◆ロードファイター◆
FC初の見下ろし型レース



発売日:1985年7月11日   発売元:コナミ   ジャンル:レース
値段:4500円   オススメ度:2.5(コナミにしては堅実な作品)


昔、いわゆるエレメカ時代から現在に続くレースゲームにおいて、プレイヤー側から見るスタイルが2つある。 それが見下ろし型と擬似3Dで、現在はゲーム製作技術の進歩によりリアリティの高い擬似3Dのほうが多い。

無論、かつてのレースゲームの主流は見下ろし型であり、擬似3Dが登場した以降もしばらくは見下ろし型が主流で、 ハードの性能が格段に高くなり擬似3Dのレースゲームトが出しやすくなった頃から、2つの見方は逆転してしまったといえる。

なお、もうひとつの見方から出るレースゲームもあるが、サイドビュー型と呼ばれるものは数が非常に少なく、 2つの見方の主流にはなれない(その著名作品が『エキサイトバイグ』ぐらいなので)。

これから紹介する『ロードファイター』は、当時の主流であった見下ろし型のレースゲームである。 1985年7月中旬発売となったこのゲーム、元々は前の年にAC作品として登場したものなのだ。

実はコナミは、1983年にACに『ジャイラス』という擬似3D風味のシューティングを、同年にMSXで『けっきょく南極大冒険』という 擬似3Dのアクション登場させていたが、ロードファイターが見下ろし型になったのは擬似3DゲームといってもSTGとレースとACTとでは その手法が違ったためなのだろう(けっきょく南極大冒険はスタイルが擬似3Dレースに近いものがあるのだが)。

事実、ナムコの『ポールポジション』は初の擬似3Dレースゲームとはいえ、登場が1982年と見下ろし型レースゲームの歴史と明らかに差があり、 ナムコ以外のメーカーではまだ擬似3Dレースゲームの製作に着手するのは勇気が必要だったのだろう。

現に、見下ろし型のレースゲームは擬似3Dレースと比べて堅実さがある反面、擬似3Dのような臨場感と派手さはなく地味な印象がある。 それは、エレメカ時代から基本的な要素は変わっておらず、変化を求めるのならばアイテムを出したり見栄えをよくするなどの手法があり、 ロードファイター登場時の見下ろし型レースゲームの多くがそれらの手を使っている。

ここでの堅実さは製作のほかに人気もあり、この頃のコナミ作品はある程度人気はあったがこの年『タイムパイロット』や 『ハイパーオリンピック』といった爆発的な人気作品と呼べるものはなく、対する先輩メーカーのナムコは『ドルアーガの塔』をタイトーはLDゲームの『忍者ハヤテ』など、 どれも大ヒットもしくはプレイヤーが度肝を抜くゲームを送り出している。 1985年に、一気にゲームメーカーの代表的存在に名乗り出るが、まだこの時は雌伏の時であったようだ。


FCへの移植版は、AC版の6ステージより2ステージ少ない4ステージで構成されている。 それ以外はAC版と指して換わらないものの、FC版と同年に移植されたMSX版は色こそFC版より落ちる一方ステージ数はAC版と同じなので、 移植に一長一短ある2つの機種版として、当時のプレイヤーはどの移植版がいいか悩んだのかもしれない。 現在では、FC版はもちろんMSX版も手軽に遊ぶことができるので、ここでFC版とMSX版の違いを肌で感じてみるのも面白いと思う。

ルールは、コース中に現れる敵の車をよけながらゴールを目指すこと、それだけである。 ただし、順位の概念がなければタイムの概念もない(AC版には順位の概念はあるが、真の目的という点でたいした影響はない)このゲームでは、 ゴールを目指すことだけが目的であり他は一切いらないというシンプルがある。

だが、このゲームでは燃料という要素が存在していて、ゴールするまでに燃料が0になればゲームオーバーで、 最大100ある燃料が残り10を切ると警告音を発するあたり、擬似3Dレースとはまた違った緊張感を味わうことになる。

ギアをチェンジすれば、スピードは速くなるゆえに燃料の消費もLOWでは遅くHIでは早くなり、敵の車や後述する仕掛けにあわせて ギアのチェンジを行うという(押すボタンを変える)、擬似3Dレースにありがちな要素をこのゲームでも追加したことは面白い。

敵の車に当たるとスピンしてしまい、そのまま道路の両端にぶつかるとクラッシュしてしまい、そこから走りなおす上に燃料を大幅に消費するペナルティが与えられる。 トレーラーや看板にぶつかってもクラッシュ扱いで、通過するとスリップ扱いとなるオイルも道路両端にぶつかればクラッシュなので、 仕掛けの要素があるからこそ見下ろし型レースの地味な印象をある程度打ち消し、緊張感を高めることに一役買っている。

一応コナミ作品のこのゲーム、ある要素が任天堂の『F1レース』に似ている。 それが先に書いた燃料で、F1レースは制限時間内にコースを規定数回らなければならないが、燃料を制限時間に置き換えるとなんとなくわかりやすいような感じになる。

コース内にいくつかある、燃料補給の車をとれば残り燃料が少し増えるのだが、F1レースでは一周するごとに残り時間が少し増えるあたりも外見こそ違えど基本的なところは同じで、 クラッシュしてその間に無常にも時間が過ぎていくあたりも同じといえるが偶然だろう。


ところでこのゲームには、コナミ作品ではおなじみの隠しキャラが登場している。 走るだけで得点が加算されるゆえに、総合的な得点が低いこのゲームで隠しキャラの存在は、多少なりともありがたい存在だったことだろう。

80年代後半に、FCのコナミファンを沸かせたコナミマンは、このゲームで隠しキャラとして初登場しているのだが、 マスコットキャラや看板キャラが続々登場してくる他社を目の当たりにして、それらが全くないコナミはどこかしら危機感を感じたのだろうか。

燃料補給の車をとっても1000点ボーナスがつくし、FC版ではゴールした時点で残っている燃料の数値によって追加ボーナスが決まるが、 AC版のようにゴールするだけという最低目標を掲げながらも、ボーナスに敵の車を追い越したり順位が高かったりとなる(敵の車追い越しはFC版でも採用)ゆえに、 無理に対戦型のレースゲームを意識してしまった要素があったためか、万人向けのFCでは残り燃料だけがクリアボーナス扱いが妥当だと判断したのだろう。

さらに、AC版のように少ない燃料でゴールした場合の、次ステージで少ない燃料でやりくりしなければならないという不利もなくなり、 AC版よりマイルドに仕上がっているのがうれしいところ。

既にAC版をプレイした人にとっては、AC版のクリアボーナスも追加してもらいたかったのだろうが、一プレイの料金とカセットの値段とでは重さがかなり違うので、 そのあたりもコナミとしてはやむをえないところだったのだろうか。

グラフィックについては、都市、山道、海岸などはっきりと示されている上になかなかきれいで、車のほうも大きさこそ小さいもののきれいというよりやけにピカピカしていて、 普通の見下ろし型のレースゲームにまたひとつアクセントをつけたのだろうが、他の見下ろし型と比べれば確かにデザインの違いがはっきりとわかるというものだ。 それだけに、敵の車を避けつつゴールするのに忙しいあまり、きれいな背景を見る余裕がないのはあまりにも残念ではあるのだが。

FC版は、他のゲーム同様容量がかなり少ないにもかかわらずAC版に近いグラフィックを残しているが、これはAC版の2ステージを廃止したためのようで、 それがコナミがグラフィック重視を決めていたのかはわからないものの、FC初期にきれいなグラフィックが見られるのはうれしい。

地味なゲームながらも、仕掛けやきれいなグラフィックなどコナミなりにやっている部分があり、多少派手さを出してはいるがレース中にBGMが出ないという 初期のレースゲームにありがちな欠点もあり、やはり地味ということに変わりはないもののそれなりに楽しめるゲームではある。


このゲームは、いとこの家でかなりプレイしていたが主に私がFC本体を買う前後が、最もプレイしていたと思う。 何より、他のROMカセットと比べてコナミのROMカセットは形的に共感が持て、同社の『イー・アル・カンフー』や『グーニーズ』なども結構プレイしていた時期があり、 ディスクシステムはもちろん変わった形のカセットに入っているゲームをプレイしたくなるという、 ちょっと変わったクセは小さい頃から変わっていない(単にゲームを持っていないという事情もあるが)。

また、初めてレースゲームを体験できたソフトで、擬似3Dのほうはもう少し先になるがそれでもレースゲームというものをすぐ理解できた。

ゲームの内容も大体のところは理解していて、燃料を補給する車や燃料が0になる前にゴールすればいいということも理解できた。 しかし、ゴールを目指すあまり得点やギアについては当時全く理解できておらず、BがLOWでAがHIとスピードと消費する燃料の量の違いが、最近再びプレイしてからようやく気づくようになった。

得点については、敵の車を追い越せば得点増加になることなど知らなかったというより気づかなかっただけで、 燃料補給や隠しキャラの登場とゴール後の残り燃料からの得点については何度も見ていた。

他に気づかなかったといえば、BGMがレース中にならなかったことと車以外のグラフィックがきれいに見えたことで、 どちらも最近プレイしたことでようやく気づくことになったが、車についてはやけにピカピカしていてこのあたりコナミのセンスを感じると思うわけであり、 これも私がこのゲームをかつて長くプレイしたことと深くつながりがある。


なお、最近プレイしたのはレビューを書く一年前で、なんとなしに購入してみただけで昔の思い出がよみがえったのはレビューを書いている現在であり、 プレイするだけでなく当時の思い出を思い出してレビューを書いてみると、これほどまで忘れかけていたものが次々と出てくれるのは、 単に私が興味のあるものとないものが極端になりすぎて興味のあるものだけが強烈な印象を残しているだけに過ぎないと思う。

そもそも、当時はいとこの家でプレイしていただけであり自宅ではプレイいなかったし、時々行くいとこの家とそこでしかできないゲームの数々が、 私の記憶を強烈に埋め込んだといえるのかもしれない。

ただ、夢中のあまりゲームにある要素に気づいていなかったりうっかり忘れてしまったこともあり、 久々プレイしていて「ああ、こういうこともあったっけ。」と思い出しながら楽しんでいたし、クラッシュをやらかして悔しがっていた。

しかし、レビューするためにじっくりとプレイすることにしたが、見下ろし型のレースゲームでの地味さを垣間見たような気がした。 前年登場のF1レースでは、FC初のレースゲームながらもいきなり擬似3Dを出しているため、 FC登場から2番目のレースゲームそれも初の見下ろし型となるこのゲームは、グラフィックこそF1レースより上ではあるが雰囲気的にこちらが地味になっている。

それでも、敵の車とそれらがいやらしい動きをしてくれること、トレーラーやオイルといった仕掛けなどの要素によりこのゲームが地味であることを忘れてくれるのはよかったし、 敵の車をわざと追突させてクラッシュさせるというどうでもいいところにも面白かった。 どうでもいいが、プレイヤーの車を見るとどうしてもミニカーを思い浮かんでしまうのは私だけなのだろうか。



本日のまとめ



GOAL
(09/5/17レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年9月28日

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