◆ドラゴンクエストU 悪霊の神々◆
ロンダルキアの悪夢



発売日:1987年1月26日   発売元:エニックス   ジャンル:RPG
値段:5500円   おすすめ度:4(人探しの恐怖…)


かつて、アレフガルトと呼ばれた地域に、世界の支配をたくらむ者がいた。 その名は竜王、龍族の末裔と噂された彼は、ラダトームの姫君ローラと光の玉を奪い、世界を恐怖に陥れた。 だが、勇者ロトの血を受け継ぐ勇者により、ローラ姫は救い出され、竜王もまた勇者により倒されたのである。

勇者は、その後ローラ姫と結婚し、3人の子供が誕生した。 3人の子供は、アレフガルドの外つまり新たな土地に、3つの王国を造り上げた。 3人のうち、長男はローレシア王国を、次男はサマルトリア王国、長男と次男より年下の長女はムーンブルク王国を、それぞれ建国したのだ。

こうして、ロトの血を受け継がれた3つの王国により、実に100年の永きにわたり平和が保たれたのである。

しかし、その平和も長くは続かなかった。ある人物により、世界征服の野望が開かれたのである。 その名はハーゴン。彼は、破壊をつかさどる邪神シドーを崇める教団の大神官であり、目的はシドーの復活であった。 その手始めとして、ロトの血を受けついた3つの王国のうち、ムーンブルクを攻撃し滅亡させた。

ハーゴンの軍勢から、命からがら逃げ出せたムーンブルクの兵士の1人は、傷つきながらもローレシアにたどり着き、ローレシア王にその一部始終を話すと、その場で息絶えた。 このままでは、ローレシアもサマルトリアもいずれムーンブルクと同じことになると考えた王は、息子の王子に打倒ハーゴンを命じた。

さらに王は、王子1人だけでハーゴンとその軍団を倒すことが不可能だとも考えており、サマルトリアの王子とムーンブルクの王女を味方につけることも命じたのだ。 かくして王子は、同じロトの血を受け継ぐ王子と王女を味方につけ、打倒ハーゴンとシドー復活阻止を胸に刻み、今ローレシア城を後にした。


ドラゴンクエストシリーズの第2弾で、前作誕生からなんと8ヶ月という異例の速さで登場した。 この間における、ドラクエUの情報はジャンプのみならず、各ゲーム雑誌もこぞって特集記事を組んでいた。 これは、前作におけるRPGの面白さが、いまさらながらに気づいたことの表れでもあった。

前作を、大体的に特集していたのはジャンプのみで、他のゲーム雑誌はメインがACT系やSTG系であり、ジャンプほどあまり特集していなかった。 それが、約150万本の売り上げを記録したことにより、RPGの面白さに気づかされたゲーム雑誌は、ドラクエUの情報をどの雑誌よりも面白く紹介した。

当然、読者の期待感はいやおうなく高まり、その甲斐あって前作を上回る、約240万本の売り上げを記録した。 この、ドラクエ人気を目の当たりにしたゲーム会社は、こぞってドラクエ風のRPGに会社独自のアイデアを取り入れ、この年におけるRPGブームを作り出した。


前作から8ヶ月しか経っていないとはいえ、その内容は前作をはるかに上回るものだった。 『かいだん』コマンドが削除され、階段を自動的に上り下りができたり、『はなす』コマンドにしても方角を選択せずに話すことができる。 方角選択の削除は、後ろ向きや横向きのバージョンが、全てのキャラに採用されたことの証でもあり、前作における面倒さがなくなった。

内容はそれだけではなく、今作の容量は前作の約2倍に及び、それに比例して冒険の量も大幅に増えていった。 なんといっても、MAPの広さが前作の約4倍となり、アレフガルドの外をメインとしている。 ゆえに、そのアレフガルドは前作よりも縮小された上に、施設がラダトーム城と竜王の城しかないのが寂しいが。

当然、前作のように1つの大陸を歩くだけではなく、乗り物を使って他の大陸を移動する。
それは船であり、ゲーム中盤で手に入る代物で、陸路で行けないところもこれでらくらくとたどり着くことができた。


だが、航海の必需品である地図は登場しないため、大海原にあこがれて航海した挙句、いつの間にか現在地点がわからずに、別の意味での後悔をすることになった。 しかも、ゲームクリアにおける重要アイテムの1つも、海のどこかに存在するので、プレイヤー達に海の冒険とは何たるかを叩き込んだに違いない。

冒険を手助けするものといえば、新たに加わった教会や旅の扉もそうだ。 教会は、新たに加わった呪いや毒といった状態異常を回復させたり、死んだ仲間を生き返らせたりすることができる。

このうち、毒(町以外、4歩進むごとに体力が1減る)はともかくとして呪いは、前作にもその手のアイテムはあったが(呪いのベルトなど)、 装備するものではないし売ることもできるので、呪いにかかったわけではなかった。

しかし、この作品から装備することによって、呪われた挙句外すこともできないので、教会で呪いを解いてもらうしかなくなった。


仲間の復活は、レベルに応じた料金を支払うことでできるようになっており、レベルが高くなるほど支払う料金も増えていく。 旅の扉も、新たに導入されたワープゾーンであり、主に祠に設置されており、船では行けないところへ行ける補助的な存在である。

それと、福引所なる店が登場するが、これはこの作品以降に登場する、ストーリーとは関係ない遊び場を導入したといっていい。 福引所は、道具屋で買ったときや一部のモンスターから、たまに手に入ることがある福引券を、この店で使うことによって、 様々なアイテムが手に入るチャンスがあり、目玉であるゴールドカードは品物を4分の3で買えるもので、ゴールドカード欲しさに福引に熱中するプレイヤーもいた。

また、パーティの存在もこの作品から始まった。 前作は、最後まで一人旅だったが、今作は仲間を引き連れることができるので、いつも以上に冒険が楽になった。 ただ、パーティにおける役割分担をしておかないと、とたんに棺桶の行進に早変わりとなる。

さらに、敵もパーティーを組むので、どの敵から倒すのかという戦略も必要となった。 その上、仲間が見つかる間の一人旅でも、敵のパーティに遭遇する。


それと、呪文のバリエーションも大幅に増加した。 ホイミやギラといった、従来の呪文のほかに、バギやイオナズンといった新しい呪文も増えた。 その中の1つ『パルプンテ』は、何が起こるかわからないという謎に満ちた呪文だった。

あるときは経験値が倍に、またあるときは敵味方ともMP0になるというように、当時のプレイヤーにとってはまさに謎だらけだったが、 その謎だらけゆえに多くのプレイヤーに支持された。

現に、ドラクエシリーズ(T〜Vまで)の攻略本に、『Dr.パルプンテ』という老人が登場し(ドラゴンボールの亀仙人にそっくり)、 攻略に行き詰ったプレイヤーにヒントを与える存在となっているし、 『桃太郎電鉄』シリーズ(初代除く)ではパルプンテのパロディであり、内容もほぼ同じの『ぱろぷんてカード』なるものも登場している。

しかしながら、前作から8ヶ月という短い期間で発売されたためか、前作にあった戦闘の背景がなくなってしまった (ROM容量の限界で、Wまで背景なしの状態が続いた)といった、様々な問題点が発生したこともまた事実。

主に、パスワード(復活の呪文)と人探しなどが挙げられるが、パスワードは前作の20文字から倍以上の52文字に増加し、 一心不乱にパスワードを写し取る光景が見られた。

ただ、入力して途中から始めれば、戦闘で減ったHPやMPは全回復するし、 仲間の復活もレベルに応じて金額分だけしてくれる(所持金が料金未満だと、所持金全て失って全員復活)。


それと、パスワードを教えてくれる人と話したところからはじめられることを逆利用して、その場でパスワードが手に入るアイテムが登場した。 それは『復活の玉』といい、これを使って手に入れたパスワードを入力することで、パスワードを手に入れた場所から始められるというものである。

これは、現代におけるどこでもセーブと同じようなものであり、 例えハーゴンを倒した後でもこのアイテムを使うことが可能で、うまくいけばラスボス前に全回復で戦えるという優れものであった。

とはいえ、手に入れるには敵から入手しなければならず、その確率もほんの数%しかない。 このアイテムを落とすはぐれメタルも、逃げ足がとても速いため、まさしくレア中のレアである。

例え手に入れたとしても、パスワード入力をしくじってしまえばそれまでであったが。


人探しにおいては、サマルトリアの王子と盗賊ラゴスの捜索が挙げられる。

サマルトリアの王子は、国王から勇者の泉の洞窟に向かったといわれて、そこに向かうと泉の主の神官が既にローレシアに向かったといわれ、 そこへ行ってみればまた行き違いで、ローレシア王からサマルトリアに戻ったといわれて再び訪れてみれば、 またしてもいないばかりか、王からどこへ向かったのかわからないといわれる始末であった。

結局、サマルトリア南のリリザという村にいることが判明するが、それまでに多くの時間を無駄にする羽目となった。 もちろん、経験値や金は時間をかけた分多く手に入るが、プレイ時間が自由にならないプレイヤーにとってはかなりの苦痛になった。

その王子、戦士と魔法使いの能力を受け継いだオールマイティ型だが、それが中途半端な能力に加えて、ネーミングセンスが他のキャラよりもすさまじかった。
プレイヤーは、ローレシアの王子以外は名前をつけられず、ローレシアの王子の名前によって自動的に決まる仕組みとなっている。 サマルトリアの王子の名前は数種類あるが、その中の2つ『助さん』と『とんぬら』は、当時のプレイヤーに予想以上の「?」を出させるのに十分だった。

助さんは、だれもが場違いだということは認識していたが、とんぬらについてはスタッフの意図がわからず、 あまりにもかっこ悪い名前だったため、サマルトリアの王子の能力やのんびりとした性格と合わせて、間抜けな名前というイメージが定着していった。 しかも、『とんぬら』は『とんずら』という言葉にも似ていたので、「とんぬらがとんずらした」という駄洒落も横行した。

この『とんぬら』の由来は、北欧神話に登場する雷神トールの名前が訛った説(トール→トヌラ→トンヌラ)と、 堀井雄二氏がドラクエを制作する際に使われていた資料の著者がトンヌラという名前だった説の2つがあり、 現在トール変換説が有力視されているが、いずれもファンタジーに関わりがあることだけは確かである。

後に『とんぬら』という名前は、他のドラクエシリーズにも登場し、次第にプレイヤーの間で蔑称から愛称へと変化していった。


そんな、サマルトリアの王子捜索も序の口に思えるほどに、盗賊ラゴスの捜索は想像を絶するものであった。 ペルポイの町にいることはわかっているのだが、そのためにはあるものを手に入れないことには始まらない上に、どこで手に入るのかわからない。

買ったとしても、肝心のラゴスがどこに隠れているのかわからないため、サマルトリアの王子以上にラゴス捜索に時間がかかり、完全に足止めを食らったプレイヤーがかなりいた。 これを『ラゴスパニック』と呼び、当時のプレイヤーにとっては嫌な思い出の1つとなっている。

アイテム捜索も、人探しに似たものとなっている。 ほとんどが、イベントに重要なものであり、世界各地に散らばる5つの紋章をはじめとして、 先ほどにも挙げた船の財宝と牢屋の鍵、ラーの鏡は、町の住民から得られる最低限のヒントで探さなければならなかった。

そして、捜索全般さえ序の口にしてしまう、高難度の要素があった。 それは、ゲーム終盤の最大の山場であるロンダルキアの洞窟。

全7層の広大さに加え、強敵の大挙出現、多数の落とし穴や無限ループといったトラップを施されたダンジョンは、ドラクエシリーズ屈指の難易度であった。 当然、パスワードを聞ける場所がないので(復活の玉は別)、プレイヤーはパスワードが聞けるロンダルキアの祠まで、地獄の苦しみを味わうことになった。


だが、そんな欠点も喜んで受け入れられた背景には、ゲーム雑誌が毎回特集記事を組んでいたことに加えて、昔のユーザーは自力で解くことが美学の1つであった。 だからこそ、最低限のヒントを頼りに目的の人(物)を発見したとき、そこに湧き出る喜びや感動は言葉で表せないほど大きいものであった。

ゆえに、自力で謎を解こうとするがために、睡眠時間の減少といった生活リズムが狂ってしまったのは否めないが。  この美学は、同じ堀井雄二氏による『ポートピア連続殺人事件』における、ネタバレのタブーと通じるものがある。 攻略本にしても、全てのマップを詳細に載せる一方、ゲーム攻略のヒントは住民の出すものよりも、少し一歩進んだ程度しかなかった。

RPGブームの年の最初の作品なためか、長所と短所が多く入り混じり、その結果荒削りな内容となったものの、RPG初のダブルミリオンを記録、第3弾に大きく弾みがついた。 この頃から、ドラクエUが売り切れる店もあったが、その続編ではそれがさらに拡大し、やがては社会問題にまで悪化していくことになった。


最後に、前作に登場したアレフガルド関連の話題を書いておきたい。 前作をプレイした人にとって、アレフガルトが出てくる以上、かつて訪れた町はどうなっているのかというのも楽しみの1つだった。 前作から登場している施設は、ラダトーム城と竜王の城のみで、前作から100年経っているためか、内装ががらりと変わっている。

もちろん子孫もいるが、ラダトーム王の子孫はハーゴンを恐れてどこかに隠れている一方、 竜王の子孫はハーゴンの敵は味方ということで、主人公達に協力してくれるほど肝が据わっている。

縮小されたとはいえ、その後についてのニーズに答えあげられたのは、前作を作ったエニックスならではであった。 アレフガルドに2つの城しかなかったのは、ROM容量の都合もあるだろうが、竜王の子孫が「メルキドのあった所…」と述べたことは、 100年の間にアレフガルドの外に出た住民が多かったため、ラダトーム以外寂れてしまったということをあらわしているのかもしれない。

その16年後には、『ドラゴンクエストモンスターズ キャラバンハート』で、Uの時代からさらに数百年後のアレフガルドを拝見することができるが、 ある怪人の魔力によって今まで海の底に沈められており、住民も全くいなかった。

アレフガルド関連で、もう1つ忘れてはいけないのが、勇者ロトが見に着けていた武具である。 剣、鎧、盾に加えて、新たに兜が加わり、一通りのロトシリーズが完成した。

前作に兜がなかったのは、装備欄に兜がなかったため。 剣、鎧、盾ときて、何で兜がなかったのかといった、前作をプレイした人の質問にすぐさま答えを出した形であった。

その一方、勇者ロトとは何者かという疑問も、この作品から登場した。 この時期に出ているロトの素性は、竜王が現れる数百年前に、アレフガルドの闇を振り払った人物としかわからなかったからだ。 結局、その正体が判明するには、翌年のVまで待たなければならなかった。


ドラクエU発売当時の頃は、未だSTGやACTゲーム大好きっ子の私だったが、このゲームも前作同様発売からまもなくの時期にプレイしている。 いつもお世話なってるいとこの家でプレイしたが、ACTやSTGといった指を動かすゲームしか借りなかった私が、初めて頭を使うゲームを借りた。 いとこでプレイしたときに出た、RPGの衝撃や面白さが忘れられなかったかもしれない。

ムーンブルクの王女を仲間に加えるところまでは、私でも何とか進むことができたが、パスワードを書き留めるときにちゃんと書いたはずなのに、 続きをプレイする前にパスワードを書いた通りに入力したら、「じゅもんが ちがいます」というメッセージが出た。

念のため、間違いやすそうな字(「ぬ」とか「め」など)を書き換えたり、何度も確かめたりしたのだが、結局同じメッセージが出るだけだった。 それ以降、私はドラクエUをプレイする気にもなれず、20年近く経ってもリメイク版すらプレイする気にはなれなかった。

しかし2007年の現在、私のHPの更新に余裕ができたので、色々なRPGをプレイしてみようと考えた。 その中に、FC版ドラクエUも久々にプレイしてみようとする気になっていた。

昔の記憶が、かすかに残っていた私は、ムーンペタの町にたどり着くところまでは楽に進めた。
だが、ラーの鏡の捜索から始まり、雨露の糸や紋章、船の財宝などの捜索、ラゴス騒動など、最低限のヒントだけで探す様は、まさに地獄だった。


その地獄をはるかに上回っていたのが、かの有名なロンダルキアの洞窟である。 捜索関連の情報は、一般の攻略サイトで見ることができるが、洞窟マップとなるとごく一部の大手攻略サイトでしか見ることができない。 何度も、落とし穴に落ちるわ無限ループするわと、これを切り抜けた人は本当に偉大なんだなと感心するだけであった。

それから、ハーゴンの城に突入し、ハーゴンと真のラスボスをも撃破して、ようやくエンディングを拝むことができた。 エンディングまで、パスワードを書き写した回数は、10回以上に上ると思う。

しかも、ここで書き写しををミスってしまったら、2度とあの冒険は戻ってこれないという危機感を心に刻み、 一心不乱に何度も自分が書き写したパスワードを確かめた。

かの有名な、『もょもとパスワード(「ゆうていみやおう…」)』を使わなかったのは、 楽してプレイするよりも苦労してプレイしたほうが、このゲームにはふさわしいのではないかと思ったからだ。

ゲームクリアの翌日、ロンダルキアの祠で書き写したパスワードで、今度はレベル上げという形でパスワードを入力した。 しかし、必死の思いで書き写したパスワードを入力したら、このような非情なメッセージが帰ってきた。

「じゅもんが ちがいます」

昔パスワードで、散々な目にあった私は、またしてもパスワードで天国から地獄に突き落とされる憂き目にあった。

これから、ドラクエUをプレイするときは、リメイク版(『ドラクエT・U』のこと)に限るとようやく気づいた私は、 FC版ドラクエUを封印することにした、よほどのことがない限りもう2度とプレイすることはないと…。



本日のまとめ



じゅもんが ちがいます

(07/2/15レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年4月24日
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