◆SDガンダムワールド ガチャポン戦士 スクランブルウォーズ◆
初めて成功したガンダムゲーム



発売日:1987年11月20日   発売元:バンダイ   値段:3300円
ディスク:両面   おすすめ度:3(やたらかかるCPUの思考時間…)
書き換え日:1988年1月20日   値段:500円   ディスク:両面


1985年、機動戦士Zガンダム放映のさなかに誕生したSDガンダム。 MSを2頭身(または3頭身)とする手法は、それよりも2年前に行われていたが(『チョロQダグラム』が初出)、『SD』という単語が出るのはSDガンダムが初めてであった。 SDの正式名称は、『スーパーディフォルメ』であり、今では単にSDと言う名で通っている。

最初に、SDガンダムの活躍の場となったのは、カードダスではなく塩ビ人形のほうで、当時は『キン肉マン』のキャラを塩ビにかたどった通称『キン消し』が大ブームとなっていた。 この時期、既にガンプラブームが巻き起こっていたため、塩ビ製のSD化されたMS通称『ガン消し』は、当初の予想をはるかに上回る人気を見せ、SDガンダムの人気の足がかりを得ることになる。

大人気のSDガンダムが、塩ビ、プラモ、漫画の次に活躍の場を得るのは、これも当時大人気となっていたFCであった。 しかし、1986年に発売されたガンダムゲーム『機動戦士Zガンダム ホットスクランブル』は、操作性の悪さと敵の攻撃の激しさ、 さらには3Dステージにおいて主役のZガンダムが登場せず、何故か要塞ステージが登場するなど、そもそもストーリー背景がそぐわないなどといった致命的な欠点が相まって、駄作との評価が下されてしまった。

その後、ガンダムシリーズのテレビ放映が、『ZZ』でいったん終了したが、それでもガンダムシリーズの人気は根強く、 特にSDガンダムの人気は高かったため、ZZからVまでの(TVシリーズとしての)空白を埋める役割を果たした。

この人気の元、やはりメインスポンサーのバンダイとして、SDガンダムのゲームを作りたいと考えたのだろう。 同時に、わかり難かったガンダムの世界観をわかりやすく、かつ奥深いものにしようとも考えたのかもしれない。 この発想は、1987年11月20日に発売された『SDガンダムワールド ガチャポン戦士スクランブルワールド』として実現する。


このゲームは、FC初の戦略SLGである。もちろん、FC初のSLGというわけではなく、SLGの要素を取り入れたゲームとして『ボコスカウォーズ』が挙げられる。

戦略SLGの定義は、まず初期配置されているユニットを動かし、進撃してくる敵ユニットを撃破しつつ本拠地を守りながら、近くにある都市や工場を占領、 敵との激突で消失したユニットを工場で生産し、別の年や工場を占領したり敵ユニットを撃破する。 そういった手順を繰り返し、最終的に敵の本拠地を占領するものである。

こういった戦略の基礎を作ったのは、1985年に発売された『大戦略』である。 今でも、大戦略のファンは多く、往年のSLGファンやミリタリーファンの心をつかんでいる。

その一方、大戦略を楽しめるハードがPCだったことに加えて、子供にはわからない兵器はもちろん、戦略そのものについても子供達には理解しがたいものであった。 これこそが、戦略SLGの大きな欠点であり、いずれFCに戦略SLGが上陸することを考え、 各ゲーム会社はFCのハードスペックや子供にもわかりやすいことを考慮し、FCにおける戦略SLGの考案を練り上げていった。

その一番手として名を上げたのが、キャラゲーで有名なバンダイ。 ガンダムシリーズのメインスポンサーだったバンダイは、既にガンダムの世界観が戦略SLGにふさわしいと言うことを知っていた。 戦略SLGではないが、PCゲームにおいてSLGの要素を取り入れたゲームが、バンダイの手によって発売されていたからだ。

しかし、FCにとっつきにくいとされているSLGを、FCユーザーにわかりやすくするためには、PC版におけるガンダムゲームのノウハウを、そのままもっていくわけにはいかなかった。 そこで、当時人気があったSDガンダムをメインとしつつ、ガンダムシリーズの雰囲気を壊さぬよう、戦略SLGの基礎をFCに移植した。


様々な試行錯誤を繰り返してできた、FC初の戦略SLGは、ガンダムの世界観にSDガンダムのキャラを置いたものだった。 マップは9つあるものの、タイトルのほとんどはあまりガンダムの世界観とは関係がない。

ただ、マップの雰囲気は、戦略SLGにふさわしいものとなっており、メインとなっているガンダムシリーズもSDガンダムをはじめとして、 翌年公開される『逆襲のシャア』の話題や、模型雑誌から端を発した『ガンダムセンチネル』など、まだまだ話題に事欠かなかった。

さて、バンダイが出した戦略SLGの評価は上々だった。 大戦略の世界観を、ガンダムの世界観に当てはめたことにより、当時の子供達特にガンダムファンに大いに受けた。

なんといっても、実在する兵器をMSに変更したことが大きい。 実在兵器はわからなくとも、MSはわかっているので、「今度はこのMSを生産しよう。」とか「このMSにはあのMSで対抗しよう。」とか、そういった戦略を立てることができた。

大戦略から培ってきた戦略もまた然り、ガンダムシリーズには様々な重要拠点が登場しており、 「次はジャブロー付近の工場を占領しよう。」とか「地球周辺のコロニーを占領しよう。」といった、ガンダムファンならではの考えがすぐ浮かんだ。 ただし、登場する軍に連邦・ジオンといった勢力は登場せず(関連あるキャラは、性格を反映してCPUが担当する)、赤軍と青軍に分かれるだけ。


戦略SLGにありがちなハンデも、しっかりと再現されており、地形による行動制限も再現されているが、さすがに地上戦用のMSが宇宙に飛び出したり、 水陸用MSが大気圏で大暴れしたりと、MSの設定に無茶があるが、それは大戦略のシステムをガンダムの世界観に置き換えている以上仕方がなかったのだろう。

しかも、肝心の戦闘部分が見るのではなく、操作するようになっている。つまり、戦闘に突入すると、ジャンルがACTに早代わりとなる。 だが、戦闘部分をアクションに置き換えたことで、大戦略とは違った戦況の変化を楽しめた。

例えば、ザクUでZを倒したり、ZZで弱小MS達を一掃することもできたが、結局はプレイヤーの腕で勝負が決まるので、 アクションに慣れているプレイヤーならともかく、そうでないプレイヤーはかなり苦戦を強いられた。

ちなみに登場するMSは、発売当時までの最新作であるZZまでとなっている(ゆえに、最強のMSはZZである)。 「MSの性能の違いが、戦力の決定差でないことを教えてやる!」、そんな赤い彗星のシャアの台詞が証明しているものといえよう。


このゲームに登場する戦場は、地上や宇宙はもちろん、水中や果ては大気圏も含まれる。 全てのMSが地形を問わず戦えるといっても、水中は水陸用MS以外だと動きが鈍くなったり、大気圏の場合地上戦用MSだと引力に引かれやすく、 画面下の大気圏に引っ張られてダメージを食らうといったり、登場する全てのMSの性能に無茶があるはいえ、史実における性能と設定は少し取り入れられている。

また、戦闘中には様々な障害物が飛来する一方、回復や一時停止といったこれも様々なアイテムも飛来してくる。 MSが弱かろうと自分の腕が弱かろうと、戦場の特性や障害物とアイテム如何では、強敵にも対抗できた。

もう1つ、強敵に対抗できる手段として、戦艦による間接攻撃がある。 このゲームに登場する戦艦は、原作と違ってMSを輸送できない上に、登場戦艦もホワイトベースだけだが、その代わり唯一間接攻撃できる存在であった。 使い道は、まずMSを間接攻撃で弱らせて、その後にMSをぶつけるというものであった。
実際、この手のパターンはかなり効き目があり、アクションに自信のないプレイヤーにとっては必須の戦略であった。 この他の戦略として、建物を防弾壁代わりにしたり、可変MSを操作している場合はMA形態に変形して相手をかく乱したりと、アクションとはいえそれ応の楽しみ方もある。

ところで、一般の戦略SLGでは、マップ上に出ているユニット全て動かすことができるが、このゲームではたった3つしか動かすことができない。 このため、都市や工場を占領するのか、それとも敵を撃破を優先するのか、ユニットを動かす際に先を見越す戦略が求められた。

相手も、同じく3体しか動かせないため、どのユニットを動かすのかといった駆け引きが楽しめた。 もっとも、せっかく強いMSを何体も生産したのに、全てのユニットが動かせないのは何事かといった不満はあったが。


他に不満の要素の1つとして、CPUの思考時間が長すぎることである。『カンガエテマース』と同時に、MS画像がシャッフルされ、それが延々と続く。
それが、数分程度ならいいのだが、場合によっては数十分かかることもある。この長さは、これも長いといわれた『桃太郎伝説』の戦闘時間よりかなり長い。

こうなってしまった理由として、媒体となるディスクカードの限界と、それによる敵味方の総ユニットの多さにより、いつもよりも増して思考時間が長くなったのではないだろうか。 プレイしている子供達にとって、これは非常に耐え難いものであり、暇つぶしのものがなければただただいらいらするだけであった。 これにより、前年の2月に鳴り物入りで登場したディスクシステムは、早くもロード時間の長さという欠点をさらけ出してしまう。

ただ、この他におけるゲームシステムの問題点は見つからず、大戦略のシステムもすんなりとプレイヤーに受け入れられた。 スクランブルウォーズの成功は、その後のFC産の戦略SLGの制作に影響を与えたことはいうまでもなく、2年後には書き換え専用として『マップコレクション』が登場。

内容は、第1弾の従来のマップに加えて、新たなマップが追加されたものである。 さらに同年には、続編の『カプセル戦記』が登場、さらに3年後にはSFCにてスクランブルウォーズのバージョンアップと呼ぶべきゲーム『SDガンダムX』が登場している。


今から数ヶ月前までは、ディスクシステムというゲーム機は持っていなかった。したがって、このゲームを初めてプレイしたのは、例のごとくいとこの家であった。 いとこは、ディスクシステムはもちろんのこと、なんとツインファミコンも持っていた。 このため、いとこは結構金持ちかと思っていたが、現在の状況からすればそうでもないのだが。

当時、ガンダムシリーズをかじり程度しか知らなかった私は、いとこがプレイしていたときにおけるMS同士の戦闘を見て、思わず驚いた。 同時に、弱小MSが強力MSを難なく撃破しているところも見て、これはなかなか面白そうだとも思った。

そこで、いとこが別のテレビとゲーム機で別のゲームをプレイしているのを見て、すかさずガチャポン戦士をプレイした。 SLGの何たるかは、全くわかっていなかった私であったが、いとこのプレイ状況を思い出して、工場を占領して敵軍を殲滅しながら本拠地をたたくということを、即座に理解した。


しかし、即座に理解したとはいえ、MSの戦闘時におけるアクションはからっきしなため、ハンデをやっても連戦連敗で、 時には強力なMSを配備しても負けてしまうことがあった。

悔しいことに、ディスクシステムを借りることができなかった私は、続編のカプセル戦記まで待たなければならなかったが、 その後続編をプレイした私は、それがカートリッジだったことと前作と比べてMSのデータバランスが取れていることもあって、もう前作をプレイすることはなかった。

ところで、このゲームの問題点の1つとなったCPUの思考時間の長さだが、いとこの家には様々な暇つぶしのものが数多くあったため、 それ程苦痛は感じなかったが、今ではできるだけレビューを早く書き上げるのに苦痛を感じるようになった。

もちろん、その間はレビューを書くことに集中したが、それでもレビューのネタに詰まったときに20分以上の思考時間をぶつけられた私は、思わず机に突っ伏した。 2004年に、ファミコンミニのディスクシステムセレクションのラインナップに、ガチャポン戦士があったのだが、前年に発売されたFC誕生20周年記念のムック内に、 このゲームのレビューが載っていたのだが、思考時間の長さを欠点に挙げていることも載っていたので、あるデパートでGBA版が売っているのを見たとき、そのことを思い出して買わなかった。

ゲームレビューをする際、まさかそんなに思考時間は長くないだろとも思っており、最初はそんなに時間はかからなかったが、 マップ内にある全てのユニットが多くなると、比例的に思考時間が長くなり、50体以上になると思考時間自体が悪夢に感じた。

思考時間と付き合うのか、それとも敵軍と付き合うのか、私はユニットが3つしか動かせない事実もあわせて、自軍勝利のために悩まされた。 どっちにしろ、パワーアップキット版のマップコレクションはともかくとして、第1作はもうプレイすることはない、続編よりも欠点が多いから…。



本日のまとめ



カンガエテマーース!

(07/4/18レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年5月3日
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