◆桃太郎伝説◆
初の和風RPG



発売日:1989年7月27日   発売元:任天堂   ジャンル:RPG
値段:6500円   おすすめ度:4(本編周りのネタがナイス)


昔々、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。おじいさんは、山へ芝刈りに行き、おばあさんは川へ洗濯をしにいきました。 そのおばあさんが、川で(全自動洗濯機を使って)洗濯をしていると、川上から桃が、ドンブラコ、ドンブラコと流れてきたではありませんか。

おじいさんとおばあさんは味見をするべく、(フォークとナイフを用意して)家でその大きな桃を、包丁で切ってみました。 すると、中から元気な男の子が飛び出してくるではありませんか。 おじいさんとおばあさんは、その男の子を『桃太郎』と名づけ、大事に育てました。

それから、桃太郎が6歳になったある日のこと、桃太郎は突然鬼ヶ島へ鬼退治に出かけると言い出しました。 桃太郎の、勇気ある態度に感動した(ケーキを食べてる)おじいさんと(コーヒーを飲んでる)おばあさんは、 桃太郎に100両と日本一の(を自称している)吉備団子を餞別として出しました。 しかし、その吉備団子は、桃太郎による鬼退治を予測していなかったため、たった1個しか作ってませんでした。

感動と同時に、慌てふためくおじいさんとおばあさんでしたが、桃太郎は「自分には、おじいさんとおばあさんから教わった勇気があるため、吉備団子は1個で十分!」と言いました。 おじいさんは、あちこちの村で鬼達による被害を受けていることを桃太郎に告げると、桃太郎はその勇気を燃やしました。 そして、おじいさんとおばあさんに見送られ、いざ鬼退治の旅に向かったのです。


ハドソンの著名シリーズの1つ、桃太郎シリーズの第1弾にして、桃太郎伝説シリーズの最初の作品、さらに『マル超シリーズ』の第3弾でもある。 往年のファンは、『桃伝』という愛称で親しまれているが、同じ桃太郎シリーズの1つである桃太郎電鉄シリーズの人気に押されて、逆にこちらがマイナー扱いを受けている。

今も、ハドソンと小学館のタッグは健在だが、それより20年近く前は、その絆がかなり強く、キャラバンシリーズでは必ず小学館も関わっていた。 ハドソンのゲームは、コロコロコミックをはじめとして、てれびくんや学年雑誌などに掲載され話題を呼んだが、桃太郎伝説だけは小学館以外の雑誌、週刊少年ジャンプに掲載された。

なぜ桃伝だけが、ジャンプに掲載されたのかというのは、制作スタッフ陣にジャンプと深く関わりのある人物が2人いたためであった。 その2人とは、さくまあくら氏に土居孝之氏で、さくま氏はゲームデザイン、土居氏はキャラデザインをそれぞれ担当した。


 この2人、ジャンプ放送局の重要人物であり、同時にジャンプ放送局もジャンプにとっては欠かせないコーナーの1つであった。 2人の知名度も、鳥山明氏や堀井雄二氏に並ぶほど高く、ゆえに桃伝がジャンプに掲載され、かつ大体的に紹介されるのは必然的であった。

しかも、この頃のジャンプは黄金時代を迎えており、ゲームの知名度を上げるには、コロコロよりもジャンプで掲載したほうがいいと判断したのだろう。 もっとも、コロコロではキャラバンブームが続いており、RPGに目を向ける余裕がなかったのかもしれないのだろうが。

そのコロコロでも、後にジャンプによる掲載と同じ規模で、桃伝を大体的に特集しており、ハドソンと小学館の絆は変わらなかった上に、時代が下るごとにそれが強大になった。 当時の読者は、ジャンプで最初に掲載されたので、非常に驚いた人もいたのだが、元々小学館と集英社は一ツ橋グループの1つなので、そのことは想定の範囲内だと思う高年層の読者もいた。

なお、制作スタッフ陣の中に、元サザンオールスターズの関口和之氏が加わっていた。 もちろん、関口氏は桃伝の音楽を担当したことも付け加えておく。


このゲームの世界観は、桃太郎をベースに様々なおとぎ話を融合させた和風なものとなっており、それに加えて現代に出る用語や文化などが合わさり、一種のパラレルワールドになっている。 桃太郎のお供をする3匹の動物について、犬は『花咲かじいさん』のポチをベースにしており、猿は『猿蟹合戦』の猿をモチーフ、雉については『舌切り雀』を雉に変更したものである。 桃太郎が行く村にしても、金太郎が登場したり、亀を助けると竜宮城へ連れて行ってもらえるなど、色々なおとぎ話のネタを無理なく融合させており、違和感なく他のおとぎ話の競演を楽しめる。

桃太郎が戦う敵については、おとぎ話のメインであるために、赤鬼や馬鬼といった桃太郎が戦った色々な鬼達が主に登場するが、中には白熊や鎧蜥蜴といった動物も敵として登場する。 しかし、敵との戦いに勝っても、「〜をこらしめた」というメッセージが出るため、死の概念がない。

桃太郎についても同様で、小さい子供が親しむ話である以上、死を避ける狙いがあったのだろう。 その戦闘は、ドラゴンクエストTよろしく、1対1のタイマンとなっており、たまに旅の途中で仲間にした、3匹のお供による援護もある。

戦闘システムのみならず、色々なところでもドラクエに似たシステムなどが散見される。 元々さくま氏は、ジャンプ内で堀井氏と旧知の仲であり、桃伝は堀井氏の師事を受けて制作されたものである。 だから、ドラクエに似ている要素があるのは当然なのだが、もちろん桃伝ならではのオリジナル要素もいくつか存在している。


先の戦闘システムにも、桃伝独自の要素があるが、それは敵がしゃべるということである。 今でこそ、そういったRPGはかなり存在するものの、昔は敵も見方もだんまりと戦闘に集中する場合が多かった。

『女神転生』のように、敵と会話するゲームもあったが、それは『会話する』を選択しなければ一般のRPG同様、だんまりと戦闘するだけであった。 桃伝は、敵に対して個性的な攻撃方法を用意させ、静かな戦闘に活を入れた。 ダメージの量の半分を身代わりに受けたり、桃太郎の攻撃をバットで打ち返したりと、プレイヤーにとって記憶に残るものが多い。

ドラクエの呪文に相当する術は、レベルが上がるごとに覚えるものではなく、各地に住んでいる仙人から修行を受けて、それに打ち勝つと仙人から術を授かることができる。 大部分が、戦闘によるものなので、レベルが低くても運や装備次第で打ち勝つ確率が高く、低レベルで強力な術を身につけるプレイヤーもいた。

術の内容も、ゲーム独自のテイストが光っているものが多く、その中の1つ『ひえんの術』は、ドラクエシリーズのルーラに先駆けて、一度立ち寄った町や村に一瞬で戻れる魔法を採用している。 ただし一瞬にではなく、その村へ高速移動しながらとなっているが、まだ立ち寄ってない場所へも通過するので、これから立ち寄る場所へ行くためのルート考察の予習にもなった。

この他にも、道具やお金を預ける十一屋(といちや)があり、お金を長い間預けていると、利息がついてこちらが儲かるものになっている。 いわば銀行に似たものであるが、預けるときは100両単位で預けられないものの、引き出すときは利息のために1両単位で引き出せる。

また、全国チェーンのすずめのお宿も登場した。 早い話が、村と村の中継地点に置かれている休憩所のようなもので、ひえんの術で行けないものの、多くのプレイヤーはすずめのつづらなどにお世話になったのではないだろうか。


しかし、それ以上に注目を受けたのが、脱力なギャグの数々であった。 特に、村の人々のほとんどが寒いギャグを連発するほほえみの村は、桃伝を語る上で外せない要素の1つとなった。 売り物については、『ゴールド』で支払う店や、明らかにウケを狙った商品が登場している。

周辺に出る敵も、『オニぎり』や『じゃきチェーン』といった笑える名前のものが登場し、中には『きんぎんパールプレゼントのオニ』といった、名前や攻撃方法も明らかにふざけたものがいる。 桃伝において、ほほえみの村周辺はギャグエリアと呼ばれており、周辺に登場する敵のBGMもそのエリア専用になっている。

もちろん、ほほえみの村以外でもギャグの要素は十分にある。 たびだちの村の畑にいる、しゃべるウンチがその代表で、他にも蓬莱の玉を入手する際に訪れる10体の並び地蔵でも、イベントが終わると10体ごとに10通りの駄洒落を言う。 このウンチ、続編以降にもたびたび登場し、桃鉄シリーズでも必ず登場するなど、お下劣ギャグを名物の1つとしている桃太郎シリーズでは、なくてはならないものであった。

ギャグ以外における、桃伝いや桃太郎シリーズになくてはならない要素が存在する。 それは女湯であり、希望の都にある銭湯で発生するイベントである。 6歳や7歳といった低年齢で、女湯に入ることができ、専用グラフィックも用意されている。

このゲームでは、時間の概念がいち早く導入され、数時間経つと桃太郎の年齢が1歳年齢が上がる仕組みとなっている。 当然、時間の概念といっても、ドラクエシリーズやスーパーモンキーのように、昼と夜が時間経過で交互に来るというわけではない。


銭湯がある希望の都は、ゲーム中盤でしかたどり着けないので、(男性)プレイヤーの多くが短時間での希望の都到着を目指すようになった、 鬼の総大将(ラスボス)を懲らしめるという最大の目標をそっちのけで。 当然、時間の概念は、桃太郎の年齢でしか表せないため、何時間経ったのかは正確にはわからないのだが、それでも友達とのタイムアタックには一役買ったといえるだろう。

しかし、敵を懲らしめたときに手に入る経験値と金が、全体的に少ない上に、物価もやたら高いといった欠点が見受けられる。 特に序盤は、経験値や金がたったの1しかもらえないことも多々ある。

それが、何ターンもかかってようやく戦闘が終了したのならなおさらで、経験値と金は一般のRPGと違って変動するので、わずかしかもらえないこともあれば多くもらえることもある。 長めの戦闘になることも不思議ではなく、それに輪をかけて桃太郎の攻撃が貧弱なのだ。例え、3匹のお供を加えることによって、上昇するパラメータを合わせても。


パスワードも、微妙な扱いとなった。2Mという(当時としては)大容量の時代に、ドラクエUの52文字の半分近く(最大29文字)ですむのはよかったが、 数々の単純で短いパスワードが複数発見されたことにより、攻略にあらぬ方向性を示すこととなった。

『ばいなりら』や『おにのばか』が代表的で、それよりも有名なのが『ふ』という、たった一文字で最強になるというものであった。 全ての術を覚えている上に、ひえんの術で行けるところは全て行けるようになり、重要物も全て集めているので、すぐにラスボスの元へ行くことができた。

年齢はかなりの高齢であるが、すぐに0歳になるために、すぐ希望の都で女湯に入ることもできるので、完全に本編を逸脱したプレイが可能であった。 1度クリアしているならともかく、まだクリアしていない人がこれを使うことで、せっかくのスタッフの苦労を無に帰するのではないかといった懸念も生まれた。

このパスワード、桃伝では『天の声』と呼ばれており、PCエンジンの外付けセーブユニットも『天の声2』や『天の声BANK』と呼ばれた商品が登場し、 良くも悪くもプレイヤーの記憶に残るものであったことは間違いないだろう。序盤でこそ苦労するゲームだが、 普通にプレイしていれば全滅する危険性が少ないうえに、レベルが上がると必ず体力と術を全回復できる。

敵の先制攻撃があるものの、ターンは必ずこちらが先制するので、序盤さえ乗り切れば、後はとんとん拍子で進むことができる。 たまに連続攻撃が決まることがあり、場合によっては3連続で決まることもある。


このゲームは、子供向けの要素が強かったので、売り上げはミリオンに迫る勢いを見せ、桃伝シリーズの礎を築くことができた。 先に挙げた欠点は、大人の観点から見たものであり、メイン層である子供達にはそれ程欠点という感じには見えなかった。

戦闘やレベルアップまでの時間が長いという点は、元々暇をもてあましている子供には欠点には思えず(もちろん苦痛と感じる子供もいただろう)、 くだらないギャグについてはそれを好む世代なので、むしろ欠点ではなかった。

そのためだろうか、それに親しんだ子供達は、20年近くの時を経て成長するので、桃伝のような子供じみた要素を思い出し、その反動で一気にトラウマになってしまう。 慣れ親しむほど、その反動が強くなり、桃伝に対する否定的な意見が多く存在している。 だが、PSなどでリメイクされていることから、このゲームに対する人全てが、否定的な意見を持っていないこともまた事実。

最後に、桃伝に登場したキャラのほとんどは、桃鉄シリーズに出演している。 ゲーム冒頭や、術をかけるときしかしゃべらなかった桃太郎が、めいいっぱいしゃべったり、 3匹のお供もそれぞれ『いぬやま』、『さるかわ』、『きじた』という名前が与えられた。 スリの銀次や貧乏神も(『SUPER』から)登場し、どちらも桃伝同様プレイヤーを大いに悩ませる種となった。


私は、色々なゲームをいとこの家でプレイしてきたが、桃伝も例外ではなく、これも結構プレイしたことがある。 最初の頃は、まじめにプレイして、パスワードもちゃんと写し取りながらプレイしていた。 戦闘時間が長かったり、時間に見合った経験値や金をもらえなかったといった欠点は思っておらず、普通にじっくりとプレイしていた。

しかし、いとこが最強パスワードを入力しているところを、私が偶然に見たときから、私のプレイ態度に狂いが生じた。 何しろ、敵がすぐ逃げるほどに強く、レベル(このゲームでは『段』と呼ぶ)がラスボスを倒すレベルよりも高いため、あっさりとはいかなかったもののラスボスを倒すことができた。

ひえんの術が、どういうものかを知っていた私は、適当な村を回ってこのゲームの世界観を味わっていたが、 私がプレイしたときは序盤までしか進んでいなかったので、序盤までのプレイと最強パスワードの間のストーリーがわからなかった。 最強パスワードでは、既に物語は終盤になっていたからだ。

最強パスワードで楽をした私は、自力でプレイしたところの続きをすることがないまま、尻つぼみという形で幕を下ろした。 それから、数々の桃伝シリーズが登場し、ほとんどの作品をプレイしていたが、全てクリアすることがないまま投げ出した。


桃伝初代を、真剣にプレイする気になったのは、プレイしてから20年近く後の現在。 HP更新の時間に余裕がある私は、昔投げ出した自力でのプレイを行い、ようやくクリアすることができた。

もちろん、希望の都の温泉に入ることができたが、それまでには相当の苦労を要した。 やはり序盤は、経験値や金が思ったよりも手に入らないため、低年齢で女湯に入れるのかと気をもんでいたが、意外とうまくいった。

ギャグについては、苦笑するものがあったが、主にクスクスと笑えるものが多かった。 さすがに、ギャハハと笑えるものはほとんどなかったが、大人になれば白けるギャグも未だに笑えるものが多く、心のどこかにまだ子供らしさがあるのかなとちょっと思ってしまった。

でも、ウンチといったお下劣ネタは笑うことがなかった。大の大人が、そんなことで喜ぶのは恥ずかしいと思ったのかも。



本日のまとめ



「いしださんが いいました ”いし”だ!!」

(07/3/3レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年4月29日
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