◆アイスクライマー◆
任天堂初の面セレクト作品



(ROM版)発売日:1985年1月30日   発売元:任天堂   ジャンル:ACT
値段:4500円   おすすめ度:4(自由気ままにステージを攻略)
(Disk版)発売日:1988年11月18日   発売元:任天堂   Disk:(片面)
値段:500円(書き換え専用)


『マリオブラザーズ』以来の、2人同時プレイが可能なアクションゲーム(『アーバンチャンピオン』は格闘扱い)で、 2人同時プレイのゲームはいくつかあったがほとんどがスポーツゲームがテーブルゲームであり、通常アクションでの2人同時プレイのゲームというのは本当に久々だった。

2009年現在、発売から24年たった今でもこのゲームを昔から好意的に感じている人が多くいるほどである。 知名度こそ昔はあまり高くなかったが、『スマッシュブラザーズ』シリーズに出演したりと最近の任天堂作品に少しずつ顔を出すようになっていて、 最近はファミコンミニ版の登場などによりある程度上がっている。

シリーズ、それもある程度知名度が高くキャラについてもそれなりの知名度と任天堂のスタッフの愛がなければ出る機会は少ないのだが、 このゲームやその主役の登場頻度が多少なりともあるのはひとえに当時のファンの根強い人気があるといえるだろう。 それは、思わぬところに強く影響を残しているのだが、そのひとつが現在も続けられている安定した高さの販売だ。

FC初期の作品は、よほどのレアがない限りせいぜい高くて2000円近く程度しかならず多くが数百円単位で販売されているが、 このゲームについてはなんと3000円以上の値段で取引されていて、一時は定価以上の値段で取引されていた店もあったほどだ。

それだけ、ファミコンミニシリーズの第一弾にこの作品がラインナップされ、加えて2000円という安値で登場したのはファンとしてうれしいものがあり、 まさに根強いファンの期待があったからこそたった30作品しかラインナップできなかったファミコンミニシリーズにラインナップできたというものか (一方で、同じラインナップされていたスーパーマリオの相変わらずの人気に押されたのはご愛嬌)。

だが、2009年現在でも通販では3000円以上の高値で取引されており、ファミコンミニ版が発売されたにもかかわらず相変わらずの高値があるというのは、 改めて根強い人気があるものの下がる傾向がないというのは少々異常に感じる。

もっとも、書き換え専用のディスク版は7000円近くの高値がついているが、これは書き換え専用だからこそ高値がついているわけで、 『レッキングクルー』にしてもファミコンミニに移植されていながらかなりの高値がついていることもその証拠といえる。

書き換え専用ゲームは、高いところで一万以上というROM版で遊べるにもかかわらず高値がつけられている一方で、 4000円近く程度というROM版の定価より少々安めの値段で売られている場合もある(ナムコ作品の書き換え専用版は多くが4000円ほど)。 とはいえ、ディスクの書き換えが終了した今は今後も高値で推移するか、それ以上の値段で取引される可能性が高い。


このゲームのルールは、タイトルよろしく登山家となったプレイヤーがゲームの舞台となっている氷山の最上段まで上ればクリアになり、 後述する次のボーナスステージをこなさなくてもそこに入った時点でクリア扱いになっている。 登るという以上縦にスクロールするが、縦だけにスクロールするアクションゲームというのは珍しく、ACでは『忍者くん』が当時のゲームとして該当している。

そもそもFCの場合、スクロールするゲームというのはまだまだ珍しいもので、スクロールするといってもアクション系のみに考えた場合、 FC初となった『ロードランナー』はAC版やPC版では一画面だったのが、都合によりスクロールせざるを得なくなり、 『デビルワールド』は一画面を特殊ルール(デビルワールドのレビューを参照)でスクロールさせているに過ぎない。

したがって、『スクロールする=新しい場面に出会える』という解釈で考えれば、アイスクライマーがアクション初のスクロールする最初のゲームということになるだろう。


氷山を登るといっても、プレイヤーが所持するハンマーでフロアの間の壁を壊し、ついでにプレイヤーの登山を邪魔する敵を蹴散らしていかなければならないが、 その敵たちはゲームの雰囲気に合わせるようなのかなかなかかわいらしい。 だが、そんなかわいらしさとは裏腹にプレイヤーにいやらしい行動をしてくる。

トッピーは、追い払っても得点にならずせっかく壊した床を元通りにさせたり(運ぶ氷は高得点)、 『ドンキーコングJr.』からの客演となるニットピッカーはふらふらと飛んできながら隙を突いてプレイヤーに向かってきたり(触れたらミス)、 ホワイトベアはなかなか氷山を登らないプレイヤーに対して、画面を押し上げて画面下にいた場合にミスをさせたりしてくる。

登場する敵の種類はたった3つしかないが、どれも役割に応じた行動をしてくるので、複数現れたりタイミングによって別の種類の敵が登場するとこれほど厄介なものはない。

加えて、ステージが進むごとに登る氷山の仕掛けも厄介なものになり、高速移動するリフトや敵同様触れると1ミスするツララなど、 敵以上に複数登場しリフトの下にツララといった仕掛けを掛け合わせたものまでするあたり、敵も仕掛けも種類こそ容量の都合で少ないのだろう。 その代わりに、それらを複合させた仕掛けの登場は見事であるといえる。

ツララについては、真下でジャンプすれば削除できるのだがそれはハンマーを真上にかざしているためであり、 同様のやり方で倒せるニットピッカーについても普通に倒すよりは爽快だが、実際問題として少々タイミングが難しいので下にトッピーが控えていたらもうアウトなのがつらいところ。


そもそも、このゲームの主人公は操作それもジャンプに難があり、横移動するジャンプができないというより横移動の距離がかなり小さい。 つまり、リフトや次の上の床に移動しても移動するジャンプの量が極端に少ないため、他のアクションゲームなら軽々と乗れるのに対してこのゲームではそれができない。 おまけに、すべる床と合わさって足場に乗れないことが何度もあり、多くのプレイヤーはさぞ性能の低いジャンプ力を持った主人公にいらいらしたことだろう。

これは、ステージクリア後のボーナスステージにおいてかなり影響が出やすく、最初からある足場のほとんどがプレイヤーのジャンプの性能でぎりぎりで乗れる位置にある。

しかも、山頂付近はステージによってジャンプの性能をもってしてでも極端に届きにくい場所があり、登る途中でミスして落ちてしまうのはともかく山頂付近にようやくたどり着いたのに、 もう届かない足場があるというのはボーナスポイントをプレイヤーに拒んでいるとしか思えない。

もっとも、ボーナスステージでの高得点ボーナスは山頂で飛んでいるコンドルにつかまって、初めてステージでのボーナスとボーナスステージで取ったアイテムと倒した敵の数、 トッピーの氷を壊した数と床のブロックを壊した数の合計で決まるもの。

山頂に到達しても、コンドルにつかまらなければそのときのボーナス得点は入らず、加えて時間制限もありタイムアップの場合もボーナスステージで通常ステージ同様落ちてしまった場合同様 ボーナス得点が入らないので、別にミスしてもゲームに関係ないとはいえ時間制限でつい夢中になってしまうのは、プレイヤーの心をくすぐる任天堂の思惑が当たったといえるだろう。

ちなみに、ボーナスアイテムは最初は得点が500だが一ステージクリアしていくごとに500点ずつ増えていき、10ステージクリア以降はアイテムひとつにつき5000点となる。

ボーナスステージの難易度を考慮すれば妥当な得点インフレだろうが、この後の得点のインフレそれもSTGのみならず他のジャンルにまで得点のインフレが巻き起こっているあたり、 ある意味このゲームがそのあおりを最初に受けた感じが見受けられる。

そのボーナスステージアイテムは野菜だが、デザインのチョイスに野菜選ばれた理由はわからないものの、舞台の大本であるアラスカは食物が育てられない場所で、 にもかかわらず果物ではなく野菜が選ばれたのはボーナスアイテムのデザイン的に、果物よりも野菜のほうが新鮮味があると思ったのだろうか(得点デザインには果物のほうが多い)。


実のところ、1Pだけだとあまり面白みが少ないゲームだが、このゲームの本当に面白いところは実は2人同時プレイではないだろうか。 このゲームも、『マリオブラザーズ』同様2通りの遊びが用意されていて、助け合いながら一緒に山頂を登っていくものと、 弱肉強食よろしくどちらかが早く山頂まで登れるか競争するもので、後者は先述の通り画面下に下がるとミス扱い(落とし穴扱いとなる)になる。

協力できるといっても、一定時間同じ画面に居座るとホワイトベアによって画面を押し下げる以上、いくら協力して一緒に山を登ろうときれいごとを言っても、 結局はホワイトベアのためにどうしても協力より対戦がメインとなりがちだ。

ただ、簡単なステージや2人のプレイヤーの腕の差が極端でない場合は、協力プレイでもホワイトベアの妨害を受けないこともあるので、まだまだ対戦特化のゲームとはいえない。 そもそも、相手を妨害することができず自分で先に登って相手を追い越すあたりは、妨害というより単なるテクニックの差が出ただけに過ぎない。

とはいえ、ボーナスステージ山頂のコンドルに捕まるのは必ず一人だけなので、ステージごとに譲り合いながらつかまるのはともかく多くはどちらかつかまれるか競争になるだろう。 ある意味、協力と対戦の2通りの2人同時プレイはできるが、対戦の意味合いが強い2人同時プレイといったほうがわかりやすいと思う。

しかし、最初から全32ステージ選択できるこのゲームでは、いきなり難しいステージから2人同時プレイするのもありで、もちろん一人でプレイして攻略してみるのもありだ。 このシステム、任天堂では初の試みで『ナッツ&ミルク』や『ロードランナー』のように、ステージこそ多くないが2人同時プレイという大きなアドバンテージを手にしているアイスクライマーは、 遊びのバリエーションが先の2つよりも多いというわけだ。

このステージセレクト制は、『レッキングクルー』に受け継がれていくものの2人同時プレイができないレッキングクルーより、アイスクライマーのほうがまだまだ遊びの範囲が多い。

少ない敵と少ない仕掛けがありながらも、専用に特化させてさらにそれを組み合わせつつ難易度を上昇させ、2人同時プレイでも2通りの遊び方があれどその遊び方にも細かいものがあるので、 性能が悪いジャンプに目をつむれば面白い作品であることは事実。

ディスク版では、いろいろと変更点が加えられているのだがこれは別のところで述べたい。 それくらい2つのソフトの内容が違うが、現在ではROM版しかプレイの機会がないのが残念だ。


このゲームは、小さい頃小学校時代に友達の家で、かなりプレイした記憶が残っている。 2人同時プレイした記憶も残っているが、それが協力だったのか対戦だったのかあいまいになっているが、 よもやあの友達が対戦扱いで昔からゲームの腕があまりない私を差し置いて自分だけ頂上を目指したとは考えにくい。

ただ、画面を下に押し下げるホワイトベアにトラウマを感じていたことははっきり覚えていて、思わず友達が苦戦しているところを差し置いて自分だけ頂上を目指してしまい、 友達を1ミスさせてしまったことは覚えている。

そのくらい夢中になっていったが、数年後に古いゲームにあまり興味を持たなくなり、新しい友達と交友関係を築いてから当時の友達との交流は途絶えてしまったが、 プレイしたゲームの興奮は忘れるはずもなかった。

大学時代、お金がある程度自由になった頃に一人暮らしをしていたアパートの近くにある中古ゲームショップに、そのゲームは売っていた。 しかし、他の中古ソフトが数百円から2千円近くの値段で売っていたのに対して、アイスクライマーは中古ながら3800円ほどで売られていたため買うことができず、 ようやくプレイできたのもファミコンミニ版を買った2004年頃だった。

もちろん定価よりは安いが、発売してから十数年たっているにもかかわらずこの高値というのは意外で、 購入したファミコンミニ版は2000円とFC版のほぼ半額というのがうれしく、飽きるまで散々やりつくした。

もっとも、レビューを書く以上ROM版やついでにディスク版を買ってプレイするわけにはいかず、 ディスク版についてはいとこでも持っていなかったためROM版はともかくディスク版は通販で取り寄せたが、7000円というのは書き換え専用とはいえいくらなんでも高すぎではないかと思った。


FC版のみで考えると、実に23年の歳月を経てプレイすることになったが、既にファミコンミニ版を散々やりつくしたので特別な感情はなかった。 あるとすれば、ROM版とディスク版をレビューのためだけに合計約一万円という大金で購入した感情で、 かつてファミコンロボットや光線銃シリーズなど大金払ったことは何度かあったが、たった(というほどではないが)一万程度で苦笑するあたり 昔のことなど感覚的に忘れていたのかもしれない(こういうことをやったのもほとんど3年前だったから)。

久々にプレイした感想は、マリオブラザーズのマリオ&ルイージより劣るジャンプの横移動が相当苦労したことで、 ボーナスステージはもちろん普通にクリアを目指すときもジャンプの横移動の低さのためかなりいらいらしていた。

一方で、内心あせりつつもいつの間にかのめりこんでいたが、これは小さい頃に味わったホワイトベアのトラウマが大きかった。 加えて、ニットピッカーのいやらしい動きやトッピーの床を修復する早さも厄介で、さすが敵の種類が少ないのに役割をしっかりやっているなと私をうならせたが、 それと同じくつららや高速に移動するリフトなどの仕掛けも厄介だった。

ファミコンミニで散々やりつくしているのに、元となったFC版でも思わず夢中になれたのは元々このゲームが面白かったためで、 そうでなければ24年たった今でも中古で3000円以上という値段がつけられるわけがない。

『エキサイトバイク』や『ロードランナー』など、私が昔散々遊びつくしているのに現在になってもつい夢中で遊んでしまうのは、 昔のゲームは性能よりも面白さを優先してプレイヤーを楽しませていたのかもしれない。 だからこそ、ジャンプの性能の低さに泣かされた私がディスク版で思わずほっとしたのだが、これについては別のところで書きたい。



本日のまとめ



WINNER BONUS!
(09/5/2レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年8月21日

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