◆レッキングクルー◆
エキサイトバイクに続くエディット搭載



(ROM版)発売日:1985年6月15日   発売元:任天堂   ジャンル:ACT
値段:5500円   おすすめ度:3.5(パズル感覚と相変わらず熱いエディット)
1989年2月3日   発売元:任天堂   Disk:片面
値段:500円(書き換え専用)


マリオ登場作品のひとつで、『マリオブラザーズ』以来のルイージとの出演作品である。 今作といえば、FCで人気があったと同時に2004年のファミコンミニシリーズの第2弾としてラインナップされ、知名度もそれなりにある作品だ。 というより、『スーパーマリオブラザーズ』登場まで任天堂の人気を、他の作品とともに支えてきたファミコンソフトというべきか。

しかし、元々は任天堂のAC作品の『VS.システム』シリーズの作品のひとつとして登場した作品であって、FC版はAC版の移植に過ぎない。 そもそも、このゲームが登場したのはFC版登場の前年であったが、VS.システムはFC版の移植およびFC版からの逆移植を前提として製作されているため、 スペックがFC本体とほぼ同じなのは当然といえる。

VS.システムについては、『バルーンファイト』や『アーバンチャンピオン』のレビューで既にある程度記述しているが、 FC本体と同様のスペックを持つVS.システムから移植されたにもかかわらず、その多くがAC版そのままに移植されていないのはまだFCソフトの多くが、 本体の機能を最大限に生かしておらず最大8Mの容量が持てるといってもそれが実現できるのは1991年まで待たなければならなかった。

VS.システム作品において、ROM版で導入できなかった要素はDisk版に入っており、この頃には本体のスペックを多く生かすソフトが数多く登場し、 VS.システムの作品や一昔の作品ならFC登場から数年後にほぼ完全に再現されている。

とはいえ、『ドンキーコング』や『ゼビウス』などAC版の要素を再現していない移植作品もFC黎明期にはあったが、 ACの人気作品が家で遊べることは今も昔もとてもうれしいもので、こういった移植作品がFCを支えっていったのもまた事実。

VS.システムからの移植作品も、移植という事実が当時ほとんど伝わらずさながらFC作品となっていたが、 どちらも人気があったあたり他のAC作品同様に外部からFCを支えていったのは事実といえるだろう。

今回紹介する『レッキングクルー』も、他のVS.システム発作品の例に漏れず一部AC版に反映されていない要素がひとつある。 一方で、FC版ならではの要素をひとつ追加していて、AC版にあった要素が削除された分AC版とFC版は、 外見こそ似ているようでプレイスタイルはまるっきり違っているが、これらについては後ほど説明をしたい。

なお、このゲームも後述するFC版の要素を強化したDisk版が登場しているが、 ディスクゲームの需要を考えるとDisk版より一部の要素の性能が上がったファミコンミニ版のほうがいいだろう。


プレイヤーは、ビル解体業のマリオになってステージにうろつく(マリオに向かっていく)敵を避けながら、ステージ中の破壊物をハンマーで全て壊すこと。 破壊物によっては、最大3回ハンマーで叩かなければ壊せないものもあるが、爆弾を叩いて爆破すれば爆弾と同じ位置の段にある破壊物は叩いた回数が1加算される。 すなわち、あと1回ハンマーで叩けば壊せる状態の破壊物が数個あった場合、爆弾で壊せばコンボボーナスの高得点に加えてまとめて破壊という爽快感がやってくる。

このルールは、AC版やFC版ともに同じだがプレイの快感は2つとも違っている。 それは、AC版では2人同時プレイができるのに対してFC版はそれができないことであり、FC版でも2人プレイができるといっても それは1Pがミスした後に2Pがプレイするというものでしかなく、2Pのルイージにとって1Pがゲームのうまい人だった場合はさぞもどかしかったことだろう。 AC版は、協力プレイでステージをクリアするのが普通になっているが、相方にハンマーをぶつけて動けなくして敵に触れさせて1ミスを狙うという、対戦に似た楽しみ方もある。

これは『デビルワールド』のように、こちらの攻撃が相方に当たって動けなくなった相方が敵に触れるなどしてミスになる場合と似ている。 だが、デビルワールドは攻撃が遠距離ゆえに敵を倒す役割をしていて、うっかりクリア目的を達成しようとしている相手に当たってしまうという故意な部分がある。

レッキングクルーの場合はハンマーで敵を追い払い相方が障害物を壊す役割を演じている関係上、敵を追い払おうとしてうっかりに相方に当たることは考えにくく、 得点を稼ぐためにわざと相方を攻撃して邪魔者を消そうとするあたりは、『マリオブラザーズ』のように協力と対戦の2つのプレイを可能にしているといえるのかもしれない。


さてFC版、実質一人プレイしかできなくなったためにもはや協力・対戦とは無縁となり、一人でこのゲームを黙々とクリアしなければならなくなったわけだが、 それがゆえにプレイスタイルがまるっきりAC版と異なっている。

それは、FC版がパズル感覚でプレイしなければならなくなったことで、協力のようにほぼ適当に障害物を壊すわけにはいかなくなり(それ以前にAC版は手詰まりはない)、 そうしてしまったら手詰まりを起こす危険もあるので、1ミス扱いにしてでもリトライを用意してもらいたかった。

爆弾を爆破して、特定条件で隠しキャラを出したり硬い壁を一撃で壊すゴールデンハンマーを入手しても、 詰んでしまったらどうにもならずゴールデンハンマー入手のBGMがノリノリだからこそ、リセットを押さざるを得ない状況になるとそれが逆にむなしくなる。 したがって、どこから壊していけばいいのかプレイヤーの腕の見せ所であり、同時に協力プレイと違って敵を欺きながらいかに手早く障害物を壊していくかもやりがいがある。

何しろ、本来敵を閉じ込めるドラム缶(柱の上に乗っていて、柱を壊すと落ちてくる)に自分がはまってしまうと、敵や一定時間後に出てくる炎に触れてもミスにはならない。 当然こちらも動けないので、実質タイム制限がないこのゲームでは明らかに『詰み』であり、この展開もFC版がパズル要素を多分に含んでいるといえるだろう。

ある意味、敵に追い詰められてミスする場合よりも悲惨で(やり直しがきかず、リセットするしかない)、敵についてはステージ内の扉を開けて敵を入れて、 最終的にまとめて閉じ込めれば一定時間行動不能にできるため、これもパズル要素を強くしたひとつであると同時に、コンボボーナス同様に一度決まれば何かとうれしい気分にさせてくれる。 ただ、FC版では『アイスクライマー』や『ナッツ&ミルク』などのようにステージを選べるので、リセットしても実質コンテニューで気軽に再挑戦できるのはうれしい。


ボーナスステージは、マリオに似たスタイルの男とどの障害物にコインがあるか見つけるための対戦をして、こちら側が先にとればボーナスが加算されるあたり、 FC版では失っていたはずの対戦の要素がここで若干現れてきたといえる。

ボーナスステージで対戦する男、この男の名前はブラッキーでマリオが登場する初のライバルキャラで、現在のライバルキャラのワリオに近い存在といえるだろう。 それ以前に、『ドンキーコング』でドンキーコングというライバルに近い存在はいたがあくまで動物なので、人としての初のライバルキャラはこのブラッキーに該当する。 しかし、このゲーム発売から3ヵ月後にマリオシリーズ最大のライバルクッパが登場したため、彼の知名度はすっかり落ちてしまったのはなんとも悲しい。

似たようなライバルに『スーパーマリオランド』シリーズのタタンガがいいて、マリオランドシリーズ以降まったく音沙汰がないというのも悲しいもので、ある意味ブラッキーより悲惨かもしれない。 というのは、ブラッキーは後述するリメイク版に再登場し、他の作品にも登場しているため昔を知る人にとっては知名度はあるのではないだろうか。

確かに、マリオ出演作品のキャラの中ではマイナーではあるものの、『デビルワールド』のデビルや『ドンキーコング3』のスタンリーなどといった 初期の任天堂作品のキャラもいるので、全体的にはブラッキーは多少なりとも日の目は見れているのかもしれない。 もっとも、ブラッキーともタタンガともシリーズの特定作品のキャラという意味合いが強く、しかも昔の作品ゆえに後年の任天堂キャラ総出演作品に出演する機会を失った不幸があるだろう。

なお、ライバルキャラといってもこのゲームではあくまでお邪魔キャラであり、先のボーナスステージはもちろんいくつかのステージでは プレイヤーが練っている破壊物取り壊しのプランをことごとく妨害している(壊そうとしたものを先に壊されているなど)。 したがって、ボーナスステージこそライバルの雰囲気があるが通常ステージでの行為を見ると、あまりライバルという感じがしない。

だが、爆弾をまったく壊さなかったりこちらのハンマーや爆弾の爆発に巻き込まれて動けなくなったり、リスクが高い場所のものを壊してくれたりと決してお邪魔キャラとは言えず、 お邪魔キャラにライバルやお助けキャラの要素を含めた何かの存在といえるのかもしれない。


最後に、初期のFCならではの要素エディットモードについて書いておきたい。 エディットモード自体、既に『エキサイトバイク』のレビューでも書いてあるのだがステージを製作できるというもので、 ロードランナーのようにクリアに関係ないステージを作る意味合いが強く、はしご壁だらけにして一気にコンボボーナスを狙うステージを作るのも面白い。

しかも、最大4ステージまで自由にステージを作るのが可能で、たった4ステージといってもひとつのゲームに一つしかステージを作れなかったソフトと比べて、 4つのステージが自分の手で作れてそれもプレイできるというのは一部のやりこみプレイヤーにはうれしいものだ。

もっとも、初期のステージ製作ソフトゆえにファミリーベーシック専用のデータレコーダーが必要だが、4ステージのデータをひとつのカセットに保存できるあたりは、 製作と外部データ保存の両方可能にした初期ソフトの限界をあらわしているといえる。

AC版とFC版、全体的にほぼ同じ雰囲気があるのにプレイスタイルの違いで、これほどまでに遊びがってが違うゲームというのは珍しい。 ディスク版にしても、データを自由に保存できる一方書き換え専用ゆえに、通販の場合値段が1万近くと高すぎるし数もその分少ない。 ただ、ファミコンミニ版は入手しやすい上にステージのデータ保存ができるので、それで懐かしみながらステージを作ったり100のステージをクリアしてみるのも面白いだろう。


このゲームを知ったのは、当時のてれびくんだったがそれがファミコン特集のひとつに掲載されていたのか、 それともファミコン関連の付録(主に下敷き)として載っていなかったか詳しいことは忘れてしまった。

しかし、ファミコン関連雑誌がほとんどなかった(まだファミコンが国民的機種ではなかったので)時期にてれびくんのように、 ファミコンを大体的に特集してくれる児童雑誌というのは、今を考えればとてもありがたかった。

もっとも、てれびくんしか読んでいなかったからライバル雑誌のテレビマガジンが同じ頃ファミコン特集をやっていたのかわかっていないが、 当時のコロコロコミックヤコミックボンボンの状況を考えると小学館のほうがファミコンに対して積極的に取り上げていたと思う。

というより、電子ゲームを数年前から特集していた小学館とガンプラを特集していた講談社を比べれば、どちらかがコンピューターゲームの特集をかなり組んでいたのかよくわかるはずだろうが。

存在を知ってから19年後の5月、ファミコンミニの第3弾にこのゲームがラインナップされていたが、『がんばれゴエモン』以外買わなかった。 全て、FC版ではコンテニューやセーブ機能がなかったが、ゴエモンがやたらクリア時間が長くファミコンミニ版を買わなければと思っていたのに対して、 他はFC版で代用が聞くと同時にわざわざファミコンミニを買うほどでもないと思っていた。

とはいえ、翌年にファミコンミニ版を定価より安値で購入しレビュー開始から数ヶ月前にはFC版も購入、ディスク版はいとこからもらった。 だが、買ったのはよかったがプレイについてはどちらもレビューから数ヶ月前であり、なぜかプレイする気は起きなかった。


さて、このゲームをROM版・ディスク版ともに初めてプレイした感想は、2人同時プレイができずそれができるAC版の存在はレビューを書く前の年に知ってはいたが、 いまだFC版をプレイしていなかった分驚きは大きかった。

もっとも、2人同時プレイにしてもプレイする友達がいないのでどうでもいいのだが、 手詰まりがないAC版はプレイしたいと思った(AC版は2人同時プレイ専用なのでプレイする以前にどうすることもできない)。

そんなパズル要素が強いFC版は、どういう形でプレイもといクリアしていくのかすぐにわかったし、 いきなり手詰まりを起こしてもタイトル画面でのステージセレクトがあるので、同じ要素があるアイスクライマーやナッツ&ミルク同様に気軽にプレイできるのがよかったし、 ファミコンゲームだから得点がどう増えようがあくまでFCのROM版なので一度電源を切れば、記録された最高得点も消えるから一時的な自慢にはなるが、 STGならともかくアクション系だとよほどのものがない限り意味はないかと思っている。

エディットモードについては、4つの専用ステージを繰り返しプレイするのだが、ロードランナーの金塊だらけのステージ同様はしご壁だけのステージにすることで、 最初こそ楽しめたがやはり普通のステージと比べると単なる自己満足でしかなく、昔ロードランナーでやったことを思い出しながら何子供みたいなことをやって喜んでいるのかと、後で考えたら何か恥ずかしくなってしまった。

ところで、このゲームに出てくる敵の中でやはりブラッキーがお邪魔キャラという感じで、詰む危険のあるステージでブラッキーにハンマーで叩き落された挙句、 結果的に詰んだ状態になった時は正直殺意を覚えた。

爆弾や柱を壊さないものの、柱においてはその上にドラム缶が乗っていてその柱を壊されてドラム缶をかぶってしまったらと思うとぞっとするわけだが、 一方で手が届かない場所のものを壊してくれたりと早いクリアに役に立つ。 そんな中途半端なキャラなのだろうか、徹底的に邪魔するマリオのライバルキャラと比べてもどうもライバルという感じがあまりしない。



本日のまとめ



MARIO FOUND THE COIN!
(09/4/27レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年8月17日

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