◆デジタル・デビル物語 女神転生U◆
初のオリジナルメガテン第1弾



発売日:1990年4月6日   発売元:ナムコ   ジャンル:RPG
値段:7800円   おすすめ度:4.5(三体合体にはしびれた…)


199X年、最終戦争において、人類の歴史は終わりを告げた。世界の大都市が、戦争により壊滅し、東京もまた核兵器により崩壊してしまった。

時は流れて2036年、地上は東京に出現した次元の裂け目から現れた悪魔達によって蹂躙されていた。 生き残った人々は、核シェルターの避難を余儀なくされ、明日をも知れぬ生活におびえていた。 神の使いであるパズズは、混乱を収めるために地上へ赴くが、東京を支配する魔王バエルによって、コンピューターの中に封印された。

一方、京浜第3シェルターに住む少年2人は、体感RPGデビルバスターズをプレイしていた。 ミノタウロスを倒し、静玉を像に差し出してクリアしたその時、偶然にもこのコンピューターに封印されていたパズズが解放された。

パズズは2人に、東京が魔王バエルによって支配されていることを告げ、少年には悪魔召還プログラムを、その親友には魔法の力が与えられ、その力でバエルを倒すよう頼んだ。 またパズズは、2人を自分に対する救世主ではなく、人類に対する救世主ということも告げる。 そして、2人を助けながら地上を正しい方向に導くことを、自分の使命であるとも述べた。

折りしも、パズズの封印が解かれたことにより、シェルターにコンピューターの回線を通じて、悪魔が進入してきた。 覚悟を決めた2人は、武器庫にある武器を持ち出し、シェルターの地下1階に潜む死人使いネビロスを倒すことにした。 同時に、30年以上も閉ざされたエアロックを開け、戦争によって荒れ果てた地上へも、足を踏み入れることになったのである。

しかしパズズは、バエルと東京を二分しており、東京をわが手中に収めるにあたり、バエルの存在が邪魔なのだ。 そこで、少年2人をけしかけ、東京を自分のものにしようと目論んだのである。

だが、少年2人が戦いの旅を続けていくうちに、パズズの思惑は思わぬ形で狂ってしまう。 同時に、銀座の地下深くに眠っているかつての魔王が蘇ったとき、戦いは予期せぬ方向へ動き出す…。


女神転生シリーズの第2弾だが、前作が原作小説を基にしたものであるのに対し、こちらは原作を基にしない、いわゆるオリジナルストーリーとなっている。 いや、本当は小説版の設定も取り込む予定であったらしく、ゲーム雑誌では発売前の特集で、前作に登場したキャラが別の形で登場すると書いていたが、前作の主人公達は登場せず、重要人物が登場するのみであった。 よって、ほぼオリジナルストーリーで成り立っている、メガテンシリーズの第1弾でもあるのだ。

世界背景も、最終戦争(核戦争)後であり、2大宗教が大都市の覇権を争っているのだ。 メシア教とディーバ教がそれであり、この設定は『真・女神転生』シリーズ本編で活用されている(ディーバ教はガイア教に変わっているが、内容は同じ)。

メシア教は、キリスト教をモチーフとしているらしく、救世主(メシア)の降臨を信じているのに対し、ディーバ教は悪魔との共存を説いており、悪魔を討滅するメシア教とは折り合いが悪い。 そのディーバ教は、キリスト教の異端派を元にしているものと思われる。


システムも、シリーズの基礎をより固めたものといえる。魔法は、威力や効用こそ前作と同じだが、名称が変わった。 例えば、火炎系の魔法の場合、前作では『ボット』と呼ばれていたが、今作から『アギ』に変わった。もちろん、前作と名称が同じ魔法も登場している。

他に、2Dマップが新たに加わった。これは、前作が3Dマップのみで、それに慣れてないプレイヤーの、精神的ストレスが溜まったことに対する反省で搭載された。 しかも2Dでは、仲魔を連れて行く際、3Dと違ってマグネタイトを消費することがないため、前作のようにわざわざコンピューターを通じて、 仲魔を呼ぶ戻すの繰り返しといった、面倒なことをしなくてすむようになった(マッカも無駄に減ることがない)。

ただしこのゲームでは、ゲーム内で体感ゲームをプレイしているとはいえ、いきなり最初のマップが2Dということに戸惑ったプレイヤーは多かったはずだ。 その体感RPGのマップと、現実世界のマップの作りも全然違う。


合体については、前作の2体合体に加えて、新たに3体合体が加わった。 これで、レベルが低い仲魔でも、合体の利用価値が大きくなったといえるだろう。

装備品は、新たに銃が加わったが、まだ弾はなかった。 攻撃するときは、剣か銃のどちらかを選ぶことになっており、武器の耐性がある敵に対して、臨機応変に対応できるようになっている。

銃は、武器屋で手に入るが、剣は敵が落とした場合か宝箱に入っているの2通りのみで、武器屋で手に入ることができない。 このため、銃の耐性を持った敵に遭遇して、うんざりしたプレイヤーもいたはずだ。

もっとも、防具屋と道具屋といったショップは、前作から登場しているが、新たに今作からカジノが加わった。 内容は、スロット、ビッグ&スモール、数字当ての3つで、これとは別に自分の持っている仲魔と、対戦者の持っている悪魔と戦わせる格闘場も追加された。 ただし、コインは登場せず、自分の所持金を賭けるだけであったが。


戦闘については、敵の数がどのくらいいるのかを示すマークが、画面上部に付いた。 これを『オニ・マーク』と呼び、どの敵が瀕死なのかといったり、状態異常にかかっているのかというような情報もわかるようになった。

悪魔との会話も、バリエーションが大幅に増し、バラエティ豊かになった。 「あなたは あくまを ころして へーきなの?」とか「わたしの もってる マッカに きょうみが あるのか?」といった、独特のメッセージが話題となった。

仲魔にならない悪魔に話しかけても、その種族に応じたメッセージも見られる。 特にジャックフロストやジャックランタンは、姿とそれにふさわしい台詞で、シリーズを代表する悪魔の1人としてのし上がってくることになる。 なお、ジャックフロストとジャックランタンは、このゲームにおいて、種族が妖精ではなく外道であったことを付け加えておく。

その一方、仲魔にするときに、主人公とパートナーに魅力値という、見えないパラメータが大きく関わっており、物をあげてもそう簡単に仲間になることがない。 このため、どういう形で悪魔をこちら側に引き込むか、重要なポイントとなった。

その悪魔の種類も大幅に増え、狂人、天使、マシンといった新たな種族も登場した。 魔法も、先に挙げた名称変更や前作から登場したものに加えて、サマリカームやラクカジャといった新たな魔法も登場した一方、前作にあったサイ系魔法は省かれた。


グラフィックやBGMも、容量が4Mと前作より2倍増加した分豪華になった。 グラフィックは、当時アニメーターだった金子一馬氏が担当した。

金子氏の描いたキャラは、FCながらもリアルにそして緻密に描かれており、プレイヤーから賞賛の声が相次いだ。 その後金子氏は、数々のメガテンシリーズのキャラ原画を担当し、『(電脳)悪魔絵師』の異名を持つことになる。 もちろん金子氏は、他のゲームのキャラ原画や、ロボットイラストも描くことがあったのだが。

シナリオも、後のシリーズの基礎になった。 今まで信頼しあっていた友人が、旅をしているうちに仲違いするようになり、ある出来事をきっかけに袂を分かち合う。 もっとも、心の奥底では主人公を信頼していたようで、己の信念で主人公と共通する敵と先に戦って死んでいく。

これは、女神転生Uでのシナリオだが、信頼していたパートナーと死別するイベントは、2年前に発売された『ファイナルファンタジーU』とはまた違った衝撃であった。 4人パーティであるものの、死別するキャラは主にゲストキャラであり、一緒に戦う期間も短い一方、他の3人は最後まで戦うFFUなのに対して、 こちらは最後まで戦う人物が主人公たった1人で、一時的につくパートナーも、戦いに参加する期間が中途半端に長い。

ゆえに、せっかくここまで育ててきたキャラに対する愛情は、FFUよりも高く、それがさらにパートナーの別れの悲しさを強くするものとなった。

また、マルチシナリオとマルチエンディングの導入も、このゲームが初めてだった。 当時のRPGは、主に一本道でエンディングも1種類のみだった。

しかし女神転生Uは、ストーリの途中に現れる選択肢によって、この後のストーリーはもちろん、エンディングさえも変化するようになっている。 だから、1回クリアして終わりというわけではなく、別の選択肢を選ぶことでもう1つのストーリーを楽しめるという、1粒で2つの味が楽しめるもので、これもプレイヤーから評価を受けた。


だが、それ以上に評価されたのが、実在する神々と戦えるということだ。 メガテンシリーズに登場する悪魔は、様々な神話や伝記などに基づくものだが、中には人々が神と崇める悪魔も登場している。

この、神と崇められる悪魔が曲者で、主に世界の根幹に深く関わっているのだ。 場合によっては、人間が統治している都市の上の存在に位置しており、人間にとって逆らえない存在なのである。

この手の神々は、己のエゴに基づいて深く関与しているわけだから、主人公達はこれを真の悪とみなし血祭りにあげる。 神々のほとんどは、唯一神を元としているため、唯一神と深く関わっているキリスト教やイスラム教に対して、ある意味喧嘩を売ってるようなものである。 無宗教国家で、民主主義国家でもある日本だから、神々と戦えるという罰当たりなゲームを作ることができたのだ。

これが外国で誕生していたら、熱烈な信者や宗教家達の猛抗議を食らっていたに違いない。 最悪、発売中止(もしくはそれに近い処分を食らうかと思われる)になっていただろう。 2002年、『格闘超人』が発売されたとき、コーランを使った背景をめぐって、イスラム教諸団体による抗議の末、ソフトが回収され生産中止に追い込まれた。

20年近く前のゲームは、現在のゲームほどやさしくはなく、ゲームシステムも意地悪なものが多かったが、一方で制作姿勢に対する自由度は高かった。 だからこそ、宗教や風俗という名のハードルが存在せず、ゲーム会社は自由にゲームを作ることができた。

『魔界塔士Sa・Ga』でも、ラスボスが世界を作った神であり、プレイヤーは神の作ったゲームの駒に過ぎなかった。 その神を人間が倒す、言い換えれば唯一神を信者が倒すことと同じである。

倒しても、世界が崩壊することはなく、むしろより安定に向かっていることも、神の存在を否定するといえるのかもしれない。 とはいえ、絶対神と仮想であるが、本当に戦うことについて正直驚くプレイヤーもいた。


メガテンシリーズの基礎を固めた本作品だが、それの第1弾ゆえに、まだ不十分なところもいくつかあった。 3体合体は、悪魔の属性が『GOOD』のみ行われるため、3体のGOOD系悪魔は2体合体でしか作れないために手間がかかる。

例え、2体合体で3体のGOOD系悪魔を揃えたとしても、3体合体できるのが中盤辺りということもさらに手間のかかる要因ともなった。 その分、それでしか誕生できない悪魔も登場し、特殊な合体で強力な悪魔を手に入れたときの感動は、何よりも代えがたいものがあるのだが。

悪魔の属性が加わったのもこの作品からで、聖の属性を『GOOD』、邪の属性を『DARK』、その中間を『NEUTRAL』と呼び、DARK属性の悪魔はマグネタイトを持っている。 もちろん、DARK属性の悪魔は仲間にできないので、マグネタイトの所持の有無で見分けることができるし、GOOD属性の悪魔は敵として登場しない。 システムの影響はあまりないのだが、悪魔合体後における台詞『今後ともよろしく』が省かれたのも、メガテンファンとしては、がっかりするものだった。


マルチシナリオについては、2通りのシナリオしかない上に、正解ルートがわかる選択肢ももろわかりだった。 これを防ぐために、各出版社が出した攻略本には、正解と思わしきルートを載せていなかったと考えられるが、 正解ルートがプレイヤーの手によって判明されるや、これを知った他のプレイヤーも、攻略本が提示した選択肢と逆の選択をするようになった。

攻略本側が提示した選択肢よりも、エンディングの内容が緻密になっており、このルートでしか手に入らない仲魔もでるためであった。 これを知った開発元のアトラスは、リメイク制作の際に、正解以外のルートでも、そこでしか登場しない仲魔を加えることになった。

これとは関係ないが、序盤に手に入る経験値の量がかなり少なく、レベルが上がっていくにしたがって、取得できる経験値の量が、弱い敵ほど少なくなっている。 敵の攻撃がやたら激しいので、これについてはもう少し考えたほうがよかったのではないか。


ところで、このゲームの評価はというと、当然高い部類に入っており、『ドラゴンクエストW』、『ファイナルファンタジーV』、『ウィザードリィV』をあわせて、『4大RPG』とまで言わしめた。 良作ゲームが乱立した年であったが、4大RPGに入ったのは大きな収穫といえる。

前作の面白さの加えて、今作から加わった要素と前作の欠点の改良によって、前作のファンのみならず、新たなファンの開拓に大きく貢献した。 もちろん、先に挙げた欠点はあるものの、それでもユーザーを満足させるには十分であった。

今までのドラクエキラーのシリーズ作品といえば、FFシリーズだけであったが、この年から新たにメガテンシリーズも加わり、次第にドラクエの地位を脅かす存在にまで成長していった。 同時にこの年から、シリーズ化されたRPG同士がしのぎを削るという、RPG戦国時代の幕は開けることになる。

そして2年後には、『真・女神転生』が開発元のアトラスより発売され、メガテン信者をさらに増やすこととなる。 一方で、下請けのアトラスが抜けたナムコの受けた打撃は、意外と大きかったらしく、小粒な良作を出すものの、ユーザーが驚く大作は、数年間誕生することがなかった。


残念ながら私は、このゲームに対して、思い出や思い入れは全くない。 発売当時は、FFVやドラクエWといった、他のRPGに夢中になっていたからだ。 存在自体は、発売翌年において、学年誌の付録の小冊子で知ることができたが、それでも面白いと思うことはなかった。

真シリーズの特集や攻略記事において、私が少なからず興味を持ったのに対して、女神転生Uの存在を知ってもプレイしようと思わなかったのは、 存在を知るきっかけとなった小冊子の書かれている内容が乏しかったことに加えて、一般のRPGに慣れ親しんだことが、 3Dメインであるこのゲームをプレイするという気持ちになれなかったのかもしれない。

初めてプレイしたのも、ゲーム発売から17年後の今なのだが、昔のゲーム情報がネット上にあふれている現在で、 様々なゲームの情報を入手でき、もちろん女神転生Uの情報も得ることができた。

ただし、Uではなく前作のTをプレイしたのは、先にUをプレイするとTの書くレビューに差しさわりがくると思ったからである。 現在の私のレビュー姿勢は、シリーズ作品の場合、まず最初の作品からということにしている。 続編をプレイすると、どのシステムが変化したのかなど、自分の書くレビュー体質が混乱してしまうためである。


だから、3DダンジョンしかないTを最初にプレイしたわけだが、2Dマップに慣れた私にとって相当苦戦を強いられた。 ゲームをクリアしつつレビューも書き終えた私が、UをプレイしてTよりも面白いと思ったのは、2Dマップが新たに加わったことが大きい。

もちろん、容量が増えた分3Dマップも前作より増え、トラップやダンジョンの複雑さも増したが、攻略サイトさんが作ってくれた3Dマップと格闘する割合は、前作より減ったと思う。

それでも、真シリーズ以降の3Dマップと比べると、まだまだ難しいといわざるを得ない。 その理由として、オートマッピング機能が付属されていなかったことが大きい。

3Dマップしかない『真・女神転生if…』が、こんなにものめりこめたのは、オートマッピングのおかげであった。 幸運にも、リメイク版にもオートマッピング機能がついているので、せっかくのめりこめたUをこのまま放置するわけにもいかず、 Tについてもリメイク版における変更点も興味があるので、リメイク版をレビューする際にもう1度プレイしてみたい。



本日のまとめ



まっておったぞ こわっぱめ!

(07/3/8レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年4月29日
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