◆ドラゴンクエストW 導かれし者たち◆
5章のオムニバスRPG



1990年2月11日   発売元:エニックス   ジャンル:RPG
値段:8500円   おすすめ度:4(クリフトのザラキ連発…)


バトランド王国で、次々と勃発する子供の失踪事件に対処するため、国王は王宮戦士全員に、事件の解決を命じる。 その王宮戦士の中には、ひときわ名高い男ライアンの姿があった。

時同じくして、サントハイム王国では国王の娘アリーナが、力試しの旅と称して城を飛び出し、後から追いかけてきた神官のクリフトとじいのブライと共に旅立った。 王国内の事件を、次々に解決していくアリーナだったが、父が何者かによって一時声が出せなくなったことにより、力試しの旅は一変する。 その後、エンドールの武闘大会で優勝した後に、サントハイム城に戻ったアリーナ一行が見たものは、無人と化した城内であった。

しばらく後、レイクナバの武器屋で働いていたトルネコという商人は、いつか自分の店を持つという夢にあこがれ、金儲けの旅に出かけた。 しかし、ようやく自分の店を手に入れたトルネコの心は、設けた金で人々を幸せにすることに変わっていった。 それから、エンドール王国ブランカ王国間の海底トンネルを開通させた後、店を妻に任せて再び旅に出た。

モンバーバラでは、踊り子で姉のマーニャが占い師で妹のミネアと共に、父エドガンを殺した仇を討つため、キングレオ城までやってきた。 だが、仇の上の存在に返り討ちにあい、再び仇を討つべく力を蓄えるため、港町ハバリアからエンドールへ渡ることになる。

それぞれ、違う目的で旅をしてきた7人であったが、全員ある人物の元に集まることになる。 その人物は、世間と隔絶された山奥の村に住む若者であり、村の人々と平和に暮らしていたある日、魔族の軍団に襲撃される。

村の人々を皆殺しにされた若者は、復讐のため冒険の旅に出た。 そして、若者と共通点の目的を持つ7人の仲間達と出会い、共通点の先に見えた地獄の帝王の存在を倒すために旅を続ける。

その後、天空城にたどり着いた若者達は、天空城の主マスタードラゴンから、真の目的が出される。 それは、かつて進化の秘法を作り出し、今蘇ろうとしている地獄の帝王エスタークを倒し、その邪悪な秘法をも葬ることであった。

だが、エスタークを蘇らせようとするピサロは、進化の秘法を使い人間を地上から抹殺しようともくろんでいた。 ピサロは、人間から救ったエルフが殺されてしまったことにより、人間を悪の存在と決め付けていたのだ…。


ドラゴンクエストシリーズ第4作目で、FC最後の作品。 V発売から、2年という長い時を経ての発売だったが、実はゲーム内容そのものは数ヶ月前に完成していたという。

それが、1990年の2月11日という発売日になったのは、カートリッジに内蔵されているROMがかなり不足していたので、 前作以上の人気があった場合、完成時期に発売することは無謀という考えがあったのだろう。

一方特集展開は、ジャンプやゲーム雑誌を中心として、ゲーム画面や新システムなどを載せていったが、ゲーム完成時期前後ゆえなのか、その量や詳細はなかなかに多かった。 だが、数度の発売延期により発売時期が延びたり、PCエンジンやメガドライブ、ゲームボーイの人気が上がったりしたことにより、特集の規模は徐々に小さくなっていった。 それでも、発売日が決定するや、再びWに対する期待感が高まっていき、発売当日にはV発売と同様に各地のゲーム販売店に長蛇の列ができた。


Wから、天空シリーズという新シリーズを登場させた。 やはり、TからVまでのロトシリーズ同様、天空の武具関連のストーリーということで、天空人とマスタードラゴン、天空城といった関連キャラや建物が新たに登場した。

ストーリーも、主役キャラクターを中心としたものになっており、5章仕立てのオムニバス形式となっている。 その1章ごとの主人公も違っており、それらの主人公は最後の5章で集合する。 4章までに登場する主人公と仲間を、勇者に集う『導かれし者』と称しており、勇者は旅の途中で導かれし者達を集めることが、最初の目的である。

こういう形のストーリー仕立てにしたのは、総指揮者の堀井雄二氏が、「1つの長いストーリーでは、必ずだれてしまう。」ということで、 同時に仲間になるキャラを主人公としたことにより、ストーリーに幅を持たせることができた。

例えば、他の章が一般のRPG風であるに対して、トルネコの章は主にお金を集めることを目的としており、 モンスターが落とすアイテムがこの章のみ豪華になっていて(おおみみずが鋼の剣を落としたりすることなど)、他の章とは趣が異なっている。 2章と4章では、女性を主人公(場合によっては5章も)としていることも、バラエティ豊かにしている1つといえる。

しかし、前作までにある勧善懲悪とは、少々違っている。 勇者が戦う相手は、育った村を滅ぼした魔族だが、その首領であるピサロは愛し合っていたエルフを人間に殺されたために、人間を滅ぼそうとしている。

つまり、正義側である人間にも悪い心を持つ者は存在し、逆に悪側である魔族にも全てが悪い心を持っているわけではないことを物語っており、 ゲームをクリアしてもほっとするより、虚しい気持ちにさせるストーリー展開も、他のシリーズとは一線を画しているといえよう。 当然、主人公達は魔族側の事情など全く知らないので、それがさらにエンディングにおける虚しさを大きくさせている。


システム面においては、様々な便利さが導入されたことであろう。 新たに加わった扉コマンドは、扉を開ける際わざわざ扉に合う鍵を持っている仲間の道具欄を開く必要があったが、Wではそのような手間がなくなった。

武器と防具を扱う店は、それぞれ武器屋と防具屋に別れ、どちらもこの作品からアイテムを買い取るようになった。 前作から登場した預かり所は、全てのアイテムの引き取り料が10ゴールド均一となった。 テーブル越しでも、相手と話すことができるのも便利さの1つであろう。

Uから登場した教会は、内容が大幅にパワーアップした。 次のレベルが上がるまでの経験値を聞ける『おつげをきく』と、セーブができる『おいのりをする』という2つの選択肢が現れたことが大きい。

これは、前作で王と話すことでセーブができたが、夜になると城に入れなくなるので、セーブするには夜以外でしなければならなかった。 Wでは、それを教会が引き受けることで、夜でもセーブができるようになった。このシステムは好評で、後のシリーズでもその手法が採用されている。


アイテムでも、新たに宝の地図が加わった。 これは、世界地図の機能も併せ持っているので、前作までなかった現在位置の確認ができるようになった。

戦闘においても、その便利さが発揮されている。その第1として挙げられるのが、AI戦闘だろう。 これは、5章でないとできないのだが、様々な作戦を仲間に下すことができ、使い方次第によっては仲間全員に直接命令を下す手間が省ける。 例えば、『ガンガンいこうぜ』は回復をあまりせず攻撃主体を行う作戦で、『いのちをだいじに』はその逆、『じゅもんつかうな』は全く呪文を使わない作戦である。

そして、ROM内にあるAIが働いて、何度も戦闘を行うごとによってAIが学習していく仕組みとなっているが、それはボスモンスター戦ではあまり発揮しなかった。 なんといっても、クリフトがボスには効かないザラキを連発してしまい、行動やMPが無駄になってしまうので、プレイヤーがAI戦闘を批判するときに必ず挙げられる要素の1つとなっている。


これらの便利さは、主に容量が前作の2倍に増えたことといえるだろう。 そう、当時としては最大規模の4Mを誇り、『エニックスのゲーム全て足し合わせても、まだ余る』という宣伝が雑誌に載っていることから、 いかに4Mが膨大な容量だったことを物語っている。

容量が増えた分、新システムなども新たに導入された。 馬車システムは、4人を馬車の外に出して他は待機させるもので、戦闘などにおける不測の事態に対処でき、入れ替えはどんなときでも行うとができる。 もちろん、勇者以外を先頭に出すことも可能で、場合によっては勇者以外の仲間を先頭に出さなければストーリーが進展しないこともある。

つまり、レベルが低いキャラを馬車の中に待機させることで、その仲間を死の危険にさらさなくて済むようになる一方、町などではメンバーの入れ替えができず、 塔や馬車が入れないダンジョンでは、それに加えて経験値が入らないので、馬車が長期的にいないことを考慮したパーティ編成を迫られることとなった。 だが、最大9人の大所帯で旅をするという楽しみがあったことは事実。

NPCキャラの導入も、新システムの1つといっていい。 NPCの独自の行動で戦闘を行う上に、アイテムを持たせられず装備も取り外せない、全く成長できない、NPC以外が全滅しても全滅扱いになるなど、 不満は色々あるが、未熟な主人公をサポートするには心強い仲間であることには違いないし、NPCキャラの1人であるホイミスライムのホイミンは、 続編以降のモンスターのネーミングの中で最もポピュラーなものとなっている。


Uから登場した娯楽施設も、大幅にパワーアップしている。 前作から登場した格闘場をはじめとして、スロット、ポーカーが加わり、これらをあわせてカジノという形で登場した。 カジノという形で登場したのも、これが初めてであり、格闘場、スロット、ポーカーは続編以降におけるカジノ(またはそれに準じた娯楽施設)の基本となった。

なお、遊ぶにはゴールドをコインに換金しなければならず、コインをゴールドに戻すことができないが、 景品は一般の店では買えない物ばかりで、中でもはぐれメタルの盾は5万枚を必要とする分、それに見合った防御力を出してくれる。

この、はぐれメタルシリーズもWから登場し、天空の武具より強い武具として注目を集め、続編以降でも名称は違えど、それと同等の能力の武具は登場している。

前作までにも、ロトの武具より強いものは存在したが、ほとんどは呪われた物ばかりだったので、呪われずかつ強力な武具が一斉に登場することはめったになかった。 もちろん、優れた景品は多いため、冒険そっちのけでカジノに没頭するプレイヤーが多発した。

小さなメダルも、Wから加わったお遊び要素の1つ。 世界のどこかに、小さなメダルを集めている王様の城があり、そこでメダルを献上し一定数集めると、王様から貴重なアイテムをもらうことができる。

ただし、落ちてるメダルはそんなに多くなく、今まで集めたメダルと『交換』するので、どれと交換するのかプレイヤーの悩みどころであった。 当然、メダルを集めなければならないので、つぼやタンスをくまなく調べ、メダルが入っていないか血眼になったプレイヤーもいた。 つぼやタンスを調べられるのも、この作品が初めてであり、新たな捜索の幅が広がった。


グラフィックも、パワーアップを果たしているが、なんといっても外観的に立体化した建物が多く登場したことにある。 それをよくあらわしているのが、第1章における子供誘拐事件を解決するため、ライアンがバトランド城から出るときだろう。

城を出ると同時に、画面が切り替わり城の門が少しずつ開いて、ようやく全て開き終わってからライアンが登場する場面は、 冒険の第一歩を踏み出したと同時に、城がこんなに大きかったのかと改めてプレイヤーを驚かせた。

グラフィックとは関係ないが、FCで初めてモザイク機能が搭載した。 ラナルータや闇のランプで、昼と夜を入れ替える際に発生するものだが、これも新鮮さを感じるものであった。

モンスターや呪文のバリエーションは、わずかしか増加した程度だが、どちらも印象に残るものとなっている。 モンスターは、アニメーションするものが登場したことにある。

既に、敵がアニメーションするRPGはいくつか登場しているが、ドラクエシリーズはWが初である。 ハバリア付近に生息する合体スライムは、8匹になると突然合体して巨大なスライム(キングスライム)になるが、その過程もFCにしては細かいほどにアニメーションしている。


呪文も、数種類程度増えたのみだが、その中でミナディンという呪文に注目が集まった。 ミナディンは、勇者のみが覚える呪文の1つで、全員のMPを15消費して放つものだが、威力がとてつもなく大きい反面1体しか狙えないことと、 その他の仲間が行動できないということ、呪文が使えないキャラが1人でもいると使えないという欠点をもつ。 だが、ゲーム雑誌の報道はそういった欠点よりも長所をクローズアップしすぎたために、勇者がミナディンを覚えた途端、それをメインに使うプレイヤーが結構いたという。

アイテムも、モンスターや呪文同様印象に残るものが多い。 宝の地図のほかに、時間(ターン)を最初まで戻す時の砂や、全滅しても所持金が減らない鉄の金庫など、便利なアイテムが続々登場した。 これらも、ゲーム雑誌が大体的に特集したことが、印象に残る一因であった。


しかし、それでもスタッフの思い描いたものにはならなかった。 海のモンスター数種類が、ごく一部の地域にしか現れない、もしくは没になってしまったこと。 そして何より、シナリオも未完成のまま発売せざるを得なかった。

本来は、やはりWも勧善懲悪主義でシナリオが完成する予定であった。 もちろん、純粋な勧善懲悪ではないものの、ラスボスを倒すと虚しくなるものではなく、スカッとするシナリオであった。

こうなった理由はただ1つ、やはり容量の都合であった。 4Mという容量は、確かに当時としては大きかったが、同年にはそれに匹敵する容量を持つゲームが次々と現れ、翌年にはそれ以上の容量を持つゲームが登場した。 わずかの間に、大容量のゲームが次々と登場したことは、日本の技術が日進月歩の状態にあることを示していた。


とはいえ、売り上げは前作に次ぐ約310万本を記録し、連続してトリプルミリオンを達成した。 同時に、クソゲーを一緒に売る抱き合わせ商法も、V同様多発したが、発売日を休日にしたおかげで、学校をサボってまでゲームを買いに行くことはなくなった。

ただ、評価よりも不評のほうが多く聞かれたが、それは大きく分けて2つ。 1つは、AI戦闘の不備やストーリーに深みが増した反面、自由度が前作より小さくなったといった、いわゆるドラクエWの問題。 もう1つは、同年にドラクエWに単独で立ち向かえるゲームが増えてきたことであった。

特に後者は、『ファイナルファンタジーV』をはじめとした大作が次々と登場し、それに次ぐゲームも多く登場し、 もはやRPG界は、ドラクエの天下ではないことを印象付けることとなった。 前者も、気球という空飛ぶ乗り物が登場したとはいえ、モンスターや呪文などといったシステムの基本はVとほとんど変わっていなかった。

リメイク発売も、FC版発売から11年後という遅さであった。 しかしその分、スタッフが思い描いていた要素は、全てリメイク版に導入され、シナリオも最終的に他のシリーズ同様勧善懲悪になり、 FC版をプレイした人にとって、ようやく11年前の因縁に終止符が打たれることになった。


私が、本格的にドラクエシリーズをプレイしたのは、このWといっても過言ではない。 最初にプレイしたのは、これもいとこの家で発売から2ヶ月程度経過してからであったが、 RPGの面白さやファミマガでWの期待感に胸を膨らませた私は、いとこがクリアするやすぐさま借りてプレイした。 加えて攻略本も借りたが、それほどまでに私はWをプレイしてみたかったのだ。

とはいえ、我が家ではゲームプレイ時間に制限がかけられていたので、長時間プレイすることができなかったが、それでも5章まで進んですべての仲間を加えることができた。 最終的に、ラスボスを倒したのだが、当時子供だった私はラスボスの悲劇などわかるわけがなく、むしろ終わってほっとした感じだった。

それから、10年近く後の大学生活中、FCをプレイしたくなった私は、他のゲームをプレイするがてら、もう1度Wをプレイすることになった。 今度は、Vもプレイすることになったので、W一辺倒というわけには行かなかったが、このときもクリアした。 同時に、ようやくラスボスの悲劇を垣間見ることができたが、さすがに悲しくなることはなかった(納得はしたけど)。

リメイク版をプレイしたのは、それの発売当日で、地方で購入したためか長蛇の列は見られず、普通に買うことができた。 リメイク版のシステムは、Zに準じているため、Zをプレイした私は難なくクリアすることができた。 そして、真の物語である第6章をクリアして、ようやくFC版における胸のつっかえが取れた思いとなった。

FC版と比べると、売り上げが大幅に落ちているとはいえ、私はFC版よりもリメイク版を推したくなった。 確かにFC版も面白いが、勧善懲悪こそがドラクエシリーズの醍醐味の1つなのだから、個人的にはもう少し早くリメイク版を出してほしかった。


ところで、レビューする際にまたFC版をプレイしたのだが、いつも同様カジノにはまったり、はぐれメタル狩りに没頭したりと、冒険が中断することがかなりあった。 個人的に楽しかったのは、トルネコが活躍する第3章であり、弱い敵が鋼の剣を落としていく様は、私を感動させてくれた。

その分、カジノにおけるコインの換金は、他の章と比べてべらぼうに高かったが、それでも結構はまっていった。 そのカジノでは、後の冒険を楽にするために、コインを20万枚以上貯めていた。 昔は、格闘場で儲けていたが(50枚まで賭けられるので)、今ではポーカーで儲けている(ダブルアップで)。

メタル狩りも、昔同様王家の墓の最初のところでやっていた。 やはり、はぐれメタルが8匹出るのは爽快で、それを数匹倒すとさらに爽快感が増した。

いとこも、王家の墓でメタル狩りをやっていて、私は何か特別なことでもあるのかなと昔思っていたのだが、まさにその通りだった。 数時間のメタル狩りで、レベルは50近くまでになった。 後はとんとん拍子で、一気にラスボスのいるところまで突っ走ったが、それゆえにどこかあっけなかったのだが。


本日のまとめ



こ これは キングレオさま! なにとぞ このことは デスピサロさまには ごないみつに……。

(07/2/25レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年4月25日
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