◆忍者じゃじゃ丸くん◆
忍者くんスピンオフ作品第一弾



発売日:1985年11月15日   発売元:ジャレコ   ジャンル:ACT
値段:4900円   オススメ度:3.5(アレンジのきいた良作)


忍者のアイドル的存在であるさくら姫が、突如何者かによって連れ去られてしまった。 真犯人はなまず太夫、かつては忍者一族の有力者であったが、現在は妖怪軍団を束ねる親玉になっていて悪事を重ねている。 一族は、この裏切り者を倒しさくら姫を取り戻すべく、一族の有力忍者である忍者くんが選ばれたが、その忍者くんは現在修行の旅に出てしまっていて、その2つの使命を受けられる状況ではなかった。

そこで、忍者くんの弟であり彼の留守を預かっているじゃじゃ丸くんが兄者の代わりに、忍者一族の裏切り者なまず太夫および妖怪軍団の打倒と、さくら姫の奪還の使命を受けることになった。 じゃじゃ丸くんは、忍者くんの弟とはいえ兄者の教えを受けた今では、1・2を競うほどの忍法の腕を身に着けている。

はたしてじゃじゃ丸くんは、妖怪たちを倒して悪のなまず太夫からさくら姫を救いだせるのだろうか…?


『忍者くん』シリーズのひとつながらも、スピンオフ作品であり同時にじゃじゃ丸くんシリーズの第一弾でもあるこの作品。 忍者くんの版権元がUPLなのに、じゃじゃ丸くんシリーズがジャレコと明らかに版権元が違う気がするが、これはFC版移植の際にジャレコがUPLから忍者くんの版権を買い取ったのが始まりである。

これについては、忍者くんのレビューを参照してもらうとして、版権を買ったことをきっかけにじゃじゃ丸くんシリーズが年を追うごとに増えていき、同時にジャンルアクションだけでなくRPGも作られていった。 一方で、シリーズの中にはユーザーから面白い評価といまいちな評価に分かれているが、これはFC作品を名作と駄作を多く作ったことでFCでの地位を微妙なものにしてしまったジャレコの功罪ともいえる。

初代じゃじゃ丸くんは、シリーズ最初の作品ながらも高い評価を受けていて、バーチャルコンソールにも配信されているほどの人気がある。 加えて、VS.システムやウィンドウズなどにも移植され、FC世代のみならずレトロゲーマーだがPCやACユーザーにも一定の支持を受けている。

これは、スピンオフ作品といってもFC版より容量が増えている分だけ新しい要素も増え、FC版・AC版問わず忍者くんをプレイした人をひきつける、 いわば忍者くんをプレイした人ならば楽しめるといったものに仕上がったといえる。


スピンオフということもあってか、後述する新要素はいくつかあるもののルールやプレイスタイルは、忍者くんと指して換わりはない。 ステージ中の8体の妖怪を倒せばクリアで、踏み付けや体当たりで気絶させて手裏剣を当てるという手法が、このゲームも健在というのがうれしいところ。

当然、別の段の敵を振り向きざまにジャンプして倒すことも可能だが、忍者くんにあった十字キー上+Aでの降りることや十字キー斜め+Aのジャンプが使えない。 これは、忍者くんの舞台が外だったのに対してじゃじゃ丸くんは屋敷内で、天井の要素もそれらの操作ができなくなっていることに関係があるのだが、 じゃじゃ丸くんはFCオリジナル作品ゆえにFCならではの簡単な操作にシフトしたことも関係があると思われ、 十字キーをあまり使わずにジャンプができることは、本シリーズでジャンプをミスした場合よりもかなり安全というわけだ。

敵の出現パターンもザコ7体に親玉一体で、3ステージごとに親玉だった敵はザコになり新たに新しい敵が親玉となるが、 親玉は忍者くんのようにザコ時と親玉時との性能差がない、つまりザコと同様の性能になっていることである程度楽に戦える。

とはいえ、手裏剣がきかない敵が今作では2体登場し、ステージによっては8体が手裏剣がきかない敵だけということもあり、ある意味悪夢といわざるを得ない。 しかも、時間が迫ると首領なまず太夫の爆弾を雨あられのように投げてきて、タイムが0になるとミスにならないが炎が迫ってくるという、 忍者くんの要素を取り入れつつもはや永久パターン防止が成立しているといえ、このあたりタイムの存在が得点のみになっている。

敵を倒した後に出るものが、巻物から魂に変わっているだけで単なる得点に過ぎないが、巻物が倒した場所においてあるだけだったのに対して魂は画面上まで登っていくものになっているあたり、 どちらが取りやすいのかというのはプレイヤーしだいだろう。


ボーナスステージ進出方法も、一定時間後にさくら姫が投げる花びらを3枚取れば行けるという点で、忍者くんの時とそっくりである。 もっとも、ボーナスステージはなまず太夫との決戦というボーナスステージらしからぬ内容で、制限時間内に倒せばさくら姫救出成功ということでエンディングを迎える。

もちろん、この後もまだまだ妖怪軍団との戦いが始まるわけだが、エンディングがある以上忍者くんより一応区切りがついているのがうれしい。 このように、忍者くんのシステムを取り入れつつもそれをじゃじゃ丸くん風味に仕立て上げ、なおかつ忍者くんの雰囲気を壊さずに本シリーズからプレイした人でも楽しめるあたり、このゲームがシリーズ中最も人気があることを裏付けている。

なお、なまず太夫との決戦となるボーナスステージは、画面上のなまず太夫を画面下のじゃじゃ丸くんが手裏剣で打ち落とすという、往年のインベーダーゲームを髣髴させる。 なまず太夫は、横に移動しながら炎を投げつけてきて、ステージによっては複数のなまず太夫も炎を投げつけるという危ないものになっているが、これはFC版忍者くんに登場できなかった獅子舞(ザコ敵)のオマージュかもしれない。

なぜ、FC版忍者くんに獅子舞が出てこなかったのかわからないが、獅子舞の吐く炎の量が当時のFCの性能(スプライト)を上回っていた可能性が考えられる。 じゃじゃ丸くんでは、容量が若干増えた分スプライトの限界量も増えたようで、なまず太夫が単独もしくは複数で炎をばら撒くあたりは、 AC版をプレイした人がFC版をプレイして獅子舞が出ていなかったことに対する不満を和らげる意味もあったようだ。


そして本作ならではの要素、天井とそれに隠されているアイテムについて説明したい。 先に書いたように、別の段に登るには天井をジャンプで壊さなければならないが、その天井にはアイテムが隠されていてそれらを取ることでじゃじゃ丸くんがパワーアップするという、 己のテクニックだけでクリアしなければならなかった忍者くんよりもハンデがきいていることが、本シリーズで散々な目にあった人にうれしい配慮がなされている。

ただ、天井を壊しすぎると足場が少ない分敵を倒すのに苦労をすることになり、天井の中にはアイテム以外にも何も入っていない場合もあれば、 爆弾が入っている場合もありうっかり触れるとミスになるという、まさに天井が一長一短になっている。

必ず一枚、天井を壊さなければならないものの、忍者くん同様にアイテムに頼らずテクニックだけで切り抜けたりやはりアイテムに頼ることもできるので、 新要素追加とはいえこのあたりも本シリーズプレイの人にも受け入れやすい下地が整っている。

さて、天井に隠されているアイテムは足が速くなる赤玉や無敵になる薬ビン、手裏剣の射程距離が長くなる手裏剣や足が速くなり敵を倒せば得点が格段に上がるトロッコ、得点増加の金銀コバンや1UPの小丸くんがある。 1UPと得点増加以外のアイテムは、能力強化ゆえに取ったステージでしか効果がないが、ゲームが進む以上アイテムに頼る人にとって頼もしいものはない。

前にも書いたが、天井を壊せばアイテムが取れる可能性がある一方で、何もなかったり爆弾を当ててしまったり何よりも足場を崩したために攻略がつらくなるというやり方は、ジャレコのいやらしいトラップとも考えられよう。 ところで、画面右上にアイテムを取った表示は次ステージ以降も表示されているが、これはあるものを出すためのストック扱いで、それらが3つ集まると一撃必殺と呼ばれるものが登場、プレイヤーと敵に度肝を抜かせる。

それがガマパックンで、巨大ガエルのパックンを呼び出し登場による動けなくなった妖怪たちを片っ端から食べていくというすさまじいものになっていて、 画面右上に表示される残り人数扱いとなる小丸くんを4つ集めてもパックンを呼び出せるが、アイテムを3つ集めたほうが楽だろうし(やられる危険が大きいため)、 表示されているアイテムのほうは消えてまたアイテムを取れば表示され効果が出るのでやはりアイテムのほうがやりやすい。

一種の無敵だが、いじけているだけで食われて復活すれば意味がない『パックマン』のパワーエサと違って、このゲームは敵を全滅させればクリアゆえに、 落とし穴がないこととタイムアップの制限を加えればもうひとつの無敵をここで示した格好だ。

『ドンキーコング』のハンマーや3のパワースプレーのようにパワーアップだから無敵のように見せかけて、 実は単なるパワーアップで無敵とは一切関係ない(落ちたり敵に触れるとミス)という一種の詐欺に近い(失礼)ものを、じゃじゃ丸くんでは完全無敵に仕立てるあたりは、プレイヤーに度肝を抜かせて当然というべきか。

もうひとつ、プレイヤーを驚かせたのが新しい敵の紹介という演出。 最初のステージおよび、4ステージと7ステージというように3ステージ間ごとに新しい敵が出てくるが、それをゲーム前に黒い画面で縦書きにプレイヤーに伝えるという、まるで時代劇のようなサブタイトルの演出が面白い。

忍者くんをプレイした人にはどうでもいいようだが、そこはスピンオフ作品を作ったジャレコ、その辺りにジャレコのセンスがあるのだろう。 これより9ヵ月後、同じデザインでさらにじゃじゃ丸くんおよび忍者くんのシステムを、引き継ぎつつも新要素を加えた続編が登場するが、これは次回に回したい。


私にとって、じゃじゃ丸くんシリーズといえばやはり初代で、続編とRPGの第3弾もプレイしていて面白さがあるのだが、やはり初代のほうが多くプレイしている上に面白さも初代のほうが上だと思っている。 第4弾以降のほうはプレイしていないので全くわからず、いずれプレイしてみるといっても正直いつになるのかわからない。

FC作品はともかく、それ以外の機種となるとプレイする可能性があるかどうかわからないほどで、このゲームをレビューする時にウィキペディアなどをちょっと見てみたが、 じゃじゃ丸くんシリーズがGBAまで続いていることはわかっていたもののその間の作品がいくつもあったので、ジャレコが一時台湾メーカーに買収されたことも含めてまだ続いていたのかと驚いた。

ジャレコといえば、先のじゃじゃ丸くんや『スーチーパイ』などといった良作を作り出している一方で、 『燃えプロ』シリーズや『ミシシッピー殺人事件』などといった駄作も多く作っているので、こういう微妙な位置にいるメーカーが良作長期シリーズを作り出したことが奇跡だと思っている。

初代プレイはいとこの家で、多分発売から間もない頃だったと思うが、どちらにせよ楽しめたことは事実。 実は、ステージ開始前になまず太夫が妖怪を呼び出す時の音が、小さい頃の私にとってとても面白かったので、 小学校時代休み時間に引き出しをがたがたと音を鳴らして雰囲気を味わっていたのが、今とのなっては恥ずかしくも懐かしかった。

しかし、他のゲームに目移りが進むにつれて初代じゃじゃ丸くんも忘れ去られていき、金が自由になり一時はFCに夢中になった大学時代でも見向きもしなかった(他のシリーズも同様)。 久しぶりにプレイした時も、単に当時の懐かしさが出ただけでそれでもうれしかったものの、まだ忍者くんとの関係がわからなかった昔はこのゲームの本当の面白さに気づくことができなかった。


したがって、購入は2年前それもすぐレビューしようと思っていたのが、いつのまにか現在になってしまったというおまけつきであった。 そんな、今更ながらのじっくりとしたプレイだったがこの時忍者くんをまだ購入しておらず、忍者くんのスピンオフ作品ということは既にわかっていたものの、 レビューを書く数か月前に忍者くんをプレイしてシステムもほぼ一緒だったことに驚いた。

だからこそ、忍者くんをレビューした後にすばやくこのゲームのレビューもできたというわけで、近いうちに続編『じゃじゃ丸の大冒険』もレビューしてみようと思っている(既に何度かプレイ済み)。

そういう事実も知って、先にも書いたように今まではゲームの腕がよくなかったこともあって最初のステージでも苦戦を強いられたが、忍者くんをプレイ後は攻略パターンがほぼ一緒だったこともあってさくさく進めた。 手裏剣が聞かない敵には苦労したものの、忍者くんよりは一応性能が有情だったこともあったし、なにより天井のおかげで多人数を相手にせずにほぼ一対一で立ち向かえたのが大きく、そのあたりジャレコのセンスがかなりきいているなと感心した。

そして、プレイヤーの度肝を抜いたガマパックンは長くプレイしていながら、ここでようやく初めてお目にかかれたことに思わずわくわくして、動けなくなった敵を片っ端から食べてしまうあたりに驚きと爽快さを感じた。 当然狙って出せる代物ではなかったから、残り人数を増やしてパックンを呼び出すよりアイテムを入手して呼び出したほうが、単にレトロゲーム好きの私には性にあっていると思う。



本日のまとめ



ヘドボン登場
(09/5/25レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年11月3日

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