◆忍者くん 魔城の冒険◆
忍者くんシリーズ第一弾



発売日:1985年5月10日   発売元:ジャレコ   ジャンルACT
値段:4500円   オススメ度:3(ジャンプテクニックと命中具合)


今はなきUPLのゲームのひとつで、忍者くんシリーズの最初の作品でもあるが、サブタイトルに『魔城の冒険』とあるもののプレイヤーは単に忍者くんと呼んでいるあたり、 初代であることに加えてサブタイトルがややこしかったことが考えられるが真相は不明。

かつて、本社が同じ栃木県に置いていたユニバーサル(現アルゼ)の子会社であったUPLは、1992年に倒産するまで『宇宙戦艦ゴモラ』や 『アトミックロボキッド』など主にメカやロボットが多く登場するゲーム、それもSTGを多く開発した会社である。

しかし、UPLを古くから知る人にとってはそういったメカSTGではなく、忍者くんシリーズのほうが有名だろう。

AC版こそ開発・販売がUPLだったが、今回紹介するFC版についてはUPLではなくジャレコが移植および販売を担当し、その移植版はAC版登場(1984年)から翌年の5月に登場している。

この時期のジャレコは、同年2月にジャレコ初参入ゲーム『エクセリオン』を登場、続いて4月には『フォーメーションZ』を登場と同社のAC作品を次々とFCに移植し、 ハドソン、ナムコに続く第3のサードパーティーとして良くも悪くもFCユーザーに名を知られていく。

そんな中で、ジャレコというのは1971年に設立した古い会社ではあるがジャレコという名前は1983年に登場したので、 それ以前の社名(ジャパン・レジャー)を知らない人にとって無名に近い印象を受けたのではないだろうか。

コンピューターゲームについても、ジャレコ時代前のものがいくつかあるが当時を知るユーザーでも知らないものばかりなのだから。

そんなジャレコが、他社の作品の権利を買い取ってFCに移植したのは、忍者くんと『エクセリオン』が一部のシステムに共通点があったためだと思われ(後述)、 ともにAC版登場が1984年と一部のシステム同様一致はすれど開発元が違うため、偶然とはいえジャレコはUPLの作品をジャレコなりに移植してFCユーザーに楽しませようとしたのかもしれない。

加えて、権利を買い取ることでその作品の幅が広がり後の『忍者じゃじゃ丸くん』シリーズが長きに渡って登場していくことを考えれば、当時のジャレコには多少なりとも柔軟な考えがあったことが伺える。 もっとも、それが『ミシシッピー殺人事件』や『燃えろ!プロ野球』シリーズのような間違った方向性を打ち出してしまったのはご愛嬌か。

いずれにせよ、UPLが早い時期に倒産したしたもののジャレコが権利を獲得しているおかげで、リメイク版がジャレコから発売されることができたものの、 倒産状況ゆえにスピンオフ作品が本シリーズより長命なのは悲劇としか言いようがない。


ルールは、制限時間内に8体の敵を倒せばクリア、それだけである。 忍者くんは、手裏剣を使って敵を倒すのだが射程が短く、うかつに近づけば敵も攻撃射程が短いものの攻撃を食らってミスすることもあるので、やたら手裏剣を投げればいいものではない。 8体しか出ないといっても、敵の動きをよく見て命中させなければいけないということは、このゲームは子供向けのように見えて子供だましの攻略では通用しないということだ。

基本的な攻略として、敵の上に乗っかるとその敵は気絶しその間に手裏剣を当てれば楽に倒せるため、正面から武器を投げあうよりも基本かつ安全である。 また、ジャンプしてプレイヤーより上の段にいる敵の背後に手裏剣をぶつけるのもありで、ジャンプして振り向きざまに手裏剣をぶつけるという手法も面白い。

このジャンプスタイル、当時のAC作品はともかくFC作品ではかなり新鮮で、ジャンプしても逆の方向を向いたりジャンプを調節することができなかったものと比べて使い勝手がよく、 同年発売の『スーパーマリオブラザーズ』より早くジャンプの性能を示しているのは興味深い。

ただ、ジャンプの調整もできることはいいのだが横幅が広いジャンプゆえにクセが強く、調整可能といってもそれは主に横幅ぐらいなもので、ジャンプする自体ジャンプボタンを押してもジャンプできず、 十字キーの斜め上同時押しで実行できるため(十字キーの上と同時押しだと段を降りる)、この操作もこのゲームのジャンプのクセを印象付けてしまっている。

だからこそ、いかにして敵を的確に倒しつつこちらがミスにならないようにするのがこのゲームのカギで、ジャンプと手裏剣の性能を最大限に活用してクリアを目指す、 これらこそが当時のゲームにおいていかにしてゲームの不利な状況を有利に展開するのかにかかっていて、高得点を阻む壁を自分の腕で打ち破るのがプレイヤーの楽しみといえる。

各ステージに隠されている高得点要素は、プレイヤーの腕で表すことができるのだから攻略さえ何とかなれば、あとはやりたいようにボーナスをたたき出すという点も、 このゲームは古いゲームにありがちな要素を取り入れている。

ボーナスステージは、ステージ中にひとつだけ登場する魔法の玉を3ステージまたいで3つ取れば突入でき、 内容は魔法の玉を全部取ればパーフェクトとしてさらに高得点(12000点)という、制限時間が短い関係上的確に行動しなければパーフェクトができないということも、 このゲームはテクニックを最大限に生かしてこそ高得点が生まれることを証明している。


通常ステージでもボーナスは多く用意されていて、全てがテクニックを駆使したものであることから、クリアするなら誰でもできるが高得点も稼ぐとなると普通のプレイヤーでは太刀打ちできないあたり、 意外にも一風変わった万人向けという感じがある。 その高得点獲得方法は2つあり、ひとつが敵を倒したとき倒れた敵が落下していって、画面外に消えるまでに手裏剣をぶつければ1000点のボーナスがつく。

忍者くんの落下スピードと敵の落下スピードは同じゆえ、それを考慮して手裏剣を倒した敵にぶつけていくのは至難の技で、 基本得点が少ないこのゲームにおいて一応手軽であるものの、これもテクニックなくしてできぬボーナスである。

なお、通常ボーナスはクリアタイムと取得した巻物の2つだが、前者は1ミスすると没収扱いで後者はクリア直後の坊主めくりで、 姫こそ出れば取った巻物は倍になり坊主が出れば没収扱いとなるので、上級者にとってはテクニックで高得点を稼いだほうがいいだろう(FC版にはそれはない)。

もうひとつは、手裏剣を確実に当ててはずすことなく敵を倒せば、クリア後に10000点のボーナスがつき最終的に30000点つくというもので、 このゲームのテクニックを駆使しなければ出ないという、毎ステージに用意されていながら難易度がとてつもなく高くなっている。 射程の短い手裏剣に加えて、敵に反撃されない形で一撃で倒すのは至難の技。

それだけに、ボーナスは破格でクリア後の入手した巻物のボーナスや敵を倒した得点、1ミス後の場合クリアしてももらえないタイムボーナスと比べれば、 10000点のボーナスというものがどれほど高く魅力があるのかよくわかる。

2つのテクニックをあわせれば、最初のステージでいきなり高得点を稼ぐことができるが、それができるのはこのゲームに慣れ親しんだプレイヤーぐらいだろう。


まさにこのゲームは、テクニックなくして高得点はありえないというわけであり、それを行って高得点を獲得できたプレイヤーは自慢できる対象といえる。 この手のテクニックは、1986年公開の映画『GAME KING』での『スターソルジャー』対決における、高橋名人対毛利名人の毛利名人側にあり、 彼の行っている敵を的確に倒すというテクニック技術は、忍者くんの高得点テクニックと非常に似ている。

もちろん偶然だが、連射ブームの真っ只中にあったSTGに的確に敵を倒すテクニックというのは新鮮で、忍者くんはジャンルこそACTながらもテクニックはSTGに近いものがある。 もっとも、このゲームはステージ風景こそ3ステージだが、新しい敵の登場により全33ステージの長丁場になり、新しい敵を見る場合もはやテクニックで高得点をやっている暇はない。

敵の登場構成は、8体のうち一体がボス格に近い存在で残りがザコ扱いであり、たとえば3ステージまで一体がだるまで残りが黒子の場合、 4ステージから6ステージまで一体がカブキで残りがだるまと、新しい適が出てくるたびにボス格を務めていた敵はザコになる。 その場合、能力はボス格より低く抑えられていて、さながら特撮番組における再生怪人は弱いという原則をこのゲームに当てはめている。

それゆえ、ボス格時での敵の強さはかなりのもので、初心者はボス格のだるまに相当苦戦させられたと思う(放つ鎌の量が半端でない)。 中盤からトラップ扱いの炎が登場し、終盤に登場するヨロイは上から押しつぶすなどして気絶させなければ倒せないので、この時点でもはや高得点テクニックをやっている場合ではない。

FC版は、それが気軽にできる反面AC版に登場した敵の一部が出てこないので、完全版に近いものを遊ぶにはiモードの移植版をプレイするしかない。 一方で、AC版になかったゲームオーバーのBGMがあるのでそのあたりはAC版より優れていて、権利を買い取ったジャレコが見せた片鱗かもしれない。


このゲーム、いとこの家にあったもののプレイしたかどうかについては全く忘れてしまった。 多分プレイしていないと思われ、むしろ別のゲームをプレイしていた可能性が高く、ソフトを初めて見た当時はディスクゲームがある程度市場に浸透しつつあったので、ROMカセットのほうやディスクゲームを半々プレイしていた。

発売当時、てれびくんはFC特集を大体的にやってはいるがそれは夏頃なので、このゲームが特集されていたかどうかはわからない。 オークションで、当時のてれびくんの表紙に『バンゲリング・ベイ』や『ベースボール』など特集を組む以前のゲーム画像があるが、忍者くんはどうも私の記憶に残らなかったのかもしれない。

むしろ、スピンオフ作品の『忍者じゃじゃ丸くん』シリーズのほうが私にとって有名で、じゃじゃ丸くんから『忍法帳』まで結構プレイしていた。 加えて、忍者くんのFC移植時に発売元がジャレコということもあって、忍者くんシリーズがジャレコのものだと思っていた。

それゆえ、続編の『阿修羅の章』の発売元がUPLという全く知らないメーカーだったとき、ジャレコとUPLに一体何があったのかわからなかった。 今では、忍者くんの開発元がUPLで権利をジャレコが買い取ったことを知ったので、ジャレコがスピンオフ作品であるじゃじゃ丸くんシリーズを長年にわたり登場し続けていることがよくわかるが。

じゃじゃ丸くんシリーズは、忍者くんのレビューを書く一年半ほど前に購入しているが、忍者くんのほうはレビューを書く数か月前。 ゲーム画面こそネットで見ているが、当時の記憶がない以上初めてのプレイにどういうものかちょっとばかりどきどきしていた。


カセットのみ購入したため、得点やルールはプレイする前はわからなかったが、プレイしてからすぐこのゲームの内容がわかった。 要は、敵を全滅させればいいだけで気絶させて倒すのが、安全確実かつ射程が短い手裏剣を武器にしている主人公ゆえに、このゲームにおいて一番基本名テクニックであることを読み取った。

とはいえ、まだ慣れていないこのゲームなのでどうしても敵にやられることが多く、ボス格時のだるまはある意味初心者殺しだった。 こちらより連射をする鎌を相殺できずやられたり、後ろから回り込んだり気絶させようにもそれを見透かしたようにかわしてしまうので、 AC版の存在こそ知っていてもプレイしていない自分にとって、AC版がどうなっているのか興味があった。

幸い、ニコニコ動画でAC版のプレイ動画があったので、どういうテクニックでクリアしているのか見ていたら、このゲームの基本に加え手裏剣を一発もはずさず確実に当て、 落下する敵の死体に手裏剣を当てボーナスを獲得するという、高度なテクニックを次々とやってのけていることに驚き、ボーナスステージも制限時間ちょうどに全ての魔法の玉を集めていることにも驚いた。

そんな中で、この動画に好意的なコメントが多かった一方、FC版について『ダメ』とか『クソ』という否定的なコメントがあった。 おそらく、FC版をプレイしてAC版の動画を見た人のコメントなのだろうが、FC版登場当時はまだAC版の完全移植には程遠く、 数年前のものをようやく完全移植に近いものができる程度であり、当時のFCの状況を知らずにそんなことを平気で言うのはいかがなものかと思う。

確かに、敵はAC版より少ないし坊主めくりもないというものだが、AC版で通用できたテクニックは健在で攻略もAC版に通じるからこそ、 FC版が貧相だというのは基本的に間違っていると思うしFC版でもファンがいるからこそバーチャルコンソールに配信されているのだから。

そういう怒りを胸に秘め、今でもFC版に否定的な人にぎゃふんといわせるため、自分のテクニックでできるだけがんばってはみたがステージ3であっけなくゲームオーバーになり、 何度もプレイして動画にあるテクニックを自由に使える努力はしたのだが、ステージ14のヨロイの性能にかなわず万事休す、ゲームの腕がそれほどでない私に高度なテクニックは荷が重すぎたのだろうか。



本日のまとめ



PERFECT!
12000PTS
(09/5/20レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年10月19日

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