じゃじゃ丸忍法帳
じゃじゃ丸シリーズ第3弾



発売日:1989年3月28日   発売元:ジャレコ   ジャンル:RPG
値段:5800円   オススメ度:3(じゃじゃ丸くんもRPGの道へ…)


かつて、忍びの里を裏切り妖怪たちを差し向けて悪事を働いたなまず太夫から、さくら姫を救い出しなまず太夫を懲らしめたじゃじゃ丸は、その後兄の忍者くん同様己を高めるため修行の旅に出ていた。 そしてある日、久しぶりにさくら姫の城(江戸城)をおとずれたじゃじゃ丸は、さくら姫の父である殿様から重大な事を頼まれた。

「じゃじゃ丸よ!人々の噂によると、何かこの国によからぬ事が起きようとしているらしい。どうかそれが本当の事か確めてきてはくれぬか?」

そんな殿様の頼みに対し、じゃじゃ丸は元気よく答えた。「へへっ、そんな事朝飯前さ!おいらにまかしておきな!」 それを聞いた殿様は、「うむっ、その言葉信じたぞ。わが娘さくらも、きっとお前の役にたってくれるはずじゃ」と安心した。

こうして、じゃじゃ丸とさくら姫の2人は、国中に起こっている事件を解決する為、旅立っていった。 だが、2人の前に立ちはだかる事件は厳しく、2人の行く先々で妖怪たちが襲い掛かってくる。


2人が挑む事件は3つあり、ひとつ目は忍びの里に古くから代々伝わる忍びの書を、からす天狗という妖怪に盗まれてしまったこと。 二つ目は、江戸の町が大入道により町の人々が妖怪にさせられてしまい、擬似的に妖怪たちに入り込まれているということ。 三つ目は、竜神山に住み人々から信仰と恐れで親しまれている竜神様の様子が最近おかしく、人々が竜神様に連れ去られた上に雨も降らせず作物があまり育たないので、人々は苦しんでいるということ。

この3つの事件を解決した先に見える、それらの事件を動かしている真の黒幕とは果たして何か。 じゃじゃ丸とさくら姫は、無事3つの事件を解決し日本の平和を取り戻すことができるのか。 とにかく2人は、日本列島を歩き修行もかねて人々を苦しめている妖怪たちと戦うことになるのだ…。


じゃじゃ丸シリーズ第2弾の『じゃじゃ丸の大冒険』から、約3年の歳月をかけて第3弾にこぎつけた今作。 しかし、今までのじゃじゃ丸シリーズとは明らかに違っていて、往年のじゃじゃ丸ファンに驚きをもって登場したことは想像できる。

この間、『忍者くん』の版権をジャレコに売ったUPLは、忍者くんの続編『忍者くん 阿修羅の章』を1987年に登場させている(FC移植は翌年)。 これも方向性がほぼ同じゆえに、今回紹介するじゃじゃ丸忍法帳は当時かなり異端に思えたことだろう。

というのは、じゃじゃ丸忍法帳登場前のじゃじゃ丸シリーズおよび忍者くんシリーズは全てジャンルがアクションで、新しく登場した忍法帳はRPGというのはファンにとって驚いたに違いない。 あのスーパーマリオですら、RPG進出に誕生から11年の歳月がかかったのだから、じゃじゃ丸はそれよりかなり短い間に進出したことが驚きである。 では、じゃじゃ丸シリーズが第3弾で突如RPGになったのはなにかというと、FCでのRPGの人気に押されてなったという時代の流れだと思われる。

RPGブームが出たのは、今作登場から2年前の1987年にドラクエUが爆発的なヒットとなり、そこから多くのメーカーからRPGが登場したことによる。 翌年後半から、他のジャンルが盛り返したこととブームの終息で落ち着きを取り戻していったが、人気自体は常に安定していて他のハードでもRPGが多く登場していた。 今作は和風RPGで、その元祖である『桃太郎伝説』から始まり『真田十勇士(ケムコ)』や『里見八犬伝(SNK)』など、そういった舞台設定のRPGも登場していた。

確かに、RPGそのものこそ登場数はこの頃少なかったものの、舞台別で考えれば徐々に増えているものもあり、和風RPGはそのひとつであるといえる。 とはいえ、アクションで定番のシリーズがいきなりRPGに挑戦するわけだから、それは相当苦労したのではないかと考えられる。 おまけに、ジャレコはFCはもちろん他のハードにおいてまだRPGを作ったことがなかったので、それをあわせればジャレコの歩んだ苦労は計り知れない。

同じACからの参入である、コナミやナムコでさえRPGを世に送り込んでいるのだから(ナムコについては下請け会社の影響が強い)、ジャレコの危機というのはかなりあったと思われる。 加えて、他のRPGにない要素を打ち出さなければならないのだから、RPGがたくさんある状況でジャレコ初のRPGを作るというのは、それだけでも苦労がわかるはずだ。


事実、ジャレコ初となるRPGはシステム等を見るに多くのRPGから学んできたことがわかるが、それでもこのゲームなりにアレンジや新要素を加えている。 新しい要素の中で、一番目を引くのがオムニバス形式となるもので、ひとつのゲームに複数のシナリオが用意されていて、それぞれのシナリオの中で主役が別々の活躍をするものである。

この形式を導入した有名なRPGといえばだれもがドラクエWだと思いつくだろうが、そのシステムをはじめて取り入れたのがこのじゃじゃ丸忍法帳だったりするのだ。 今作では、最初に3つのシナリオ(章)が用意されていてそれをひとつ選んでプレイすることになるが、タイトルにあるようにどのシナリオも主役はじゃじゃ丸で、 選べるのは最初で選んだ後はまだクリアしていないシナリオの中で数字が小さいものから始まることになっている。

だが、どのシナリオも最初から始めようが別のシナリオをクリアして始めようが、じゃじゃ丸とさくら姫のレベルは必ず1になり前のシナリオのレベルは引き継がないので、 その点でもしっかりオムニバス形式を踏んでいるわけで、どのシナリオを選んでも楽しめるのがうれしい。

ちなみに、3章全てクリアすると新たなシナリオである最終章が登場し、それもクリアすればめでたくエンディングの運びとなるが、さすがにこのシナリオではレベルは引き継がれる。 容量が2Mだからこそ、複数のシナリオが登場しボリュームもアップしているわけで、今までのジャレコ作品にはなかった大きなサイズのROMカートリッジの存在も関係があるだろう。

ただ、その手のオムニバス形式ゆえにどのシナリオともボスを倒すレベルの上限が低く、最終章についても他のRPGと比べてレベルの上限が低いので、 強さを満喫できる気分になりにくいのがシナリオの関係上仕方ないと同時に非常に残念である。


RPGの肝のひとつである戦闘は、初代ドラクエや初代ヘラクレスの栄光同様敵は必ず一体しか登場せず、こちらはじゃじゃ丸とさくら姫の2人で有利に感じる。 しかし、さくら姫が登場するまで一対一の戦いを強いられ、2人になってもレベルの関係上相手を圧倒できるという気分になりにくく、タイマン戦闘である2つの作品同様の気分になれる。

一応、じゃじゃ丸は勇者でさくら姫は使える術により僧侶の扱いにはなっているものの、さくら姫に攻撃の術がなく全てじゃじゃ丸が覚えるがじゃじゃ丸の術(MP)の量が低く、 どんなにレベルを上げてもバランスが取れておらずそれゆえの苦労がかなり痛い。 おまけに、使える術は各章ごとにちがっているため、前の章で使えた術の一部が次の章では使えなくなっていたりと、戦術の練り直しを迫られる。

また、登場する敵の種類も各章ごとに違っているので、能力こそほぼ同じなれど違う敵となれば前の章で使えた戦術が次の章では通用できないこともある。 じゃじゃ丸が使える術に宝玉の術があるが、それは全て社にいる宝玉を守る存在(ボス)を倒さなければならないものの、わざわざ倒さなくてもクリアは可能という自由さがあるのが面白い。

幸い、かなわない敵に出会っても必ず逃げることは可能だが(じゃじゃ丸が『にげる』を選んで逃げられなくなったら、 さくら姫のターンにBを押してじゃじゃ丸のターンに戻してそれを繰り返せば大丈夫)、結局は逃げてばっかりいると強くならないのでその場しのぎの感じが強い。

ある意味、オムニバス形式だからこそできるシステムだが、それに慣れていなければ苦労することは間違いなく、ドラクエWのように各章の主人公が違っているならともかく、 このゲームのように主役が同じだと混乱してしまう可能性が高く、このあたりはまだ実験段階の感じがある。

加えて、アイテムを所持できる数が9つしかなく2人いる状況では、武器や防具を装備した場合最大10個までしか所持することができず、苦しい戦いを余儀なくされる。 しかも、ゲームに必須なアイテムも所持するのだから、実質的に自由に持てるアイテムはさらに少なく、長旅の場合となればかなりつらくなる。

さらに、その重要なアイテムは売ったり捨てることもできるため(さすがに『しゅのまんだら』などといった、イベント必須のものは売却不能だが)、 うっかりそういった行動をとってしまうと完全に詰まってしまうので、せめてイベントアイテム同様のメッセージを入れておくべきではないか。 ただ、洞窟内部の構造は多くが単純かつ距離も少なく、町から町までの道中についても途中に宿屋や万屋(道具屋)が単独にいくつかあるので、そのあたりの代用はしっかりしている。


それがなくても、RPGにおける移動方法と呼ぶべき存在があり、このゲームではおさるのかごやが一度行った町ならどこでも戻れることができる。 料金制と各町でお祈り(パスワード)を聞かなければ登録できないものの、パスワードはこのゲーム唯一のセーブ機能なので、普通に使うことが多いだろう。

そのパスワード、最初は入力する文字数が少ないが物語が進むたびに多くなっていき、最終的に60字以上に達するという最大51字のドラクエUや48字の『星霊狩り』を超えている。 この頃のRPGは、セーブ機能についてパスワードからバッテリーバックアップに切り替える境目だったようで、後に全てバッテリーバックアップとなるものでもまだパスワード制になっている。

とはいえ、このゲームが遊べるに値するか否かといえば、十分遊べるに値する。 重要アイテムの売却や、オムニバス形式の不完全さなどの荒削りが目立つが、ジャレコ初のRPGということを考えれば及第点といえるのではないだろうか。 もっとも、同じ和風RPGの桃太郎伝説と違ってドラクエをイメージして作ったわけではないので、万人向けのRPGとはちょっと遠いものの、慣れていけば自然と楽しめる。

最後に、このゲームのならではの雰囲気について書いておきたいが、店の人たちがじゃじゃ丸たちに対して接する台詞があるのだが、 普通のRPGのように単に物を売買するゆえに普通に接するのとは違ってこのゲームなりに接しているので、万屋以外該当しているのが面白い。
単に、台詞が回りくどいだけなのだが他のRPGとの差別化を図るにはひとつの手かと思われ、宿屋は商売のひとつなのかと思うくらい親切に接してくれたり(そのあたりは『エルナード』に近い)、 武器屋はわざわざまけたりすることはないとか装備できないものを買おうとすると、ばくちで大負けとか川にすまきにされるとか色々ひどいことを言うのだが、それもこの世界故といえる。 それだけに、普通に台詞を言う万屋が他の店と比べてあまりにも地味なのだが。

ちなみに、店の中は表示されておらず店の主人が描かれた一枚のグラフィックで表示されているが、先に述べた主人の台詞を考えるとその表示はある意味正しいのかもしれない。 武器屋の主人はごつい顔で、宿屋の主人はいかにも親切に接してくれる表情を、万屋の主人は唯一売買を担当するためか小ざかしいことを考えそうな表情をしている。

フィールド上の茶店(宿屋に相当)や一般の家屋などでも、町にある店同様ちゃんと専用のグラフィックが用意されていて、 一般人にも数種類用意されているがそれも2Mの容量があってこそ、グラフィックにもしっかり容量が振り分けられているといえるのだろう。

一般人にグラフィックがあるのだから、当然じゃじゃ丸やさくら姫にも専用のグラフィックが用意されていて、さくら姫は仲間になる前のものも用意されているが 大抵お目にかかれるのがステータス画面のほうで、初代じゃじゃ丸くんからプレイした人にとってドット絵がこれほど変わるのは予想できなかっただろうし、 パッケージの絵にしても初代や続編と比べて男前になっていることも、シリーズ体験者には想像できなかっただろう(たった3年ちょっとなのに)。

このゲームの1章には、前2作でじゃじゃ丸の前に立ちふさがったかつての宿敵なまず太夫や、ザコだったおゆきやクロベエがそれぞれ雪女やからす天狗として登場しているので、 前2作をプレイしたファンにとってうれしいと同時に懐かしさを感じさせてくれる。

全員、専用のグラフィックが用意されていてどれもキャラクターにぴったりとなっているが、クロベエは1章のラスボスの扱いなのかかなり手ごわそうなグラフィックになっている。 からす天狗以外、じゃじゃ丸たちに味方する存在となっていてなまず太夫は2章以外で潜水艦(船の役割だがどんな場所でも使える)を、雪女は重要なアイテムをくれたりと、 全員いい役どころを見せているのがファンにはうれしいものの、なまず太夫は仲間になったのに戦闘に参加しなかったり 2章では登場すらなく、彼の活躍が目立っているのかといえば少々微妙(ラストで活躍するが)。


じゃじゃ丸シリーズは初代でプレイしていて、第3弾は発売間もない頃にいとこの家でかなりプレイしたことがある。 ほとんど、アクションやSTGをプレイした一方RPGはほとんどプレイしていない私にとって、このゲームは桃太郎伝説や ドラクエV以来となるやりこみだったと思うが、何しろ20年前なので詳しい記憶はあいまいだったりする。

しかし、カセットの形が今までのジャレコのソフトと違っていたし何より大きさがあり、今考えてみると2Mゆえの大きさなのかなと思う(他のメーカのソフトもやたら大きいものがいくつかあった)。 この頃、ファミマガといったゲーム雑誌は持っておらず自分の力で攻略しなければならなかったが、どういう形でプレイしたり 攻略するのかある程度のことはすぐわかったし、謎自体よほどのものがない限り意外と簡単だった。

初代は結構プレイしたことがあったが、第3弾でグラフィックが結構違っていることにまったく気づかず、一般のRPGということで楽しんでいた。 当然、店員たちの回りくどい台詞に突っ込みを入れることはなく、元々RPGをプレイすることが少ないのだから仕方がないと思うし、 このゲームの欠点やシステムを見つける余裕もなければ純粋に楽しんでいることを思えばこれも仕方がないのか。

それだけに、既に多くのRPGをプレイしている私だからレビューということで、久々にプレイした時に特徴のあるグラフィックと 彼らの台詞をじっくり見て、明らかに他のRPGと比べて特徴的だなと思った。 グラフィックはともかく、台詞はここまで特徴的にする必要があるのかと思うほどで、武器屋の主人は装備できないものを買おうとして ぼろくそ言われた時、むかっ腹が立つよりそこまで言う必要があるのかと苦笑してしまった。


20年越しにプレイしたこのゲームだが、印象に残っているシナリオといえばやはり第1章だと思う。 なまず太夫、おゆき、クロベエが第3弾で活躍しているのは、前2作特に初代をプレイした私にとってとてもうれしいと同時に、 なまず太夫以外ザコでしかなかった2人が重要な役割を持って登場したのは驚きで、おゆきがかわいらしいグラフィックで登場したのにちょっとどきどきした。

このゲームのグラフィックの担当は『えいさく』という人物だが、どういう人物かわからないので多分開発スタッフの一人だろう。 兄の忍者くんは、シリーズが進むたびにゲームでのドット絵をイラスト風にするほどかわいらしくなっていくが、じゃじゃ丸の場合忍者くん同様 ちょっとかわいらしくなっている作品もあるが、忍法帳以降妙にシリアス風になっているのはよくわからない。


ところで、多くのゲームでいろんな攻略サイトを利用している私だが、このゲームも攻略サイトなしでは無理だろうと思っていたが、 利用したのは1章途中からで利用が少々遅いのは、漫画で少しながら攻略法らしきものがあったからだ。

『われらホビーズ ファミコンゼミナール』に、このゲームが一エピソードとして登場していて、このエピソードのみならず他のエピソードもかなり読みまくったのか、 久々に元のゲームをプレイした時は漫画になかった要素が次々に登場して一時混乱した。 いかづちの術がからす天狗に効かないし、3つの証の入手経路がかなり略称されてしまっているし、そもそも漫画になったのは1章だけで他の章には関係ないなど、 漫画を頼りに突き進んでしまったが後の祭りになってしまった。

もっとも、謎解きはそれほど難しくはないが重要アイテムを入手する経路がややこしい、というより特定のイベントをこなさなければ見つけられず、 3章で羅針盤を入手しようとしてそれがある島で徹底的に探索したが発見できず、他の攻略サイトの日記で 四国南東の孤島羅針盤の所在フラグを立ててようやく発見できたものの、これまでに倒した敵の数は計り知れない。

その分、金や経験値稼げるのはいいが精神的につらく、最終章以外では最後の章だからよかったものの この章を3番目ではなかったらと思うと疲れが一気に出てくる(一番目、2番目ではレベルやアイテムは引き継がれない)。 1章も2章も、なかなかに強い武器や防具にアイテムなどが出てくるが、ストーリーの進み具合や登場アイテムのバランスを考えると 3章のほうがいいかと思う(2章ではなまず太夫が出ないので、最後のシナリオだと唐突という感じがする)。

このゲームなりのオムニバス形式で楽しめて、重要アイテム捜索のややこしさ(というよりこちらが突っ走った可能性がある)や エンカウントとの極端な不安定さを除けば普通に遊べるが、最終章まで行けるまでがかなりつらいのは仕方がないところか。



本日のまとめ


こうして じゃじゃ丸とさくら姫は
りゅうじんを すくったので あった
だが つぎなる たびは つづく・・
(09/8/1レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2024年01月09日

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