◆エレベーターアクション◆
スパイ題材のハードボイルドアクション



発売日:1985年6月28日   発売元:タイトー   ジャンル:ACT
値段:4900円   オススメ度:3(なんでも利用するスパイの基本)


『やあ……待たせたね!早速だが、君にある極秘の任務を受けてもらいたい……、いいね。 とある組織のビルに侵入し、そこの敵の機密書類をひとつのみならずすべて盗み出してもらいたいのだ。 肝心の書類は赤いドアの中にあるが、君が侵入するビルの内部の警備は思いのほか厳重だ。 その主要はガードマンだが、たかが敵がガードマンと言えども戦闘のプロだ!なめてかかると痛い目に遭うぞ。

一応、君の武器についてだがピストルを用意した。君の得意なジャンプキックも、ここぞという時の大事な武器のひとつになるだろうし、ビル内にあるものを利用するのも武器として立派な使い道だ……。 とりあえず、ビルの侵入は正面や特定の階層からするよりも、屋上からやったほうがいいだろう。 いくら、ビル内の警備が厳重でも外側、それもあそこならさすがに敵にも気付かれないはずだ…。

中には、エレベーターとエスカレーターの移動手段あるがエレベーターの動かし方は、まさか知ってるね? 前もって、ビルの内部をほかのスパイに調べさせたが、残念なことに1階から7階までのレイアウト(構造)がまったくわからないのだ。 それゆえ、はじめから君に危険が付きまとうだろうが、十分注意して作戦を遂行してくれたまえ。 最後に、地下に逃走用の車を用意してある。それじゃあ、すぐに出発してくれたまえ、健闘を祈る……。』


タイトーの人気AC作品のひとつで、アクションというジャンルに新しい作風を加えたことで、その幅がまた一段と広がったゲームでもある。 当時の一般的なアクションとして、テンポよくかつそれにあわせたBGMが主流であり、BGMがない作品もあったが快適にプレイができるという点では、当時のアクションゲームの基本を十分踏襲している。

タイトーとしても、『ルパン三世』や『フロントライン』など明るくテンポがあるアクション作品を生み出していて、 ACで『エレベーターアクション』が登場した1983年も忠実に守ってきたことで、ライバルのナムコやセガなどに遅れをとらなかった。

かつてのタイトーといえば、なんといっても『スペースインベーダー』シリーズといったSTGが思いつくのだろうが、 昔ACの雄という異名を持っていることで1973年の『エレポン』をはじめとして、多くのゲームを製作し後年のゲームメーカーを引っ張り続けてきた。


それだけに、エレベーターアクションの作風はほかのアクションゲームと比べて一線を画していて、タイトーのファミコンソフトとしては3番目に登場していることも、 このゲームの人気がそこそこかつ作風が受け入れられたことをあらわしているのだろうか。 その作風とは、『007』シリーズにおけるスパイアクションで、拳銃を装備して敵を撃ちつつも基本的に静かに任務を遂行するという、一般のアクションとは違ったかっこよさを持つもの。

タイトル画面に移行するところも、このゲームの作風らしくなかなかに凝っていて、タイトル文字の動きや表現に仕方もさることながら、 『N』がスパイと思わしき男性を表していて、スパイ映画の始まりであることをプレイヤーに表現させている。

BGMもまた、トーンが低くテンポも遅くやはりスパイ映画風を加速させているが、特にゲーム開始直後のスパイが屋上から現れて着地し、 その時に「ジャーンジャーン」というBGMから始まるあたりも、スパイアクションを題材にしていることがよくわかる。 もっとも、FC版ではステージのBGMは一種類で複数用意されているAC版よりさびしい感じはするものの、スパイアクションゲームとして十分成り立っている。

複数BGMが用意されているほうがいいのだが、BGMによってはこのゲームの作風に合うものと合わないものがある可能性があり、 一種類しかなくても作風が非常にマッチしていればそのBGMだけで十分で、昔のゲームだからというわけではないものの一種類しかBGMが登録できなかった当時、どのBGMがふさわしいか非常に苦労したと思われる。


さてこのゲームのルールだが、30階建ての組織のビルを舞台に敵対するスパイ、すなわちプレイヤーが屋上から侵入し敵を倒しつつ赤い扉にある機密書類をすべて盗み出し、1階に用意されている車までたどり着ければクリアとなる。 ストーリー上とはいえ、下から上へ登ってクリアするアクションゲームが多かった当時、逆のパターンで進めていくゲームというのは珍しく、 機密書類を盗む関係上上へ登ることもあるが、基本的に上から下に下りていって攻略するため、基本を破った真新しさがある。

移動するための利用手段はエレベーターとエスカレーターで、エレベーターこそがこのゲームのタイトルにあるようにこれをメインに使いつつも、 自分に有利な展開に持っていけるかどうか大きな鍵で、敵も2つの移動手段を利用する上にゴールに近い階層には複数のエレベーターがあり、そこでの銃撃戦が複数の敵を相手に行われる。 ストーリーで、7階までのレイアウトがわからないというのは先にも書いたが複数のエレベーターがあるためで、わからないということはそれだけ複数のエレベーターを使わなければならず、 ステージの序盤以上に苦戦を強いられることを示している。

中に入らない場合、たとえ上に乗っていても一定感覚で上下するし、プレイヤーの正面にワイヤーがある時に飛び込めばミス、乗っていても上下に操作するためしゃがむことができず、 乗っている最中に敵に挟み撃ちされることがあれば蜂の巣にされたも同然、エレベーターに乗っている間でも気が抜けないどころかむしろ危険が増すという緊張感を生んでいる。

上に乗っていても、敵を倒すあまり思わず降りることを忘れて天井に達してしまった挙句、エレベーターにつぶされてミスしてしまった人も多く、 ワイヤーから反対方向に移動できないことも含めて、逃げ場を失わせる恐怖をプレイヤーに与えている。 それは敵とて同じことで、敵がエレベーターの上に乗ったらすぐ上昇させて押しつぶすテクニックもあるわけだが、 エレベーターに乗っていても押しつぶされることが多いあたりは、緊張感誘う場面が多い合間の一服(?)の清涼剤に感じる。 得点はどうであれ、何もしていないのにエレベーターの中で押しつぶされるのは謎である。


スパイ作品の基本装備として拳銃があげられるが、敵を撃つのはもちろん上の階層に多いランプを、 エレベーターに乗っている段階で落としてその真下にいる敵を倒すというテクニックもあり、単に敵を倒すだけより得点が高くうまくいった時はまさに喜びに値するものだ。 もっとも、ランプを撃ち落すことはビル内を一時的に暗くするわけだが、暗くしても普通に敵は撃ってくるし闇夜の鉄砲と違って銃弾に当たればミスになる。

しかし、その間得点は増えるので一万点ごとに残り人数が一人増えるとはいえ、総合的に獲得点数が低いこのゲームでは、わざと暗くして得点を稼ぐことも可能。 ただし、残り人数が3人いると2万点以上稼いでも残り人数が増えず、後述する永久パターン防止を考えれば残り人数のことを考えて得点を稼ぐことが重要で、 それも残り人数が増えるあたりの得点でミスして、そこから得点を少し稼いでやったほうが効率がいい。

暗くなるといっても、敵ははっきり見えてほぼ顔だけしか見えないとはいえ、明るい時と比べてちょっと見えにくい程度なので序盤からランプを落として得点稼ぐのも面白い。 ただ、ランプを落とすタイミングがシビアでタイミングよく狙って撃っても、ランプの下をかすったり天井に当ててしまったりとうまくいかず、そのあたりは少し甘めの判定をしてもらいたかった。

高得点のもうひとつのテクニックとして、近くの敵にジャンプキック(グラフィック的に体当たり風)で倒せば得点が撃つよりも多く獲得できることで、 そのほうが近くで撃つよりも安全で複数の敵にジャンプキックを使えばまとめて倒せるという、思わずにんまりできるところもうれしい。

しかしながら、当時のゲームは必ず永久パターン防止が設定され、FC版ではAC版と違ってマシンガンを撃ってくるので、 しゃがもうがジャンプしようが球を回避すること自体無駄であり、それが頻発する1階から7階まではしゃがむことが難しく、 機密書類入手や敵の駆逐と包囲網突破に手間取れば必ずマシンガンの出迎えを受けることになり、最悪撃たれることを覚悟しなければならない。

ミスすれば、やられたところの近くで再開し時間も元に戻るわけだが、その展開がゲーム序盤からやってくるあたりはどうも初心者殺しがある感じに見える。 特に、エスカレーターに移動したり機密書類がある部屋に入ることに手間取る人がいたと思われ、白い線のほぼ真上で操作しなければならない上にエスカレーターで下る場合、 少しでもはみ出すとしゃがんだりしてしまうので判定が厳しすぎるのは、スムーズにゲームをプレイする面白さの基本のひとつとして大きなマイナスであることは明白。

ランプ、エスカレーター、部屋侵入と、ランプを除いた2つの要素はこのゲームにおいて重要なものなので、 こればかりは判定を甘めにすべきではなかったか(『ポートピア連続殺人事件』でも虫眼鏡の捜索判定が厳しいという不評がある)。

難易度という点では、クリアしなければガードマンが一斉に登場しエレベーターの動きも悪くなり、結果ゲームオーバーになる危険が高いAC版と違って、 同じ一定時間経過による高難易度化は同じなれど、マシンガン登場状態でミスしてもそれが解除されるFC版のほうが低い。

ACのほうは、インカム率を上げるために先の難易度上昇の要素を出しているのだが、いつでも遊べる一方でAC版より大金を払ってプレイするFC版となると、 理不尽な難易度をそのまま移植させるよりはマイルドにかつAC版に近い難易度を出したものと考えられる。

この頃は、まだ何度もプレイすることでコツがつかめるような難易度があるゲームはなく、大抵は敵を増加したりそのスピードを上げたりと単に敵の能力の上昇させ、 理不尽な難易度を出すものが多かったが、当時はそれでも人気はあった。 このゲームも、得点の稼ぎ方や作風にあわせた要素などプレイヤーをひきつけるものはあったものの、判定の細かさだけはいかんともしがたくこれも難易度上昇のひとつだとすれば、 AC版ではともかく万人向けのFC版ではあってはならないことだが、ステージをクリアして颯爽と逃走用の車で去ってゆくあたり、スパイの過酷さをゲームで示しているのかもしれない。


このゲーム、プレイについては数月前と結構最近だが、存在については当時のてれびくんやファミコンのムックなどで知ることができた(ネットオークションで当時のてれびくんの表紙にこのゲームの画像が載っていた)。 意外と有名な作品だということはわかっていたが、ほかのゲームに夢中になっていたしそもそもいとこの家や友達の家にもこのゲームはなかったので、存在こそ忘れることはなかったもののどうもプレイする気にはなれなかった。 大学時代でも、一時ファミコンに夢中になっていた時期はあったが、それは中途半端に古くせいぜい90年代前後の作品しかプレイしておらず、このゲームを初めてプレイしたのはFC版登場から24年後だった。

レビューするにあたり、ネット仲間から3年前のオフ会にいただいたAC雑誌に、このゲームのAC版のことが少しでもいいから書かれているかどうか見てみたら、 なんと1983年に登場した作品でフロントラインや『ちゃっくんぽっぷ』など、後にFCに移植する作品も同じ年に登場していて、 既にフロントラインをプレイしている私から見れば80年代から輝いていた、同じアーケードの雄であるナムコの状況を考えるとよくしのいだなと思った。

同時期に『ゼビウス』や『マッピー』といった名作と比べると、確かにタイトーの作品も有名なのだがそれでも面白さという点で劣っているかなと思う(あくまで個人的な意見なので、当時のタイトーの作品も面白い)。 レビューにも書いたが、判定の厳しさがこのゲームの評価を落としている気がして、カセットのみ購入したとはいえ操作方法は数回のプレイでわかったので、これは操作云々というよりたとえなれていても判定の厳しさがつらいところ。


プレイ前、ニコニコ動画でこのゲームのプレイ動画を見たり、このゲームのハックロムプレイ動画を見たりしてテクニックを観察し、これなら何とかなるだろうと思って動画のテクニックの見よう見まねでやってみた。 しかし、機密書類のある部屋に入ることとエスカレーターの使用といった、先にも書いたそれを利用するための判定の厳しさですぐ痛い目にあい、 白線のほぼど真ん中で利用しなければならないため、これに気づくまでガードマンに射殺されることが多かった。 要は、すばやく機密書類を全部奪って下に降りて、マシンガン所持のガードマンに蜂の巣にされないようにするのがいいのだろうが、最初のステージの終盤で高確率で蜂の巣にされるというのは、私の腕が未熟なのかもともとこの仕様なのか。

何度かのプレイの末、ある程度得点をたたき出してからマシンガンを食らってクリアすることがいいだろうということにした。 ネットで、このゲームの事を調べているうちに得点を増やしても残り人数が3人いる場合だと増えないこともわかると、得点をある程度増やしてからマシンガンを食らってクリアする方針を確定させた。 どうせエンディングもなく、数ステージクリアすることで一周するゲームなので、無理に強行してクリアするよりランプを落としてビルを暗くさせて得点を倍増させる手法で、プレイしていこうかなとも思っていた。

さらにプレイしていくうちに、エレベーターを利用して敵を押しつぶしたり近くのドアから出てきた敵をジャンプキックで蹴飛ばしたりと、思わずこのゲームにありがちなテクニックを無意識でやることが多くなった。 特に、エレベーターで押しつぶす場合は得点が高く、それだけに欲が出て敵に撃たれたり逆に自分が押しつぶされたりもしたが、2人まとめて押しつぶすことも何回かできたので、時々クリアそっちのけでやっていた。

ただ、敵が別のエレベーターで勝手に押しつぶされたりエレベーターの中なのになぜか押しつぶされていたりと、 スパイになりきってプレイしているのに笑いの場面を提供してくるというのはどういうことなのか、レビューを書いている今でもあまり理解できない。



本日のまとめ



BONUS
04000
(09/6/8レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2020年2月18日

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