◆熱血高校ドッジボール部◆
くにおシリーズ人気の原点



発売日:1988年7月26日   発売元:テクノスジャパン   ジャンル:SPG(ドッジボール)
値段:5800円   おすすめ度:4(さすが殺人ドッジ)


くにおくんシリーズを、一気に有名に仕立て上げた作品で、今もファンは多い。 2作目に当たるこのゲームは、等身を前作のリアルからSDに変更したことにより、コミカル度を大幅に増した。 今でこそ、『SD=ギャグ』という認識は薄れているが、昔はSDでのギャグ傾向が顕著に現れていた。

ただしSDとはいえ、ゲームの場合は基本的に手を抜かず、AC版が稼動した同じ頃の11月、 バンダイの『SDガンダムワールド ガチャポン戦士スクランブルウォーズ』において、SDキャラ総出演ながらもゲーム自体は、より奥の深い戦略SLGであった。

『熱血高校ドッジボール部』は、ジャンルがスポールながらも、実質的にはアクションに近い内容となっている。 ルールも、通常のドッジボールとは一味違うものになっており、外野が敵の内野にいる人間にボールをぶつけても味方の内野には戻らないし、逆もまた然りである。

内野陣に、体力が設定していることも大きなポイントで、0になればリタイアとなって昇天する。 もっとも、次のステージに進めば復活するとはいえ、スポーツなのに殺るか殺られるかの文字通りの真剣勝負になった。

つまり、このゲームを一言で表せば、『殺人ドッジボール』と言うべきなのだが、実はそれと同時期に殺人ドッジことが漫画で描かれていた。 『魁!!男塾』における民明書房での『怒馳暴流(ドッジボール』がそれで、ドッジボール部同様やってることはほぼ殺人ドッジである。

だが、怒馳暴流よりもぶっ飛んでいたことは、数歩進んで投げる必殺技やそれすら受け止めるキャッチなどもあり、 自分でも編み出せるテクニックも多く登場し、第1作の熱血硬派とは違った面白さで、従来のファンに加えて新たなファンを獲得するに至った。

しかし、内野の1人を倒せても、すぐに補充として別の誰かが登場し、それに輪をかけて全ての試合に制限時間が設けてあり、 こちらの人数が多くても残り時間が0になれば即ゲームオーバーになる。 さらに、相手チームそのものの強さも半端ではなく、総合的に熱血硬派同様かなり難易度が高くなっている。

しかも熱血硬派同様に、ACでメジャーになれるほどの人気を獲得できず、ここでもセガやナムコなどの人気ゲームに押されることになった。 これにより、ACでのくにおくんシリーズは一旦途切れることとなり、次第にシリーズのメインはFCに移っていくことになる。


それから翌年の7月、移植と言う形でFC版が発売されるが、ドッジボール部といえばAC版よりFC版のほうが有名である。 現に完成度についても、FC版のほうが上回っており、知名度もAC版より上であった。

当時のゲーム業界において、AC版のほうが移植版よりも有名だったが、AC版の出来と移植版のアレンジによっては、移植版のほうが有名になることもあった。 熱血硬派とドッジボール部が、まさにそのいい例である。

FC版におけるアレンジは、1つに難易度の低下が挙げられる。 3つの難易度(『やさしい』・『ふつう』・『むずかしい』)の他に、制限時間や相手チームの補充出場が廃止されたことが大きい。 同時に、ボールをずっと持っていると、いきなり相手チームにボールが渡ることもなくなったので、じっくりとドッジボールを楽しむことができるようになった。

もう1つ、FC版でのアレンジ要素は、熱血高校はもちろん相手チームや選手一人一人にも、特徴や個性が与えられた。 これにより、熱血高校はバランスが取れたチームと言う形になり、中でもくにおは必殺シュートが強力だった。

相手チームも、印象に残る選手が登場したが、中でもインドチームのむはまどは、体力は少ないが恐ろしいまでの防御力を誇り、決勝相手で最強のアメリカチームより大きな印象を残した。 ステージも、大きな特徴を残しており、そのうちのアイスランドステージでは地面が氷なので滑りやすく、アフリカステージは地面が砂なため動きにくくなっている。

必殺シュートも、AC版と比べてバリエーションが豊富になり、ジャンプして打てるバージョンも同様に豊富になった。 相手に当たっても、そのままボールが外野に突き刺さる貫通シュートや、ボールが小さいのに当たれば世界一周されるという圧縮シュートなどあり、 ほえほえシュートという名前だけではわからない変り種なシュートもあった。

もちろん、キャッチされればそれまでだし、シュートを放つ時には必ず一定の歩数で放たなければならないが、それでも強力なことには変わりはなかった。


それと、必殺シュート以外でのチーム共通の要素は、一定の体力以下に減ると、「はぁはぁ」と肩で息するようになる。 これを疲れといい、一定時間行動不能になるという危険なものだが、必殺シュートを放つときは既に回復しているので、シュートをやたら放っているプレイヤーにとっては無意味であっただろう。

とはいえ、無防備であることには変わりないので、手堅くダメージを与えるプレイヤーにとっては、 これ以上のないチャンスであったことは間違いないだろうし、逆に疲れ状態になってしまった場合は、主に相手がしくじるのを祈るしかなかったのだろうが。

モードも、FC版で加わった要素の1つであり、対抗試合とクラブ活動がそれにあたる。 前者は2人対戦の事を指し、遠征試合では使えなかった熱血高校以外のチームも使用することができる一方で、 2人対戦ということでCPUと戦うことができなかった(つまり対人戦以外は熱血高校以外のチームを操作できなかった)。

後者は、熱血高校のメンバー6人全員かつ、コートがなく学校のグラウンドで戦うというもので、既にドッジボールに加えたアクション性をさらに大きくしたものである。 ルールは、誰か1人やられればその場で脱落し、最終的に1人だけ残った者が勝ちという、文字通りのデスマッチである。 クラブ活動の画期的な点は、最大4人同時対戦ができるもので、誰かを集中攻撃したり、乱戦の合間にとっとと別の場所に隠れるなどといった作戦もできた。


何しろ、当時の4人同時対戦といえば、任天堂の『4人打ち麻雀』程度のもので、それも2つのコントローラーを交互に使っていたに過ぎなかった。 現在も、ネットゲーム以外での指を動かすゲームでの4人同時対戦は珍しい。

ドッジボール部発売前は、コナミの『燃えろツインビー』の3人同時プレイが注目を集めていたが、ドッジボール部はそれを上回っている。 ただ、4人同時プレイできる周辺機器があまり備わっていなかったため(主にジョイペアなど)、せいぜい3人同時プレイがやっとであったが、それでも十分に楽しめるものとなった。 しかも、対抗試合と違って1人でプレイできることも、クラブ活動の面白さに拍車をかけた。

これは、個人の特徴を出したFC版ならではのもので、くにお含めた選手全員がこれといった特徴がなかったAC版では不可能なことであった。 もっとも、クラブ活動ということで、熱血高校以外の選手のチーム同士や、各チームの代表でのデスマッチができないのは、対抗試合がプレイできないプレイヤーにとって大きな欠点だったが。

なお、難易度ごとに背景の風景が変わる(『やさしい』の場合は昼に、『ふつう』の場合は夕方に変わる)ことも、ちょっとした話題になったことを付け加えておく。


これだけ、多彩なシステムや要素、特徴などを盛り込んだ結果、テクニックもAC版より奥深く、それでいて派手なものやわかりやすいものが多くなった。 厄介な選手を集中攻撃して退場させたり、相手のシュートをよける(Aでしゃがむ)ことは基本中の基本である。

外野同士のパスで、相手内野陣をかく乱させてから、味方内野陣にパスして一気にシュートを放つことも常套手段だし、使える選手にボールを渡したり、フェイント攻撃も基礎戦略の1つである。

その中でも、基本かつ重要なテクニックは、Bで出せるキャッチ。タイミングが合えば、必殺シュートすらも簡単にキャッチできる。 もちろん、それ応のタイミングや慣れが必要だが、相手が満を持して放ったシュートをキャッチしたときの感動と、相手に与えるプレッシャーや恐怖は計り知れない。

事実、これに味をしめたプレイヤーが、積極的に相手のシュートをキャッチしに行く光景が見られたが、 キャッチのタイミングに慣れていないプレイヤーを待っているのは、大抵ダメージを食らうかもしくはリタイアであった。


当然、キャッチのタイミングを完全にマスターできれば、例え1人になっても大逆転のチャンスがあり、まだまだ相手側にプレッシャーを与えることも可能である。 現にそういったプレイヤーは、難易度を『むずかしい』にしてもクリアは可能だろうが、そんなプレイヤーでも歯ごたえさせるほどの強敵をFC版に追加した。

それは、謎の軍団ことプレイヤーの同キャラ(色が黒い)対戦で、アメリカと勝利に加えて1人たりともリタイアしていないことが条件となる。 それ故に、アメリカチームよりも強敵だが、その分勝利したときの喜びはひとしおである。

これだけ手軽に、それもみんなとわいわい楽しめるゲームと言うのは、当時では考えられなかったほどであり、いやおうなくAC版より知名度と人気が出たことはいうまでもないだろう。 幸いなことに、主に頭を使うゲーム(RPGやSLGなど)の勢いがやや鈍化した一方で、 指を動かすゲームの勢いがPCエンジンの発展やMDの登場により増してきたことも、このゲームの人気が上がった要因なのかもしれない。

この人気は、翌年発売される『ダウンタウン熱血物語』に継承され、FCのSDくにおくんシリーズは93年の『熱血!すとりーとバスケット』まで毎年リリースされ、 年によっては2本発売されることがあるが、長期シリーズを打ちたて、会社が倒産してもその人気が今も受け継がれていることを考えれば、 くにおくんシリーズの(人気の)原点はこのドッジボール部と見ていいだろう。


実は私は、ドッジボール部をプレイしたのはFC版が発売される前、つまりAC版が最初なのだが、 地元にゲーセンがないためどこでプレイしたのかと言うと、なんと地元のよろず屋(現在もあります)だったのだ。

当時、地元にゲーセンがなかったことと、まだFCに夢中になってたため、AC自体興味がなかったのだが、 偶然よろず屋の前を通った時ドッジボール部の画面を一瞬だがまじまじと見ていたので、なけなしの小遣いで挑戦してみた。

20年近く前のことなので、かなり忘れているところがあるのだが、確かインドステージまで進んで時間切れでのゲームオーバーになったと思う。 それから数ヵ月後に、FC版を友達の家でプレイしたことがあったが、 くにおくんシリーズといえば第3作目の熱血物語のイメージが強かったので(現在もそう)、その昔FC版をプレイした記憶はほとんどない。

本格的にプレイしたのは、大学時代での近くのゲームショップにおいて。 店頭でのプレイだったが、大学の授業が終わってアパートに戻る私にとって、なかなかいい息抜きであったし、操作すら知らない私でもすぐに勝利方法をマスターできた。

ただし、難易度は必ず『やさしい』でプレイしていたので、元来ゲームの腕が下手な私でも結構すんなりとクリアできた。 特に、くにおの貫通シュートが相手全員に命中したときの感動は、数年経った今も忘れていない。

それから現在、ゲームレビューのため初めてソフトを買った一方で、AC版をそのまま(?)移植しているゲーセン族版は、昔AC版をプレイしている記憶があったので買わなかった。 操作や戦略もいまだ覚えていたのだが、やはりプレイするときの難易度は必ず『やさしい』にしているのだが。

レビューする途中で、AC版やFC版のことに関する情報を集めたが、AC版の相手チームの特徴がほとんどないことに驚いた。 しかも、相手を倒すごとに必ず補充されてしまうので、結局時間切れでのゲームオーバーが多かったらしい。 そういえば、私がゲームオーバーになったのも、その時間切れが原因かもしれない。

逆にFC版は、AC版の欠点を取り除き、様々な要素を加えたおかげで、急がずあわてずゆっくりとドッジボールを楽しむことができた。 殺人ドッジに、ゆっくりとかじっくりという言葉は似合わないが、これ自体がゲームだからそういうことがいえるわけで、 現実のドッジボールではそうはいかないし、そもそもこのゲームそのものが本来のドッジルールに違反している。

とはいえ、十分に楽しめることは確かだし、まもなくやってくるドッジブームにいいタイミングで登場したことは、 様々なアレンジをあわせてやはりこのゲームは偉大だと、FC版発売から20年近くになった現在になって、ようやく気付くことができた。



本日のまとめ



祝 優勝!!

(07/5/11レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年5月11日
◆目次に戻る◆


inserted by FC2 system