◆暴れん坊天狗◆
天狗、アメリカを襲撃す・・・!?



発売日:1990年12月14日   発売元:メルダック   ジャンル:STG
値段:6500円   お勧め度:3(プレミアがついとる…)


1990年のこの年は、ドラゴンクエストWやファイナルファンタジーV、ファイアーエンブレムといった大作はもちろんのこと、良作や佳作なゲームも次々と登場し、FC業界にとって大豊作となった。 さらにメガドライブやPCエンジン、ゲームボーイのソフトも充実し、そしてこの年に登場したスーパーファミコンとゲームギアも合わさって、ゲームユーザーに『1990年=ゲームの年』という印象を植え付けた。

もちろん名作の影でクソゲーも多く世に出てはいたのだが、名作と良作・佳作のソフトを合わせた数と比較すると意外と少ない。 それでも『もっともあぶない刑事』や『キテレツ大百科』といったインパクトの高いクソゲーもあるのだが、名作と良作と佳作が大部分を占める1990年のソフトと比べると、やはり影が薄かった。

そんな中、ある1本のソフトは、名作とクソゲーどちらにも当てはまらないものの、いろんな意味で衝撃なゲームとして、現在まで語り継がれることとなる。 その名は、『暴れん坊天狗』。


先に結論を言えば、このゲームは意外と面白い。 時々現れる「HELP」と叫ぶ人々を助けて、一定数以上助けると、どんどんパワーアップしたり、やり方しだいでは、 ジョイカードを使わなくてもオート連射ができるようになる(もちろんジョイカードを使ったほうが手っ取り早いのだが…)。

そして何といっても、各ステージの所々にある仕掛けが豊富で、しかもなかなかに凝った造りになっている。

このゲームはライフ制になっているが、ステージにある仕掛けに触れてしまうと大きなダメージを受けてしまう(主に落雷や工場からの煙など…)。 もちろん仕掛け全てが、ダメージを受けるものではない。

たとえばステージ2の後半の仕掛けは滝で、これに触れてもダメージは受けない代わりに、自機が強制的に下へ下がってしまう。 しかも下がっている間は自機の操作が不自由になり、敵の攻撃を受けたり障害物に引っかかってゲームオーバーになることもある (このゲームは自機が1機しかなく、やられたら即ゲームオーバー。一応コンテニューはあるのだが、回数制限がある)。

また仕掛けではないものの、迷路状のステージもあり、プレイヤーを飽きさせることはあまりない。

ただ、このゲームに対するFCユーザーの評価は、『バカゲー』という認識が大部分である。 バカゲーとは、意味不明な名前や奇妙なキャラクターというように、大部分の理由を考えると、クソゲーという認識があるように見える。 しかし、クソゲーとバカゲーとの決定的な違いは、そのゲームが面白いかどうかということだ。

クソゲーがつまらない理由は、操作性が悪いとか難易度が高いとか、そもそもゲーム自体つまらないというものであったが、バカゲーの場合は、 そういったことがほとんどなかった(もちろんクソゲーがつまらない理由の1つぐらいはあったバカゲーもある)。 バカゲーの基本は、キャラクターが変わりすぎてることやストーリーといった設定が(いろんな意味で)他のゲームよりも群を抜いているということ。

暴れん坊天狗の場合は、バカゲーの基本を踏襲しているばかりか、他のバカゲーよりもインパクトの度合いが大きい。 ではその主たるところを記してみると…、

・ストーリーやタイトルが意味不明。

・アメリカを救うはずが、アメリカを破壊している。

・攻撃方法がすさまじい。

・そもそもプレイヤーが天狗

…である。


1つ目の理由であるストーリーは、文がカタカナで内容もまったくわからない。 要訳すると、『メリケン国(アメリカのこと)が、宇宙からの危機に瀕しており、それを察知した天狗が、 アメリカを救いに行く。』というものなのだが、なぜ日本の天狗が助けに行かなければならないのかよくわからない。

また『三人ノ王子』というのもゲームにはまったく出てこないので、これも意味不明である。 さらにタイトルも天狗が主人公とはいえ、『暴れん坊天狗』というタイトルはないかと思う。一応あらすじの文は、古文書と考えればある程度理解はできるかと思うのだが…。

2つ目も、有名な理由である。一応天狗が戦う敵は操られているものがほとんどなのだが、その大部分はアメリカ軍である。 しかも建造物をも破壊していくのである。つまり、アメリカを救うはずの天狗が、アメリカを壊しているのである。

3つ目もかなり有名な理由で、ショットが目玉でボムが痰(たん)である。 普通はレーザーとか衝撃波などで攻撃するのだが、このゲームは目玉と痰で攻撃するのだ。

ゲームとはいえ、目玉や痰で破壊されるヘリや戦車がかなり哀れである…。ちなみにBボタンで同時に出るので、扱いやすい。 Aボタンはメガクラッシュが出るのだが、画面がフラッシュして敵を全滅するだけで、これだけは意外と普通である。 というよりショットを普通でメガクラッシュを変わった風にしなければならないはずなのに、それが逆になっている。

そして、このゲームがバカゲー扱いされる一番の理由として4つ目。このゲームの話題になると、真っ先に出るのがこの話。 『なぜ天狗なのか!?』という疑問である。実は開発段階では、プレイヤーは天狗ではなかった。

しかし、何らかの理由で使えなくなり、急遽天狗に変更となった。 そういった過程はともかくとして、なぜプレイヤーを天狗にしたのかわからない。

そういった謎解きに追い討ちをかけるように、攻撃方法が目玉と痰。 開発スタッフはいったい何を考えていたのか、今となっては知るよしもない…。


このゲームを開発したメルダックという会社は、ゲーム会社ではなく音楽関連の会社である。 おそらくゲーム市場のおいしさに惹かれて、ゲーム業界に参入したのだろう。

当然ながらゲームを作る技術はなかったので、普通ならばクソゲーを量産するパターンになるはずだったのだが、メルダックの場合はそうはならなかった。 そのかわりバカゲーを少なからず出してはいるのだが。

実際暴れん坊天狗を発売した8ヶ月前、GBで同じSTGの『天神怪戦』を発売している(続編は、ジャンルががらりと変わってAVGとなっている)。 当時本格的な和風STGを作っている会社はほとんどなかった。

それを考えると、メルダックのSTGの世界設定は、あまりにもぶっ飛びすぎていた。 どちらもなかなかに楽しめるものなのだが、やはり設定がすさまじかったので、全体的な人気はあまり高くはなかったのだが…。

ちなみにメルダックは、すでにゲーム業界から撤退していて、今は別の会社の子会社になっている(2003年現在)。

私がこのゲームを知ったのは3、4年ほど前。サイトで知ったのだが、そのゲームの画像を見たとき、思わず「何じゃ、これは!?」と声を上げてしまった。 それから現在、このゲームをレビューするのにあたり、購入を決意。値段は定価よりちょっと安い程度。 サイトで調べたとおり、プレミア価格がついていた(どうも出荷数が少なかったらしい)。

早速プレイしたのだが、まずはイージーでプレイした。 イージーでクリアした後はハードでプレイしたのだが、難易度でゲームが違ってることに驚いた。

その違いは、ただ難しいとかそういうレベルではない。難易度的にはさほど変わらなかったが、イージーでも難しい。 特に天狗のお面が大きいために、当たり判定も大きいのだ。でもその分、インパクトは非常に大きかった。

なおこのゲームは、海外にも輸出しているのだが、プレイヤーが天狗のお面ではなく、なんと落ち武者の生首である。 天狗のお面以上にインパクトはあるのだが、なぜ落ち武者の生首に代えたのか、これも不明である。



本日のまとめ



無念

(06/4/11レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年4月17日
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