◆魔神英雄伝ワタル外伝◆
ドアクダー最終決戦前の物語



発売日:1990年3月23日   発売元:ハドソン   ジャンル:アクションRPG
値段:6800円   おすすめ度:4(ハドソンらしい手軽に遊べる難易度)


私達が住んでいる世界とは異なる世界(現生界と呼ぶ)、神部界に数多の神がすむと言われるほど、平和な創界山がある。 そこに、突如現れた悪の帝王ドアクダーが、創界山の神々を封印し、事実上の創界山の支配者となった。 同時に、創界山を支配を任された神々の部下達を、ドアクダーの魔法力で変身させた上に彼の部下にして、各々の界層の支配を担わせたのだ。

その頃、別の世界において小学4年生の戦部ワタルは、龍神池と呼ばれる池から、金龍と名乗る守護龍に創界山を救ってほしいという頼みを出し、ワタルもこれを承諾。 金龍は、龍神池で拾った勾玉により、ワタルが図工の時間で作ったロボット型の粘土細工が本物の魔神(ロボット)に変わり、その魔神に宿って『龍神丸』と名乗り、ワタルと共に創界山に渡った。 創界山において、ワタルは龍神丸を始めとして、忍部ヒミコ、剣部シバラク、渡部クラマを仲間にし、打倒ドアクダーに向けて旅立った。

それから、第一界層から第六界層までドアクダーの支配していた界層に平和をもたらし、残るは最後の第七界層となった。 途中、様々なトラブルはあったが、それを全員の力とチームワークで乗り切り、もはやワタル達の前に敵はないかに思えた。

しかし、魔幻空間を突破し第七界層に向かう道中で、ドアクダーの罠により第六、七界層の間にある別の界層(魔幻空間ではない)に飛ばされた上に、ワタル達全員離れ離れになる。 さらにそのワタルは、ドアクダーの追っ手に捕まり、魔法によって小さな瓶に閉じ込められてしまった。

ひょんなことから、その一部始終を見たこの界層出身の少年は、龍神丸からこの界層の平和とワタルの救出を頼まれ引き受けることになる。 ワタルを救出するまでの間、一時的に龍神丸のパートナーになった少年は、途中この界層で離れ離れになったワタルの仲間達と会い、 彼らの魔神を借りながらこの界層の平和を、そしていずこと知れぬワタルを探す旅を続けるのだった。


1988年、キャラデザイナーの芦田豊雄氏がアニメ雑誌に描いたキャラを、アニメにしたいと述べたことが始まり。 これを、大手ロボットアニメ会社のサンライズの目に留まり、広井王子氏のレッドカンパニー企画協力の下、『魔神英雄伝ワタル』として制作された。

当時ブームになっていたRPGを題材に、これもブームになっているSDガンダムをヒントにしたSDロボット、その等身に似合わず派手なアクションを繰り広げ、 ストーリーもギャグはもちろんシリアスやミステリアスなどバラエティ豊かにちりばめられ、ロボットアニメとして優れた質を誇った。

さらに、魔神プラモこと『プラクション』も、ガンプラ同様ブームになり、ワタルの名台詞「今度も、おもしろカッコイイぜ!!」は、 まさにアニメ・プラモとも大ヒットを裏付けているものとなった。

同時に、このアニメの掲載権を獲得していた小学館は、『コロコロコミック』と『てれびくん』の両児童雑誌に大体的に特集を展開。 ブームの担い手の1つになったと同時に、両雑誌とも黄金期を支えることができた。


ワタル放映から2年後の1990年3月23日、第1作を基にしたゲームがFCで発売され、それより前の第1作放映時には、PCエンジンで発売されている。 FC版登場時は、ワタルの続編が放映間もなかったが、前作放映終了から続編放映開始までの人気は劣ることはなく、 ワタルの後番組として放映された『魔動王グランゾード』の時期には、第1作と続編の合間の物語がOVAとして前後編という形で発売された。

この状況でのFC版のストーリーだが、後日談がOVAとして登場している以上、アニメ本編からオリジナルの物語を作らなければならない。 主役にしても、ワタルではなくゲームの舞台となる界層出身の少年となっている。 ここで少年が、なぜ龍神丸に乗れるのかだが、これは龍神丸がワタルと同じ何かを秘めているということを感じ取ったのかもしれない。

ジャンルはアクションRPGとなっているが、『ゼルダの伝説』や『聖剣伝説』のようなものではなく、どちらかといえば『スーパーチャイニーズ』シリーズ(2・3のこと)に近いものとなっている。 つまり、フィールドを移動して敵と戦闘になると、アクション画面に切り替わる。

ただし、スーパーチャイニーズがボス戦でコマンド選択に切り替わるのに対して、ワタル外伝は通常のボスはもちろん、ラスボスも戦闘がアクションになっている。 その画面も1画面で、奥行きがないものになっていて、敵の行動パターンもほぼ一定化している。


ちなみに登場する敵は、アニメ本編に出てきたものが半数ほどである一方で、オリジナルの敵はアニメ本編の違いがほとんどである。 ラスボスは、ゲームオリジナルの敵ではなく、アニメ本編で視聴者がインパクトを受けた巨大な敵で、ゲームに登場するボスのほとんども、ザコ敵より一回り大きい。

行動パターンさえわかれば、ラスボスも1分足らずで一方的に倒すこともできるが、あくまでレベルがラスボスを倒せる範囲まで到達できた場合のことであり、 RPGの基本であるレベルアップや装備をしなければ、いくらパターンがわかったとしてもダメージを与えることができない。

所持品の所持数も、バランスよいものになっているが、これは序盤における所持数が少ない一方で、終盤での所持数が多くなっている。 所持品を増やす手段として、宝箱に入っているちからのくすりがあり、このゲームにある全てのちからのくすりを使うことで、最大20まで増やすことができる。

序盤では、それ程苦戦することがないため、別に多くのアイテムを持つ必要がない代わりに、終盤では苦戦することが多くなるので、その分アイテムを多くもてるようにする。 これらは、ハドソンにおける易しすぎずかといって難しすぎずという、微妙な難易度バランスが成せたものといえよう。


難しいところは、ほぼ戦闘のみなのに対して、やさしいところはいくらでもある。 ダンジョンの大部分の簡略化をはじめとして、謎解きも人の話を聞いていれば必ず解けるという、非常にわかりやすいものとなっている。 もっとも、謎解きよりもイベントフラグが多いのだが。 それに関するイベント数はかなり多いものの、ダンジョンの簡略化やイベント発生の半数ほどが街にあり、手軽にゲームを中断できる。

それを裏付けているのが、宿屋でできるセーブであり、金額もかなり安くなっている。 また、ゲーム中盤で使用できるワープゾーンも、ドラクエシリーズのルーラよろしく金を払えば、 今まで行った街に一瞬で戻ることができる(テレポートの魔法も、最後に立ち寄った街に一瞬で戻れる辺り、ほぼいっしょか)。 そして、宿屋に泊まってセーブと、ゲーム終了までの手際のよさが光っている。

武具も、剣と盾と魔神の3つのみと当時にしては非常に簡略的で、このうち魔神は龍神丸から龍王丸まで計5種類ある。 そのうちの龍神丸は、あるイベントで龍王丸の次に強くなるので、『新しい武具=強い』という図式を見事に破っている。


それを含めたアイテム群は、一般のRPGのようにごく普通なものが多いが、中には攻略の役に立つのか不明なものもある。 きまぐれそうやひとりごとのオルゴールがそれに該当し、きまぐれそうについては効果自体気まぐれであり、大部分が「きまぐれ キマグレ」というメッセージのみである。

さらに、あるアイテムを使うことで手に入る『1000ゴールド』も、この世界の通貨が『クレジット』と表記していることでの登場は、 同じハドソンの『桃太郎伝説』におけるほほえみの村を髣髴とさせているが、ほほえみの村自体物語とは関係ないのに対して、こちらは重要アイテムとなっているあたり、桃伝とは一線を画している。

魔法については、全てゲームオリジナルで、内容や名称も一般のRPGと同じである(アイテムや武具、街やダンジョンなども全てオリジナル)。 使用は、魔導書を入手して使うことで習得でき、内容が戦闘とフィールドそれぞれ違うものもある。


基本的なルートは、ほぼ一本道ではあるが、進み具合によってはいつもより先のところに進めることがある。 このゲームには、いくつもの関所ポイント(岩やイベントフラグなど)が存在しているが、時折普段よりも先に進むことができる場所がいくつもある。 もちろん、そこに出てくる敵はとてつもなく強い一方で、購入できる武具も高価な分能力はかなりのものがあるので、数度のプレイをした人にとって変則プレイの1つでもあった。

実はこのゲームは、RPGなのに2周目以降が存在している。 一般のRPGにも、クリア後のお楽しみが存在しているが、このゲームも例外ではない。 ただし、この場合でしか入手できないアイテムはなく、難易度が高くなっているだけ。

敵の全ての能力が1.5倍になっているので、難しいゲームが好きなプレイヤーにとってはなかなかに楽しめたのだろうが、 それ以外のプレイヤーにとっては特に目新しいものがないのにがっかりしたのかもしれない。 だが、RPGにおけるクリア後のお楽しみがほとんどなかった当時にとって、このゲームの2周目以降は一定の評価を得ることができた。

手軽に遊べ難易度は平均的、既にPCエンジンで大活躍中だったハドソンの、まさに余裕ともいえる作品は、ドラクエやFF、 メガテンやWIZなどの最新作に加えて、これ以外のゲームに良作が多かった90年に入ることができた。 しかし、アイテムやステータスのウィンドウを出すボタンが、他のRPGと大幅に違っており、このゲームを飽きるほどまでプレイした人が他のRPGをプレイすると、ボタンの設定に混乱が生じた。

また前述したが、アニメ本編に出てきたアイテムや魔法が全く出てこないことも、ファンにとってがっかりするものだった。 マップ自体、他のRPGと比べて構造が簡単な反面、やたら距離が長いものばかりで、主人公の足の遅さと相まって別の意味で問題があった。

それ以外は、特にゲームをプレイする上で問題はならなかったが、ハドソンはFC業界がにぎわっているにもかかわらず、 依然としてPCエンジンのソフト制作に力を注いでおり、結果として年を追うごとにFC業界の力は弱まり、ライバルハードに差をつけられる一因となったのである。


私は、本放映当時このアニメのファンで、最初の頃は毎週見ていた。 しかし、スイミングスクールに入ったときから、病気といったよほどのことがない限り見ることは叶わなかった。 結局は、コロコロコミックで情報を仕入れていたわけなのだが(私はコロコロ読者である一方で、わんぱっく読者でもあった)、アニメを見たいという欲求を解消できなかった。

ただし、結構魔神プラモを集めていたり近くの本屋(現在は別の場所に移動)でコロコロを立ち読みしていたので、 決して話題についていけないことはなく、プラモに同梱されてたドアクダータイムズなどといった小冊子を読んでいたりもした。

それからFC版をプレイしたのは、発売後まもなくのことであり、そのときは近くの古本屋(10年近く前に潰れた)でプレイしていた。 といっても、テレビは業務用(100円入れて10分経つと自動的に消えるというもの)だったため、 本格的にプレイするまでにはいたらなかったが、それでもワタル外伝をプレイできたこと自体とてもうれしかった。

本格的にプレイしたのは、大学生活中においてのことで、発売当時にプレイしたうれしさを思い出すことができた。 もちろん、エンディングを見ることはできたものの、2周目の事実を垣間見た私は、しばらくプレイした後はすぐさまやめた。 敵の強さが尋常ではなく、雑魚敵すらも苦戦するあたり、完全に絶句してしまったからだ。

さらに数年後の現在、別のゲームをレビューするにおいて、カセットの入っている箱をあさっていたらワタル外伝が出てきたので(箱・説明書つき)、 思わず小さい頃と大学生にプレイした頃を思い出し、これまた偶然に見つけたドアクダータイムズと神部新聞数冊を見つけプレイした。

大学生活でのプレイから、まだ数年しか経ってないこともあって、ストーリーやダンジョンの構造などを覚えており、ラスボスをも意外とあっさりと倒すことができた。 ただ、レビューを書くことでのプレイだったので、昔プレイしたときよりも真剣にプレイしなければならなかった。 その結果、手軽に遊べてアクションRPGとは一味違った趣と面白さがあった一方、ダンジョンがわかりやすい反面結構距離が長いのと、 イベントフラグが多く攻略をわかっていても、わざわざ人と話さなければならないことの2つの欠点があった。

2周目以降については、発売された時期を考慮して欠点には数えなかったが、大学時代のプレイを教訓に2周目以降はプレイしなかった。 何か、強力な武具やオリジナルの魔神が出ていればプレイする意欲も出たのだろうが、何も出ずかつ敵が強くなったことを考えれば、 2周目以降にももう少しプレイヤーにやさしいアイデアを出してくれればよかったのではないかと思うのだが。



本日のまとめ



やはり おまえは おろかものだ!

(07/5/6レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年5月10日
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