◆マッピー◆
マッピー物語第1章



発売日:1984年11月14日   発売元;ナムコ   ジャンル:ACT
値段:4900円   おすすめ度:3(今のゲームになかったBGMのセンス)


マッピーランドにある百貨店において、何者かによる盗難事件発生! 犯人は、百貨店内の売り物である電化製品と、店長室内にある美術品や金の入った金庫などを、万引き・窃盗といった、あらゆる盗みの手段を使って奪っていったのだ。 警察は、犯人に関する調査を行った結果、犯人はマッピーランドにあるニャームコ屋敷を根城としている怪盗ネコのニャームコと、彼の子供達であるミューキーズであることが判明した。

警察はこれを受け、ネズミの警官マッピーに、ニャームコ達から盗まれた品物の奪回を命じた。 マッピーは、ニャームコ達の本拠地ニャームコ屋敷に潜入したが、そこは階段などなく屋敷の階層の移動には、連続して使用すると切れてしまう危険なトランポリンを使わなければならない。

しかも屋敷内には、マッピーを悩ます様々な仕掛けも施されており、その上ニャームコのご先祖様が屋敷を護っているので、一般の警官ではおいそれと手が出せないのだ。 果たしてマッピーは、ニャームコ達の追跡をかわしつつ、無事盗品全てを取り戻すことができるのだろうか?


ナムコの有名シリーズの1つで、2007年現在様々なハードに移植されているので知っている人も多い。 元々は1980年に、第1回マイクロマウス大会用のロボットであり、そのときのナムコからの出場ロボットは泥棒猫型のニャームコであり、 翌年には警官ネズミロボットのマッピーが出場、共にマイクロマウスで一躍有名になった。

マイクロマウスとは、マイコン(自立制御型)を搭載したロボットが、大会用の迷路をどのくらいの時間で踏破できるかを競うもので、 日本における自立型ロボット技術の開発に大きな貢献を果たした。


第2回マイクロマウス大会から2年後の1983年、ACにおいてニャームコ・マッピー共々デビューを果たす。 そのゲームが『マッピー』であり、このタイトル時点で警官のマッピーが主役で、泥棒猫のニャームコは敵なのだ。

つまり、ストーリー通りにマッピーが怪盗ニャームコ一味と戦うという方式となっている。 世間では、猫が警官でネズミが泥棒という図式が一般的だったが(昔からねずみは、人間の邪魔をすることが多い一方で、 猫は人間の役に立っていることが多い)、このゲームではあえてそれを逆にするという方式を採った。

もっとも、捕り方の役が多い猫でも、『泥棒猫』という単語があるので、猫を泥棒にすることは別に珍しくはなかったが、 ネズミを捕り方にすることは当時としては非常に珍しがられた(ネズミといえば、この他にねずみ小僧というものも一般的だったため)。

ゲームについても、キャラのかわいさを前面に押し出しつつ、ミューキーズからの追跡のかわし方と、効率のいい得点の稼ぎ方をプレイにおける肝にしてある。 それを裏付けるのが、屋敷内に仕掛けられたトラップの数々である。

ほとんどのトラップの詳細は後述するとして、一般のドアはニャームコ達が引き側から開けると、ドアを閉めるときの風(?)によって一時的に気絶する。 この間だけ、マッピーは彼らに触れてもミスにはならず、こちらが全てのドアをある程度自由に開けられるので、例えミューキーズたちに囲まれても、 ドアの開閉次第によってピンチを脱することが可能であり、盗品回収において重要なポイントの1つとなった。

一方の得点稼ぎについてだが、ステージ内にはニャームコ達によって盗まれた品々が5種類登場しており、それが各2つずつ用意してある。 例えばラジカセを取ると、もう1つのラジカセが点滅し、そのラジカセを取ると得点が倍になる。 これを繰り返していけば、最終的に6倍の得点をたたき出すことができるが、点滅している間に他の盗品を取ったりマッピーがやられると、倍率が元に戻る。


もう1つの得点稼ぎの方法は、パワードアと鐘の2つのトラップのことで、マッピーではなくニャームコやミューキーズを対象としたもの。 これは、パワードアから発するマイクロウェーブと鐘の重みにより、ニャームコ・ミューキーズ共々一網打尽にできるもので、数は少ないもののコンボボーナスで、 彼らをより多く巻き込ませる分、それだけコンボボーナスを得ることができる。

2つとも、ミューキーズに追い詰められた時の緊急回避用という意味合いが強いが、得点稼ぎにも重要な役目を果たしている。 何しろニャームコをも巻き込めば、ミューキーズを巻き込んだ得点に加えて、それが2倍に加算されるというのだから、これを狙わないプレイヤーはいなかっただろう。

ステージが進むごとに、ミューキーズが多く登場しマッピーを追いかける速度も速くなっていき、それに加えて落とし穴が登場し、 ニャームコたちを落とせる(コンボを出せる)一方で、マッピーが落ちるとミスになるというトラップも登場する。

それでも、ミューキーズが多く登場する分、それだけ稼げるコンボも増えることになり、上級プレイヤーはミューキーズをできるだけ多くひきつけておいてから、 一気にパワードアと鐘で多くのコンボを叩き出すことになった。 もっとも、ステージが進むごとに難易度も上昇してくるので、得点稼ぎよりも自分が生き残ることを優先したプレイヤーが多かったのだが。


しかし、パワードアや鐘は数に限りがある上に、しばらく時間が経つと『HURRY』という文字が横切り、ニャームコ達の足が速くなり、BGMのテンポも速くなる。 さらに時間が経つと、ベルの音とともに丸いニャームコが登場する。

これがご先祖様で、ミューキーズ同様マッピーを追いかけるが、スピードがミューキーズの比ではなく、 トランポリンで移動中は同じ位置にいるニャームコやミューキーズに触れてもミスにはならないが、ご先祖様の場合は触れてもミスになる。

ご先祖様の登場は、得点をできるだけ多く稼ぐプレイヤーの対抗策として登場し(永久パターン防止)、 このゲームにエンディングが存在しないことも合わさって、ハイスコアを叩き出すプレイヤーにとって脅威の的となった。

前に述べたが、ご先祖様登場前兆におけるBGMのテンポアップは、このゲームのBGMを有効に活用しており、軽快なBGMでのんびりと盗品奪回にいそしんだり、 ミューキーズとの追いかけっこを楽しんだり、果てはハイスコアを狙ったりしていた時のテンポアップは、バラエティ番組におけるミニゲームを髣髴させている。

このゲームのBGMは、当時としてはなかなかに使い分けがよく、それを表しているのがボーナスステージ(チャレンジステージ)のBGMだろう。

昔の大部分のゲームのボーナスステージは、必ず時間が表示されていたが、マッピーではそれを表示しない代わりに、BGMで制限時間の代わりを出した。 これは、BGMが流れている間までが制限時間であり、トランポリンを使ってステージ内の風船を回収し、最終的にニャームコが潜んでいる風船を割ればパーフェクトとなる。 その時、ニャームコの風船を割ることでBGMが終了することは、プレイヤーにとって非常にタイミングがよくかつ心地いいものであった。

とはいえ、チャレンジステージのパターンは数種類あり、パーフェクトかつタイミングよくステージを終わすのかが難しい上に、 風船を飛び出したニャームコを利用しての風船回収もあるので、ただ単にステージをこなす以上の戦略が求められたのだ。

いずれにせよ、同じナムコの『ゼビウス』や『ポールポジションU』より知名度は低かったが、テンポが光るBGMとそれにマッチするキャラのかわいさ、 それに似合わぬ得点稼ぎにおける戦略性が評価され、ナムコにおける著名ゲームの1つに数えられた。


さてFC版が登場したのは、それから翌年の11月下旬。 この年のFC界の状況は、ACの老舗ナムコが参入したことにより活気づき、特にFC版ゼビウスの登場はFCの人気を加速させ、第1次FCブームが到来することとなった。 その中でのFC版マッピーの登場だが、ゼビウスの人気の陰に隠れててあまり目立てなかった。

移植度においても、縦画面のACから家庭用のテレビの画面にあわせて、解析度を調整したことはともかくとして(スコア欄などが画面上部に移動)、 ニャームコ屋敷の階数が1つ減っていたり、ネームエントリー時のBGMがカットされていたりと、完全移植とはいい切れなかった。

だが、AC版で好評だったニャームコのコミカルな動作は、FC版でもそのまま再現されている。 ドアを開けては勝手に気絶したり、チャレンジステージの最後にある巨大な風船に潜んでいたり、盗人一味の親分なのに自分はただ逃げるだけで、時には盗品の陰に隠れている。

その盗品を取ると、ニャームコが1000点ボーナスの看板を掲げるしぐさをしたりするので、常にプレイヤーを和ませてくれている。 このゲームにおいて、マッピーが主役なのだが、光と影の場合ではニャームコも主役となる、影の主役として。

次回作では、それがより鮮明に現れかつ主役を食うパフォーマンスを見せることになる。 FC版発売から、丸2年後に発売される『マッピーランド』がそれで、前作のゲームシステムを踏襲しつつ、 ニャームコの様々なパフォーマンスは、もはやニャームコが主役と言い切るのにふさわしいものとなっている。

その一方で、ACでは『ホッピングマッピー』という続編が発売されている。 こちらもゲームシステムは踏襲しているものの、マッピーシリーズの最重要素であるトランポリンがないことと、人気や知名度が前作より落ち込んだこともあり、 FCではさらに3年後に続編が登場するのに対して、ACではホッピングマッピーで打ち止めとなった(1995年に『マッピーアレンジメント』が登場するが、あくまでアレンジ)。

総合的に考えると、初代マッピーは全ての続編を凌駕しているといえるが、故に高すぎる完成度を持っていたがために、FCでしか正当な続編を出せなかったという側面も考えられよう。


昔の環境等をあわせると、私はAC版よりFC版をプレイすることが多かった。 もっとも私の家庭は、ゲームを買うことはほとんどなく、専らいとこから借りるしか自宅でゲームをプレイできなかった。

一方で、別のいとこからとある事情で多くのゲームソフトをもらうことがあったが、その中にマッピーも含まれていた。 当然、当時はAC版などプレイしていなかったので、10年近くまではFC版の知識しかなかった。

そのFC版での私の腕だが、箱説明書なしでもらったので、どういう形で得点を稼ぐのかがわからなかったが、数回のプレイでそれがすぐさまに理解できた(他のゲーム同様)。 パワードアや鐘を使ってのコンボボーナスや、ニャームコが隠れている辺りの盗品入手など。

プレイ中に登場するご先祖様は、昔はもちろんレビューしている現在でもお目にかかることはなかった。 自分の腕が下手なのか、それとも的確に盗品回収+ニャームコ一味を撃退しているのかどちらなのか。

AC版をプレイしたのが、10年ほど前に発売されたPSの『ナムコミュージアムvol.2』であり、 そのときは画面が縦長になっていたりニャームコ屋敷の階層が6階になっていたりなど、長年FC版をプレイしていた私は、一種のカルチャーショックを受けた。 当然色合いも、FC版よりとてもきれいで、しばらくは他のカップリングされたゲームそっちのけでプレイしていた。


ただ、個人的にはFC版のほうがいいのだが、それは昔からFC版をプレイしていたことに加えて、その頃は私のゲーム歴が始まって間もなかったので、 その当時のゲームと一緒に、いい思い出と嫌な思い出があったことの証かもしれない。

最近になって、軽快なBGMとニャームコのコミカルな行動に、初めて思わず笑わずにはいられなったと同時に、最近のゲームにかけているものが何かを理解できた。 もちろん、最近のゲームはわからないことだらけで、すぐ理解できたとはいえないのだが、 BGM・CG共に全てをきれいになっているゲームが多い世の中、どこか工夫が物足りなく、本気で楽しめるものが少ない。

これこそが、私を最新ゲームから遠ざけている要因の1つであり、私がプレイした最新作のゲームといえば『MOTHER3』ぐらいである。 DSやPSP、WiiやPS3といったハードを購入していないことも1つの理由なのだが、むしろFC世代かつそれにどっぷりはまりすぎたことも大いに関係があるのかもしれない。 そういう考えを思い巡らせながらプレイしたマッピーは、28面でミューキーズに捕まりゲームオーバーとなった。



本日のまとめ



HURRY

(07/5/3レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年5月8日
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