◆頭脳戦艦ガル◆
スクロールRPGとは?



1985年12月14日発売  発売元:デービーソフト  ジャンル:スクロールRPG
価格:4900円  おすすめ度:0.5(パーツを100個集める意義とは…)


私達地球人が住んでいる太陽系より、遥か彼方の銀河系Aダクトでは、ジスタス惑星とガーネットスター&ギガラスの双子惑星の2勢力が連日反目しあっていた。 緊張感高まる中、ガーネットスターが宇宙空間制御装置『ドラッグ』を開発、ジスタスを破壊すべく出撃した。

これを知ったジスタスは、ドラッグを破壊するため頭脳戦艦ガルを出撃させた。 君は、ガルに搭載されている戦闘機『ジスタス−21』を駆り、3つの空間を飛び回りながらドラッグ撃破に必要な100個のパーツを集め、最終的にドラッグを破壊するのだ!

レトロゲーマーにとって有名な作品であり、数々の思い出がとても多い作品でもある。 ただし、当時プレイした人にとっては、いい思い出ではなく嫌な思い出のほうが多いのだが。 レトロゲーマーにしても、このゲームをネタ扱いする人が多く、それ程このゲームには特別な何かが存在していたといえる。


事実、発売元のデービーソフトは、『ヴォルガードU』や『うっでいぽこ』といった得も知れぬゲームを発売している一方、 『FLLAPY』や『鉄道王』といった佳作も発売しており、デービーソフトのゲームをプレイした当時のユーザー達からは、特異な目で見られていた。

そのデービーソフトは、ガル発売から数年後にゲーム業界から撤退し、主にパソコンソフト関連(ビジネス系)を開発するようになったが、 2003年事業を完全に停止しており、倒産したのではないかといった憶測が流れるようになっている。

しかし、データクラフトやアジェンダといったデービーソフトから独立した複数の会社は、デービーソフトの精神を引き継いでいるが、それが最も多く出ているのがアジェンタである。 『ガチャろく』シリーズといった作品は、まさにデービーソフトの作品に出ていた独特の雰囲気を出していたことが大きな理由である。


このゲームの目的は、ストーリーにもあるように3つのエリアを回りながら落ちているパーツを100個集め、最終的にドラッグを破壊することである。 3つのエリアは、地底・コア・宇宙となっており、ステージ数は1エリアにつき10である。

パーツは、1ステージに1つ置かれているのだが、100個集めるには3つのエリアを最低4周しなければならない。 つまり、普通にプレイする分には問題がないが、100個集めるには相当な苦労を要するので、現実に100個パーツを集めた人はあまりいないだろう。

一応ジャンルに、『スクロールRPG』と明記されているが、完全にジャンルはSTGである。 にもかかわらず、ジャンルをスクロールRPGにしたわけは、自機がパワーアップことにあった。

ただし、『グラディウス』のようにアイテムを取るものではなく、唐突にパワーアップするものである。 この特殊なパワーアップ方式により、どういう基準でパワーアップするのかが、プレイヤーの間で議論されることになった。

現在、『敵機を200機破壊するたびにパワーアップする』説が最も有力になっているが、ある一定の得点に達するとパワーアップするという説も有力視されていた。 この得点でのパワーアップ説は、経験値によるパワーアップと酷似しており、大部分のRPGにおけるレベルアップ方式と繋がりがあるのではといった意見もあったが、結局関係ないことになった。

いずれにせよ、デービーソフトはこのゲームのジャンルを大体的に宣伝したことにより、STGながらもRPGというジャンルを初めて設定したゲームとして、後々の世に語り継がれることになった。 これについて、チュンソフトの中村光一氏は、このことを大変悔しがっていたという。

そもそも、RPGの定義は『ドラゴンクエスト』といったゲームに使われるべきであり、ガルのようなSTGが何でRPGになるか、そのことに疑問を持ったのだろう。 ただ、アイテムを使うのではなく敵を倒すことでパワーアップするやり方は、AC版『天地を喰らう』や『ザ・キング・オブ・ドラゴンズ』といった、 RPGとは無縁のゲームに影響を与えているといえる(もちろん、経験値によるパワーアップを採用しているが、敵を倒してパワーアップすること自体ガルのシステムと似ている)。


しかしながら、このゲームに対する評価はとてつもなく低く、いわゆる『クソゲー』の部類に入る。 その理由は数多く存在し、先ほどにも書いた100個パーツを集めるのに時間をかけなければならないことや、ジャンルがSTGではなくスクロールRPGになっている他にである。

まずは、100個パーツを集めたときに最終ステージに現れるドラッグの存在である。 ドラッグは、一般のSTGのような大きなキャラではなく背景に近い存在であるため、うっかり見落としてしまうプレイヤーがかなりおり、そのままスクロールした後に再び地底に戻されてしまう。

2つ目は、隠しキャラの詳細だが、数種類あるとはいえ説明書に載っているのは1種類のみ、しかも敵なのか味方なのか不明な容貌をしている。 一応、ほとんどの隠しキャラはプレイヤーに、パーツを10個与えたり自機を1機増やしてくれるといった恩恵を与えてくれるが、あるキャラだけプレイヤーに不利益なことをしてくれる。

宇宙エリアの、ステージ10の最後に現れる緑の蝶のようなキャラが3つ目の理由となる。 名前はバルバールといい、1発打ち込むと1万点2発打ち込めば2万点と、打ち込むごとに次々にもらえる得点が増えていくが、 5発打ち込むと10万点もらえる代わりに今まで集めたパーツがすべて没収されてしまい、再び100個集めなければならない。 これが、このゲームをクソゲーにしている4つ目の理由となっている。

5つ目は、地底における地形の複雑さ。というより、左右の壁が複雑になっているといったほうがいい。

敵や敵弾をよけようとして、うっかり壁に激突してしまったプレイヤーが後を絶たなかった。 この壁、コアエリアになると幅が少なくなる上に平面になり、宇宙エリアになるとそれがなくなる。 もちろん、宇宙が敵の攻撃がも最も激しいのだが、壁に激突することがないため、地底エリアと比べて難易度が低くなっているという逆転現象が起こっている。


6つ目は、ゲームタイトルにあるガルの存在。

箱絵やカセットラベルには、自機であるジスタス−21と母艦ガルが描かれているのだが、ゲームではなぜか一切登場せず、エンディングの一文でしかその詳細を知ることができない。 そのエンディングにしても、文章がスクロールするだけというあまりにも簡潔すぎる内容も、クソゲーの理由にふさわしい。 例え、FC黎明期に誕生したことを考慮しても、である。

これらのようなクソゲーたる理由の多さは、ユーザーはもちろんのことFC業界にも衝撃を与えることになった。 特に、作曲家のすぎやまこういち氏はこのゲームを酷評しているが、それは自分が作曲したドラクエが最初にRPGになれなかったことと、 最初のRPG作品がこの程度の出来だったことに憤慨したことの表れだといえよう。

事実、すぎやま氏とみうらじゅん氏がとある座談会において、ゲームの話題を出す際クソゲーの話題も出たが、 2人がどのゲームがクソゲーかを決めるときに「いっせーの!」の掛け声で出したゲーム、それがガルだった(しかも2人とも同じ意見)。

あらかじめ、2人がクソゲーだと決める際にそれにふさわしいものをカセットで持ってくる形で用意していたので、 もしかしたらやらせではという感があるかもしれないが、裏を返せば2人がよほどこのゲームに対してひどい目に遭わされたことも想像できよう。


ともかく、この出来事によりこのゲームは、クソゲーの地位をゆるぎないものにされてしまい、あまり内容を知らないプレイヤーからもクソゲー呼ばわりされることになった。 だが、そのことで知名度が高い分、同じクソゲーでも知名度が低くいつの間にか歴史に埋もれていったゲームも多いことを考えれば、まだいい方ではないだろうか。

さらに、このゲームは発売から間もないころ、クソゲーという形で名を上げていたのだから、既にプレイヤーに強烈な印象を残しているといえる。 もちろん、このゲームがクソゲーであることは、発売からまもなくのあたりで認識されてしまい、その昔人気ゲームとクソゲーのカップリングを買わせるという、 いわゆる抱き合わせ商法(違法に近い)がはやっており、ガルもまた当時大ヒットだったスーパーマリオブラザーズと抱き合わせという形で売られていったこともあった。

このことについて、発売元のデービーソフトはどんな心境だったのだろうか。 もっとも、デービーソフトは既になくなっており、当時のスタッフにそれを語ってもらうのは非常に難しいのだが。


私は、このゲームをプレイしたことはあれど、買ったことはなかった。 20年ほど前に、いとこから譲り受けただけなのだが、十数個のゲームの中に1つだけ紛れ込んでいた感が強かった。

なんとなくプレイした私であったが、敵にやられるより地底の壁にぶつかって死ぬパターンが多く、ちっともコアエリアに進めないことが多かった。 そればかりか、単調なステージ構成(地底ステージの最後にある分岐システムはすばらしい)やパーツ100個集めなければならないこと、 難易度や音楽の質の悪さに、既にクソゲーと決め付けていた『ボコスカウォーズ』とは違った意味で、これもクソゲーではないかという認識があった。

 それから20年近く後の現在、その思いは物の見事に当たることになり、同時に私と同じくこのゲームで散々な目に遭ったプレイヤーが多くいたことをいまさらながらに知った。 そして、このゲームをレビューしたとき、無敵技も兼ねてゲームクリアを目指し、長時間の末にようやくクリアすることができた。 そのときに見たエンディングは、文章しかなく単調なものではあったが、既に私はようやくクリアしたことへの達成感を感じていた。

このため、クリアしたときはエンディングのひどさを感じてはいなかった(感じる暇がなかった)のだが、今思い直してみると確かにクリアしたプレイヤーを馬鹿にしている感じはある。

しかし2周目がない(再びパーツ100個集めることがない)分、この手のエンディングも一応許されるのかなとは思っているが、 もう少し手を加えればなかなかに面白いゲームになっただろうから、そこのところをデービーソフトは考えてほしかった。

私は、このゲームについてクソゲーと評価しているものの、少しながらもこのゲームのいいところを挙げてはいる。 ただ、このゲームのいいところがなかなかに見つけにくく、むしろ悪いところばかり出てしまっているので、これからもこのゲームがクソゲーだという認識は消えないだろうと思う。

もう私は、2度とこのゲームをプレイしたくはない。

最後にもう1つ、私は無敵技でクリアしたと書いたのだが、無敵技を使っても壁にぶつかれば死んでしまう。 無敵業を使ってもクリアが難しいゲームの代表格は、MDの『大魔界村』が挙げられるのだが、 このゲームも例外ではなく大魔界村と違って自分の腕以外の要素もあるので、壁よりもその障害となっているパーツ100個を集めるだけの忍耐力こそが、このゲームに求められているかもしれない。

あの要素さえなければという気持ちが、当時のプレイヤーの間でトラウマとして生き続ける…、FC黎明期でかなり恐ろしいゲームといえよう。


本日のまとめ


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(07/1/21修正)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年4月1日
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