◆熱血硬派くにおくん◆
くにおブランド第1弾



発売日:1987年4月17日   発売元:テクノスジャパン   ジャンル:ACT
値段:5500円   おすすめ度:3(操作に慣れるまでがつらい)


1980年代後半、高校を中心に校内暴力が吹き荒れていた頃、その中心は不良達で行われており、 彼らのスタイルは学生服を改造したものや、リーゼントやパンチパーマといった、一般人から見ればあまりにも奇抜なものだった。 現に、社会規則に意地を張って従わない彼らのことを『ツッパリ』と呼び、遠ざけて忌み嫌っていたが、ツッパリの中には腐りきった現代の規則に反抗する者も含まれていた。

その不良の名はくにお。白い学ランにリーゼントという、彼もまた不良と同じセンスを持っていたが、他の不良達と違うのは不良とは思えぬ義理人情を背負っていたことだ。 喧嘩っ早い性格だが、弱き者を助け強きものをくじく男で、困っている人を見れば放っておけない、まさに不良らしからぬ男である。

そんな彼の友人は、くにおと同じ高校で喧嘩に弱いヒロシで、クラスメートはもちろん他校の生徒や時にはやくざといった悪党からいつもいじめられており、その度にくにおに助けられていた。 ヒロシは、いつも自分を助けてくれるくにおに憧れ、優等生だが力が弱い人間と頭は悪いが力が強い人間と言う、全く正反対ながらも2人の友情はゆるぎないものだった。

だが、いつも仲のいい2人に対し、またしてもヒロシが狙われる事件が起こった。それも、誘拐という形である。 しかも、普段は中の悪い他校同士が、なぜか徒党を組んでいるという事実が浮き彫りになった。 その不良達を束ねているのが、花園高校出身の鮫島力(以下りき)で、この他にも暴走族を束ねている『しんじ』や、 スケバンを束ねている『みすず』など、普段は反目しあっている不良グループが、何者かによって団結していたのだ。

その張本人は、暴力団三和会の若頭である『さぶ』で、いずれ組長の座を狙うがために、周辺をたむろっている不良達を利用したのだ。 このことを知ったくにおは、つかまったヒロシを助けるため、りき達に率いられた不良達を懲らしめるために戦うのだった。


いまはなきゲーム会社、テクノスジャパンが制作したくにおくんシリーズで、現在のシリーズの版権は元開発スタッフが設立した会社に引き継がれている。 元々は、1984年に登場したコナミの『新入社員とおるくん』が基本となっているが、それはタイトルだけのことで、ゲーム内容は大幅に違っていた。 目的については、とおるくんは、会社をサボって恋人とデートしに行くというものに対し、くにおくんはさらわれた親友を助けるために不良達に戦いを挑むものとなっている。

同じアクションとはいえ、くにおくんは様々なアクションを使用していた。 パンチやキックはもちろん、背負い投げや膝蹴り、三角飛びや飛び蹴り、果ては倒れた相手に馬乗りしながらのタコ殴りなど何でもござれ。 例え、敵に羽交い絞めをされても、逆に投げ返すことも可能となっている。

ステージも、奥行きがありうたれ強いザコがわらわらと登場し、時間内に全滅すると次のエリアに進むことができる。 つまりこのゲームは、カプコンの『ファイナルファイト』そのままという感じがあるが、くにおくんの登場はファイナルファイトより3年半早く、 くにおくんは後に次々と登場してくる1対多数のストリートファイトゲームの基礎を作ったといえるのかもしれない。

ただし、決定的に違う要素がいくつかあるので、くにおくん自体ストリートファイトの元祖というわけではない。まず1つは、操作方法がかなり違うこと。 普通は、攻撃ボタンとジャンプボタンの2つがあるのに対して、こちらはジャンプボタンに加えてパンチボタンとキックボタンの3つを使用する。

パンチボタンは目の前に、キックボタンは後ろの敵に使用するため、最初のうちは一般のアクションゲームに慣れ親しんでいたプレイヤーを混乱させたが、 慣れてくると結構使い勝手があると評判が高くなるようになった。後ろの敵を攻撃するときに、わざわざ振り向かずにできるからだ。


もう1つは、エリア内の敵を全滅すると『GO』の文字が出て、そのエリア内の先を進めることができるが、くにおくんはザコを全滅できればボスが登場するので、 ボスを倒せばすぐ次のステージに進むことが可能となっている(最終ステージ以外)。ファイナルファイト登場前は、ベルトアクションの定義や言葉がなかったためである。 ステージ内にある、落ちたらアウトというリングアウトの箇所も、プレイヤーに得も知れぬ緊張感を生み出し、このゲームの独特な要素の1つになった。

このゲームでは、ステージ数が4つという少なさのため、かなり短い時間でエンディングが見られるようになっているが、その一方で難易度は恐ろしいほどに高くなっている。 何しろ、ライフ制とはいえ残機0ではじめなければならず、ライフが0になったり時間切れになったら即ゲームオーバーになる(途中で残機が増えれば別)。

もちろん、次のエリアに進めばライフは最大になるのだが、エリア内にライフを回復できるアイテムはなく、 ザコがチェーンや木刀、鉄カバンを所持しているのに対して、こちらはパンチとキックと数種類の特殊技のみである。 敵も、それに輪をかけて中途半端に強く、その中でステージ3のボスのみすずは、襟をつかんでの往復びんたを武器にしており、 威力が高ければつかむ間合いも広いので、容貌もあわせてプレイヤー(くにお含む)にとって恐怖の的となった。


しかし、みすず以上にプレイヤーを恐怖に落としいれた敵がいた。 それはラスボスのさぶで、全ての敵が近距離攻撃なのに対して遠距離攻撃を主とし、それも高校生相手に拳銃を使う危険な存在である。

しかも、一発でも銃弾を食らえば、どんなに体力が残っていても即ゲームオーバーになる。 これらの手法は、インカム率が高いことが優先されているACで人気があったが、あまりに難易度が高すぎたことや、 ナムコやコナミといった他ゲーム会社のゲームが、くにおくんより人気があったことにより、ヘビーゲーマー以外にはあまり人気がなく、 くにおくんが再び注目を浴びるには、次回作の『熱血高校ドッジボール部』まで待たなければならない。

FC版が登場したのは、その翌年の4月頃。この年も、まだツッパリブームや校内暴力が世間を騒がせており、FC版登場はAC版同様タイムリーな形として登場した。 ただ、ハードがFCである以上、操作方法や要素をFC版なりに作っていかなければならなかった。

操作方法については、FCのコントローラーのボタンがABの2つしかないため(スタート・セレクトは除く)、ジャンプはAB同時押しとなった。 攻撃についてもAC版そのままではなく、向きで攻撃が変わるようになっている。

例えば、くにおが右向きの場合、AがパンチでBがキック、逆もまた然りである。 このため、AC版の操作に慣れたプレイヤーはもちろん、それ以外のプレイヤーをも混乱に陥れた一方で、やはりAC版同様慣れてくればむしろ使い勝手がよかった。

要素については、ステージ間のデモが容量の都合によりなくなった。 これにより、他校の生徒や暴走族が個々でヒロシを襲うというストーリーから、暴力団がそれらを取りまとめ、手始めにヒロシを連れ去るというものに変わっている。

また、最初から残り人数が増えているため(残機2人追加された)、一度やられたらゲームオーバーになることはなくなった。 それでも、AC版での難しさは変わっておらず、みすずの強さやさぶの拳銃の凶悪さは、FC版でも恐れられたほどである。


もう1つ、FC版における大きな要素は、ステージ2の中間にあるバイクシーンである。 AC版では、一貫してストリートファイトであったが、FC版では新たにバイクシーンを入れることで、AC版にはなかった新鮮さを取り入れた。

それはFCでも同じことで、バイクレースはあれど相手を蹴飛ばしたりすることはなかった。 同時に、1ステージに数箇所のエリアを新たに配置し、AC版をプレイした人にも新鮮さを与えた。

とはいえ、AC版よりはやさしくても他のアクションゲームと比べれば難しいことに加えて、FC版が発売されてまもなく、 データイーストの『闘人魔境伝 ヘラクレスの栄光』の発売を機に、『ドラゴンクエストU』発売後にくすぶっていたRPGブームを一気に加速させた。 結局、AC版同様にFC版も、翌年登場する熱血高校ドッジボール部まで、くにおくん人気はいったん落ち着くことになった。

ところで、くにおの名前の由来は、テクノスジャパン社長からによるもので、単純な理由からつけられた名前が、 後にアクションを代表するブランドの1つに進化するとは、当時の開発スタッフたちは考えても見なかっただろう。

また、ステージ1のボスりきは、次回作のドッチボールに登場し、以後シリーズのレギュラーになったことは、くにおに負けず劣らずの人気があったのかもしれない。 その一方で、プレイヤーに強烈なインパクトを与えたみすずは、それ以降全く登場していない。人気よりも、恐怖のほうが高かったものと思われる。


くにおくんシリーズをはじめてプレイしたのは、このゲームではなく第3作目の『ダウンタウン熱血物語』だった。 初代くにおくんを、初めてプレイしたのは、なんとFC版登場からちょうど20年目にあたる現在であった。 当時は、ツッパリブームに全く興味がなかったし、別のいとこからもらった色んなゲームにすっかり夢中になっていたからである。

レビューを書く際、AC版そのままに移植した『オレたちゲーセン族』版をプレイしたが、それより前にネットや雑誌などで第1作目のことを調べたとはいえ、中間デモには驚いた。 なんといっても、くにおの親友であるヒロシが、他校の生徒や暴走族などにいつもいじめられているものであったので、小さい頃いじめられっこだった私にとって、それは身につまる思いだった。

なお、ゲーセン族における移植に対する批判は、ネットを見渡すだけでもかなり多いが、当時AC版をプレイしていなかった私は、 AC版の比較などわかるわけがないので、問題点が多くともAC版そのままでプレイできることは、私にとってそれは大きな感激であった。

さてFC版をプレイした私は、あまりの操作の特殊さに思わず戸惑いを隠せず、何度もゲームオーバーになることがあった。 みすずはもちろん、さぶも相変わらず凶悪な強さを持っており、これって本当にクリアできるのかと疑問に思わずにはいられなかった。

特にさぶは、あともう少しで倒せるところを拳銃一発でやられたのだから、それに対するショックと怒りは大きかった。 それでも、何とか銃弾をかいくぐってさぶを倒し、見事親友のヒロシと再会できた喜びは、 一般のアクションゲームのエンディングを見たときよりも大きく、FC版とはいえそれでもかなり感動した。


個性的だった操作も、次第に慣れてくるようになり、1人のザコを攻撃しているときに、後ろから襲ってきたときはすかさず後ろ蹴りを放つなど、意外と使い勝手がいいと感じた。 また、2ステージ目の途中にあるバイクシーンは、他のストリートファイト系よりも楽しく、かつとても簡単だった。 何しろ、相手が登場してくれば、即座に近寄っていきなり蹴飛ばせばいいだけで、途中のスピードアップもなかなかに表現していた。

しかし、その他のくにおくんシリーズのアクションと比べれば、非常に個性的であることは否めなく、すっかりみすずとさぶのトラウマを染み込まれた私は、しばらくはプレイすることはないだろうと思った。 ただ、個性的なアクションがなければ、第1作目のファンも現れなかったわけで、それを考えると言い知れぬジレンマが頭の中を駆け巡ってくる。 やはりFCに、くにおくんシリーズを広げたドッジボール部と熱血物語は、個人的に名作だと考えてしまう。



本日のまとめ



おめえら なめてんじゃねえぞ

(07/5/8レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年5月10日
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