◆ドラゴンクエストV そして伝説へ…◆
ロトシリーズ三部作完結編



発売日:1988年2月10日   発売元:エニックス   ジャンル:RPG
値段:5900円   おすすめ度:4(サブタイトル通りの伝説へ…)


はるかなる昔、全世界はアリアハンという国が治めていたが、大きな内乱によりいくつかの国に分裂、大勢力を誇っていたアリアハンは、一王国にまで落ちぶれてしまった。 それに乗じて、今度は魔王バラモスが世界を支配しようと暗躍する。

これを知った、アリアハンに住む勇敢な男オルテガが、バラモス討伐のために旅立った。 しかし、ネクロゴンド地方における魔物との戦いで、魔物共に火山の火口に落ち、そのまま行方不明となった。

それから月日が流れ、オルテガの子供が16歳の誕生日を迎えたある日、その子供は母親に連れられて、アリアハンの王に謁見する。 王は、父の意思を継ぎ、闇の国から現れた魔王バラモスを倒し、真の平和を取り戻してほしいと告げ、勇者の位を授けた。

かくして、オルテガの子供は勇者と名乗り、アリアハンの城下町にあるルイーダの酒場で仲間を集め、打倒バラモスの旅に出た。 勇者の一行は、世界各地に潜むバラモスの軍勢を次々と打ち破り、遂にネクロゴンド地方にあるバラモスの居城に攻め入り、バラモスを討ち取り平和を取り戻した。

こうして、勇者達はアリアハンに凱旋したが、悪の気配はまだ消えてはおらず、今度は大魔王ゾーマが世界支配に乗り出す。 ゾーマは、勇者が倒したバラモスの上の存在であり、バラモスはゾーマの部下の1人に過ぎなかった。

勇者達は、ゾーマを倒し今度こそ世界に平和を取り戻すため、バラモスの居城の東にある大穴(『ギアガの大穴』)から、ゾーマが支配する世界へとたどり着いた。 そこは、ゾーマによって暗闇に閉ざされた世界であり、後に伝説となる世界でもあった…。


ドラクエシリーズの第3作目であり、ドラクエシリーズの絶頂期と呼べる作品。 前作登場から、V登場までの間は1年であり、その間は前作以上に各ゲーム雑誌ともVの特集を大体的に組んでいた。

もちろん、週刊少年ジャンプも負けておらず、ファミコン神拳を中心にVの特集を組んだ。 『ドラゴンボール』では、前作のモンスターがゲスト出演するなど、ドラクエシリーズの人気はますます高まっていた。

当然、それらを読む読者の間にも、Vの期待はいやおうなく高まった。 また、前作発売の年はRPGブームが巻き起こっており、『女神転生』や『ファイナルファンタジー』といったドラクエシリーズに勝るとも劣らずな作品も登場した。

これも、ドラクエVの前評判を引き上げる要因ともなり、発売日が近づくにつれてその期待もさらに高まっていった。 そして1988年2月10日、ドラクエVが発売され、売り上げや人気はサブタイトル通りの伝説を打ち立てたのであった。


今作の特徴として、まず最初に挙げられるのは、パーティ制の充実と拡大だろう。 前作では、その制度が誕生し、戦士型、バランス型、魔法使い型といった基本が登場したが、今作は職業という形で登場した。

バランス型を勇者とするならば、先の2つに加えて回復補助系呪文を得意とする僧侶や、 すばやさとパワーが持ち味の武闘家、さらには能力が平均的でアイテムの鑑定ができる商人といった変り種な職業も登場した。

仲間を集めるには、ルイーダの酒場の2階で仲間の登録をしてから、1階でようやく仲間に加えることができる。 初期に入っている仲間を加えることができるが、それでも自分がほしいキャラを加えるために、あえて2階で登録を何回もするプレイヤーが多かった。

これを書くに、『ファイナルファンタジー』や『ウィザードリィ』とそっくりのような気もするが(FFTでは並び順も含む)、 そちらが職業を変更できないのに対して、ドラクエVはゲーム中盤に登場するダーマ神殿という場所で、職業を変更できる。

これを転職と呼び、レベル20以上でどんな職業でも変更することができる。 ただし、賢者だけはあるアイテムがなければ転職できず、そのまま転職できるのは能力値がどの職業よりも低く、戦闘もあまり役に立たない遊び人だけである。

当然、レベルは1になる上に能力値も大幅に下がるが、レベル1の状態にはならないので、鍛え方や転職の仕方によっては、力が強く魔法も扱える最強の戦士にすることもできる。 パーティのバリエーションも豊富になり、戦士、僧侶、魔法使いといったバランスタイプから、戦士一色のパワータイプや魔法使い一色のタイプもあれば、全部遊び人にするということも可能。

さらには、2,3人のパーティや、勇者1人旅ということもできる。その上、性別も選べるので、性別によっては装備できないものも登場した。 この手の自由なパーティ編成は、プレイヤーの心を捉えることに成功し、FFT以上の自由度を生み出すことに成功した。


フィールドの変化も、前作以上に大きく変わった。それをよくあらわしているのが、時間の概念だろう。 既に、『元祖西遊記スーパーモンキー大冒険』でもそういったシステムが取り入れられているが、クソゲーだったためにその斬新なシステムは注目されることがなかった。

ドラクエVは、それをあらわすためにも、夜のみでしか出ないモンスターを登場させたり、町や城でも昼と夜とではその内容がまるっきり違ってくる。 例えば、夜になると城に入れなくなったり、夜しか営業していない店があったりなどがある。

しかも、夜になるとフィールドにおけるモンスター出現率がアップする。 山といった、モンスター発生確率が高いところを歩くことで、それがさらに大幅にアップする。 モンスターに出会わずに、安全にフィールドを歩くプレイヤーや、レベル上げをするプレイヤーにとっても、これは非常に重要だった。

他にも、今作から始まった要素は色々あり、次作以降でも受け継がれている。 前作にあった福引所は廃止され、新たに格闘場が設けられた。

これは、モンスター同士と戦わせ、どのモンスターが勝つのか自分の所持金を賭けるもので、利用次第によっては序盤で大金持ちになることもできる。 この格闘場は人気があったため、次のW以降でもその娯楽場は採用されている。


アリアハンの、ルイーダーの酒場のみにある預かり所も、この作品から登場した。 なんといっても、お金のほかに道具を預けられるということが便利であったが、道具のみ引き取り料がかかった。

乗り物については、前作登場の船に加えて、不死鳥のラーミアが新たに登場した。 ラーミアは、FFTの飛空挺と同じく、どんな地形も無条件で飛び越える乗り物で、 そのときに出るBGM『おおぞらをとぶ』は、ドラクエシリーズの名曲の1つとして語り継がれている。 もちろん、世界各地に散らばる6つのオーブがなければラーミアは誕生しないので、Vでの船入手より困難で、ゾーマの支配する世界では使用できない。

セーブ方式も、前作までのパスワードから、バッテリーバックアップに変更された。 『冒険の書』という名で呼ばれ、わざわざパスワードを必死で写し取るということもなくなり、間違うことすらなくなった。 さらに、3つまで空きデータが用意してあり、短時間のプレイでも手軽に保存できることでも、復活の呪文の地獄から救われたプレイヤーが数多くいた。


数々の新要素も、プレイヤーにとっては衝撃的だったが、何より衝撃的だったのが、バラモス撃破後に突入する別の世界であった。 入った途端、どこかで聴いたようなBGMが流れ、少し進んでみればこれもどこかで見たような地形と町並み。 そう、1,2作に出ていた地方、アレフガルドにそっくり、いやそのものであると。

大陸の大きさも、1作目と同じだが、町並みがちょっと変わっていたり、昼夜の概念がなかったりと、中身が少々違っている。 問題のロト関連も、武具こそは名前が出ていないが、これもロト三部作であることに気づいた人もいたし、中にはこの作品が完結編だということにも気づいた人もいた。

こういった、正の衝撃もかなりあったのだが、負の衝撃もかなりあったことも事実。 なんといっても、首都圏のゲームショップやゲームを扱う家電量販店に、発売前日からドラクエVを買い求める人による長い行列ができたことは有名。 しかもその中には、学校に行くはずの子供達の姿もあった、発売日が平日なのにもかかわらず。


当然、ドラクエVは全国の店で売り切れが続発したが、買いそびれてしまった人の中には、買えた人を狙っての引ったくりやカツアゲといった犯罪行為に走り、 そのまま逮捕・補導された人も珍しくなく、補導された人の中には、学校をサボってまで手に入れたドラクエV購入者もいた。 このドラクエ飢餓は、数々の新聞やテレビ局のニュースでも連日話題となり、ドラクエと関係のない人達まで巻き込むものとなった。

負の話題ではないが、正の話題でもなくその中間、しかしこれも大きな話題となった。それは、攻略本や特集記事における報道規制。 各ゲーム雑誌は、攻略や特集を毎回派手に行っていたが、バラモス撃破以降の攻略や特集は一切行っていなかった。

これは、開発元のエニックスが各出版社に、バラモス撃破以降のストーリー紹介を出さないように要請したことが理由であり、 エニックス自ら出す攻略本でさえも、終盤の攻略どころか紹介すら出さなかった(あくまでラスボスはバラモスという形で書かれていた)。

おそらく、ゲーム終盤こそがストーリーの最大の見せ場であり、ロトシリーズの重要な繋がりの1つであったため、この感動をプレイヤー自身で味わってほしいと思ったのだろう。


しかし、当時のバッテリーバックアップはまだ発展途上状態にあったため、やたらデータが消えやすく、3つ同じデータで保存しても安心できなかった。 FFTが、セーブ1つの代わりにデータの保存性を強固なものにしている一方、ドラクエVは保存できるセーブが3つある代わりに、データは消えやすかった。

データが消える手順は、呪いの武具を装備したときのBGMが流れた後に、『お気の毒ですが…』というメッセージが出る仕組みとなっている。 後期バージョンでは、バッテリーバックアップの質も向上したので、データが頻繁に消えることはなくなったが、それでも乱暴に扱えば消えてしまうという危険性はあった。
呪文やモンスターのバリエーションも、大幅に増加した。 呪文については、攻撃回復などの全体がけの種類が増えたが、何よりも移動時における呪文が2つ登場したのが大きい。 それは、ルーラとリレミトの2つで、以降のドラクエシリーズにとっては欠かせないものとなった。

ルーラは、一度行ったことがある町や村、城に一瞬で移動でき(一部除く)、ダンジョン以外ならどこでも使用できるもので、 1作目から登場しているキメラの翼も、ルーラと同じ効果となった(前作までは、最後にパスワードを聞いたところしか移動できなかった)。 リレミトは、ダンジョン奥深くでも一瞬で脱出できる呪文で、2つとも重要な呪文となった。


モンスターは、初めてトラップ型モンスターを登場させたことが大きい。人食い箱やミミックがそれであり、シリーズが進むごとにその種類も増えていった。

それを防ぐために、インパスという呪文も登場した。モンスターが潜んでいるなら赤、アイテムなら青、金なら黄色に光るもので、 リレミト同様ダンジョンで重宝したが、塵も積もれば山になると同じように、インパスも使いすぎると残りMPも少なくなってしまうので、 トラップ覚悟で次々に宝箱を開けてみるか、MPを犠牲にしてでも慎重にするべきか、プレイヤーの判断が問われた。


エニックスが、自信を持って送り出すドラクエシリーズの最新作は、ドラクエシリーズ最高の約380万本の売り上げを見せ、ドラクエシリーズとしてのブランドを確定させた。 当時の最新作であり、ロトシリーズの最終作である作品であったが、開発スタッフにとってはまだまだ未練が残るものだったのかもしれない。

Wから登場する、小さなメダルといった没になったアイテムの他に、バラモス戦専用などのBGM数種類、 グラフィックや設定が出ていながら登場できなかったモンスター達など、通称没データが多く残ってしまったのだ。

さらに、OPタイトルやそのBGMがなく、前作までとは違った貧相なOPに、ただただ呆然したプレイヤーもいただろう。 その上、オルテガと魔物の死闘から火山の火口に落ちるまでのプロローグもカットされた。 理由はただ1つ、容量が限界に達してしまったため。

当時は、2Mという容量はかなり多かったが、それでもスタッフの構想全てをROM内に詰め込めるわけがなく、一部は涙を呑んで削除せざるを得なかった。 3Mのゲームもまだ発売されておらず、あまり発売日を遅らせるわけにはいかないと考えたのかもしれない(発売日までに発売延期があった)。

とはいえ、シリーズ初であるゲームクリア後のお楽しみといえる、勇者抜きのパーティ編成は、 クリアしてもまだまだプレイヤーを飽きさせないというスタッフの表れであり、Vならではの要素を残したことは、 没データはあくまでサブ扱いという考えともいえるのかもしれない。

それから8年後に発売されたリメイク版は、没になったモンスター達を除いて、ほとんどが採用されつつ新たなシステムを搭載し、スタッフの思い通りに近いドラクエVに仕上がった。

なお、ゲーム前半までの世界が、地球の世界地図のパロディ(堀井氏のアイデアで、制作中に旅したヨーロッパがヒントだったという)だったことと、 勇者の父オルテガの姿が盗賊カンダダとそっくり(覆面にパンツ一丁と片手に斧)という話題もあったことを付け加えておく。

そのオルテガ、最後の最後にようやく対面することができた父の姿が、変態の域を超えてるものだったことに、プレイヤーはどんな心境だったのだろうか。


私が、ドラクエVを体験したのは、発売から間もない頃という早さだった。もちろん、私は購入しておらず、購入したいとこの家で初めて体験した。 ただ、いとこがプレイしているのを見ていたのがほとんどで、プレイはほとんどやっていなかったような記憶がある。

しかもいとこのほうは、もうアレフガルドに着いてしまったようで、少しながらゲーム雑誌を読んでドラクエVのことを知っていた私は、もう終盤まで来ているのかとただ驚くしかなかった。 全てのゲーム雑誌は、アレフガルドの事を載せていなかったので、すぐにゲーム終盤だということを私は理解した、まだ自分でバラモスを倒していないのに…。

本格的にプレイしたのは、それから約10年後の大学生活中において。 一人暮らしをする際、1台しかゲームを使ってはならないということを親に言われていたので、PSやSFC本体を実家に置いてきて、 ニューファミコンと所持しているソフト全て、一人暮らしのアパートに持ち込んだが、そのアパートの近くにあるゲームショップで数本中古ゲームを購入した。
その中に、ドラクエVも混じっていたので、飽きたときの次いでという考えでプレイした。

しかし、転職の面白さと別の角度から見たアレフガルドの衝撃は、今更ながらに私を驚かせてくれた。 その上、転職を重ねるごとに強くなっていく仲間や、次々と発展していく商人の町を見て、ますますプレイするようになった。

結果、慢性的な寝不足に陥り、大学の卒業にも影響が出た。 同時に、これがドラクエVの魔力なのかと、これも今更ながらに思い知らされた。

なお、当時に頻発したデータの消去がなかったのは、多分購入したソフトが後期バージョンだったではないかと思う。


それから数年後、GBのリメイク版を知った私は、中古でこれを購入しプレイした。 FC版をプレイしてからしばらく時が経っていたが、プレイして当時の思い出が蘇ったが、新しく搭載されたシステムがFC版より便利にさせてくれたため、リメイク版のほうが面白く感じた。 そして、FC版をプレイしたときの記憶を、過去の遺物にしてくれるのに十分であった。

リメイク版プレイからさらに数年後の現在、久々にFC版をプレイしたが、これはリメイク版の記憶が薄れてきたことに加えて、 ネット上にある数々のドラクエVのプレイ記録があるのを見て、プレイする意欲がわいてきたことによるものだった。

ある程度ストーリーを知っていたので、攻略サイトを見ながらゲームを進めたのだが、それがリメイク版のものだったので、 黄金の爪やダンジョン内の宝箱の中身などがFC版とまるっきり違っており、クリアするのにかなりの手間を要した。

ようやくゾーマを倒してクリアしたとはいえ、リュックの中にしまってある携帯ゲームソフト達を見て、 その中にあったGB版を手に取ったとき、蘇ったはずの大学時代にプレイしたときの記憶は、再び過去のものとなってしまった。

あわせて、よほどのことがない限り、前2作同様2度とFC版をプレイすることがないだろうということも…。



本日のまとめ



おうさま! おしろから でては きけんで ございます。

(07/2/21レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年4月25日
◆目次に戻る◆


inserted by FC2 system