ルート16ターボ
4年越しのストーリー変異



発売日:1985年10月4日   発売元:サン電子   ジャンル:ACT
値段:4900円   オススメ度:2.5(最終ステージに待ち構える失望)


 世界にまたがる悪の秘密組織『カンハルー』は、世界中の国々から金はもちろん財宝を盗み出していた。 そして、そういう形で集めた数多くの金銀財宝を、組織内で隠しておくという形でほぼ独占していったのだ。

この悪の組織に対し、秘密基地のひとつに愛車『マッド・エックス』に乗り込み堂々と踏み込んでくる人物がいた。 それが君であり、君の目的は基地に突入し内部に隠されているカンハルーに奪われた金銀財宝を、片っ端から奪い返していくことである。

 しかし、基地の内部にはカンハルー軍団と呼ばれる無人の自動攻撃車が、所狭しと君を始末しようと狙っている。 加えて、えも知れぬモンスターたちが放し飼いにされていて、こちらも君のような侵入者を倒すために動き回っている。 果たして君は、これらの強敵を退けながら無事に任務をやり遂げることができるのだろうか…。


 1981年に、アーケードに登場した『ルート16』を4年後にファミコンにアレンジ移植したのがこのルート16ターボであり、 入手や知名度などでアーケード版よりファミコン版のほうが有名だろう。

アレンジの内容は後述するとして、内容は80年代前後にブームになったドットイートゲームで、『ヘッドオン』や『パックマン』などの ドットイート初期のような画面内のドットすべて取るものではなく、ステージにいくつか散らばっているドットをとっていくものである。

早い話、ナムコの『ラリーX』シリーズに通じるものがあり、ラリーXはステージ中のフラッグをすべて回収するのが目的なのに対して ルート16は現金を回収するのが目的で、ここまでだとラリーXの二番煎じに感じるかに思える。

 だが、ラリーXの登場が1980年と翌年に登場した作品なので、サン電子ならではの要素を練り合わせて似て非なるゲームを作っている。 ステージを簡略したレーダーモードと、各部屋を詳細に表示したメイズモードの2つのモードを駆使して、レーダーモードに表示されている 16の部屋をメイズモードで探索しながら、敵をかわして金を回収していくのだ。

キャラクターやマップの大きさこそ違っているが、結局は敵に追い掛け回されることに変わりはなく、レーダーモードに切り替わり 金がある部屋を探していたらいつの間にか敵にぶつかってミスしてしまったこともある、それぐらい最初から最後まで気が抜けない。 ところで、このゲームのタイトルが『ルート16』なのは、16の部屋を舞台としている施設であることを示しているのだろう。


 走り出したら止まらないのはドットイートゲームの共通として、1ステージに17の画面を使用することは当時としては相当なもので、 レーダーシステムこそ共通しているがラリーXがスクロール付きに対して、ルート16は部屋やレーダーモード全部一画面それも多くの画面を使っているので、 当時1ステージこそ画面を多く使うこと自体珍しいのに全部一画面だけというのはごくまれといえる。

しかも、16部屋ごとに配置されているアイテムや仕組みも違っているし、レーダーモードでは16部屋の 詳細がわからないため、アイテムが見つかったときに突入する緊張感を維持している。

ただ、レーダーモードでも部屋の入口や枠が描かれているので、ラリーXのようにステージが大まかに記載されていないことはなく、 自分なりにステージ攻略が立てやすいのがうれしい。 もっとも、時間をかけてしまうと後述する敵車の追跡を受けることになるが。

 回収するアイテムの種類も違うが、このゲームでは金やフラッグなどが登場している。 オイルは、とると得点加算と同時に動きが鈍くなるという一種のマイナスアイテムだが、この時期マイナスアイテムを出したのは 珍しく後に登場した『いっき』のさきがけになっているが、一定時間になれば金に変わる分取ってはいけないというわけではない。

ただし、ファミコン版とアーケード版は回収するアイテムこそ同じだが、ストーリーの違いにより回収する目的が違うので、 FC版のストーリーを知っている人がアーケード版のストーリーを知れば、多少なりとも驚くだろう(当時の多くのFCソフトのストーリーはあまり内容が濃くないが)。

というのも、FC版では悪の組織から奪われた金を取り返しに行くのに対して、アーケード版は警察の追跡を振り切りつつ金を盗んでいく というものになっていたため、子供が主体のファミコンゆえにアーケード版のストーリーはまずいと思ったのだろう。

 もっとも、ゲーム的には特に問題はなくクリアの目的についても、ステージに散らばっている金を回収すればいいことに変わりはない。


ピンチになれば、回収品のひとつであるチェッカーフラッグをとって車に逆襲すればいいというパックマンさながらの大逆転劇も楽しめるが、 モンスターや特定の条件で出る爆弾にぶつかるとミスになるあたり、これもパックマンのモンスターのいじけに通じるものがある。

なお、アーケード版では車が金に変化するのに対して、ファミコン版は車の色が変わり逃げ出しどちらも一定時間後に再び車が姿を現すという、 パックマンそのままのものになっている。

 FUELのシステムもこのゲームに欠かせない要素のひとつになっていて、ボタンを押せばFUELを消費してスピードアップするというもので、 ラリーXの煙幕と違って主にスピードクリアか敵車を振り切るために使う以上チェッカーフラッグもあることから、アイテムがある中での このゲームにおけるプレイヤーの特殊能力は間違ってはいない。

また、このシステムの数値はタイムに近い感覚になっているところも面白く、一定数以下になると敵車は一斉にプレイヤーに襲い掛かってくるあたりが それを物語っていて、スピードをアップして敵車を振り切るのはカーチェイスさながらで、アーケード版ではそのシステムがぴったりといえた。

とはいっても、FUELが0になっても時間切れではなくスピードアップができないだけだが、敵車が時間がたつごとに的確にこちらに向かってくるのは 恐怖の一言で、敵を振り切って別の部屋でやり過ごそうとしたら行き止まりに遭遇して敵車でミスをするという、先述した各部屋の内部の不明さも合わさって 追いかけっこだけでは終わらず、レーダーモードの通路は狭くここで複数の車をかわそうとして体当たりを食らうあたりも、使いどころこそあれどそのタイミングが難しい。

何しろ、自動的に減っていく点ではラリーXと変わりないものの、使えるとすればレーダーモードそれもあまり敵車に囲まれていない程度で、 FUELを多く残せば高得点につながるが、特殊能力的に使いどころが難しいために少々微妙な扱いに感じてしまう。


 4年後に移植されたファミコン版は、アーケード版を大幅に改良して登場した。 グラフィックやBGMの質の強化はもちろんで、後者については難易度設定という形で3つのBGMが選ぶことができ、それを楽しめるようになっている。

中でも、ノーマル難易度のBGMはなぜか和風テイストで、他社の歴史シミュレーションにでも使えそうだが、このゲームにも意外とマッチしているところも面白い。 ほかの2つのBGMも、ノーマル難易度のBGMに負けないくらいマッチしているのだが、質もいいし複数のBGMを選べること自体、当時としては非常に贅沢ではないだろうか。

 その設定される難易度だが、主に敵車に追い回されるまでの時間の長さと敵車のスピード、FUEL使用の減り具合で、どちらも追い回されるものの恐怖が味わえる。 それでも、チェッカーフラッグで逆襲できることに変わりはないが、ファミコン版では新たにFUELの補給と残機を増やせるアイテムが登場したことで 難易度も若干下がった感じになり、アーケード版と比べてアイテムまでもバリエーションがアップしている。

ただし、新たに登場したアイテム全部レーダーモードに反応しないため、こういったアイテムはあくまでおまけにすぎないものの敵車の追跡を振り切って 苦し紛れに何もない部屋にもぐりこんだ時、偶然にもアイテムが隠されていたことにほっと胸をなでおろした人もいたはず。

もっとも、取らなければ意味がなくたとえ取っても袋小路に置いてあったりするので、収集必須アイテムもその場合のこともあることを考えると、 難易度が少々下がったリメイク版それもイージーでも、最初から殺す気があるといえるものだろうか。

 16部屋そのものも強化され、部屋を出ずとも別の部屋に行けるトンネルなどの仕掛けや、ハート型の壁を敷き詰めてハートが描かれている部屋など アーケード版になかった要素とスタッフのお遊びもあって、アーケード版を楽しんだ人にも十分楽しめるつくりになっているが、斜め道がある部屋もたくさんあり リメイクされても自機は相変わらず上下左右しか移動できないため、斜め道を移動するときは砂利道を走るがごとく妙にがくがくする気分がするはずだ。

それだけに、ファミコン版は全ステージ数が9なのはともかく、アイテムを全部回収してステージクリアとなりまたステージ1からのループになるかと思いきや、 ゲームオーバーになるまで終わらないという初期のゲームのシステムを完全につぶしている。

確かに、最終ステージに行けるほど甘くはないが熟練のプレイヤーのことを考えると、ループもしくは 一枚絵(もしくは英文だけ)のエンディングでも入れるべきではなかったか。

最終ステージで、すべてのアイテムを回収してゲームオーバーを待つというのはさびしい感じがあると同時に、ハイスコアやどこまでステージをクリアできるか という当時のプレイヤーの楽しみをつぶしているので、どちらもできずもどかしい思いをしたプレイヤーはいたはず。


 最後に、このゲーム発売当時のキャンペーンについて説明したい。 このゲームにおいて、各ステージをクリアするごとにシークレットレターという名の英文字が現れ、それが5ステージまで続きステージ5まで出た 英文字を自分なりにそろえて、正解だと思う単語をはがきに書いてサンソフトまで送るというものだ。

これに正解すると、サンソフトからオリジナルTシャツがもらえることができたのだが、このあたり数ヶ月前ハドソンが発売した『チャンピオンシップロードランナー』の 会員証に通じるものがあり、アーケードでもカプコンの『戦場の狼』などクイズではないが感想を書いて送ってオリジナルアイテムをもらうところも、 当時のゲーム業界はキャンペーンを乱発している感じがしないわけではない。

ちなみに、正解は『ROUTE』でこのゲームのタイトルであり、キャンペーンの締め切りもなく当時キャンペーンをやっていたゲームの多くも 同じことが言えるのだが、この手のキャンペーンの締め切りはなくとも期限は自然消滅したと思われ、いまさら応募する人はいないだろう。

 私がこのゲームに出会ったのは約8年前、大学生活中に一人暮らしをしていたアパートの近くのゲームショップで、ほかのゲームを買おうと思って ちょっと見ていたときに偶然見つけたが、20年以上前のムックでも画像ぐらいは見た記憶がある。

ただし、出会ったのはそのゲームのソフトではなく『メモリアルシリーズ サンソフトvol.2』であり、ファミコン版を購入したのはそれから2年後。 そのころの私は、『ナムコミュージアム』といった往年の作品の集めたソフトをプレイしていて、サンソフトがこういったゲームを出したことを知った私としては 非常にうれしく値段も安かったので、vol1とともに購入した。 目的は、そのゲームをプレイするだけでなくリメイクの元となったアーケード版、もしくはPSなりにアレンジされたバージョンをプレイするためだった。

 しかし、これらのソフトはファミコンソフトのものを収録しただけで、値段も安いことを考えるとこの程度のものだったのかと今ながらに思った。 ただ、クイズやチラシなど脇を固めるお楽しみ要素が満載で、これらのゲームの懐かしさにちょっと浸っていた。

とはいえ、プレイそのものが目的だっただけにファミコン版のプレイに意気消沈近い状態になったのは、2本収録されているソフトの中で一本しかプレイしていないものの、 同時収録されていた『アトランチスの謎』を昔散々プレイしたことが要因だったと思う。

 それでも、初めてプレイするルート16ターボだからどういうゲーム化プレイしたが、斜め道のある部屋がやたら多く部屋に入ろうとしても 入口の壁に引っかかって入れないことが多く、スピードアップさせるFUELもまったく使わないことがあった(というより使うことを考えていなかった)。

内容は、ラリーXやパックマンをすでにプレイしていたからどういうゲームなのかわかったものの、いつの間にか敵車に追い回されて 袋小路でやられてしまうこともあり、イージーでも最終ステージに行くことができずせいぜいステージ5までクリアできなかった。

また、金を回収するのがこのゲームの目的であることはレーダーモードでわかってはいたが、それ以外のアイテムをすべて回収したいという いわば欲の深さもあいまって敵車に追い回されることが多かったものの、チェッカーフラッグをとっての逆転劇をいつも体験した。

散々追い回した礼をすべく、逃げ出した敵車を語った市からぶつけて得点を稼いだが、パックマン同様一定時間で元に戻ることを 忘れてしまっていたので、そのたびに元通りにおいまわされることも多かったのは今となってはいい思い出。


 それから現在、パソコンゲームのディスクを探すためにちょっと自分の部屋の大掃除をしていたら、メモリアル版購入から2年後に購入した ファミコン版が出てきたので、ついでにレビューするという気持ちで早速プレイした。

これより前、アーケード版のことをネットで知ることができたが、仕掛けやアイテムの種類も違う以上にストーリーが大幅に違っていることに驚いた一方で 肝心のゲームの目的は変わっていないあたり、よくまあ悪人主役から正義主役にストーリーを転換できたものだと思った。

それと、メモリアル版プレイ時はまったく気づいていなかったが、BGMの種類と質に思わず聴きほれてしまい、中でもノーマルモードのBGMは ファミコン初期なのにゲームよりもBGMを聴くのに夢中になり、レビューにも書いた歴史シミュレーション風味のものに感じ、 テンポをダウンすれ普通にほかのゲームに使えるのではないかと思うくらい質の高さに驚いた。

だが、ゲーム本編それも最終ステージでループもしなければエンディングもなく、ただゲームオーバーになるまで追いかけられるという事実を知り ショックを受け、そこを少しでもいいから改良してくれればもう少し高い評価があっただけに、私としてはステージ8までがクリアする楽しみとしか 今となって考えることができず、ステージ9が自由気ままにプレイすることに変わるのがこれはこれでどうかと思う。



本日のまとめ


BOOOOOOM!!
(09/12/24レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2024年01月15日

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