◆フィールドコンバット◆
SLGの要素をあわせた全く新しいSTG



発売日:1985年7月9日   発売元:ジャレコ   ジャンル:STG
値段:4500円   オススメ度:3.5(敵戦力を利用する面白さ)


世界征服という悪の野望を抱く狂気の天才科学者『フォゾム(PHOZOM)』は、地球連邦軍に対し全面戦争を挑んできた。 フォゾムは、コードネーム『ニップ(KNIP)』と呼ばれる洗脳装置を、主力兵器であり高速飛行円盤でもある『ディオロフ』に搭載した。 これを使い、世界各地の連邦軍兵士や最新兵器を片っ端から洗脳していき、自分の手駒としていたばかりか自分の手をあまり汚さずに戦力の拡大と連邦軍の勢力削減をやってのけていたのだ。

戦力を奪われたことで全滅の危機に陥った連邦軍は、急遽洗脳された兵士や兵器を救う新兵器を開発した。 それが『キャプチャービーム』で、この兵器は洗脳された兵士と兵器の捕獲および覚醒させる作用を持つ画期的なものであり、その新兵器を攻撃母艦『ジェネシス−3』に搭載して、フォゾム軍の最前線へ向かわせた。 はたして地球連邦軍は、フォゾムの野望通りに戦い合い全滅してしまうのか、それともジェネシスー3のキャプチャービームが功を奏し、洗脳兵士を奪回して戦力を取り戻しフォゾムの野望を打ち砕くことができるのか……。

ジャレコのSTGのひとつだが、同じSTGの『エクセリオン』や『フォーメーションZ』と比べて異端と目されている。 無論、エクセリオンの2種類のビームとフォーメーションZの変形も、当時としてはかなり画期的かつ異端でもあったが、フィールドコンバットの要素は現在から考えても異端であり、2つのSTGのシステムがまともに見えるほどである。

現に、2007年にこのゲームのシステムを維持しつつアレンジした『三國フィールドコンバット』がiモードで登場、ジャンルがSTGなのに三国志という最もSLGにふさわしい作風がSTGになっているのは、三国志でもSTGになりやすいシステムをこのゲームに秘めているからである。

これについては後述するとして、当時のFCにはSLGというジャンルは存在せず、もともとこのゲームもAC作品からの移植である。 AC版とFC版の内容は変わらず、グラフィックなどを除けばAC版のように移植版でも遊ぶことができるわけだ。

しかしこの時期、『ドルアーガの塔』や『グラディウス』などの名作によってあまり人気を獲得できないまま消えてしまうことになった。 もっとも、先の大ヒット作品を除いてもこのゲームがACではあるシステムによって、マイナーな位置に甘んじざるを得なかったことも大きいのだが(FC版では初期ということでそれなりに有名だった)。


ジャンルこそSTGだが、ルールはステージ中の敵を全滅させたりボスを倒すものではなく、自機を相手陣地に入り込ませ占領させれば(ゲート侵入)勝利となる。 もちろん、敵戦力に限りがあるのでそれを全てつぶして占領させるあたりは、まだ一般的なSTGのクリア目的に含まれてはいる(ゲート前の敵の砲台の撃破も関係ある)。 パワーアップもない上に、自機が大きく動きもそれほどすばやくないから攻撃を当てたりかわしたりするのも一苦労で、普通ならば駄作に入りかねないこのゲーム。

だが、このゲームならではの特徴は敵戦力をこちらのものにできるということで、めぼしい敵にキャプチャービームを当てて吸い寄せて獲得してからその戦力を敵にぶつけるのである。 それをする前に、こちらの戦力を使って敵軍をぶつけることもできるが、初期戦力に限りがある以上敵の戦力を利用するのは当然で、足りなくなったら敵軍を吸い寄せて利用することも可能。

放出した戦力は、敵軍と自動的に戦闘を行うため、自軍が敵を吸い寄せている間に味方が援護射撃の扱いで敵を駆逐してくれるのというわけだ。 ちなみに、敵軍といっても元味方それもフォゾムによって洗脳されたに過ぎないのだから、味方どうして争うというある意味とんでもない設定になっている。

戦力は、ソルジャー(歩兵)、キース(装甲車)、FL−880(高射砲)、HEL−99A(戦車)、ルイスーT(ヘリコプター)の6種類で、それを活用してゲームを進むことになる。 対する敵も同様で、ルイスーTとこちらの自機に該当するディオロフは全ステージに一定おきに登場する一方で、残りの戦力はたとえばソルジャーは最初のステージしか出ないというように、ステージごとにルイスーTとディオロフと残り一枠はその2種類以外のどちらかという扱いになっている。


最終ステージは全ての戦力がぶつかるもので、エンディングがなくクリアすれば最初のステージに戻るこのゲームだが、最終決戦にふさわしい戦力のぶつかり合いは圧巻だ。 それゆえ、特定の敵がメインに出るステージでは、そのステージの同じ戦力をぶつけることが多くなるし、移動速度と射程距離の関係上性能が低い戦力(最弱はソルジャー)をメインにぶつけ、性能が高い戦力(最強はHEL−99A)を保存する先述もありだろう。

いうなれば、これはSLGにたとえればまさに産めよ増やせよであり、ミリタリー系SLGと重ね合わせればなるほどと思うはずだろう。 このゲームでは、ストーリーの設定上敵戦力を吸い寄せて洗脳を解くとはいえ、兵器を生産して敵にぶつけるという点でまさにSLGの設定をSTGに導入している。

おまけに、ゲーム中に流れるBGMはリヒャルト=ワーグナーの『ワルキューレ』の冒頭部分のアレンジで、このゲームに先駆けて1979年公開の映画『地獄の黙示録』でもこのBGMが流れるあたりは、舞台設定こそ近未来だがこの映画の影響を大いに受けた可能性が高い。

なお、敵軍もディオロフを使ってこちらの戦力を奪ってしまうため、ある意味敵にもSLGの設定を与えているのは感心する一方で、戦力を取られて悔しいという複雑な気持ちがあるだろう。 ところで、ルイス−Tはこちらの戦力にすることはもちろん撃墜することが不能で、どうしても倒したければこちらもルイス−Tをぶつけて倒すしかない。

一応、キャプチャービームで引き寄せることはできるがそれは一瞬で、すぐ動き出してこちらに攻撃を仕掛けて去っていく、あまりにもいやらしさを秘めた兵器になっている。 確かに、動きもすばやいために撃墜やこちらの戦力にすることは不可能で、こちらが使ったルイス−Tはステージクリア後に支給されるものの、 最大3機で他の戦力の最大ストック数が9機とかなり少なく、こちらのルイス−Tが相手と相打ちになったり撃墜されたりすることが多いので、せめて引き寄せることは無理でも撃墜は難しいながらも可能にしてもらいたかった。


かなり斬新な設定だが、元々AC作品ゆえにエンディングがないものが多かった当時は、最高得点をたたき出しランク入りするのがゲーマーの目的であった。 したがって、AC版ではこのゲームの設定があまり生かされていない。

というのは、こちらが吸い寄せた戦力を敵戦力にぶつけ、ゲートを守る砲台を破壊してゲートに侵入するというこのゲームならではの戦略が、ハイスコアの足かせになっているためだ。 SLGでは、自軍の戦力を敵軍にぶつけて殲滅させるのが常識だが、このゲームではそれをやってしまうと得点に入らないのだ(自機ではなく味方が倒したためなのだろう)。

それでも、こちらが撃墜するよりキャプチャービームで吸い寄せた場合の得点が100点増えるので、味方が戦力を削っても別の敵戦力を吸い寄せればいいだけだ。 場合によっては、2つの戦力を同時に吸い寄せることもできるので、普通に倒した場合との差がたった100点とは言え2つ同時に吸い寄せれば、 ソルジャーを普通に倒す得点と同じ200点をまとめて獲得できるため、ちょっと得した気分になれる。 ゲームが進むごとに、登場する敵軍の兵器も強力になっていくので、普通に敵を撃墜するよりも吸い寄せてこちらの戦力にしたほうが効率はいい。

だが、キャプチャービームを発射すると自機は動くことができず、まだ敵戦力が豊富それも乱戦状態にその近くで発射してしまうと、敵弾の餌食になる確率が高い。 敵の射程外、もしくは障害物(弾は通過する)や味方を利用して吸い寄せるのが常套手段で、敵を吸い寄せてこちらの戦力にすることが、斬新である反面足かせになっている。

結局のところ、わざわざ吸い寄せて敵にぶつけるより、こちらが撃墜するほうが得点を獲得しやすくなり、 このゲームを長くプレイしてきた人にとってはわざわざ味方に敵をつぶすよりはこちらでつぶしたほうが、ハイスコアをたたき出しやすくなると思っているのかもしれない。 そのためか、最高得点がだいたい一万点ごとに残機が増える仕組みになっていて、他のSTGより低い分キャプチャービーム掃射の長所と短所に配慮した形になっているのだろう。

このように、SLGの要素が強すぎたSTGになってしまったため、当時としてはかなり斬新であったことは認めるがその当時ゆえに、まだ理解しにくいところがあったのだろう。 SLGは、まだPCの専売特許であり味方と敵の戦力をぶつけあう点で、同年12月発売の『ボコスカウォーズ』もSLGの要素はある。 だが、本格的なSLGがFCに登場するのは『信長の野望 全・国・版』まで待たねばならない。


私はこのゲームをプレイした時、思わず目からうろこが落ちるほどの大きな衝撃を受けた。 それほど、このゲームは私にとってかなり斬新な要素があり、どうしてこのゲームの面白さに気づかなかったのかと後悔してしまった。

存在そのものは、当時のてれびくんではなく他社のファミコン雑誌のムック版で知ったはずだが、どういう記述がしてあったのかわからず存在自体も、 数年前にネットで見つけた大手ファミコンサイトでこのゲームのことがちょっとだけ載っているところを見るまでは忘れたままだった。 ようやく、このゲームなのかとわかっていても一体どういうゲームなのかはいまだにわからなかったので、結局プレイするどころか中古ゲームショップでカセットを手に取ることもなかった。

レビューを書く3年前の1月某日、私のネット仲間2人とオフ会を楽しんでいた時に、その一人からファミコンソフト数本をいただいた。 その中にフィールドコンバットがあったのだが、この頃いや今まで自分なりに他のゲームをプレイしたりレビューしたりしていたので、その人からいただいたゲームはほとんどプレイすることなく押入れにしまっていた。 レビューしてくださいと言われ、私もとりあえずやっては見ますと情けない受け応えをしたが、現在に至っている状況であった。

それから現在、突然思ったかのようにこのゲームをプレイしたが、その時の気持ちは最初に書いた通りであった。 STGだけど、SLGの要素を多く含んでいて敵戦力を奪いつつこちらの戦力を増やしていくというやり方は、私をわくわくさせるのに十分だった。

この面白さがわかった頃から、こちらの戦力をぶつけている間に敵戦力を奪って増やす手法を繰り返した。 設定上は、洗脳された味方の兵士と兵器を取り戻して洗脳を解くのだが、それを忘れるかのように敵戦力を奪ってその戦力を敵にぶつける繰り返しをやり、普通に自機が敵を撃墜することを忘れるほどやっていたのだ。


この後、ニコニコ動画でこのゲームのプレイ動画(AC版はなし)を見たが、適度に敵戦力を奪いつつ適度に敵を撃墜し、 なおかつこちらは一度も撃墜されていないテクニックを見た時はちょっと感心したが、敵戦力を奪ってぶつけるのがこのゲームの戦略と心に決めていた私には、まあまあかなと思っていた一方やっぱりうまいなとも思っていた。 そんな中、動画の視聴中にキャプチャービームで奪うよりも普通に撃墜したほうがいいというコメントがあった。

レビューの最中に、このゲームのことを知るためネットで色々探していて、いくつかのレビューにも敵を撃墜したほうが、 敵を奪うより効率がよく危険が少ないという記述がしてあり、明らかに私の戦略は異端であることに気づいた。 レビューにも書いている通り、キャプチャービームを発射する時は動くことができず、敵軍の格好の的になりやすくそのまま撃ち落とされやすいため、 得点を稼ぐならば敵の撃墜をメインにやったほうがいいのだが、私個人の考えは得点のみを稼ぐ人はそうあるべきだろうけれど、 私のようにこのゲームの要素を最大限に楽しみたいという人には、敵戦力の奪取とその戦力の有効活用の繰り返しをしたほうが面白いと思う。

ちなみに、通常の撃墜はディオロフと砲台のみで(たまに通常戦力を攻撃している)、 前はルイス−Tの撃墜をしようとやっていたがそれが不可能になったことを知ると、こちらもルイス−Tを差し向けて迎撃してみたが相打ちやこちらが撃墜されることが多く、 正直役に立つのかと思わずにはいられず、もし自機で撃墜できたらどんなに楽なことかと不満が出てきた。

それでも、敵の弾幕をかいくぐり敵戦力の吸収とそれらを敵にぶつけることがやめられない私、一種の快感になってしまったようだ。 現に、2つの敵ユニットをまとめて吸い寄せていつも以上の得点を獲得できたことが何度もあったので、たとえ普通の撃墜による敵戦力削減を周りから言われようとも、私は自分のプレイを貫くつもりだ。



本日のまとめ



占領
(09/5/31レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年11月25日

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