発売日:1988年12月16日 発売元:コナミ ジャンル:STG
値段:5900円 おすすめ度:4.5(たった一年でこれだけの出来…) グラディウスシリーズの第3弾にして、3年前(AC版)の初代の正統な続編でもある。 なお、サブタイトルは『ゴーファー(このゲームのラスボス)の野望』となっている(FC版以外では、ちゃんとサブタイトルがついている)。 AC版の移植だが、そのAC版の前にMSXで、グラディウスの新作が登場している。ただし、それは『グラディウス2』であって、『グラディウスU』ではない。 現に、同じSTGとはいえゲーム内容はまったく違っているので、AC版がMSX版の移植ではない。 数字の字体が違っている(MSXは英数字でACはローマ数字)だけで、こんなにも内容が違うものなのかという表れである。 実際MSXでも、AC版の移植がされていて、当然『グラディウス2』とは別作品として扱っている。 AC版のほうは、3年前の初代の続編という位置づけを前面に押し出している印象が強く、 グラフィックが初代よりもきれいになり、選択武装の多彩化やステージの複雑化など、初代に比べて大幅にパワーアップした。 その一方、このシリーズの象徴でもあり強力な武器だったレーザーが、当たり判定が小さくなった上に威力も弱くなった。 これは、シリーズ2作目の『沙羅曼蛇』から登場した新武器リップルが、レーザーと比べてあまりにも弱かったために、 開発側はリップルを多くのプレイヤーに使ってもらうために、あえてリップルを強化しレーザーを弱体化させたのである。 そしてこのゲームの一番の見所は、Uを除く今までのグラディウスシリーズ3作に登場してきた、 ボスの大挙出演のステージがあるということ(俗に言う『ボスラッシュ』)。 今でこそ、いろんなゲームのシリーズで昔のボスキャラに会えることは珍しくなかったが、 当時としてはかなり珍しく、旧作品のボスが大勢出るとなると、それは本当に奇跡としか言いようが無かった。 こういう改革もあって、Uは初代に劣らぬ人気を見せ、シリーズの方向性をいっそう確立することになった。 その後FCに移植されたわけなのだが、なんとAC版稼動からFC版発売までわずか9ヶ月しか経っていない。 普通ACのゲームをコンシューマーに移植されるまでの間隔は、せいぜい2年が一般的で、最低でも一年が必要だった。 グラディウスUでは、それを一年も経たずにFC版発売にこぎつけたのだ。 今でこそ、コンシューマーの性能はACに匹敵しているので、AC版稼動から数ヶ月程度でコンシューマーへの移植版が発売されても不思議は無いのだが、 当時としてはそういったことは例が無く、たとえ移植に数年かかっても、とてもAC版と対等に肩を並べられるものでは無いものが多く、 グラディウスUの場合は移植に一年もかからなかったこともあって、AC版よりも悪い出来ではと感くぐるゲーマーもかなりいたはずだ。 だがコナミは、そういったゲーマーの不安を払拭することに成功し、AC版と肩を並べられるほどの出来に仕上がっていた。 FC版の初代グラディウスからたった2年半近くたっていないのにもかかわらず、AC版に劣らぬ人気を見せた背景はいったい何なのか…。 FC版グラディウスUがAC版並に人気を得られた理由として、4つの理由が考えられる。 1つ目は、ROM容量の増大。 当時のFCカセットの容量は、2Mが精一杯な時期であり、あの『ドラゴンクエストV』もROM容量が2Mだった。 もちろん、それより上の3Mの容量を持ったゲームも存在するのだが、そういったゲームは数作品しか存在しない。 グラディウスUも、容量が2M64Kだったが、前2作よりも高い容量を誇ったのはいうまでも無い。 それが証拠に、前作の沙羅曼蛇よりも2倍近い容量を誇り(沙羅曼蛇は1M64K)、初代グラディウスに至っては(初代は384K)6倍近い容量があったからである。 2つ目は、FC版沙羅曼蛇における移植の手法を用いたこと。 当時は、ACとコンシューマーとの差が大きく開いているということはすでにご存知かと思うが、当然グラディウスUも例外ではない。 そこでFCに移植する際、前作の沙羅曼蛇で取った、いわゆるFC版独自の要素を取り入れた手法を採用した。 FC版沙羅曼蛇は、それより前の初代グラディウスよりは売り上げがよくなかったものの、ゲームの出来に関しては、むしろこちらのほうが上だったのだ。 実際、無理に再現どおりに移植するよりも、FC独自にアレンジしたほうが人気が出ると読んだのかもしれない。 FC版グラディウスUも、そういったFC版によるアレンジがなされている。 3つ目は、音源チップの搭載。 当時の、コナミの音(SE、BGM)に対するこだわりは、他社の群を抜いていた。 すでにディスクシステムでは、音のクリア化が日常茶飯事に行われていたが、カートリッジによる音のクリア化は、技術的な問題があってなかなか実現するのが難しかった。 しかしコナミは、あえてそれに挑戦し、見事実現した。 特に、「スピードアップ」や「オプション」といった声も導入され、ステージ5のボスラッシュでは、 シリーズに登場してきたボスのBGMが、移植された作品のBGMよりもすばらしくなっている。 この音源チップの導入は、後のコナミ作品にも受け継がれている。 4つ目は、1つ目の理由の続きという形にはなるのだが、2Mという容量を有効的に使ったことがその理由。 同じ2Mとはいえ、グラディウスUより2年前の『がんばれゴエモン! からくり道中』では、 その容量をステージ数の増加という、あまりにも無駄に容量を使ったがために、あまり人気を獲得できない結果に終わっている。 グラディウスUはこういったことを踏まえて、容量をステージ増加などには配分せず、グラフィックやステージの仕掛けなどに配分することにした。 またオプションも、以前より容量が増加したおかげで、ついにAC版と同じくオプション数が4つに増加することになった。 そして、初代ではなかった上下スクロールが可能になった。 ここにきて、AC版とFC版のグラディウスシリーズをやりこんだプレイヤーにとって、 ようやくしっかりとしたFC版のグラディウスをプレイできると安堵したに違いない。 前2作と比べて大幅にパワーアップしたグラディウスU。 特に1面のボスのフェニックスと2面のボスのギーガ、3面のボスのクリスタルコアと5面のボスラッシュの一番手として登場する初代ビッグコアは、 FCの移植とは思えないすばらしい出来であり、さらに緻密に描かれていた。 だが、それでもFC版のアレンジがあるということは前にも述べた。 またアレンジしたといっても、容量が2Mしかないため、ある程度の削減や変更はやむをえなかったところが結構ある。 そのFC版のアレンジやAC版の変更点は、以下に記すと…、 ・リップルがAC版と比べて弱体化した。 ・武装選択画面でバリアがフォースフィールドのみになった。 ・オプションが2段階にパワーアップされ、パワーアップがローリングオプションに変わる。 ・そのフォースフィールドが、AC版よりも強くなった。 ・2面のボスがビッグアイではなく、FC版沙羅曼蛇の4面に登場したギーガがボスとなっている(ビッグアイは中ボス)。 ・ジャンピングモアイが一体しか出ない。 ・いくつかのステージが、AC版のいろんなステージを組み合わせたものになっている。 ・そのため、デスMK−UやビッグコアMK−Uが出ない。 ・オプションを食うオプションハンターが出てこない。 ・5面のボスラッシュにおいて、ガウやファイヤードラゴンがいないかわりに、沙羅曼蛇のラスボスであるゼロスフォースが追加された。 ・最終エリアが要塞ではなく、FCオリジナルの細胞に変わっている。 ・ラスボスのゴーファーが、AC版と違ってちゃっかり攻撃してくる(といっても、吐き出す弾は撃ち落すことが出来る)。 これほど、変更点や削除された点が多いと、改めてAC版の移植よりFC版のオリジナルといった要素が強い。 しかし、FC版を忠実に移植しようとしてファンの不評を買った初代と、 FCの性能ゆえに多くのアレンジを組み込んでファンの人気を得ることができた続編(沙羅曼蛇除く)と、どっちがすばらしいのかお分かりになるかと思う。 もっとも、初代と続編のカートリッジの質や、開発スタッフの意気込みなどを比べるのは酷かもしれないが、 初代の場合は少ない容量で、何が何でもACの雰囲気にしようとした初代に比べれば、無理にAC版に忠実に移植するよりも、 大胆にアレンジを施して存在感を見出せた続編の方が、はるかに意義があるのではないだろうか。 そもそもコンピューターゲームは、アーケードゲーマーだけのものではなく、コンシューマーのゲーマーのものでもある。 これら以外にも、いろんな変更点や削除された部分があるかもしれないが、おそらく目に留めるようなものではないかもしれないので、ここでは割愛させていただく。 私がグラディウスUを知ったのは、ファミマガでの『グラディウスV』での特集記事によるもの。 それに関しては、今まで何とか頭の中でかすかに記憶が残ってはいたものの、肝心のグラディウスUは完全に忘れてしまっていた。 初代をレビューする際、初代に加えて沙羅曼蛇や続編のUを購入したのだが、どうもUだけはやる気がしなかった。 その後、暇つぶしにUをプレイしたが、1面の人工太陽とボスのフェニックスを見て、思わず私の体にビビビッとくるものを感じた。 FCなのに、どうしてこんなにきれいなグラフィックが作り出せるか信じられなかった。 ゲームの内容にしても、初代よりすばらしい仕上がりで、ますます驚いた。 もちろん難易度はAC版よりやさしいとはいえ、難しいことには違いない。 事実、何度もコンテニューしたかわからなかった。それくらい難しかった。 ボスラッシュの5面にたどり着いたときは、やっと歴代のボスに会えるという感激でいっぱいだった。 特に、初代において容量の都合で切り詰められていたビッグコアが、ここでようやく本来の姿を披露したことにより、私の心の中は安堵と感動が入り混じっていた。 ほかのボスもなかなかにいい出来で、クリアした後、早速このゲームの評価を改めて、4.5という評価をつけた。 ただ、個人的にこのゲームに対する不満点をいうならば、ちょっとちらつきがあったなということか。 それと容量の都合とはいえ、デスMK−UとビッグコアMK−Uが省かれたのは痛かった。 この2つの敵は続編のグラディウスV(SFC版)に登場することになるのだが、その代わりデスMK−Uの場合、AC版に登場した後継機のデスMK−Vが出てこない…。 本日のまとめ |