SD戦国武将列伝 烈火のごとく天下を盗れ!
バンプレ初の歴史SLG



発売日:1990年9月8日   発売元:バンプレスト
ジャンル:SLG   値段:6800円
おすすめ度:3(バンプレ版戦国オールスター)


バンプレストおなじみのSDキャラ総出演のゲームだが、今まで登場したSD作品とはかなり趣が異なっている。 全体的なSDキャラの定番といえば、なんと言ってもSDガンダムが思いつくかと思われ元祖はチョロQダグラム)、 続いて仮面ライダーやウルトラマンのバンプレ初期のコンパチシリーズへと続いていく。

今では、『スーパーロボット大戦』でのSDキャラ(正確には三頭身)をはじめとして多くの作品にもSDキャラとそれを主役とする 作品などが登場していて、『SD=版権キャラ』という図式が初期に完成してしまっている。 もちろん、版権以外のキャラにもSD化されているものが見受けられているが、昔は版権作品のSD化が顕著であった。

 それだけに、今回紹介する作品は当時の常識を覆すものであり、バンプレ初のSLGとしてこのゲームは避けて通れない。 なぜならば、このゲームに登場するキャラは全員戦国武将であり、戦国武将がSDとなってゲームに登場することは異例であった。


もっとも、戦国武将のデフォルメはその武将の出身地および活躍した地方の土産物屋のお土産品などに商品化されていたが、 全国区でゲームとして登場することを考えればかなり思い切った手法をやっている。 コンパチシリーズで有名なバンプレストだが、SD作品のひとつとはいえ版権作品とは違った感じで、 アニメや特撮のSDキャラに頼ることなく独自のゲームを作るあたり、この年の12月発売される『鬼忍降魔録ONI』にもその表れが見える。

 バンプレ初の歴史SLG、戦国を舞台にしたゲームは当時SLGの総本山であるPCにはそう多くなく、 戦国SLGの有名どころといえばコーエーの『信長の野望』シリーズとシステムソフトの『天下統一』が該当するはずだ。

FCには、既にナムコ(現バンダイナムコゲームス)の『独眼竜政宗』やアイレムの『不如帰』が登場していて、 シリーズ化についてもホット・ビィの『武田信玄』が2作登場しているものの、PCよりスペックの低いハードに加えて SLG自体子供にとっつきにくかったジャンルであり、本格的なSLGがFCで市民権を得たのは80年代後半末だった。

その頃になれば、戦略SLGや歴史SLGはもちろん経営SLGもあれば株の売買がテーマのSLGもあり、 信長の野望シリーズもFCに進出したこともあってSLGソフト自体量産されていて、FCにあわせたSLG作りが盛んになっていた。 PC作品にはない要素でPCソフトと戦えるFC産のSLGは、時代が進むにつれてその手のシステムを好むファンから評価を受けている。

そして1990年、バンプレ初の歴史SLGが世に送られたが、やはりFCならではの要素というより FCのSLGにありがちなSLGのわからない要素をできるだけなくして発売させたといえる。 1ターンが春夏秋冬ゆえに1年に4ターン進み、その間は開発や都市開発などの内政をやったり、戦争や軍備を整えたりなど一般の歴史SLGと同じものになっている。

ただ、それをするための金額は最初から決められていたり開発によって変動するだけになっていて、実行金額をこと細かく決めることはないし、 確かにSLGにありがちな数字だらけの画面が出ているが、それは右上にしっかり納められているしボタンで切り替わる。 軍備こそこと細かく決めることになっているが、物資の量で決められ訓練や兵の忠誠度の高さにより戦争の優劣差が決まるので、お国の一大事のものならば仕方がないだろう。


 なお、合戦においては敗れてもその武将は自害したり討ち死にすることなく勝者の属国の国主に納まっているが、後述するこのゲームの要素を失わせたくなかったのだろう。 そのためか、自分の国の周囲に戦争を起こせる相手がいなければ、戦争ができる属国に移動しなければならないのが面倒で(1ターン消費するため)、 属国はこちらの命令で自動的に国づくりを行う関係上、戦争は大名自ら起こさなければならない。

攻められた場合に属国での合戦があるが、こちらから戦争を仕掛けられない分不利は免れず、勝利条件が30日間守るか足軽を指揮している大名もろとも つぶすしかないため、武力=体力で決まる一騎打ちは足軽しかできない以上武将によってこれも不利は免れない。

一応、足軽が0になっても敵の足軽と一騎打ちができるのはうれしいしそれにより逆転が可能になるが(武力がなくなるといくら戦力があっても負け)、 それがアクションで相手を攻撃するタイミングが難しくせいぜい体力が高い大名でなければほぼ無理で、結局は物資の差もしくはおとりの舞台を作って足軽を集中攻撃しなければならない。

 このゲーム、『信長の野望 全・国・版』の雰囲気を持っているが、その要因として配下武将がいないことといないために 戦争の優劣が大抵物資で決められること、スタート時点で全ての国に選択できる大名がいることなどがあげられる。

しかし、その登場する大名と彼らが支配する国は、バンプレ独自に配置されているのが面白い(全・国・版に倣った感じがあるだろうが)。 例えば、山城を支配しているのが足利ではなく松永でその足利は武蔵を支配していることになっているが、これは松永久秀が 将軍殺害に関与したこととこの時期古河を本拠地にした古河公方で、先祖が鎌倉公方であったことが関係していると思われる。


ちなみに、上杉謙信がいるのに上杉と長尾がそれぞれ別々になっていたり、肥後を支配しているのが相良氏ではなく阿蘇氏だったりなど いい加減な部分が目立つのが難点(全・国・版でも三好と十河の親戚なのに別々に出ている)。

 だが、大名の配置はもちろん国を支配する大名を見るに、完全に歴史と合わないところが多く実情を知らない人がプレイすれば、 このゲーム一番の突っ込みどころだと思うだろう。

武田信玄や上杉謙信がいる時代に伊達政宗が活躍したり、後に出てくるはずの前田家が登場していたりなどめちゃくちゃさが目立っているし、 大名同士の対決によってはかつての部下が主君にはむかうという別の突っ込みどころも展開される。

しかしこれは、同じ年代に多くの時代から戦国大名をかき集めて、それぞれの国を支配するといういわゆる戦国オールスターを体現していると思われる。 だからこそ、著名な戦国大名同士の時代を超えた戦いは面白いが、一目でこの大名だと思えるのがほんのわずかしかいないのがさびしい(多くがモンタージュ)。

戦国オールスター風ながらも、FCサイズに合わせつつ軽めの歴史SLGになっているものの、中身はしっかりしたゲームだということがよくわかる。 ご存知のように、初期のバンプレストは多くの版権作品を集めてSD化させクロスオーバーさせるコンパチヒーローシリーズがメインで、 このゲームもコンパチシリーズを踏襲しつつも登場人物が戦国武将、それも幅広く集めているのだ。

それだけに、全国区で有名な武将が同じ時代で戦ったりしたらどうなっていたのかという想像も尽きず、それを具象化したのがこのゲームなのかもしれない。 もっとも、SLGは初めてだったものの決してクソゲーにしないのはさすがであるが、スパロボや他のSLGに生かされているのかは不明。


 夢のあるゲームだが、それゆえに致命傷とも言うべき欠点を抱えてしまっている。 それは歴史SLGの定番である歴史イベントがないことで、全・国・版でも隠しイベント扱いとはいえ本能寺の変が出ていたりしていたが、 このゲームではイベントが一切なく地道に富国強兵をして、地道に天下統一を目指すことになっている。

戦国オールスターがその原因であり、お祭りが歴史SLGファンの楽しみの一つを得た一方で、別の楽しみの一つを奪ってしまった感じがあるが、 お祭りという点では夢幻の章がある『太閤立志伝X』に近く、その2つのゲームがどういう関係にあるかわからないものの興味はある。 もっとも、配下武将がいない状況では史実を再現するのは難しく、できたとしても主に大名だけのイベントがメインとなっているはずだ。

 また、このゲームが一人プレイ専用ゆえに多くの友達とわいわい楽しむことができず、色々な戦略ができないこともつらい。 もっとも、SLGは一人プレイ専用ということも多いのだが、信長の野望シリーズでも必ず複数プレイもできて攻略本(ハンドブック)によっては 複数プレイの攻略も指南されていただけに、少々さびしい感じがするのはSLGの宿命なのだろうか。

しかし、強豪はもちろん弱小でもCPUによって地道に領土を拡大するのが恐ろしいところで、強豪がいつのまにか弱小に敗れることも日常茶飯事であり、 宗主国が他国に攻め込んで返り討ちにされた挙句、自分の国が競売にかけられた上に属国が独立し独立国がかつての宗主国の競売に参加し、それを手に入れる様は下克上を越えた何かといえる。 この後、バンプレの戦国SLGは11年後発売の『戦國夢幻』として再登場するのだが。


実際問題として、著名な大名とその人物の治める国のデータが高い一方でマイナーな武将と治める国のデータが低く、その大名は国を運営していくのがやっとの状態。 幸い、全・国・版と違って1ターンでいきなり攻め込まれたり一揆や謀反が発生して滅亡の危機にさらされることはなく、 攻め込まれるとしてもせいぜい数ターン程度であり、一揆や謀反で国が滅ぶことはないので弱小大名でプレイしたい人にとってうれしいところ。 もっとも、先に書いたように国力が低い状況ではスタートダッシュが難しく、このまま富国強兵を続けるには難しい状況に変わりはない。

 しかし、このゲームでは弱小勢力でも十分天下統一を狙えるわけで、国力や大名(または家臣団)がものをいう他の歴史SLGとは一線を画している。 その要因として、弱小大名を助ける2つの要素があるためで、ひとつは金山発掘のミニゲームがあり4つの金山を制限時間内にどれだけ掘っていけるかで獲得する金額が変わる。

正確には、獲得する金額は掘りつくした山によって違いはずれの山があれば少ししか資金を獲得できない山もあり、ミニゲームをやること自体1ターン消費するというばくちの面もある。 その分、大金を獲得できれば戦力を強化したり内政を行うこともできるので、弱小大名にはありがたい救済措置ではないだろうか。


 もうひとつは、カードを引いて引いたカードの内容に運を任せる方法で、金山のミニゲーム同様一度やったら1ターン消費するもので、 カードの内容が運しだいというあたりはどう転がり込んでも金が手に入る金山よりばくちの度合いが高い。

兵力が増加するいいものもあれば、逆にせっかく奪った国が他国についてしまうものもあり、シャッフルされる瞬間はわくわくする一方いざ引くとどんなものが出るのかどきどきするだろう。 坊主めくりはそれを象徴するもののひとつで、運要素にさらに運を加えたものになっていて、国を手に入れるか国を奪われるか果ては一休さんから兵糧をもらえるかわからないわけだ。

 この元ネタは言わずもがなカードダスで、バンプレ自身それを認めているが勝負よりコレクションの価値があるカードダスと違って、国の運命を分けるものが存在している。 このゲームでは、60歳を過ぎると死ぬ確率がどんどん高くなり配下武将がいない以上、大名が死ねばどんなに国力があっても即ゲームオーバーになるが、 跡継ぎカードがあればその状況は回避され、全・国・版のようにスピードで全国を統一する必要もない。

他に、配下武将らしき人物のカードを入手することもあるが、これは合戦で足軽を指揮する大名の代わりでありどれも武力が高いので、弱小大名にとってありがたい存在だろう。 弱小勢力が使う救済措置を、あえて強豪にも使わせつつそれがゲームの重要要素を秘めさせることができたバンプレストはさすがである。

 これらのシステムを見るに、全・国・版をもっとやさしめにした感じで全・国・版で痛い目にあったプレイヤーにとってありがたいものだったことだろう。 歴史SLGなのに、開発アイコンがビルだったり文章の多くにやる気のなさというより堅苦しさを排除してノリを軽めにしたところも、このゲームの評価のひとつといえるのかもしれない。

なお、全・国・版にあった競売がこのゲームでも用意されているが、ほぼすべての大名が参加できて攻め込んだ国が返り討ちにあう場合に発生する場合が多く、 ゲーム自体戦国オールスター風なのでこのゲームに国の競売が出てもおかしくはないはず。

ただ、多くの大名が参加それも競売される国に隣接していない大名でも参加するため、仮に手に入れた場合その国が飛び地扱いになるのだが、 その場所でも物資や本陣の移動ができるのはうれしいというより面白く、その手の全国統一もある意味面白い。


このゲーム、存在こそ発売直後にその作品の名前を知った時、ウルトラマンがガンダムなどのアニメや特撮のキャラが 出ているのではと思い込み、このゲームの発売を楽しみに待っていた。

その昔の私は、SDといえばなんと言ってもSDガンダムが思いつき(昔からカードを集めていた)、SD化されたウルトラマンや仮面ライダーでも それぞれ『ウルトラマン倶楽部』や『仮面ライダー倶楽部』で知っているし、友達と同年発売のゲーム『SDヒーロー総決戦』を 何度もプレイしているため、『SD=版権作品』という認識が根付いてしまっていた。

それだけに、このゲームがそういったキャラたちが登場せず出てくるのは実在の戦国武将たちということを知ったため詐欺ではないかと思い込んだが、 今を考えると版権作品のクロスオーバーで名を上げたバンプレストがこういった少々まじめな歴史SLGを作ったことに驚いている。

ゲームの画像は、当時のファミマガそれもウル技のページの裏技で見たものの、その時はまだバンプレストの定番が 私の頭に根付いていたので、プレイそのものについてはかなり先になってしまった。

 それから13年後、とある大手ファミコンサイトでこのゲームの画像と一口コメントを見て興味がわいたのが『戦国オールスター風』という言葉で、 この時期主に信長の野望シリーズをプレイしていた私にとって常識だった歴史SLGとは一味違うものなのかなと思っていた。

ただ、面白いかどうかは言及されておらず歴史SLGといえばなんと言ってもコーエーのほうが面白いだろうと思っていたので、 他の歴史SLGの多くはいまだプレイしておらずやのまんの『信長公記』ぐらいしか長時間プレイしていないと思う。

そのゲームも、コーエーの歴史SLGに飽きたのではなくレビューでのネタ切れを恐れてのことで、 コーエーの歴史SLGにすっかり慣れてしまっている私にとっては他社の歴史SLGはどうも手が出しにくかった。 説明書は、とあるサイトのほうに載っているので買う必要はなく、近くのゲームショップで中古それもカセットのみで購入した。

 しかし、今レビューしているこのゲームをプレイしてみると少々面白く、伊達政宗や上杉謙信などの著名な戦国武将が一堂に集まるというのは 太閤立志伝Xの夢幻の章で体験しているが、既にそれに近い形でやってのけていることに驚いている。

ただし、大名や助っ人武将全員苗字だけで名前が出るのは一部それも自己紹介する場合のみなので、マイナーな戦国大名だと どの大名なのかわからずモンタージュも手伝って地元のファンとしては相当苦労したと思う。

特に、宇都宮や河野といった弱小ながらも戦国末期まで生き残った大名は、宇都宮の誰とか河野の誰とか詳細に記していないので、 歴史SLGのファンとしては脳内に補完しなければならないのがつらい(私は宇都宮を広綱、河野を通宣と補完している)。

そういった弱小大名は、多くの戦国SLGの場合強豪につぶされる運命にあるのだが、このゲームの場合金山発掘やSDカードのおかげで いきなりつぶされることは少なく、場合によっては強豪を飲み込んで大いに成長することもあるのが面白かった。


 こういう展開は、SFC版の全・国・版で能登畠山氏がタナボタに近い形で多くの領土を獲得していたことに強烈な印象を持っていたが、 SD戦国武将列伝の場合は弱小だろうが強豪だろうが属国になるときは属国になるのが宿命付けられているようだ。

それを示す証拠として、河野が長宗我部の治める土佐を属国にしたり、史実で島津に敗れた肝付が島津の治める薩摩を属国にしたりなど、 弱小大名の逆襲が相次いでいることに驚きつつも胸がわくわくした。

実は私、弱小でも戦え地元ということで弱小の宇都宮を選び、序盤こそSDカードや金山のミニゲームで国力を増加したり、 戦争それも攻め込まれたらおとりの部隊を使って大将の足軽を集中攻撃してその場をしのいだ。

システム等が似ている全・国・版だと、攻め込まれた痛手を回復するのに必死だったが、このゲームだと攻め込んだ国がいきなり空き地になることが多く、 オークションで地道に勢力を拡大していったものの一般の戦国SLGとやり口が違うから、領土が増えるのはうれしいものの それが飛び地それもSDカードの坊主めくりでいきなり遠くの国が手に入った時は、これでよかったのかと正直なやんでしまった。



本日のまとめ


わしのなは ひでよし だ
わしは こんなところより
みなみの しまに いきたい・・・
(09/9/6レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2024年01月11日

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