爆笑!!人生劇場
人生劇場シリーズ第1弾



発売日:1989年3月17日   発売元:タイトー   ジャンル:ボードゲーム
値段:5900円   オススメ度:3.5(人生ゲームの差別化を図った一作)


タイトーの、記念すべき『人生劇場』シリーズの第一作目であり、FC初の人生追体験ゲームでもある。 いうなれば、自分がこのゲームの主役となって人生を体験するわけだが、自分がゲームの主役になる初のゲームは1986年発売の『ドラゴンクエスト』からであり、 そこからRPGを中心にその手の手法を導入したゲームが数多く誕生した。

ただ、そのほとんどが初代人生劇場発売当時において、ファンタジーもしくは未来を舞台としたもので、 現代を舞台とするものはほとんどなかった(一応、初代『女神転生』が現代に近い時代を舞台にしているが)。 一方のボードゲーム、このジャンルもプレイヤーがゲームの主役をスタンスにしているが、 『鉄道王』や『桃太郎電鉄』など現代を舞台としているもののオーナーを主役にしたものが多く、本当に自分が現実に体験している感じにはほど遠かった。

それだけに、これから紹介する初代の人生劇場はRPGにおける英雄や今までのボードゲームにおける社長とはかけ離れ、 いわゆる一般人としてのゲームの主役となって体験していくという地味ながらも画期的なものであった。 そもそも、人生を追体験すること自体がなかなかリアルであり、ボードゲームのジャンルに新たな道しるべを確立させた。

しかし、この手のジャンルが新たに誕生したわけではなく、コンピューターゲームではないボードゲームにすでに誕生しているのだ。 『人生ゲーム』がそれで、ボードを己の人生に見立てルーレットを回してお金をもらったり職業に就いたりするもので、 1988年にはPCエンジンで『遊々人生』というタイトルで移植される(人生劇場が、 コンピューターゲーム初の人生追体験ゲームではないのはこのため)など、1968年から誕生して40年以上たっているにもかかわらず息が長く人気のあるボードゲームである。

人生劇場が、人生ゲームを参考にして開発されたかどうかはわからないが、結婚や就職など人生ゲームの基本を多く取り入れていることを考えると、開発スタッフなりで無から生み出したとは考えにくい。 参考こそせずとも、スタッフの中には当時(小さい頃や現在問わず)人生ゲームを家族や友達などとわいわい楽しんだ人がいたと思われ、そこから体験を元に人生劇場の方向性をいくつか定まらせたとも考えられよう。

なお、人生劇場というタイトルは明治時代の小説家である尾崎紅葉の名作で、タイトーはこの小説のタイトルに目をつけてゲームのタイトルにあやかった可能性が高い (続編である『人生劇場 青春編』も、『ドキドキ青春編』にタイトルだけ影響を与えていることはほぼ確実)。


人生追体験をテーマに掲げ人生ゲームに近い存在である以上、最終的な目標は他の人よりも多く金を所持することであり、 どんな人と結婚しようがどんな職業につこうが一番の大金持ちになることに変わりはなく、そのあたりは人生ゲームと同じである。 小学校入学前から老後まで人生を体験する幅も同じで、表面上での違う点といえば人生ゲームがルーレットなのに対して、人生劇場ではさいころで進むぐらいでありマップもすごろく風だ。

しかし、人生ゲームにはないものを設定したことで人生ゲームの差別化に成功している。 それが能力で、知力・体力・つき(運)の3種類のみとシンプルだが、能力によって特定のイベントがうまくいったりするものもあり、 特に知力は大学合格の成否や高校入学における公立または私立への入学に、大きくかかわっている(私立入学では金を取られる)。

他の能力でも、就職に大きくかかわる上にイベントで能力が上下するイベントが多数存在し、ただ単に金持ちになるのではないという意気込みが現れている。 たとえば、体力だけをあげてみるとか平均的にあげてみるとか、プレイヤーそれぞれに自由にカスタマイズのが強みで、プレイヤーからすれば高い能力で大金持ちになってみたいものだ。 RPGを体験した人にとって、能力が上がるだけでもうれしいものであり、後にSFCに登場する人生ゲームも人生劇場同様3つのステータスを 導入しているしていることも、人生劇場が人生ゲームの差別化に成功した最大の要素といえる。

さらに、自分の顔も作れることもRPG以上にゲームの人物になりきってプレイできる要因でもあり、モンタージュでパーツは少ないものの最低限自分の顔を作れるのはうれしい。 対戦するCPUも、モンタージュで作った顔で挑んでくるが、今作では既に登録されているCPUのキャラを半自動的に選ぶようになっていて、それこそ全員男だったり女だったりすることも可能。 加えて、高校や社会人に成長していくとモンタージュで作った顔も変化するので、パーツが貧相で数が少ない初代でもある程度思い入れができる仕組みを取り入れたのは見事。


このゲームの定番キャラ(というよりゲームマスターに近い存在か)も、神様という見た目的に仙人風を採用していることも大きく、 コンピューターゲーム版での人生ゲームも遅れて同じ定番キャラの天使と悪魔を採用していることも、能力を含めて人生ゲームを一歩先に進んでいる。 人生ゲームを参考にしたつもりが、ある意味人生ゲームより先んじていることには、現在の状況を考えれば当時のスタッフはどう考えていたのだろうか。

ちなみに、シリーズ共通のマスコットキャラは神様に加えて酔っ払い(大工のオヤジ風)もいるが、初代人生劇場ではまだ定番には確定していないようで、 多くのイベントでプレイヤーの父親的存在に落ち着いてはいるものの、半数がマイナスイベントに登場している。

これは、プレイヤーに面白くともいやなイメージを与えたらしく、続編以降では神様同様定番キャラとなっていくが多くがマイナスイベントに登場し、 後述するミニゲームにはお邪魔キャラとして登場するなど、コンピューターゲーム版人生ゲームにおける悪魔のポジションに収まっている(対する神様は天使のポジションだが、同時に頑固ジジイの一面もある)。

ミニゲームも、コンピューターゲームだからこそできる要素であり、単純なすごろくに飽きてきた人に対する息抜きには、数的に十分すぎるものだ。 内容も、スケールは小さいもののジャンルは多岐にわたり飽きが少ないのもうれしい。

ただ、マイクを使うミニゲームはニューファミコンでは無理で、そのミニゲームは捨てなければならないのが残念である(スタッフもニューファミコンのことは考えていなかった)。 ところで、マイクを使うミニゲームの中で『たけしの挑戦状』の雨の新開地が出ているのは、このゲームがタイトーにとって良くも悪くも強烈な印象を残したからなのだろうか。


イベントについては、やはり人生追体験というだけあって豊富で、多くが現実に体験したことがあるであろうものばかりでなかなかリアルだ。 いいものでは父親にサーカスにつれてもらったり、悪いものではおねしょをしてしまったりと多いのはいいのだが、 マスにとまった時点でイベントがランダムではなくマスごとに固定されているのは、容量の都合でイベントをランダムにできないためなのだろう。

それだけに、いいイベントを多く体験したければさいころの運にかけるしかないあたり、ボードゲームにおけるさいころの目の運が人生追体験ゲームでも生かされている。 さすがに、カードマスはランダムに近いものがあるが、終盤になると同じイベントのカードばかり出てくるので、そのあたりも容量と関係しているのかもしれない。

一応、タイトルに『爆笑』とあるもののそれを思わせるイベントは半分ほどで、中にはプレイヤーにとって笑えないものもあるなどバラエティがあるといえばあるが、 それはあくまでゲームでの出来事ゆえに一応笑って済ませる程度なのだろうか。

加えて、結婚や就職といった人生に重要な要素もさいころや能力で決まるので、このゲームで思うような人生の構図を描けずにがっかりする人もいるだろうし、 既に就職している社会人にとっては現実ではなれなかった職業でやってみるといったことなど、このゲームにおけるプレイヤーの喜怒哀楽こそがタイトルに『爆笑』とつけられるといえるのかもしれない。

幸い、手ごろな時間でプレイできる上に先述したイベントの固定もあって、何度もプレイすればある程度攻略のコツはつかめるのがうれしいところ。 ほかのボードゲーム同様、バッテリーバックアップはなく(さすがに、このジャンルにパスワードを採用しようと考えた人はいたのだろうか)手ごろな時間とはいえそれなりの時間を使うので、 プレイしたらそのままエンディングまで楽しまなければならないのがちょっとつらいところ。


シリーズ初代にしてはまあまあ遊べるのだが、能力を設定しつつ最終目標が一番の大金持ちになる以上、問題がないわけではない。 前半こそ、大学受験や就職などに利用されるため能力値は輝いているが、就職以後となるとそれが置き去りになってしまい、能力など関係ない人生ゲームに落ち着いてしまう。 後述する、ゴール後の神様の一言には関係あるものの、はっきり言って金を稼ぐにおいて単なる飾りでしかなく、能力が最低でも大金持ちになることはありうるのだ。

特に、老後でのマップは一攫千金のチャンスがかなりあり、株の売買についても平均的な確立で暴騰することがあるために、老後前に勝負がつくこともあれば老後で大逆転も可能であり、 ある意味初代ゆえの荒削りさがしっかりと残っているといえる。

さらにいうと、どんな職業についてもあっさりと優勝できることがあり、フリーターになろうがレーサーになろうが大金持ちが優勝することに変わりはなく、まさに老後マップがそれを証明している。 その中で、レーサーが昇格となぜか弁護士になってしまうというバグが発生しているが、これは初期のROMで発生するわけで後期バージョンではそれは直っているものの、 給料は決して高いとはいえずゲームにある職業の中でもかなり微妙な立ち位置だった。

職業自体、一部ミニゲームで就職するものもあれど職業関連のイベントはなく、昇格についてもゲーム中2度それも怒涛編でしかできないため、 職業が単なる金をもらう程度しかなく能力よりはまだいいものの、老後マップを考えればこれも空気の存在なのかもしれない。

とはいえ、人生追体験ゲームとしては成功といえる出来だろう。 ただ、エンディングがなくゴール後に神様からの一言があるだけで、これも容量の都合で削られたのかボードゲームによくあることなのかわからないが、なんともさびしい終わり方だ。 そのあたりもまた、FC初の人生追体験ゲームゆえなのかもしれない。


私は、SFCのドキドキ青春編を15年ほど前にプレイして以降、人生劇場シリーズのファンになった。 シリーズの存在は、当時は知らなかったもののSFCの『大爆笑 人生劇場』で初めて知ることになり、それからFC版のほうも知ることになったが FCよりスペックが高いSFCのボードゲームなので、FC版のほうはなかなかプレイすることがなかった。

ようやくFC版をプレイするにいたっても、それは大学時代それも第3弾をプレイしただけにすぎず、 この頃FCに夢中になっていた時期があったがそれでも性能が高いゲームしかプレイしていなかったため、それ以前の作品をプレイするまでにはいたらなかった。 結局、プレイすることになったのは突然今になってで、第3弾は手元にあったがついでに第2弾ともに購入した。

さらにいうと、既にレビューした『マイライフマイラブ』をこの時期久々にプレイしている最中で、それもボードゲームに改めて夢中になったことで FCの人生劇場シリーズもついでにレビューしてみようかなということで、まとめて購入しただけに過ぎなかった。 しかし、人生追体験のボードゲームゆえにどんな昔のゲームでも主役になるというのはうれしいもので、そういう考えは最近になって出てきたのだが、改めてそう考えてプレイしてみると何かと愛情がわくというものだ。

初代が、第3弾と比べて荒削りであることはプレイ前から察しがついていいたが、それでもプレイしてみたいという考えは変わらなかった。 幸い、初代と続編に攻略サイトがあったのでそれを活用し、圧倒的な差で勝ち上がってやろうと意気込んでいた。

ところが、テストのマスにとまりミニゲームをやらされて、何とかがんばったのにろくな成績しか取れなかったのにはショックを受けた。 改めて攻略サイトを見てコツをつかんだものの、ABC順に文字を消すというのは意外というより少々理不尽だと思った。

もちろん、ただ文字を消すものだとつまらないからそういう設定にしたのだろうが、このミニゲームのみならず他のミニゲームについても本気でやらなければ能力が下がるし就職もできないので、 レビューで息抜きと書いているが生き抜きなのは一部ではないかと思ってしまう。


それと、喉自慢のミニゲームについてもUコンのマイクを使わなければならず、私が使っているニューファミコンではそれがなく泣く泣くあきらめざるを得なかったが、 AV仕様に改造された旧型ファミコンがネットで偶然見た記憶があるので、購入の機会があればぜひ買いたいところ。

これもレビューで書いているが、最終的には他のプレイヤーよりも大金持ちになることで、別に職業や能力は関係ないとしているが、 私は職業や能力は高ければ高いほどいいと思っているので、能力が高くいい職業について最終的に大金持ちになるのが最高のパターンだと思う。

当然、それを成し遂げるにはハードルがかなり高いのだが、ドキドキ青春編で何度も能力を上げて大金持ちになり一位になっているので、運がよくがんばれば何とかなるだろうと半ば甘い気持ちで考えていた。 ただし、ドキドキ青春編は目押しができるルーレットで乗り越えることができたが、こちらは名押しができないさいころで進まなければならなかったので、こちらのほうが運がなければ乗り越えることは難しいと身にしみた。

一応、さいころの目が少ないほうがいいイベントにめぐりあえる可能性も大きく、ミニゲームで能力を鍛えることができる上に株が値上がりする可能性もあることで、 そこそこライバルに差をつけられることができると、マイライフマイラブを前にプレイしていた自分ではよくわかった。

ただ、本来の目標である所持金獲得については最終マップで決着をつけることが多く、一定の所持金で安心していても突然ライバルの大金イベントで抜かれることもあり、 このマップのイベントはかなりこっけいなものが多いゆえにあまり気が抜けなかった。 何しろ、石油や金脈を掘り当てたり映画の印税が入ってくるなど、収入は職業についているものよりやたら大きく、 たとえフリーターについていても運がよければこういう莫大な収入でトップになれる恐ろしさを感じた。

自分も、それを有効に活用してトップそれも数十億稼いでのことで、この時は何度かプレイしてのことだったので神様からさぞいいお言葉が聞けるかと思っていたら、 「そんなにお金を持っているのなら、みんなに分けてやりなさい。」といわれ、せっかくがんばっての理不尽な台詞にさすがの私も開いた口がふさがらなかった(他のCPUにもやたら厳しい言葉をかけているが)。



本日のまとめ


じんせい やまあり たにあり
さあ じんせい げきじょうの はじまりじゃ
(09/7/1レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2020年5月19日

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