◆がんばれゴエモン!からくり道中◆
FC初の2M搭載ゲーム



発売日:1986年7月30日   発売元:コナミ   ジャンル:ACT
値段:5300円   おすすめ度:2.5(大容量の無駄遣いの典型)


時は江戸時代、太平の世を駆け巡る一人の男がいた。名は、石川ゴエモン。 大泥棒の彼は、大商人や上級武士といった、いわゆる私欲のために金儲けをしている者達の家に忍び込んで大金を盗み、その金で貧しい人々に金を分け与えていた。 そのため、人は彼を義賊と呼び尊敬されていた一方、武士や大商人達からは泥棒と言う形で忌み嫌われていた。

そんな彼は、日本全国に天下の大泥棒(義賊)ゴエモンの名を上げるため、日本各地を南から北へ西から東へ、肥後国(熊本藩)から武蔵国(江戸)と旅をする。 同時に、悪人達の屋敷から金を盗み、その地区に住んでいる貧しい人々に分け与えながら、ついでに悪徳役人や商人を支配して、 彼らと同じ悪さをして庶民を苦しめている大名(藩主)達を懲らしめるという目的もあった。

母の激励を受け、ゴエモンは世のため人のためそして自分のために、日本に巣食う悪党達を相手に大暴れをする!

コナミの著名シリーズの1つ『がんばれゴエモン』シリーズの1作目だが、真の第1作は1986年に登場したACの『Mr.五右衛門』で、 主人公は石川五右衛門その人であり、内容も奥行きのないアクションで目的も、普通のコソ泥よろしく千両箱を盗んでゴールを目指すというもの。 つまり、ゴエモンファンが思うような義賊が悪党達を懲らしめると違って、ただ単に私利私欲と言う形で盗みを働くものであった。

Mr.五右衛門が、がんばれゴエモンシリーズに加わっているとはいえ、異端児な扱いがあるのはこのためで、 そもそも『がんばれゴエモン』というタイトルもなかったことが、異端児的な扱いをさらにさせていった。 また、ACだったこととも加えて、ファンの大部分はそのゲーム自体知らない人も多い。


それから同じ年の2ヵ月後の7月30日、Mr.五右衛門をFC移植とリニューアルという形でFCに登場させた。 ただしFC版は、一部を継承したのみでほとんどはFC版オリジナル。

むしろ、続編といったほうがいいと言うほどで、主人公にしても石川五右衛門ではなく石川五右衛門をイメージした『ゴエモン』で、 タイトルも『Mr.五右衛門』から『がんばれゴエモン!からくり道中』に変更された。

変更されたのは、アクションの性質も含まれており、AC版が奥行きなしの一直線型のものに対し、FC版は奥行きを含めた上で複数のマップが枝分かれしているものになった。 もちろん、一直線でゴールに向かうステージもあるが、ほとんどは枝分かれしているステージで、ゴールはスタート地点近くにあったり遠くにあったりもする。


しかも、地下マップもいくつかあるので、1ステージなのに相当のボリュームがある。 ただし、ジャンプで見つけ出すかアイテムのろうそく(制限時間つき)がなければ見つけられないが、敵は出ないし様々なアイテムが手に入る。

ゴエモンが訪れる国を面とするならば、訪れる国の数は8でエンディングを見るために突破しなければならないステージ数は、なんと104になる。 とはいえ、次の面に進んでもステージ内容は全く一緒なので(敵の出現パターンや攻撃方法など)、難易度が低い2周目といったほうがいいのかもしれない。

もっとも、ステージが進むにつれて敵の攻撃は激しくなるが、ステージ中で手に入れた金は次のステージに持ち越せるし、 仮にゲームオーバーになっても裏技のコンテニューを使えば、アイテムと金を全て失っても途中からやり直せる。


このゲームには、RPGよろしく道中で金を入手して、同じ道中にある店で買い物をする。 といっても、敵を倒して手に入れることの他に、道中内の壷やつづらをジャンプして手に入れるもので(手に入ると壷などは石になる)、 別にエリアに出入りしてもすぐ壷やつづらが復活して何度でも金を手に入ることができるが、かなり時間がかかるのでたいていのプレイヤーは、敵の他に地下マップやある場所で金を稼いだのだが。

そのある場所とは3Dダンジョンの迷路のことで、様々なアイテムや金が手に入るが、地図や裏技を使わなければ最初のステージでも迷ってしまうほどの複雑であり、ゲームをクリアするには外せないものとなった。

品物の内容は、捕り方のちょうちんなどの飛び道具を防ぐ三度笠や、時間を回復させる砂時計など色々あるが、その中で通行手形は3つ集めなければゴールできないし、 全てのアイテムも1度買うごとに値段が高くなっていくので、手形メインで購入する人は、地下マップや迷路でかなりの時間を潰して苦虫をかむプレイヤーが多かったのではないだろうか。

それと、足が速くなるぞうりや攻撃がキセルから小判投げに変える(金は減らない)招き猫もある(どちらもつづらに入っていることがある)。 このぞうり、地下マップや通常マップにおいて、越えられなかった壁を軽々と越えることができるので、たいていのプレイヤーは真っ先に3つそろえた。

店以外にも、宿屋や賭博のほかに、人が住んでいる民家があるのだが、住人が話す内容はちょっとしたヒントやアドバイスのほかに、 本当にどうでもいい話(コナミの宣伝もある)もあり、大部分はこの与太話が多い。 何かいいものがあると期待して入って、与太話を聞かされてうんざりした人は多いだろう。


ところで、各ステージ中には様々な隠しキャラが登場する。 同年発売された『グーニーズ』にも、色々な隠しキャラが登場したが、ゴエモンもそれをはるかに超える数の隠しキャラが登場する。

しかし、ゴエモンをプレイした人ならば、なぜ多くの隠しキャラを登場させるのか疑問に思った人も数多くいただろう。 これについては後述するとして、敵についてはスプライト(ちらつき)覚悟で大挙襲い掛かってくることがザラであり(ステージ13は特に)、多くのプレイヤーが大苦戦した。

ボリュームあるステージといい、大量の隠しキャラといい、会話やアイテムのバリエーションの豊富といい、複雑すぎる迷路といい…、 当時としては考えられないほどのボリュームを、ROMカセットに入りきらないほどに詰め込んだ。 当時のプレイヤー達は、あまりのボリュームの多さに驚いたがそれもそのはず、FC初の2M搭載ゲームだったからだ。

ディスクカードが、昔のFCカセットの3倍の容量を持つことで一躍注目を浴びたばかりなのに、それを軽々と超えたということは、 コナミの実力の高さを証明することであり、同年暮れに発売された『キングコング2 怒りのメガトンパンチ』も同じ2Mだったので、 ようやく他のゲーム会社が1Mのカセットゲームを開発した矢先でのコナミの2本の大容量ゲームの出現は、各ゲーム会社の衝撃の大きさを垣間見ることができよう。

翌年には、ディスクカードと同じ容量のROMカセットが大挙登場する一方、 コナミのゲーム以外の容量が2Mを達成するのにほぼ1年かかることから、改めてゲーム制作の余裕を示したといえる。

だが、2Mやそれを証明するボリュームの豊富はあっても、そういった外見ではなく肝心の中身が伴っていなかった。 その主な理由が、104面というあまりにも膨大すぎるステージ数である。


このゲームが、セーブ機能を持っていれば104面もプレイヤーの許容範囲内に収まるのだが、昔はバッテリーバックアップはなかった上に、 パスワードを導入しているゲームはわずかしかなく、ゴエモンはカートリッジなのでディスクセーブはない。

しかも、13ステージをクリアするのに最低1時間ほどかかり、エンディングを見るには半日費やさなければならず、食事や睡眠などを考慮すればまず間違いなく丸1日かかる。 もはや、『ゼビウス』の一千万点カンストの比ではなく、子供なら絶対にエンディングを見ることができないほどの長時間を要した。

次に、スコア自体の無意味と、それを証明する膨大な隠しキャラの量。 このゲームでは、金を稼いでアイテムを買いながら、手形3つ集めてゴールを目指すもので、この時点でスコアは完全に無意味と化した。

『スーパーマリオブラザーズ』でも、1upはコイン100枚集めてなので(ゴエモンは、迷路にある大入り袋で1up)、 スコア自体は無意味になっていたが、ある数字になるとゴールしたときの花火の演出が見られるので、完全に無意味ではなかった。

しかしゴエモンでは、ある数字に達しようがぞろ目にしようが、全く影響がない。 それに追い討ちをかけるかのように、5千点の隠しキャラが数多く出現し、プレイヤーはうれしさというよりうんざりしていた(1upの隠しキャラもあったが)。 さらに、道中におみっちゃんという女の子も登場し、捕まえると千点獲得という、これもスコアの無意味さを象徴する1つとなった。


これら以外でも、一本道のステージでは、操作がシビアなところも数多く存在し(海に落ちると1ミスなど)、 迷路の複雑さや金の稼ぎ方の効率の悪さなど、2Mにして荒削りなところが多くある。

これは、コナミが2Mという大容量のゲームを作ったのはいいが、それに伴う内容を作ることができず、ただ単に詰め込むだけ詰め込んだことによるものであった。 続編では、同じ容量でもグラフィックやBGMの質、ステージ数は大幅に減っても前作以上の内容の豊富などもあり、ゴエモンシリーズのブランド上昇のきっかけとなった。

ところで、クソゲーではなかったがあまりいい印象をもてなかったからくり道中だが、発売から18年後の2004年、突然再評価の機運が高まった。 それは、ファミコンミニの第2弾のラインナップに、からくり道中があったためである。

ファミコンミニの特徴の1つとして、スコアセーブ機能があるが、スコアを保存できると同時に途中まで進んだゲームの内容を保存することができる。 FC版ではセーブ機能がなかったのだが、GBA版ではバッテリーバックアップ機能があり携帯ゲームなので、いつでもどこでもゴエモンが楽しめる。 ここにおいて、ようやくからくり道中の本当の面白さが垣間見えた。

のんびりと金を稼げたり、無駄にスコアを稼いだり、地図なしで迷路に挑戦したりなど、いつでも遊べる利点を生かしたプレイもあったが、 RPGのようにアイテムを購入するやり方は、昔のアクションにはなかったもので、同じアクションの流れを汲む『ゼルダの伝説』と違って、 アイテム全て消耗品でどのあたりでアイテムを買うのかといった戦略性も組み込まれていた。 13ステージそのものも、2面に進もうが最終面に進もうが全く変わっていないので、気軽にステージ構成を覚えることができる。

当時としては、あまりにも容量のやりくりを考えずにゲームを制作したため、ユーザーから非難を浴びた作品だったが、セーブ機能がついただけでそれが高評価に逆転する。 確かに、104ステージ踏破するのはGBA版でも至難の業だが、それを補うRPG要素は今も昔も色あせていない。

続編以降でもそのシステムは継承され、他のゲームでもゴエモンに非常によく似たゲームがまもなく登場したが(サンソフトの『水戸黄門』シリーズなど)、 それはゴエモンが意外とゲーム会社の中で評価されてきたことの証なのかもしれない。


このゲームをプレイした当時、早くもいとこの家でディスクゲームをプレイしていた。 ディスクカードの容量が1Mという大容量の時代に、それを2倍上回る2Mというのは、当時は結構騒がれていたに違いない。

カセットに貼ってあった、ラベルの文字が『2M』と大きく書いてあり、同年のキングコング2でも同様に2Mとかかれていたラベルを、 小さい頃でもそれをじっくりと見ていたので、改めてディスクシステム誕生まもなくにこういった大容量のゲームが登場したことは、 日本の技術の進歩の賜物だと、20年前以上にも日本のゲーム技術は世界の水準を大幅に超えていたのかと痛感した。

昔プレイしたときは、まだ数ステージしかない上に迷路にも迷うわアイテム金が足りないことが多かったわ、一本道のステージで操作を誤って落ちまくったわと、 どうもマイナスな思い出しかなかったが、それでもお金を貯めてお目当てのアイテムを買うことは、同時期にゼルダの伝説やドラクエTをプレイしていた私には、その2本と同様心地よい快感が出た。

ただ、このゲームがかなりの長丁場になることを予想した私は、さすがに借りようとはしなかった。 2003年のFC特集のムック本で、からくり道中のことが載っていたが、全8面全104ステージの内容の事実を知って、思わず苦笑したと同時に昔借りなくてほっとした。

本格的にプレイしたのは、翌年のファミコンミニ版の第2弾ことで、第1弾でゼルダをプレイした私はセーブ機能があることを知って、ファミコンミニシリーズすべてにセーブ機能があるのではないかと思った。 もちろん、ハイスコアのセーブがあることは説明書を見てわかっていたが、途中までのデータを保存できることは書いていなかった。

それが、ゴエモンをプレイして途中までのデータを保存できることを知った私は、勉強やレポートを書く(まだ私は大学生だった)合間を見て、クリアするまで挑戦した。 その甲斐あって、購入して1ヶ月でエンディングを見ることができた。 既に、ネットに出ていたエンディングの画像を見た私だったが、自分の力でクリアしたときはそのエンディングが感無量に感じた。


ただ、104ステージを踏破したことがかなりつらかったので、ゲームレビューを書いた現在FC版でエンディングを見ようと試みたが、 GBA版をプレイして結構間が空いたことも加えて、さすがにエンディングまで到達することができなかった。

攻略サイトに載っていた簡略マップで、ステージの概要はわかってはいたのだが、肝心の自分の腕が鈍ってしまっていた。 特に、一本道ステージでの足場から足場へと渡る緊張感は、ぞうりの装備数によるスピードも合わさって、本当にハラハラドキドキだった。

しかも、海のど真ん中に隠し階段を見つけたときは、いろんな意味で死と隣り合わせになったような気がした。 いずれにせよ、続きはGBAでプレイしたい。FC版も、時間に余裕ができたらエンディングまでプレイしたいのだが。



本日のまとめ



ごえもん  がんばるのだ  はは より

(07/4/27レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年5月5日
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