サンサーラ・ナーガ
サンサーラ・ナーガシリーズ第1弾



発売日:1990年3月23日   発売元:ビクター音楽産業   ジャンル:RPG
値段:7500円   オススメ度:3.5(竜使いの少年少女と竜の物語)


いつかわからないほど遠い時の果て、その時代に存在していた大陸を人は『アクパーラ』と呼んでいた。 そんなある日のこと、アクパーラにある村『オリッサ』の中でひとりの少年(少女)が夜明けを待たずして、

人知れずこっそりと生まれ育った村を出る、たった一人の肉親であるばっちゃんにも知らせぬまま…。 金はないし、身を守る武器もなければ防具といった壮大なものもなく、手持ちの食料や道具も残りあとわずか…。

彼(彼女)にあるものといったら、心のうちに秘めた大きな野心と腕に抱えた大きな卵、 ただそれだけだったがこの卵は村にとって大事な宝だった。確か竜の卵だ……と村の長老は言っていたはず。

そう、この世界には竜がいてその気高さと凶暴さゆえに、人々は竜を畏れ崇拝していた。 さらに、この世界には竜使いと呼ばれるスペシャリストたちがいて、たった1本の笛で竜を操りその仕事の困難さゆえに、一般大衆はもとより王侯貴族たちにさえ彼らの存在と活躍に一目おかれていた。 竜使い自体人々に尊敬する存在ではあったが、中でもアルシンハは伝説とまで呼ばれるほどの竜使いであった。

「卵から竜をかえし立派に育てて自分も竜使いになり、いつか村のみんなを驚かしてやるんだっ!」

竜使いになれば富も名誉も思いのままだ……、少年(少女)はそう信じて疑わなかった。そして、自分にはそれができると。 そんな野望を胸に抱き、卵から生まれてきた竜を一生懸命育てて、将来竜使いになってやろうと思っていた。


ところがどっこい、世の中そう甘くはなく、卵から生まれたのはなんと竜とは似ても似つかぬダチョウの子供だった。 小さなダチョウは愕然とする彼(彼女)を尻目に、あっというまに地平の彼方へと走り去っていった。 少年(少女)は村の宝を盗み出したあげくに、それを失ってしまったばかりか自分の野望もあっさり潰えてしまった。

……村の宝を盗んでしまった以上もう村に帰ることはできない、少年(少女)は悲嘆にくれるしかなかった。 ずっと昔から竜の卵だと信じていたものが、実はダチョウの卵だったというこっけいな話を、一体だれが信じるだろうか? 胸を張って村に帰るには、一人前の竜使いになるしかない。そう考えて笑い出した、いや笑うしかなかった。

「なんだ、はじめっからそのつもりで村を飛び出したんじゃなかったのか……。」と…。


ビクター音楽産業(現マーベラスエンターテイメント)のRPGで、GBAで続編とカップリングされて リニューアルして登場するなど、決して知名度は高くないながらも人気が高い作品である。

この作品が発売された1990年、FC作品が名作はもちろん良作や秀作が目白押しとなり、同年誕生するSFCに向けて最後の打ち上げ花火の感じが出ていた。 もっとも、そういった打ち上げ花火の中で良作と秀作の多くが、名作ほど著名だったり面白いわけではなくいつしかマイナーの地位に甘んじている。 再登場の機運が現在も続いていて、マイナー作品の多くがFC版そのままかシステムなどを改良してリメイクとして登場されているものもある。

今回紹介するサンサーラ・ナーガも、マイナーながらも熱狂的なファンが多く先に書いたように続編やGBAにリメイクされたりとなかなかの人気を誇っている。 マイナー作品が人気を得るには、ドラクエやFFといったメージャー作品のシステムや世界設定などを比較して、差別化を図らせつつもその要素がプレイヤーに受け入れられるかにかかっている。

もちろん、発売当時はあまり人気がなくても数年後の再評価により、改めてシステムが見直されて人気が出てくるものもあるが、 奇抜なアイデアがマイナーゲームに多く出てくることは、それだけメジャーなゲームに埋もれまいとするスタッフの必死の行動といえるのかもしれない。

サンサーラ・ナーガには、メジャーなRPGとはかけ離れた要素がいくつもあり続編でも継承され、まさにこのゲームの要素がサンサーラ・ナーガを作っているといえる。 まず世界観については、インド風味をベースに純和風や西洋風など色々と混ぜ込んでいる。 登場人物の一部のデザインと名前の由来がまさにインドで、名前のほうはサンスクリット語(梵語)つまるところ仏教関連のネタがあるということだ。

インドの宗教の歴史をひとまとめにすれば、紀元前20世紀前後にはカースト制度の一環であるバラモン教が、紀元前5世紀前後には仏教発祥の地ゆえに仏教関連が、 紀元7世紀以降はヒンドゥー教がメインで、まさにインドの宗教をヒントにしたのだろう。

世界観だけでも、十分著名なRPGとの差別化に成功している一方、西洋風は武器や防具などといった一般のRPGの設定でしかない(メーサー砲など一部例外)。 純和風は、立ち食いそばとそれを扱うチェーン店『はらたま』の存在で、インド風味のRPGなのに突然和風の要素が出てくるのは意外と同時に奇妙ではある。

しかも、立ち食いに命をかけているプロがいたり、店自体ゲームのヒントが出たり店のトイレを使って別のはらたまに移動したりと、 雰囲気的に場違いなのに店長も含めた店の温かみでつい立ち寄ってしまう、それがはらたまの魅力といえるのかもしれない。

ところで『はらたま』という店の名前の由来だが、これはこのゲームの脚本を担当したアニメーターの押井守氏の世界観によるものが大きく、 『うる星やつら』の登場人物のサクラがアニメ版で「はらたま」、「きよたま」と連呼していることにあり、 この2つの言葉自体『アルカナハート』シリーズをプレイした人ならば、耳にするであろう台詞であろう。
 
この言葉自体、押井氏作品のみならずアルカナハートのように押井氏以外の作品にも登場し、押井氏の影響がほかのメディアに大きく与えたといういい例といえる。 立ち食いそば自体押井氏の作品に多く登場し、立ち食いのプロのように立ち食いそばをメインとした作品もあるが、これはサンサーラ登場から10年以上のことである。


この純和風の要素は、押井氏が脚本を手がけたからこそ登場したわけで、はらたまの要素がこのゲームの世界観に面白い形で溶け込んでいて、 結果多くの世界観が無理なく(時にシュールに)溶け込めたのは、開発スタッフの手腕もさることながら押井氏の手腕も大きいだろう。

もちろん、押井氏だけではこういうゲームを作ることは不可能であり、脚本を引き立てる周りの設定が不可欠なのはいうまでもないこと。 キャラデザインには、イラストレーターでファミコン通信(現ファミ通)で漫画を連載していた桜玉吉氏が担当し、桜氏のかわいらしいイラストをメインにしつつも 奇妙なイラストで読者を度肝を抜く作風は、まさにこのゲームの多くの文化が溶け込んでいる世界観にふさわしい。

たとえばザコのミジンコ、デザインが資料集や図鑑でお目にかかれるものとはかなり異なり、桜氏の漫画でのミジンコのデザインになっていて、 他のモンスターも名前通りのものもいればデザインと名前が微妙に違っているものもいて、このゲームの世界観をさらにシュールにさせている。 登場人物についても、かわいらしいキャラはともかくそうでないキャラについて、世界観にあったデザインではあるがどこか違っているものもいて、まさに桜氏のセンスが出たといえる。

しかし、登場人物はもちろんモンスターもシュールだったりかわいらしかったりするが、モンスターについてはそれを楽しめる余裕などない。 というのは、ゲーム序盤から丸腰のまま戦わなければならず、最弱のミジンコでも苦戦を強いられることは間違いなく、幸いスタート地点のオリッサの村(主人公の生まれ故郷)で ばっちゃんに泊めてもらい体力を回復できて弁当ももらえるので、ある程度の遠出は心配ない。


だが、変な方向に歩けば終盤で出る予定のモンスターに出くわす危険が高く、主人公の状態に関係なく逃げることができるものの出会えばまさに絶望。 一部のモンスターは、出るところを間違えたのかというばかりに弱いものもいるが、弱いモンスターでも毒や痺れといった特殊攻撃を仕掛けてくるものもいるので侮れない。

このゲーム、最弱モンスターが出る道路からはなれていくとそれに比例して強いモンスターが登場し、山岳地帯では化け物クラスのモンスターが控えている。 厄介なことに、序盤で竜の卵を入手する手順のひとつとしてセンターに行かねばならないのだが、そのセンターのほぼ周辺に山がありうっかり山に入れば 足がのろくなるばかりか強力なモンスターに出くわしてしまうので、スタートからまさに命がけになっている。

湖に浮かぶ、ハワプールの都周辺(濃い青)に一歩でも踏み出せばみずねこ(漢字で書けば『水猫』と猫のようなモンスター)の大群に襲われ、 この敵はHPがとてつもなくある(倒せない)上に逃げられず都周辺に移動するだけでも命がけだ。 もっとも、下水道周辺などのほうは普通のモンスターとほぼ同じだが、当時のプレイヤーにとってトラウマになったのは序盤で出会えることが大きいと思われる。

ある意味、このシステムがこのゲームをマイナーの地位に貶めている要因であり、一般のRPGのように登場するモンスターを地域ごとに変更させるようにすればよかったのだが、 普通のRPGと違うものを作る意気込みのほうが一般的なシステムを排除させたのかもしれない。

早い話、弱いモンスターしか出ない地形を通れば遠くの街に行けることも可能で(さすがにそうはいかないところもある)、 いきなり強いモンスターに挑戦するのも地道に弱いモンスターから倒すのも、すべてはプレイヤーの自由といえるのかもしれない。

これは、はらたまでの移動も含めてほぼ自由に移動できるゆえに、登場する敵の内訳を地形に変更したものと思われ、どんなにスタート地点から離れても 地形によってはミジンコやテングダケしか出ないこともあり、それがプレイヤーの自由につながっていると思われる。

ちなみにこのゲームに海は存在せず、アルシンハにそっくりな像が大小様々にいくつも立ち並んでいるだけで、 湖や川こそあれど海そのものがないというあたり、一般のRPGをプレイした人にとってこれも衝撃が大きかったことだろう。


なお、このゲームでは経験値はおろか金すら入手できず、プレイヤーの成長は一切なく装備でまかなわなければならないというシビアな要素がある。 当然HPも最初から最後まで同じで、大きなダメージを食らえばという恐怖が最初から付きまとい、金を稼ぐ手段についても倒したモンスターを入手して店で売るぐらいだ。

倒したモンスターを獲物と表示されるこのゲーム、獲物または牙や甲羅といった体の一部を入手するだけでは金を稼ぐことにはならないので、 必然的にオリッサの村のばっちゃんに毎度泊めてもらうしかないし、竜を育てる序盤でもばっちゃんを頼りにするだろう。 一人前の竜使いになるために村を出た主人公だが、結局自分の村で過ごさなければならないというジレンマがある意味面白くも現実的に重くのしかかる。

ただ、プレイヤーが途中で連れてくる竜が経験値でレベルアップしたりする一方、体力は宿屋に泊まったりしても回復できず、HPが主人公の数倍というあたりも納得がいく。 アイテムを使ったりモンスターを食べれば回復するが、後者は獲物つまり金を稼ぐものを食べさせることを意味するので、金を優先か竜を優先か判断に迷うことは多い。

これこそが、このゲームのもうひとつの最大の要素であり、序盤で入手した竜の卵が孵化して竜が生まれ、だんだんと育っていって最終的に プレイヤーのパートナーになるという、まさにプレイヤーが竜の親になるゲームになっているのが面白くも温かみがある。


 もっとも、生まれた直後は託児所で預けるしかなく、その間を指定された獲物を食べさせて成長させなければならないし、竜ジステンバーの注射を受ける費用も含めれば 決して馬鹿にならず、まさに現実の子育てのような感覚にさせてくれる。 幸い、ニコニコローンで借金して費用を払うこともできるが、借金を期日まで払わなければ怖い人がやってきてぼこぼこにされてしまうものの 持ち金が0ならば平気で、場合によっては相手を倒して踏み倒すと言う手段もあるわけで、敵と戦わなくても子育ては命がけである。

怖い人と戦うこともそうだが、このゲームでは一般人はもちろん動物も『たたかう』と言うコマンドで戦うことができ、倒しても町に出入りすれば復活するものの 竜使いのパラメーターは下がるという、同じものがあった『ウルティマ』シリーズでの妙なシステムが出ている。

牛を倒して入手できる肝は、なかなかの金になるがこれもステータスを下げることになり、真っ当に竜を育てなければならないことを突きつけられる (ヒンドゥー教の影響が強いと思われるが、あるイベントで牛に関する敵を倒して手に入る牛丼弁当というものもあり、このあたりに関しては 突っ込みどころがあるが、単にスタッフがヒンドゥー教の断片しか知らない可能性がある)。


 色々苦労してプレイヤーと共にしても、時々どっかに行ってしまったりプレイヤーの命令に従わないこともあれば、 最悪プレイヤーを襲うこともあり(これでプレイヤーが死ねば恥の上塗り)竜の笛でいうことを聞かせなければならないので、 成長しても苦労の連続といえる(肝心なところで役に立たない場面が出てくる、アルシンハの笛でおとなしくしていても)。

おまけに、行動を共にしたばかりの竜はレベル1しかない上に、HPも低く防御しても大きなダメージを食い武器や防具も装備できないが、 その分成長した竜の強さは圧倒的で主人公がまったく成長しないことを考えれば、育てた時間と苦労もあわせてどうしても期待せざるを得なくなる。

一応、プレイヤーは装備で強化するしかないわけだが、獲物の一部に強力な武器や防具が作れる場合もあり、費用はかかるが最初に入手できるきっちょんの牙は強力な盾になる。 ここまでくると、獲物を手に入れることは戦いを生き抜くために必須で、竜のHP回復についても先に書いたようにアイテムと獲物を食べさせる以外体力を回復することができず、 宿屋に泊まっても泊まれるのは主人公だけでそもそも竜は街に入れないのでまさに狩りといえる。


このゲーム、私にとって昔かなりプレイしてみたかったゲームのひとつであり、近いうちにプレイしてみたいと待っていた。 この頃、ドラクエWやFFVといったプレイしてみたいゲームがたくさん登場していて、すべてでなくても多くプレイしてみたいという心は持っていたし、 そのうちの数本はいとこの家でプレイしたり親に買ってもらったりして遊んでいた。 残りのうち、大部分は大学時代やレビューしている現在に中古で安値で購入しているが、一部はいまだプレイしていない状況だ。

 今回レビューしたサンサーラ・ナーガも、レビューする2年前に初めてようやくプレイしたゲームだったが、HPの更新が押している状況では RPGはもちろんSLGといった長めのゲームの場合、どうしても後回しもしくは暇がある時にしかプレイできなくなっていた。

それでも、思い立ったらレビューを書く2年前のようにRPG主体にしたり、昨年1月から3月まで光栄作品のSLGを主体にしたりとしていたので、 今年はACTやSTGはもちろんRPGやボードゲームもレビューしているので、一応レトロゲームサイトにジャンルを変更した 初期に近いものなのかもしれない(レビューの文章自体はかなりまともだと思う)。

サンサーラ・ナーガの存在を知ったのは発売前後のファミマガで、特集ついでの序盤の攻略を掲載していたのだが、 その時の私は登場するモンスターと一部のモンスターから作られる防具に思わず釘付けになっていた。

モンスターについては、シュールなデザインもそうだがタラバガニやこつぎょなどといったうまそうな敵が載っていたし(調理セットで主人公もモンスターを食べることができる)、 防具について製作物ゆえには店で売っているものより性能が高く、これが序盤で入手できたらという妄想まがいなことを考えていた(たしかに一部は序盤で製作可能、かなり高価だが)。


 しかし、発売されてから17年後にプレイしたことは先に書いているが、いきなり村を追い出されて次の目的地を探すべく色々と歩いたが、 山の中を偶然に歩いたことでいきなり強敵に襲われてしまった。 その時、出会った敵がとてつもなく強いとは思っていなかったから普通に戦ったもののあっさりやられてしまい、それ以降フィールドを歩くのに命がけだということを 身にしみた私は、初期装備が何もないことも合わさって改造コードで体力を最大にしながら進んでいった。

それゆえ、改造コードで進むことのむなしさがいきなり現れたことでプレイする意欲を失った私は、レビューする現在までこのゲームをプレイすることを手控えた、このゲームの進め方をネットなどで学ばなければと。 ちなみに、シリーズ自体続編で大学時代にニンテンドーパワー(ロッピーのサービスでおなじみの)でプレイしたことがあり、こちらはシリーズ初めての私でも無理なくエンディングまでたどり着くことができた。

 久々にプレイした私は、オリッサの村周辺で獲物を稼ぎつつ体力が少なくなったら、ばっちゃんに泊めてもらって弁当ももらうことを何度もやり、 ある程度弁当が増えてきたら昔の竜の育成所で卵と資金代わりのものをもらったりと、このゲームならではのプレイを余儀なくされた。

まさか、金がもらえない上に経験値ももらえないというのは予想しておらず、経験値がないゲーム自体サガシリーズ(GB版およびSFC版含む)など プレイした経験はいくらでもあるが、それは成長が経験値でないことを既にわかってたためであった。 続編をプレイしていた私だったが、プレイしたのは10年ほど前でどういう成長システムだったのかすっかり忘れてしまい、 プレイヤーだけ一般のRPGの成長だったのか前作同様だったのか忘れてしまったが、パートナーの竜の成長システムは主人公と違うことだけは覚えていた。


 このため、久々プレイしたのは突然だったものの名前入力の時に昔のいやな思い出がよみがえった際、ネットでこのゲームの攻略をしているサイトを 必死になって探し、完全攻略に近いものやテクニック程度を含めていくつか見つかった(そのうちのひとつは、私がほかのゲームの攻略と レビューの時に既にブックマークしているので、灯台下暗しといったところか)。

攻略サイト通りに進めて、獲物をある程度集めたものの肝心の竜の卵は一向に生まれる気配はなく、ようやく生まれた時は獲物売ったり小技で 金を稼いだりと攻撃力と防御力はましになり、竜育てについても金が有り余っていたから獲物を食べさせるだけでなく、 竜専用のおもちゃで成長させたりとやっているうちに、続編でも同じようなことをやっていたことを思い出した。

成長して、共に行動できることになりようやく強力な戦いぶりを拝めるかと思っていたら、ステータスが低く防御してしのごうと思っていたら かなりのダメージを食らって死んでしまったり、命令を聞かず自滅したりと行動を共にしても苦労は耐えなかったことに思わず苦笑するしかなかった。

それでも、成長し主人公の役に立てるほどにまで活躍したことにほっと胸をなでおろし、こちらにも注意しながら冒険を続けたり引き続き竜を成長したりしていたが、 最後に最後で竜と永遠の別れをした時に感動とむなしさが出たが、これも育ての親だからこそなのだろうか。

 このように、苦労するのは竜をパートナーにしていない序盤と竜が成長していない頃で、成長して以降は苦労する場面もあるものの 前より格段に戦いやすくなっていて、普通に経験値を積んでレベルアップするという他のRPGと違って愛着間がわくはずだ。


一般のRPGでは、弱いモンスターと簡単なダンジョンで腕慣らしをしながら徐々に成長させて、最終的に強大な敵と難しいダンジョンに挑戦するのがパターンになっている。 このゲームの場合は、序盤と終盤が難しくその間(竜をパートナーにして間もない頃)が楽になると言う特殊なもので、敵と自分の状況とあわせて初心者にはあまり手が出ない要因でもある。 こういうアンバランスな難易度に投げ出したプレイヤーも多く、続編では前作よりマイルドな難易度に落ち着いていることを考えれば、さすがにスタッフは反省したと言うことか。

 そのスタッフの一人、川井憲次氏はこのゲームのBGMを担当し、押井氏の作品のほとんどにBGMを担当していて、押井氏あっての川井氏というコンビがゲームでも発揮している。 ちなみにこのゲームのBGMは、インドの歴史を思わせるようなBGMが鳴り響き、特に街のBGMは風景やキャラのデザインもあわせてインドならではというものがよくわかる。 押井氏の脚本(脚本については、『魔法の天使クリィミーマミ』の原案を担当した伊藤和典氏も担当している)と川井氏のBGM桜氏のキャラデザインなど、 序盤こそギャグの要素がちりばめられ戦闘などの苦労を除けばなかなかに楽しめる。

しかし後半になり、同じ竜使いのアムリタとの出会いや最終決戦での竜の絆、さらに序盤で本物の竜の卵を手に入れてこのゲームの本当の始まりがあるなど 感動の場面もあり、決してイロモノRPGではなく真剣に作られたRPGであることがよくわかる。

 というより、竜の成長や獲物の幅広い活用など斬新な要素もあり、高い難易度がこのゲームの楽しみに触れる機会を失わせたと言えるのかもしれない。 幸い、ネット上でこのゲームの攻略をしているサイトがいくつかあり、リメイク版もシステムが変更された分FC版よりやややさしめになっていて、 FC版で挫折した人にとって再びFC版でプレイするかリメイクをプレイするか、リベンジの機会がいくつも与えられたといえるわけだ。

もっとも、プレイヤーと竜の成長は変わっておらず一般のRPGに慣れている人にとってはやりづらいだろうが、現在経験値がない成長するRPGが多くあるので大丈夫だろう。 それだけに、序盤という名のいくつもの障害を乗り越えれば何とかなるはずで、簡単に成長するはずがないという押井氏のリアルな設定が生み出した障害といえるのかもしれない。



本日のまとめ


ゆけ! へるさたよ 
ただしき みちを あゆめ!!
(09/8/7レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2024年01月10日

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