接すれば問答無用で攻撃できるのだ(これは敵も同じこと)。

しかも、マップは屋外のみならず場内といった、いわゆる屋内でも戦闘があり、遠距離攻撃ができるハンターや魔道士を、どのように使うのかがポイントとなり、 馬に乗れるユニットは屋内で馬から下りることで別のユニットとなり弱体化するので、これもまたどういう形で動かすかやその戦闘のみ参加させないなどといった戦略も大きなポイントとなった。


同時に、大戦略にあった経験値によるレベルアップを採用、さらにあるアイテムを使うことで(道具屋ではなく、あるマップの隠しショップで売っている)、 PナイトからD(ドラゴン)ナイトへとランクアップといった、ファンタジー要素とあわせて戦略SLGに新たな風を巻き起こした。

実は、ファミコンウォーズにAクラスとBクラスの兵器があるが、Pナイトを戦闘機Bとするならば、Dナイトは戦闘機Aとあるように、 ユニットのクラスまでもFEにアレンジされている。これこそが、FEシリーズの大きな要素の1つになった。

どういうことかと言うと、大戦略は兵器を生産し敵にぶつけるのが基本だが、FEではユニットが人間なため生産はできない。 同時に、戦略SLGの基本の1つだった多数対多数から1対1へ変化させ、数に入れ替わってHPが採用された。

つまり、HPが0になればそのユニットは死ぬのだが、このゲームに魔法が導入されていても、人を生き返らせる魔法は存在しない。 早い話が、死んだ人間は生き返らないという、過酷な設定を取り入れているのだ。

これにより、プレイ中のシナリオで死んでしまうと、次のシナリオ以降は2度と使用することが不可能となる。 もちろん、終盤で死んだ仲間を生き返らせる手段はあるのだが、あくまで終盤でそれも手段が限られているので、例えその手段を入手しても死の概念は変わることはなかった。 そもそも、使用できるユニット自体あまり使えないのだが、これについては後述するとして、死なない程度のプレイを余儀なくされた。


戦闘が1対1になった以上、登場するユニットにキャラクターの要素を取り入れ、物語に感情移入することができた。 それを、最もよく表しているのが、敵ユニットへの説得である。

特定のキャラが、特定の敵に隣接すると『はなす』というコマンドが現れ、これを選ぶことですぐ仲間になってくれる。 もっとも、説得以外もしくは別の方法を絡んでの説得で仲間になってくれるキャラもいるが。

これも、FEにおいてなくてはならぬ要素となった。実は、このシリーズで敵の説得に重要な役割を果たすキャラは、主人公のマルスと恋仲のシーダであり、 マルスが死ぬとゲームオーバーになるのに対し、シーダは別に死んでもゲームオーバーにはならず、そのまま物語が進んでいく。

つまり、シーダが説得して仲間になるキャラを殺さなければならず、説得して仲間になるキャラのほとんどは、 第一線で戦ってくれる者達で、シーダが死んだら泣く泣くリセットを押さざるを得なくなる。

これをよく表しているのが、第2章でシーダの説得で仲間になるカシムを、できるだけ早く説得しようとして、 待ち構えていたハンター達の弓矢を食らって死亡し、カシムはもちろん次の章で仲間になるはずのナバールを殺さざるを得なくなり、初心者に最も引っかかりやすいものの1つとなった。 説得から仲間になるまでの過程も、重要な見せ場の1つであり、生産して増やす戦略SLGと違って説得で増やすので、キャラの雰囲気も合わせて説得したキャラに期待を寄せた。

ただし、説得などで味方を増やしても、武器がなければ話しにならない。 このゲームでは、武器は回数制となっており、0なったら最後壊れて使い物にならなくなる。 これを防ぐために、マップにある武器屋で武器を購入(魔道書や杖なら魔法屋)し、不要な武器を同じマップにある預かり所で預かってもらう。


武器の種類も色々あるが、ゲームを通じて使える武器といえば、手槍と手斧といった遠距離攻撃を可能にする武器だろう。 この手の武器は、近距離しか攻撃できないユニットにとって非常に重宝され、威力が弱くても必ずこれを所持していたプレイヤーもいたほどである。

他に、ナイトキラーやアーマーキラーといった、ユニットの弱点を突く武器も、プレイヤーの間で話題になった。 なお、武器やアイテムなどを購入するには、主にマップにある村で金をもらう必要があり(もらえないこともある)、敵を倒しても金はもらえないため、資金をやりくりする必要がある。 もちろん、敵を倒して手に入ることもあるが、基本的には購入することになっている。

武器も変り種のものが多ければ、もちろんユニットも変り種のものも多い。 ファミコンウォーズのユニットが、FEの世界にふさわしいユニットに変わったといっても、新たに加わったユニットも多いのは事実。 その中でも、竜人族のマムクートは竜に変身することで、恐るべき能力を得ることができるが、 そのためには竜石が必要で、それがなければただの人であり、竜自体魔道士の魔法に滅法弱い。

強力な武器やユニットをそろえても、キャラの能力が低ければ何にもならない。 また、ファミコンウォーズにはなかった運の要素を取り入れているが、それは命中率とこのゲームにおけるクリティカルヒットである必殺の一撃、 1度に2回攻撃できる再攻撃の3つのことで、こちらが強くなっても命中次第でこちらの攻撃が外れることがあるし、 命中率が低くてもいきなり必殺の一撃が出ることもあれば、またもう1度攻撃できることもある。

運の要素といっても、それはキャラの能力によって左右されるもので、キャラの能力が高ければおのずと命中率が高くなるし、必殺の一撃が出る確率も高くなる。 やはり、このゲームでの運の要素もまた、ユニットの高性能化により確実化されている。


キャラクターの特徴や設定も、このゲームの人気に拍車をかけ、シーダのけなげな性格や可愛らしさが、特にプレイヤーに人気があった。 説得における、敵の引き抜きもあわせて、シーダがこのゲームになくてはならぬキャラクターであることは想像に難くない。

これ以外にも、主人公のマルスを始めとして、Pナイト3姉妹(パオラ、エスト、カチュア)の人気もなかなか高かった。 なんといっても、3姉妹のうちの2人が相手に隣接し、最後の1人が攻撃して繰り出す『トライアングルアタック』は、威力・性能共に抜群な上に、 繰り出せば必ず命中できる一方で、当然3姉妹全員出さなければならないため、強力なユニット群と3姉妹を天秤にかける光景が見られた。

ただ、容量が3Mであるため、説得やストーリーに深く関わるキャラ以外の顔グラフィックは、髪の色を変えたり左右反転して、あたかも別人にしている。 それでも、名前は違えど顔グラフィックが全く同じのキャラも少なくなく、第2章で仲間になるザジとマジは、それを具象化したものといえる。 名前もほぼ同じな上に、顔グラフィックも全く同じなので、2人の双子説がまことしやかに囁かれたこともあった。


難易度も、ファミコンウォーズをお手本にしたとはいえ、お世辞にもファミコンウォーズのように低いとは言えず、むしろ高いことで有名だった。 CMに、「手ごわいシミュレーション」と歌っている通り、FEシリーズの中でトップクラスの難易度を誇っている。

まだ序盤なのに、敵ユニットが妙に強いことに加えて、こちらの戦力はまだ不足の状態で、苦戦は免れない。 また、経験値や資金が思うように稼げず、特に資金は慢性的に不足することが多いので、大抵のプレイヤーは闘技場で稼ぐしかないのだが、 対戦相手がこちらより強かったり不利なユニットで登場することもあるばかりか、ここでも死んだら2度と生き返ることができない。


このため、闘技場で痛い目を見るプレイヤーが続出し、闘技場には手を出さず村人や城の主から手に入れた資金を主に、家計簿さながらのやりくりを強いられた。 ユニットにしても、僧侶が最も成長しづらく、敵の攻撃を受けて経験値を得るので、経験値を得ようとして敵に袋叩きにあったり、一撃でやられることもあったため、 補助魔法の杖を持っていても結局足手まといになることを考え、戦力外と考えるプレイヤーもいた(つまり出撃させない)。

しかし、難易度が高いほど熱狂的なファンが出ることは、ゲームの歴史の中で既に証明されており、そんな彼らを『エムブレマー』と呼ばれるようになった。 エムブレマーは、様々な角度からのプレイを旨とし、仲間のレベルを最高の20まで上げたり、できるだけ短いターンでクリアしたりなど、 当時の一般プレイヤーからしてみればあまりにも常識はずれなやり方で楽しんでいた。

キャラ人気と熱狂的プレイヤーの過熱は、攻略本や小説、果ては成人ものも含めた同人誌を多く生み出し、 2年後には続編が、さらに2年後にはリメイク版がSFCで発売された。 なお、ファンタジー風のコスプレをした歌劇団が、オペラ調に合唱するCMは、ファミコンウォーズ同様話題となったことを付け加えておく。


意外にも、発売からまもなくにプレイしたことがあるのだが、それが友達の家なのかいとこの家なのか忘れてしまった。 当然、ソフトを貸してもらった相手も、一体誰だったのか完全に忘れてしまった。 また、小学館の学年雑誌を定期購読していたが、学年雑誌なのにFEの序盤の攻略を掲載していた。

既に、小学館と任天堂の提携はあったが、『MOTHER』の世界観を深くしたMOTHER百科も小学館が発行していたことを考えると、2社の提携は意外と古いのかと思わず感心した。 学年雑誌の攻略記事のおかげで、序盤はどうにか進めることができたが、攻略記事が載ってない中盤以降は、やはりクリアできなかった。

それから現在、久々にこのゲームをプレイしたが、それより10年近く前にリメイク版をプレイしている。 そのリメイク版の記憶が、FC版より強かったことが災いし、序盤なのに苦戦の連続だった。 昔よりも、攻略情報がかなり多いとはいえ、それでも苦戦を免れることができず、1人も死なずにプレイすることをモットーとしている私にとって、まさに地獄の苦しみだった。


もちろん、クリアしてのレビューもモットーとしているので、全25章のクリアは達成したが、リメイク版で大活躍したはずの僧侶が、FC版では回復以外では本当にお荷物だった。 パラディンのジェイガンも、歳のせいか成長率が鈍くなっていて、成長率がいいS(ソルシア)ナイトのほうがよっぽど使える珍事もあった。 FC版で、嫌と言うほど難易度の高さを味わったため、もうリメイク版にシフトしたいところだが、外伝もレビューしなければならないので、しばらくはFC版もお世話になるかと思う。

それにしても、3Mという小さい容量とはいえ、リメイク版ではりりしかったナバールが、FC版では太ってるように見えて唖然とした。 オズマも、傭兵と言う職業を考慮しても、完全にならず者の容貌だし、僧侶のリフに至っては「こんなキャラいたっけか?」と、つい首をひねった(リメイク版では削除された)。 FC版とリメイク版のギャップを楽しむことも、一種のシリーズの楽しみ方と言うべきなのだろうか。

最後に、個人的にお気に入りのキャラはやはりシーダで、顔もよければ性格もいいという、お姫様的なキャラだった。 それと、第8章から登場する道具屋の女主人(ララベルという名前)も、色っぽくて好きだった。 FC版では、かなり色っぽい顔つきになっているが、リメイク版ではどういう風に変化しているのだろう。



本日のまとめ



やはり こんなたたかいは がまんできない
パオラ エスト カチュア かえりましょう

(07/5/17レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年5月12日
◆目次に戻る◆


inserted by FC2 system