SDバトル大相撲 平成ヒーロー場所
バンプレストFC初参入作品



発売日:1990年4月20日   発売元:バンプレスト   ジャンル:相撲
値段:6300円   オススメ度:2(初のコンパチ作品ゆえの出来具合)


数少ないFCの相撲ゲームのひとつにして、バンプレストのFC初参入ソフトでもあるがあまり知らないだろう。 ご存知かと思われるが、バンプレストといえばなんといっても『スーパーロボット大戦』や『サモンナイト』シリーズ、 古い時代をよく知る人にとっては『グレイトバトル』シリーズといった、コンパチヒーローシリーズが思いつくだろう。 同時に、バンプレストはバンダイの子会社であり2008年にバンダイナムコゲームスに編入されたものの、バンプレストが築いてきた歴史はバンダイに編入されてもしっかり受け継がれている。

元々は、豊栄産業という名前の会社で後にコアランドテクノロジー(以下コアランド)と名を変え、『ペンゴ』や『青春スキャンダル(どちらも販売元はセガ)』など といった少々マイナーな作品を作っていたが、バンダイに編入される前は版権作品など無縁だった。 1989年に編入されたのは、当時コアランドの経営が苦しかったこととゲーセン参入の機会を伺っていたバンダイの思惑が一致したためで、 社名をバンダイとかかわりがあるように『バンプレスト』と改名しバンダイが持っていた版権を利用して、ゲーセン用の商品を開発して大もうけした。

編入翌年にFCに参入するのだが、ある意味新会社に近い会社がこういう無謀なことができたのは、コアランド時代以前にゲーム開発に携わっていたためで、 その経験を生かしつつバンダイの力でコアランド時代以前とは違うゲーム製作を目指したのではないだろうか。

 この時期のバンダイのゲームは、ファミリートレーナーシリーズなどを除きほとんどが版権作品で、バンプレストが版権作品をメインに作り出すのは自明の理であるが、 バンプレストが版権それもクロスオーバー系をメインにしているのに対して、バンダイは作品単体もしくは同シリーズでのクロスオーバーにして製作しているのは、バンダイの事情があったためである。


正確には、バンプレストがクロスオーバー作品を作らざるを得ない状況があった一方、オリジナル作品を制作した実績があったことで、 クロスオーバーかつオリジナル要素を加えたまさにバンプレストならではの作品が生み出せる状況でもあったと思われるが、これは多くの版権を獲得していたバンダイのおかげといえるのかもしれない。

ちなみに、バンプレ初期のクロスオーバー作品がSD風なのは、バンプレが開発したゲーセン商品の多くがSDになっていたためなのだろう。 また、バンダイに『ウルトラマン倶楽部』シリーズや『SDガンダム』シリーズなどのSD作品も多く、バンプレがバンダイの製作作品に学んだ可能性も考えられ、 現在に続くクロスオーバー作品に名作が後に多く登場したきっかけはバンダイがあってこそといえるのだろう。

これから紹介する、バンプレFC初参入作品にしてコンパチヒーロー第1弾は『SDバトル大相撲 平成ヒーロー場所』で、 この時点により『SDキャラ+クロスオーバー+擬人化(意思がある)』がコンパチヒーローの基準であることが早くも確立している。 ジャンルはタイトルにあるように相撲で、FCの相撲作品は『つっぱり大相撲』、『寺尾のどすこい大相撲』、『千代の富士の大銀杏』とかなり少なく、 スポーツゲームで考えてもマイナーな相撲に参入したのは意外であると同時に勇気のいることだっただろう。

登場作品は、あまりにも多すぎるのでシリーズに分けることにするが、仮面ライダーシリーズ、ガンダムシリーズ、ウルトラマンシリーズ、そしてスーパー戦隊シリーズだ。 さらに、バンプレストオリジナルキャラもこの作品でレギュラーとなる2人が登場するが、この2人については後ほど色々と解説をしたい。

 スーパー戦隊を除けば、この時点でコンパチヒーローのレギュラーは決まっていて、グレイトバトルシリーズやその関連作品で彼らは大活躍することになるが、 それ以外の作品となるとレギュラー作品以外の第4の版権作品の扱いとなると少々微妙だ。


戦隊シリーズについては、これ以降バンプレストのクロスオーバー作品に出演しておらず(コンパチヒーローの場合で『スーパー特撮大戦2001』や『アジト』シリーズは除外)、 『バトルサッカー』シリーズではゴジラやガイガンといった東宝作品が第4の版権作品として登場している。

それより前の『SDヒーロー総決戦』においては、シャイダーやメタルダーといったメタルヒーローシリーズが登場していて、 どの作品においても第4の版権作品がガンダムやウルトラマンや仮面ライダーのように、一回出ただけでレギュラーになることはなく単なるゲストという感じが強い。 ガンダムら3作品がレギュラーとして出ているのは、おそらく3作品ともに国民的作品であると同時に、将来になっても新作が登場し老若男女楽しめるものになっていると思ったのだろう。

 一方のバンプレオリジナルキャラ、今作ではバンプレキッドとグレート雷門の2人が出演、2人とも後のバンプレ作品に登場しキャラのグラフィックもこの時点で確定している。 バンプレキッドは古典的なスーパーヒーロー風味で、グレート雷門はあのアーノルド=シュワルツネッガー氏をモチーフにしていて、どちらも一目見ればかなり個性を放っている。

しかし、グレイトバトルシリーズでロアという主人公キャラが登場したことと、スパロボシリーズにおいてオリジナルキャラが大量に登場し敵味方問わず人気を集めたキャラもいて、 シリーズ自体大人気になったこともあり数年後には忘れ去られる存在になってしまったのは残念(昔のバンプレ時代を知る人は今も覚えているだと思うかもしれないが)。 ただし、グレート雷門は『G.サンダーゲート』と名を変えデザインも戦闘機となったあたり、バンプレ初期の存在は偉大であることを認識させてくれている。


このゲームのルールは相撲のルールと同じで、ゲームシステムについてもつっぱり大相撲からまったく変わっておらず、相手を投げ飛ばしたり土俵の外に出せば勝ちだ。 ただ、このゲームでは体力(パワーゲージ)だけでなく青のゲージも登場するが、今まで体力ゲージは多ければ技がかけやすくなるというシステムも取り入れられていたが、 このゲームから体力とは別に技をかけやすくなるゲージも追加され、たとえ体力が低くてもここで一発逆転が可能であり、その点においては優勢でも気が抜けないというスリルが味わえる。

とはいえ、このゲームに登場する決め技といえば押し出しと上手投げだけで、他の決まり手はまるまる削除されてしまい相撲ゲームのファンにとってこれほどさびしいものはない。 寄り切りや下手投げすらないので、普通の相撲ゲームを求めていた人にとって肩透かしを食らうことは間違いなく、決まり手が乏しい相撲ゲームなんてと思うかもしれない。

ただし、それに変わる新たな技が登場しキャラそれぞれに最低ひとつ持っているため、他の決まり手がなくなっても新たな決まり手で代用ができている。 というより、新たな決まり手を導入したことで相撲の決まり手を排除しなければならなくなったといったほうがいいのかもしれない。

このゲームは2Mとなかなか容量が高いが、22ほどのキャラが登場し全員デザインが違っているのでその分グラフィックに容量を食われてしまった感があり、 相撲の決まり手を泣く泣く削除せざるを得なかったことがうかがい知れる。 そういった意味では、つっぱり大相撲はキャラは色以外同じで容量こそ少ないが、多くの技を導入させていることで補っていることから、 単にゲーム製作の手腕に差があったか容量の使い分けができるか否かの違いがあったと考えられる。


 では、相撲の決まり手に代わる新たな決まり手というと、それぞれのキャラにちなんだ技などが決まり手となっていて、どのキャラも個人技ゆえにその種類も豊富だ。 しかし、キャラにちなんだ決まり手ということは明らかに相撲とはかけ離れたものであり、νガンダムはフィン=ファンネル突き出しだったりウルトラマンでは スペシウム投げだったりと、光線技や武器を使って決まり手を出すというまさにこのゲームの突っ込みどころといえる。

とはいえ、この技がすぐに出せるわけではなく体力が半分以下で青のゲージもそれなりに溜まっている時でしか出せず、キャラ専用の決まり手が 一発逆転技という意味合いも出ている(裏技を使えば、個人戦のみすぐ出せる体勢ができる)。 そういう観点では、一部のキャラにパワーアップ変身の能力があり、ライブロボがスーパーライブロボになったりシルバがバルジオン(正確にはバルジオンは専用ロボット)に なったりと一発逆転に加えて出す決まり手も変わってくるが、その能力を持つのが戦隊ヒーローに多いのはヒーロー作品ゆえだから当然というスタッフの考えがあったのかもしれない。

 もっとも、FC相撲ゲームの元祖であるつっぱり大相撲もバックドロップといったプロレス技や天井投げといったどう考えても相撲とは 関係ない決まり手もあるので、このゲームの決まり手に突っ込みを入れるというのは無理があるだろう。

だが、つっぱり大相撲は肉体と肉体がぶつかるものなのに対して、このゲームでは武器などを使うため反則行為という感じがしなくもない。 突っ込むならば、登場キャラ全員にまわしをつけることなのだが、多くのキャラがまわし姿に浮いているものの必死にプレイすれば次第にどうでもいい感じになるだろう。

なお、各部屋にバルタン星人やシャドームーンといった悪役が一人いるが、対戦前に「正義は勝つのだ」ということがあり 悪役の癖にどの口がほざくかという点でも突っ込みがある(正義の味方についても「お前なんか嫌いだ」という台詞を言うこともある)。


 もうひとつ突っ込みがあるとすれば、このゲームが力士最高クラスである横綱に昇進してもゲームが続くことで、横綱になって優勝してもゲームが続くということである。 それだけなら別に突っ込むことはないのだが、このゲームのエンディングを見るためにはなんと1000勝もしなければならず、それだけでかなり疲労がくるはずだ。

22人いるわけだから、全員のエンディングを見るためには22000勝しなければならず、15戦全勝したとしても最低67場所プレイしなければならないため、飽きてしまう可能性が高い。 一応、パスワードがあり入力文字数も少なく再開自体は楽なのだが、パスワードで続けるほど見るものなのかといえば疑問で、こういう無駄なところが このゲームを駄作にしてしまっている要因といえるようで、エンディングの壁を低く(せいぜい横綱+優勝)すればよかっただろう。

だが、土俵際で勝利を収めた場合物言いが出ることがあり、結局軍配どおりとはいえドラマティックゆえ突然物言いが出るというのは プレイヤー側からすれば緊張もあるし、勝った人にとって軍配どおりになった場合思わずほっとすることもあるだろう。

その勝負審判、4チームの部屋の親方で構成されているが、全員その部屋(作品)に関係している人物それも製作者で、全員ともそっくりなのが面白い。 ライダーは故石ノ森章太郎氏でガンダムは富野由悠季氏、ウルトラと戦隊だけ作品に深くかかわっているスタッフで、ウルトラは故円谷皐氏(当時の円谷プロの社長)で 戦隊は渡辺亮徳氏(当時の東映副社長兼東映ビデオ社長)、行司はバンプレキッドとグレート雷門が所属している部屋の親方でバンプレストの関係者のようだが詳しいことは不明。


 他に、各部屋の力士が場所によって能力を発揮できたりできなかったりすることもあり、地上では自慢の強さを発揮できた戦隊部屋力士が 宇宙ではそれができずに苦しめられることがあるので、不得意な場所で戦う場合は己の実力がものを言う。

一応、場所終了ごとに成績によって能力が上がるようになっているが、横綱といった上位力士と戦うにはその時点では力不足で、 横綱に位が近づくにつれてその能力も上がっている頃なら横綱に勝てることもあり、能力が伴わなくても己の実力で横綱に勝つこともあり、格下の相手が格上に勝てるという相撲ゲームの最低限の面白さを残している。 もっとも、横綱になっても負ける時は負けるので、それが相撲といえるのかもしれない。

 また、団体戦で各部屋を選んで他の部屋の力士と対戦するモードも用意されている。 総当たり戦と勝ち抜き戦で、前者がその名の通り例えば先鋒は先鋒とだけしか戦えないのに対して、 後者は先鋒同士の戦いでどちらかの先鋒が勝てばその先鋒は敗れたチームの次鋒と戦えるというものになっていて、実力と場所によって先鋒で総なめということも可能。

戦う順番はABで決めるため、力士の強さが初期の番付に表れている関係上、矢印が出て十字キーで決めるよりどのキャラがぶつかるのか対戦しなければわからないというスリルがある。 なお、団体戦にもパスワードがあるが個人戦のように壮大な目標がない団体戦では、パスワードを導入することに意味があるのかと思わざるを得ない。

 無駄な要素が目立つため、あまりいい作品とはいえないが相撲ゲームとしてのできはそれなり。 戦隊作品が唯一登場しているので、ファンならばプレイしてみるのも面白いかもしれない。 あくまで、相撲ゲームの面白さを求めない人ならばの話なのだが。

このゲームにめぐり合ったのは発売から数ヵ月後の古本屋で(10年近く前につぶれた)、その古本屋は中古のゲームも取り扱っていた。 このゲームのパッケージに目を向けた私は、ウルトラマンやガンダムといった著名作品のクロスオーバーに思わず胸がときめいた。 まもなく、バンプレ作品の第2弾『SDヒーロー総決戦』をプレイしたが、クロスオーバーという面白さを改めて感じていた。


 それだけに、このゲームをいつかプレイしてみたいという思いがあったが、他のゲームをプレイしている最中いつの間にかこのゲームのことを忘れてしまい、 大学時代で中古のゲームショップでこのゲームを見た時にはプレイする意欲を失っていた。

昔は、戦隊ヒーローが登場するということでプレイしてみたいという気持ちはあったものの、その頃は特撮よりゲームへと趣味が移ってしまったので、 再び特撮に趣味が移った(というよりゲームと特撮の両方趣味を持っている状況になった)頃はこのゲームの存在を忘れてしまい、 別の戦隊ゲーム(『鳥人戦隊ジェットマン』や『パワーレンジャー』など)に興味が移っていった。 先ほど、大学時代にプレイする意欲も失っていたと書いたが、パッケージを見てもう一つの思いが強くなっていた。

 スパロボに特撮作品を出してもらいたいという思いで、パッケージにはフラッシュキングやグレートファイブがSDになって描かれていて、 スパロボに戦隊ロボが参戦してくれればという期待感が強くなっていた。

しかし、2009年現在スパロボに特撮作品が参戦する様子はなく(予定として組み込まれる感じはある)、 このゲームがガンダムと競演できた唯一の作品なのかとさびしい感じがしてきた(巨大作品のみで考えて)。 勝負は相撲で、武器を持ってドンパチ戦うわけではないのだが、戦隊ファンの私としては競演できるだけでもうれしく感じた。

 もちろん、このゲームが面白いとあまり思っておらず、他のサイトでもこのゲームについての悪い評価が多かった。 いずれプレイしなければならないだろうこのゲーム、面白そうなのに低い評価が多いのはあまり許せないものがあったが、 レビューするこの時期に初めてプレイした時にこのゲームのつまらなさがようやくわかった。

加えて、1000勝しなければエンディングが見れないという時間の無駄が多く、相撲技が押し出しと上手投げしかなく 代わりとなる力士特有の決め技があるのはうれしくも面白いが、他の相撲技が削除されているのは不満がある。


 一応、私のレビューは中間点で考えてクソゲーについても、悪い部分を取り上げつつもいい部分を取り上げることをやっている。 とはいえ、一人1000勝するというやりこみはやっておらず、それを達成した人というのはすばらしいと思っている。 さすがに、すべてのキャラをクリアする人はいなかったが一人のエンディングを達成できただけでも、その人はすばらしいと思うしかない。

 さて、このゲームの決め技を最後に締めくくりたいが、力士個人の決め技に突っ込みはあれど決まれば爽快という気持ちがあった。 特に、戦隊部屋の力士をいつも選んでいた私は、どういう必殺技が決め技として出てくるのか非常に楽しみで、 力士個人の決め技が原作の必殺技や武器になっていることはネットで知ることができた。

ただ、このゲームはカセットのみで購入したため、どういうやり方でプレイするのか最初はさっぱりわからなかった (ボタン連打で、うっちゃったり寄ったりできることはわかっていたが、変身するキャラがいたことに驚いた)。

幸い、連射パッドで土俵際まで寄ってからつっぱって押し出すのが自分の常套手段で、裏技でいきなり必殺技を出して楽勝するところも 常套というよりはいんちきではあったものの(団体戦使えないのがつらい)、必殺技で勝つのだからそれで満足していたが、 追い詰めておきながら必殺技で逆転されたり、必殺技や自分の常套手段に持ち込めないままやられたりすることもあり、 要素に不満はあるものの勝負が始まるとつい夢中になってしまうあたりは、駄作に近いものでも夢中にさせてくれる何かがあるのだろうか(短く終わるものなら十分面白いはずなのだが)。



本日のまとめ


ばんぷれすと
ばんざーい!
(09/8/7レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2024年01月09日

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