◆ファミコンウォーズ◆
マニアな戦略SLGを身近に



発売日:1988年8月12日   発売元:任天堂   ジャンル:SLG
値段:5500円   おすすめ度:3.5(データの消えやすさがなければ)


任天堂初のSLGにして、 現代(1980年代以降)ミリタリー性の強い戦略SLG。 戦略SLG自体、PCの『信長の野望』が有名だが、現代ミリタリー性が強いSLGと考えると、『大戦略』が有名となる。 ただし大戦略は、信長の野望が1983年に誕生した時より2年後に誕生した。

大戦略は、舞台が現代であることを生かして、現実にある様々な兵器を登場させるなどして、信長の野望の差別化を図った。 同時に、内政を一切なくし戦闘のみにして、そのマップに両軍の本拠地と様々な地形、兵器を生産できる工場や収入源の街を配置した。

生産できる兵器は、大まかに分けて陸上戦力、海上戦力、航空戦力の3つだが、兵器の名称となると実に星の数ほどの兵器が登場する。 それらをうまく使い分けて、相手側の戦力を殲滅させ、かつ敵の本拠地を占領すればクリアとなる。

これらの要素は、ミリタリーファンやSLGファンからも大いに好評があり、これ以後様々なシリーズが登場することになる。 その一方、当時のFCとしてはSLGは難解なジャンルの1つであり、登場する兵器にしてもFCユーザーにとってはわからないものばかりだった。

だが、大戦略発売から2年後の1987年、FCにおいてそれに近い内容のゲームが登場した。 バンダイの、『SDガンダムワールド ガチャポン戦士スクランブルウォーズ』がそれであった。

現代の戦略を、ガンダムの世界に置き換えたもので、大戦略の肝をSDガンダムなりにわかりやすくしており、 コロニーや街の収入でMSや戦艦を生産して、敵の戦力を撃滅しつつ他のコロニーなどを占拠、そして敵の本拠地をたたくといったことができた。

しかし、肝心の戦闘といえば、やはり普通のアクションであって、アクションが苦手な人やPCのSLGにはまった人にとっては、まだまだ物足りないものだった。 翌年になると、『信長の野望 全・国・版』をはじめとした、様々な歴史SLGがFCで世に出ることになったが、ミリタリーSLGはほとんど登場せず(ケムコの『砂漠の狐』程度)、 大戦略のFC版とも言うべき『ファミコンウォーズ』が登場したのは、歴史SLGの量産時期の合間であった。


任天堂が目指したSLGは、あくまでFCユーザーにわかりやすいものであった。 大戦略をベースにしつつ、PCのSLGにありがちな難解なシステムは極力排除し、戦略SLG本来の面白さを押し出すことにした。

だからこそ、大戦略にあった様々な兵器は、戦闘機Aとか戦車Bなどというように、兵器の登場を極力減らしたのだ。 勢力も2つだけで、レベル設定は一切なし(CPUのみ、思考力の調整、すなわち難易度設定ができた)の真剣勝負が楽しめた。

その2つの勢力は、レッドスター軍とブルームーン軍であり、難易度的にはレッドスター軍が若干低めとなっている。 というのも、このゲームはターン制を導入しており、レッドスター軍が先行する仕組みとなっているからである。

つまり、後行のブルームーン軍が若干難易度が高めとなっているが、両軍とも戦略を読まれる分、難易度が高いのはレッドスター軍ではないかと言う人もいる。 どっちにしろ、軍を有利に進めるのはプレイヤーの腕次第と言うわけだ。

マップ数は17(隠しマップ含む)と、一般の戦略SLGとほぼ同じ数だが、最初のマップは小さく最後のマップは大きい。 これは、小さいマップでゲームに登場する兵器の運用の基礎を学び(最初は陸上系)、徐々に航空系や艦船系の基礎を学んでいくという親切な構成となっているのである。

無論、いきなり難しいマップから始めるのもあり。 このゲームのマップは、自由にプレイすることも可能となっているからだ。


兵器については、陸上兵器は工場で、航空機系は空港、艦船系は港で生産できる。 種類は、一般の戦略SLGよりも少ないが、兵器の相性は大戦略に通じるものがある。

例えば、戦艦は海上からの強力な間接攻撃が売り物だが、爆撃機にはめっぽう弱かったり、その爆撃機は戦艦や戦車には強いものの、高射砲や対空ミサイルの餌食になりやすいなど。 また、強い兵器をAと格付けして、よりわかりやすくしてある。

全ての兵器にいえることだが、このゲームでは運の要素がないため、必ず兵器の相性と性能の差によって決まる。 よって、この後の戦略を見ることが求められており、小難しい要素を排除したとはいえ、なかなかに高い戦略を導入しているのではないだろうか。 コツがつかめば、いろんな戦略を立てられるので、例えマップをクリアしてもそこで終わりではなく、何度も楽しむことができる。

ところで、兵器においてなくてはならないものといえば、それは歩兵だろう。 値段が安い反面、ユニットとしては最弱であり、戦車や自走砲といった高価な兵器を守るべく、むなしく死んでいく哀れな存在となっている。

しかし、森林では移動コストの制限を受けないし、山岳では唯一移動できる兵器である。 しかも、施設を占領できるのは歩兵クラスのみだが、部隊数によっては占領に時間がかかる場合もある(最大数の場合は2ターンで完了)。

特に、その存在価値が重要視されるのは、陸続きのマップであろう。 安くて弱いとはいえ、大量に生産してひたひたと敵の本拠地に迫る勢いは、有無を言わさぬ迫力があり、まさに人海戦術ここにありというべきだ。


ゲーム内容ではないが、CMも大きな話題の種となった。 ゲームをプレイしていなくても、CMだけは頭の中に残っているという内容は、映画『愛と青春の旅立ち』と『フルメタル・ジャケット』をあわせて、なおかつパロディに仕立てあげている。 士官学校の訓練生達が、訓練中に声高らかに合唱し、最後に太った訓練生が鬼教官にしごかれるところまで、映画を見た人なら思わずにやりとさせるものばかりである。

そして、訓練生達が歌っている歌も映画のパロディであり、「ファミコンウォーズが出っるぞ〜(発売後は「出ったぞ〜」)♪」は、CMの内容とあわせてよりFCユーザーの記憶に残るものとなった。 当然だが、CMソングは全部吹き替えとなっている。 後のシリーズでも、それに倣ったパロディCMが登場し、ファミコンウォーズに及ばないものの、どれも視聴者の記憶に残るものとなった。

シンプルでわかりやすいゲーム内容と、一度見たら忘れられないCMは、この2つをあわせることで大きな人気を得られることとなり、任天堂初のSLGは大成功を収めた。 その上、2年後に発売される同じSLGの『ファイアーエンブレム』の礎を築くことにも成功、ファミコンウォーズ自体、シリーズをGBやSFCに広げることができた。


しかし、FCユーザーに合わせて作られたゲームゆえに、PCから付き合ってきたSLGのヘビーユーザー達からは、物足りない感じとなった。 登場兵器の種類の乏しさや、システムの簡略化によってPC版本来の敷居が失っている不安も、大いに関係があった。

それに加えて、セーブデータが消えやすいことも問題となった。 『ドラゴンクエストV』のように、データのスペースが3つではなくたった1つだったことも、その問題を大きくさせたといえる。

何しろ、データ消失頻度はドラクエVの数倍ほどであり、カセットを抜いただけでもデータが消えるといったこともあったらしい。 この事態に任天堂では、後期バージョンにおいてセーブデータの強化を図った。

これにより、データが消えやすくなる心配はなくなったが、当時はバッテリーバックアップの発展途上時期であり、 任天堂はディスクゲームに力を入れてたこともあって、この手のセーブ方式はまだまだ未熟だったのかもしれない(ディスクセーブがあったため)。


このゲームのレビューをするときに思ったことは、かなり長い文章になるのではないかということだ。 著名なゲームだし、このゲームに関する情報も色々あるわけだから、貼り付ける画像もかなりの数になるのではないかとも考えていた。

しかし書いてみると、思ったより書く内容が少なすぎて、貼り付ける画像も少なくなった。 その理由は、プレイしてすぐにわかった、内容がシンプルだったからだ。 その分、戦略(プレイスタイルともいう)の幅がとても大きく自由に兵器を運用できることも、戦略SLG初心者をのめりこませている。

個人的に、人海戦術がシンプルかつ強力な戦術だということを、このゲームで知った。 やられてもやられても、次のユニットが次から次へと敵に襲い掛かり、全てを飲み込んでいく。

これがゲームだからいいのだが、もしこれが現実の戦争だとしたら、気軽にこの戦術を使えまい。 現実の戦争は、ゲームのように都合のいいものばかりではないのだから。

爆撃機で戦艦を撃沈してガッツポーズを挙げたり、戦闘機が高射砲に撃墜されて歯軋りすることは、現実の戦争ではご法度だ。 ゲームといった架空の出来事だからこそ、気軽に戦略SLGを楽しむことができるのだから。

CMも、FCのCMにしてはゲームの宣伝のような感じではなく、本物の軍隊が鬼教官にしごかれながら訓練をする。 しかも、ゲーム画像が全くでないので、かすかに記憶に残っていた私がYouTubeでCM動画を見たとき、 「ああ、これだ」と納得しながらも、同時に思わず笑ってしまったが、最近のゲームCMはこういったものがあまりないことを考えると、このCMを作った人はかなり天才だと思った。 当然、ゲーム内容も面白くなければ意味がないのだが。

最後に、私が購入したバージョンは後期だったらしく、データが消えまくるような事態にはならなかった。 どれが前期でどれが後期なのかわからない私だったが、データ消失が一度もなく無事に隠しマップにたどり着いた時、運がよかったなと感じた。

もっとも、前期後期問わず、既にバッテリーバックアップの電池は寿命になってるから、全ての中古ゲームに内蔵されてる電池は、 ゲームショップが最新型の電池と交換したと考えるのが妥当かもしれない。



本日のまとめ



ウーン

(07/3/12レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年4月30日
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