◆信長の野望 全・国・版◆
本格的戦略SLG、FC初上陸!



発売日:1988年3月18日   発売元:光栄   ジャンル:SLG
値段:9800円   おすすめ度:2(本格的戦略SLG初心者お断り!)


今でこそ本格的戦略SLGは、家庭機やパソコンにかなり出ているが、20年以上前のSLGはパソコンのみだった。 その昔、FCは子供用のゲーム機という認識が強かったので、本格的SLGは子供達に好まれないという考えが多かった。

しかし時代が下るにつれ、色々なジャンルのゲームが世に出てきた。そしてついに、FCで本格的戦略SLGが1988年に登場した。 その名は『信長の野望 全・国・版』。

もっとも前年には、FC初となるSLG『SDガンダムワールド ガチャポン戦士スクランブルウォーズ』が発売されているが、 戦闘パートはアクションなので、本格的戦略かつアクションといったほかのジャンルなしの正統SLGとなると、『信長の野望 全・国・版』が初となることになる。 また、歴史SLGに関しても、このゲームが初である。

最近の信長の野望はグラフィックが多いが、昔は武将の顔やマップ、イベントや合戦のみグラフィックが使われていることを除けば、すべて文字や数字だらけ、しかも文字に至っては平仮名のみ。 今のシリーズに慣れてる人がこのゲームをやれば、必ず面食らう上に、説明書を見なければ(見ても一緒かと思うが…)何も分からずまま、他国に占領されることがあるかと思う。

それくらい『全・国・版』は、見た目シンプル、中身玄人向きなゲームだったのだ。 しかも歴史イベントはない(隠しイベントとして、本能寺の変があるらしい)。おまけに武将といえば、配下はおらず大名のみ。

しかしこのシンプルこそが、当時の玄人なSLGユーザーに好まれたのだ。 そういった意味でも、全国版のFC版は、FCのジャンルに新たな道しるべを加えたと同時に、パソコンユーザーにとってもかなりの衝撃になったに違いない(危機的な衝撃に近い。 FCでできないと思われていた本格的戦略SLGが、FC誕生からわずか5年でできたのだから)。


ただし難易度の方は、シリーズ中最高とのこと。特に弱小大名や毛利元就や武田信玄といった老人大名国は、全国制覇すらままならない。 前者の方は、他の強国や謀反によって滅亡=ゲームオーバーとなり、場合によってはまだ順番が回ってこないでということの方が多い。

後者の方は、当然ながら寿命。 このゲームは配下武将がいないため、寿命で死んでしまうとゲームオーバーとなる。 もっともリセット技を使えば、そういった事態は一応回避されるのだが。

それ故にこのゲームはクソゲーではないかという批判もあった(特に前者は、ゲームオーバーになる確率が高い)。 しかし危機さえ乗り越えてしまえば、後はとんとん拍子。 場合によっては、弱小大名も天下を狙えるといった破天荒な展開もあった。 当然強国が全国統一できる確率のほうが、かなり高いのだが…。

また逆に、隆盛を誇っていた強国が、風前の灯状態の弱国に、暗殺であっさりと滅ぼされることもざらであった。 このめちゃくちゃさこそが、このゲームの面白さでもあり、同時に恐ろしさでもあった。


システムの方は、田畑を開墾したり治水を上げたり、兵を雇って訓練して戦争したり、すでに信長の野望シリーズの基礎は少しは出来上がっている。 ちなみに税の徴収は、7月と12月一般的だが、年貢コマンドで徴収することも可能(一揆を誘発しやすい)。 なお武将がいないので、戦争で領土を増やしていく様は、単なる国盗り(陣取りともいうべきか…)のような感覚になってしまうのだが。

その戦争だが、先に言ったように配下の武将がいない。 それと大名直々に戦争に参加できるのだが、はっきりいって戦争の勝敗を決める決定打にはならない。

では戦争の勝敗はどうやって決めるのかということだが、兵力が多いほうが勝つというもの(訓練度が多ければどうなるか分からないが)。 早い話が、ただの物量戦である。

兵力が多いのも当然だが、金や兵糧も多いほど有利というわけだ。また暗殺も、物量戦の1つであるということだ。 暗殺を実行するには、忍者を雇うのだが、その数が多ければ多いほど、暗殺の成功率が高まる。 ここまでくると、内政も軍事も、戦略が必要ないただの力比べでしかないのだが…。


このようにこのゲームは、続編以降のシリーズと比べると色々と突っ込みどころが多いが、このゲーム一番の突っ込みどころは、暗殺で空白地となった領土争いである。

普通ならば、空白地の隣の国が占領していくのだが、このゲームではなんと空白地の周辺国が、その国の支配権をめぐって『入札』というやりかたで、支配権を決めていくのである。 血なまぐさいやり方で領土を広げる戦国時代に、こういった平和的なやり方はまずありえないことを考えると、戦国時代での領土の入札は、最大にして最高の突っ込みどころではないだろうか。

皆さんは知っているかと思うが、『全・国・版』は信長の野望シリーズでは2作品目である。 しかし前作が信長を含め周辺17カ国しかプレイできないことを考えると、50カ国をプレイできる『全・国・版』が、実質的に信長の野望シリーズの第1作ではないだろうか。 それをあえて考えると、物量戦法や配下武将不在、そして領土入札といった、今では考えられないシステムも、昔はありだったのかもしれない。

私がプレイした信長の野望シリーズは『武将風雲録』だったので、武将風雲録に慣れたあと『全・国・版』をプレイしたら、あまりの難解さとすぐゲームオーバーで、すぐにクソゲー認定した。 そして15年近く後の現在、『全・国・版』のレビューを見て、早速プレイした。

昔は定価が9800円という今でも膨大な値段だったが、今ではたったの100円に値下がりしていたので(98分の1の値段…)、急遽買ってプレイすることにした。 そしてすぐさま、クソゲーの烙印を取り消した。面白い、本当に面白い(物量があれば)。


小さい頃は、あまりの難解さに頭の回転が付いていけずにすぐ投げ出したが、大人になった今になると、このゲームの面白さが垣間見えてきた。 もちろんネットや雑誌でのレビューを見て、何故か面白そうだという気持ちが、プレイしたいという気持ちに変換してきただけだが。

それにしてはおすすめ度がたったの2というのはどういうことかという声が聞かれるかもしれないが、理由としては小さい頃のトラウマがまだ頭の中からはなれないから。 それほどまでに当時としては難解すぎる(というより文字だらけで疲れる)ゲームだった。

ちなみに私はこのゲームで2回天下統一をしているが、1回目は信長で2回目は宇都宮広綱。 1回目は自力でクリアしたが、2回目は改造コードで金と兵士の数を最大にしてやった。 特に2回目は、暗殺と入札のコンボで全く戦争せずに天下統一をやってしまった。

改造コードはともかくとして(2回目以降のプレイだから)、平和的な天下統一というのは、結構邪道ではなかろうかと。 しかしその邪道こそが、『全・国・版』の醍醐味でもあるかもしれない。



本日のまとめ



すいません、 暗殺したのは私なんですけど…。

(06/2/15レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年4月14日
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