◆悪魔城ドラキュラ◆
悪魔城伝説第1章



発売日:1986年9月26日   発売元:コナミ   ジャンル:ACT   ディスク:両面
値段:2980円   おすすめ度:4(最初にして最高傑作)


近代に向かいつつある頃のヨーロッパ、ここにドラキュラなる人物の伝説が残っているという小国、トランシルバニアがあった。 『魔王ドラキュラは、百年に一度邪悪な心を持つ者の祈りによって復活し、その復活のたびに彼の魔力は強くなる。』と。

 16世紀後半頃(1576年)に、一度ドラキュラはこの世に復活した。 しかし、ドラキュラの全世界を暗黒の雲で覆い、闇の世界に君臨しようとする野望は、ヴァンパイアハンターのベルモンド一族の、クリストファー=ベルモンドによって打ち砕かれた。

クリストファー=ベルモンドとの死闘に敗れたドラキュラは、再びトランシルバニアの片田舎で復活のための眠りについた。 それから、百年余り後の1691年のイースターの夜、町では盛大なカーニバルが催されていた。

その一方、町外れの荒廃した修道院跡では、ドラキュラ復活を企む邪教徒達によって、彼の亡骸に人間の生き血を注ぎ、不死の生命を取り込もうとする黒ミサの儀式がとり行われていた…。 すると突然、邪悪な雷雲が町を覆い、一筋の稲妻が修道院を貫いたではないか。 そう、全世界を暗黒の雲で覆い、闇の世界に君臨しようとする野望を秘めた魔王ドラキュラが、再びこの世に舞い戻ったのである。

この危機を救おうと立ち上がったのは、ベルモンド一族の血を受け継ぐ青年シモンだった。 彼は、父いや先祖譲りの不思議な力を秘めたムチを手に、たった一人ドラキュラ城へ乗りこんだのである。


コナミの名シリーズの1つ、悪魔城ドラキュラシリーズの第1弾。 このゲームが発売された頃のFC界におけるアクションゲームは、主に明るさ(明快さとも)を基本としたゲームで占めていた。

大ヒットを記録した『スーパーマリオブラザーズ』も、明るさを基本とした内容になっており、暗さを基本としたゲームはなかった。 カプコンの『魔界村』は、確かに暗さを基本としたゲームとなっているが、元々ACからの移植であるため、FCオリジナルでの暗さを基本としたアクションゲームは、悪魔城ドラキュラが初となる。

悪魔城ドラキュラが目指した暗さとは、ただ単にプレイヤーを怖がらせるものではなく、美しさの中にある暗さだった。 開発スタッフは、ゲーム制作前に様々なホラー映画を鑑賞し、そこで得た内容を元に制作におけるヒントにしている。 このゲームの舞台となるドラキュラ城は、ホラー映画の定番である古城をモチーフにしており、ステージ中に度々お目にかかるステンドグラスも、古城の雰囲気をかもし出している。


BGMも、ドラキュラ城の暗さに一役買っており、最初のステージのBGMはなかなかに明るくハイテンポだが、ボス戦前のステージやある程度進んだブロック内のステージでのBGMは、おどろどろしさを押し出している。 特に、エンディングのBGMは、パイプオルガンを思わせる演奏で、それ以外のエリアのBGMもそれに近い形で演奏されている。

グラフィック・BGMをあわせることで、ルネサンス時代の15,6世紀におけるゴシック時代の建築と、それをイメージしたゴシック小説(俗にいうゴシックホラー)、 そして17,8世紀のバロック時代の音楽(通奏低音)で、FCにおけるホラーアクションの礎を築いた。

ドラキュラ城にうろつく怪物は、ラスボスのドラキュラをはじめとして、スケルトンやゾンビといった西洋怪物がメインとなっているが、 その中に何故かメデューサやミイラ男といった、西洋じゃない怪物も混ざっており、なかなかにバラエティ豊かにしている。

登場するエリアも、それにふさわしい場所となっていて、5ステージの前半に登場するスケルトン&レッドスケルトンと背景の牢獄は、まさにそれを印象付けているといえる。


ゲームの内容は、主人公シモンを操り全6エリアを進みながら、最終的にドラキュラ城の最上階に待ち構えているドラキュラを倒すのが目的。 このゲームでの1エリアは、『1ブロック』と表記され、1ブロックごとに3つの『ステージ』に分かれており(ステージとステージとの間は、扉で表記)、全6ブロック全18ステージとなっている。 そして、3の倍数のステージの最後(1ブロックの最後)には、ボスが待ち受けていて、それらを倒すして現れる赤い玉(魔力の玉と呼ばれる)を取ってクリアとなる。

このゲームの攻撃は、グラフィックやBGMと共に、ドラキュラシリーズを代表するものとなっており、同時に世界観ともなっている。 シモンの通常攻撃は、剣や槍といったファンタジー世界における一般武器ではなく、鞭である。

今も昔も、鞭は暗いイメージを持つ武器で、昔は家畜の調教や奴隷や捕虜、囚人などに対する拷問にも使われ、現在はそういった暗さは薄れつつあり、 RPGや特撮でも強力な武器として登場しているが(ドラクエシリーズにおけるグリンガムの鞭や、『秘密戦隊ゴレンジャー』のレッドビュートなど)、 主にSMで使われたりと、やはり暗いイメージを脱却したとは言い難い。

だがあえて、剣ではなく鞭をシモンの武器にしたのは、一般のホラーゲームからかけ離れたいという思惑があったのだろう。 また、雑魚敵がわらわらと出るため、リーチが長くまとめて倒せることも、鞭が主要武器となったことと関係があるのかもしれない。 その鞭は、最初は革の鞭だが、鞭型のアイテムを取るごとに、鎖型鞭(チェーンクロス)、鉄球付き鎖型鞭(モーニングスター)と、威力もリーチも増してくる。


シモンの鞭もそうだが、そのほかにも彼の助けとなった武器がある。 サブウェポンと呼ばれるものがそれで、短剣、クロス、斧、聖水、懐中時計の5つが登場し、敵を倒したりろうそくを破壊すると出るハートを1つ消費して使用する(上+B)。

どれもこれも、威力も性能も個性的だが、プレイヤーが主に使用したのは聖水だった。 小さく低い放物線を描き、敵を貫通して落下して地面に落ちると燃え広がる武器で、射程は少々短いものの、 地面に落ちたときに出る炎により連続してダメージを与えることができ、威力が高いばかりか連続して攻撃するため、相手の攻撃の暇を与えずに一気に倒すこともできる。

他のサブウェポンも、使い方次第ではなかなかに使えるのだが、短剣は連射ができる反面威力は最低で、斧はブロック1のボスにしか効き目がなく、 懐中時計はブロック3以降のボスには効き目がない上にハートを5つ消費し、クロスは結構使い勝手がいいものの、間をいれずにボスを倒すためには役不足である。

もちろん、武器の使い分けもゲームをクリアするための重要な手段の1つであったが、それを実行した人は少なく、ヘビーユーザーの場合は最初に聖水を手に入れてから最後まで使用した。 威力が高いのも理由の1つだが、それ以上にある重要アイテムが大きな理由だった。

そのある重要アイテムとは、連射アイテムのことであり、同じサブウェポンで10回攻撃することで出現する(敵、ろうそく問わず)。 最初2連射だが、2連射を入手後もう1度10回攻撃すると、今度は3連射を入手できる。

つまり、威力が高い半面連射ができない聖水が3連射できるため、ボス戦には非常に有効なアイテムだった。 連射アイテムは、他のサブウェポンを取ると持続効果がなくなるので、これもあわせて最初から最後まで聖水しか使用しない一因ともなった。

なお連射アイテムは、壁を崩したときにも隠されていることもあり、中には体力を回復させる肉も入っているため、それを探し出すのも1つの楽しみであった。


さてゲームシステムは、横スクロールアクションを基本としているものの、スーパーマリオのようにジャンプの軌道を変えることができず、 一定以上の高さから飛び降りると着地した瞬間にかがみ、その間だけ行動不能になる。

それと、敵の攻撃を食らうと後ろに吹っ飛ぶが(階段を上り下りする途中は吹っ飛ばない)、吹っ飛んだ先に穴があるとその場で1ミスとなる。 体力が0になったり時間切れになっても1ミスだが、1ミスするとそれまで持っていたサブウェポンや連射アイテム、 鞭のパワーアップやハート全て没収され(ハートは初期数の5個まで)、今いたステージの最初に戻される。

これらの要素が、このゲームの難易度を高くしているといえ、さらにそれをもう1つ上げているのが、ブロック5のボス死神の存在である。 ドラキュラの副官の異名を持つ死神は、4つの鎌を4方向に投げつけ、死神も不規則に移動する。

死神を倒す有効なサブウェポンはクロスだが、大部分のプレイヤーが所持するサブウェポンは聖水であり、それが死神の強さに拍車をかけているといえる。 場合によっては、ドラキュラよりも強いと言われるほどだ。 確かにドラキュラも、2連戦で戦う相手であり、2戦目のほうが強いのだが、聖水の威力によりノーダメージでも倒せるので、強くないラスボスという認識を若干植えつけられた。

巷で難しいという言葉を耳にするが、敵の行動パターンはほとんど一定化していて、何度かプレイすれば少ないダメージで先に進めることができる。 それに、ゲームオーバーになってもディスクセーブやコンテニューがあるので、いつでも挑戦することが可能。

死神の強さやシモンの癖が強い動き、それに対するサブウェポンや行動パターンの一定とリトライ機能の導入などにより、 難しすぎずかといって簡単すぎずという微妙なゲームバランスの調整により、日本はもとより海外でも大好評を博し(海外では『キャッスルバニア』と呼ばれた)、 ドラキュラシリーズの礎を築くことができた。

1993年にはROM版が、その11年後の2004年にはGBAのファミコンミニシリーズのディスクシステムコレクションとして、 ドラキュラがラインナップされ、当時ディスクシステムを持っていなかったプレイヤーにも、ドラキュラをプレイできる機会が増えた。


『SDガンダムワールド ガチャポン戦士スクランブルウォーズ』の項でも述べたが、当時私はディスクシステムを持っていなかった。 ディスクゲームのほとんどを、いとこの家でプレイしてたのだが、悪魔城ドラキュラも例外ではない。 いとこは発売当時、まだディスクシステム1つしかもっていなかったため、いとこがプレイしているのを見ながら、こちらに順番が回ってくるのをひたすら待つしかなかった。

まもなく、いとこがツインファミコンとテレビ共に2台購入し、それからはいとこと私と別々のゲームをするようになった。 ゲーム機数台の事実を目の当たりにした私は、早速いとこが昔プレイしていたドラキュラをプレイした。

いとこがプレイしているのをいつも見ていたので、敵の行動パターンは全て覚えているはずだったが、4ブロック目の2ステージ目で力尽きた。 怪鳥とそいつが運ぶせむし男のパターンだが、そのせむし男のパターンを読みきれなかったことが原因だった。

他にも、ブロック2のスモールメデューサ地帯も苦戦を強いられたし(リフトに乗る際にそいつにぶつかった挙句、そのまま穴に落下)、ブロック5の死神にも悩まされた。 クリアはしたのだが、エンディング後に2周目にすかさず入っていく様を見たとき、1周目より多い敵の数を目の当たりにしてゲームをやめた。


このゲームをレビューする前に、ディスクシステムコレクション版を購入したりして(2004年)、その懐かしさにほっとした。 なお、大学生活中にROM版を購入しなかったのは、それが定価の3倍近い値で売られていたからだ。 バイトができず懐が寂しい私は、泣く泣く購入を見合わせるしかなかった(今は、値が暴落しているので購入した)。

現在は、ディスク版も購入し、予習という形でGBA版もプレイしたおかげで、1回もミスすることなくエンディングを拝めることができた。 それにしても、FCが流行語になる前にディスクゲームの最高傑作を生み出すとは、コナミの実力には驚きを隠せない。

それが、わずか3年後で衰退の憂き目に遭うのだから、カートリッジにおける技術の進歩と、最高傑作を出したがために起こったディスクカードの限界に、もののあわれというものを感じざるを得ない。


本日のまとめ



殺ったか………いや!?

(07/4/22レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年5月4日
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