◆エキサイトバイク◆
FC初のバイクレース



発売日:1984年11月30日   発売元:任天堂   ジャンル:レース
値段:5500円   オススメ度:4.5(やはりコースエディットが熱い)


『F1レース』に続く、任天堂のレースゲーム第2弾にして、FC初のバイクレースでもある。 また、12月を待たずに84年最後のソフトとなってしまったが、前年の状況(FCが7月に誕生)を考えれば仕方がないことか。

バイクレースといっても正確にはモトクロスゲームなのだが、モトクロスを主題としたゲームは少ない上にF1や普通のバイクのレースなど色々題材がある以上、 この作品も(これ以前にレビューしたF1レースも含む)ひっくるめてレースゲームというジャンルでレビューしたい。

さてこのゲーム、2Dそれもサイドビュー型のFCにおいて初めてのレースゲームであることも書いておきたい(F1レースは擬似3D)。 そもそも、その手のレースゲームというのは今はもちろん昔を考えてもほとんどなく、見下ろし型と3Dの2つがレースゲームの主流である。

後者は、『ポールポジション』に代表されるように臨場感あふれるもの、前者はエレメカ時代から続いているもの (後者もごくわずかながらエレメカのものが存在していた)でどちらもサイドビュー型より豊富である。

見下ろし型が安定した人気を得ていて、3Dも擬似のものを含めて生まれてそれほどでないものの着実に力をつけつつあった中で、 サイドビュー型のレースゲームが登場するあたりFC初期それも色々試したい時期だからこそ、その手の方式において名作や良作が生まれた一方で、 2009年現在その方式を用いたレースゲームの良作が誕生していない。

サイドビュー型も、時が経てば見下ろし型や3D同様の良作が多く出るはずだったが、この方式は3種類の方式の中で一番遅く登場したために、 人気という点で他の2つの方式に出遅れた感じが否めない。

しかも、SFC初のレースゲーム『F−ZERO』はいきなり3Dで、FC後期のレースゲームにしても3Dを採用するレースゲームが多く、 ゲームの技術が日進月歩であったがためにサイドビュー型が実力を出す機会を失ったようだ(ミニゲームとしてのものはあるが)。

もっとも、見下ろし型も視点が違うだけだったが、先述したように見下ろし型が早くゲームに登場したため、 見下ろし型が有利に人気を安定させ3Dが徐々に家庭用ハードに浸透していく時期でも、いくらかゲームを供給していた。

それだけ、任天堂のチャレンジ精神は初期において光線銃などの周辺機器のみならず、当時あまり関心がなかったジャンルや安定したジャンルでも プレイスタイルなどが特殊なものを手がけたりと、FCの生みの親という意識で色々挑戦してきたのだろう。 それが、結果的に名作と呼ばれたり人気がなくとも強烈なインパクトで、一部のユーザーの記憶の片隅に植えつけている。


このゲームも、モードが他の初期任天堂作品同様AとBと2つあるが、このゲームにおいてAは一人走るものでBは複数の走者とともに走るものになっているくらいの違いで、 Bモードは複数の走者とともに走るため他の初期任天堂作品同様に、難易度が高くなっている感じがある。

何しろ、最初に走った他の走者以外にも後からやってくる走者も登場し、Aモードのように一人で走るために他の走者のことなど一切気にしなくていいものと違って、 次から次へと出る走者への対処を考えなければならないのだから。

別の走者にぶつかれば、転倒してタイムをロスすることもあり逆に相手を転倒させても、このゲームは自分の出したタイムで順位が決まるため、 演出的には面白いがクリア上全く意味がないし、走者が勝手に転倒することも多い。

加えて、このゲームでは最低3位までランクインしなければゲームオーバーになるので、サイドビュー型でもレースゲームの緊張感を十分に出している。 早い話、3位まで入れば次のステージに進めるが、プレイヤーならばぜひ一位通過で次のステージを目指してもらいたいところだ。

それ以外ABとも違いはなく、2つのモードの共通点としてもう2つあるくらいだ。 ひとつが画面中央下のメーターの存在で、ターボを使って走れば走るほどメーターが下がり最終的にはオーバーヒートになり一定時間動けなくなる。 このあたりがこのゲームの面白さのひとつで、突っ走れば突っ走るほど後で苦労することになり、いかにしてオーバーヒートさせずにクリアを目指すかこのゲームの肝となっている。


一応、コースにはいくつかターボを回復させる装置(クールゾーン)があり、それを通過することで一定量のターボが回復するが、 後述する仕掛けとクールゾーンの位置ゆえにうっかり通過しそこなうこともあり、これもメーター同様に気をつけなければならないという点で評価できる。

このゲーム、走者は関係なくゴールしたタイムに応じて順位が決まる仕組みになっているので、このシステムならあと少しでオーバーヒートになるという緊張感と、 それを出さないためメーターを注視していたらいつの間にかのめりこんでいたという手法は、さすが任天堂だといえよう。

バイクが転倒しボタン連打で復帰(選手の走る速さが、ボタンの連打で速くなる)することも、 メーターの注視同様にプレイヤーをゲームにのめりこませる要因のひとつになっていて、目的がクリアタイムだけだからこそ成功したわけだ。

なお、メーターを長く持続させターボをそれだけ使いたいために、ターボボタン(Bボタン)を連打して消費を抑えつつスピードを維持する裏技が登場した。

ボタンを一瞬だけ押すと、消費が目に見えないごくわずかな分それに見合った距離しか走れないが、ちりも積もれば何とやらで連打すれば連打するほど同じ走行距離において 普通にターボを使った場合、連打したほうが格段にメーターの消費を抑えられるので、できるだけよい成績を残したい人にとっては朗報であったことは当然で、この裏技発見以降は連打する人が続出したほど。

後に、た連射パッドの登場以降こちらが主流となったのは予想できる。 確かに、連射パッドを使用したほうが楽することができるが、使わないほうが苦労が大きくなる分それの達成感は苦労に比例するといえる。

キャラバンシリーズでは、『スターフォース』以降STGで連打が主流となってはいたが、連打を当時の主流にさせたSTGをした人で、このゲームを既にプレイした人にとってどう感じたのか。

ちなみに、スタート直後や転倒後の再開で連打しても走れず、最初に走ってから連打したほうがプレイしやすいものの、連打していってもいずれオーバーヒートになってしまう。 結局は、連射せずにいかに普通にプレイして高記録を叩き出すかにかかっているといえるだろう。


実際問題として、このゲームの高記録を叩き出すための攻略として、前述のようにオーバーヒートにならないよう気をつけること、 メーターの消費を抑えるためにボタンの連打をすることと他の車両に気をつけることの2つがあるが、さらにもうひとつは仕掛けの特徴に気をつけること。

モトクロスゲームにおいて、他の車両同様に気をつけなければならない要素である一方で、プレイする側としてなかなか楽しめる要素でもある。 ジャンプ台で、高くジャンプして走行距離稼げる一方でコース変更ができず、うっかり小さい坂にぶつかり転倒したり沼にはまってスピードが減退することもあるので、 今のような天国から地獄もあればオーバーヒートが迫ってきた中でのクールゾーン登場の逆パターンは、タイム同様プレイヤーをはらはらどきどきさせる要素のひとつとして評価したいぐらいだ。

実はこのゲーム、当時は好タイムを作るより仕掛けを利用して楽しくプレイするのが通だったようで、タイムを競うのが主流の現在ではあまり考えられないことである。 理由はただひとつ、いくら好タイムを叩き出してもこのゲームにはそれに対するセーブ機能がないためで、せっかく出しても電源を切ればその記録は消去される運命にあるのだから。

ちなみにこのゲーム、プレイできるステージは5まででステージ5をクリアすると、同じステージでクリアするために必要な周回数が増えていく。 あるモードではセーブ機能がついているものの、バッテリーバックアップが登場していない当時では、このモードもやはり電源をいれば自分の足跡が消えてしまうのだ。

そのモードがデザインモードで、一言で言うとコースを自分の思いのままに作ることができるという、ハドソンの『ナッル&ミルク』や『ロードランナー』における プレイヤーの意欲を注がれる内容で、レースゲームでは初の試みというよりFC初期だからこそ自由にデザインを作れたわけだ。

たとえば、クールゾーンやジャンプ台だらけにしたり坂を多くして上り下りを楽しんだりできると同時に、難しいコースを製作しどれだけ高記録を作れるかという玄人好みの製作もありだ。 なお、ハドソン系のような十字キーで仕掛けを決めるのではなく、アルファベットで仕掛けを選択しボタンでコースの距離を設定するというもので、 サイドビュー型のレースゲームならではのコース製作を示した一方で、選択しなければどの仕掛けがどのアルファベットに組み込まれているかわからず、ハドソンとは違ったゲーム製作の方向性を打ち出したといえる。


今作発売から5ヶ月前、プログラミングと単純なゲーム製作ができる『ファミリーベーシック』が登場したが、ファミリーベーシックの開発にはハドソンとシャープがかかわっていたし、 特にハドソンはその翌月にFC参入を果たしていることから、エキサイトバイクのデザインモードはファミリーベーシックでの経験が生きた証といえるのかもしれない。

そもそも、ステージ製作はナッツ&ミルクを除いてゲーム攻略に一切関係がないため、肩の力を抜いて製作やプレイを楽しめることができるのだから。 もっとも、自分の作ったコースを保存したければファミリーベーシックのデータレコーダーを使用しなければならず、コース製作が真剣より遊びに走ったことは想像できよう。

現在では、ファミコンミニ版でコースのタイムの記録はもちろん、デザインモードで製作したコースも保存することができるものの、 FC版同様保存できるのはひとつだけだったり(データーレコーダーのようにテープの数だけ保存することができない)、 なにより自分で製作したコースやスタッフが用意してくれたコースを2人同時に対戦することができない。

もともと、この手の白熱するゲームでは対戦がふさわしいのだが、そこまで採用できるほど容量が足らなかったのかゲームの内容が一人プレイ向けだったのかはわからない。 ただ、AC版やディスク版で対戦ができるあたりは容量の都合の可能性が大きく、何よりディスク版でAC版の移植が登場した時は当時のプレイヤーはさぞ喜んだことだろう。


ファミコンミニ版を購入するまでは、このゲームに触れることは少なかったというより金が自由になる頃でも買わなかったので、 結果的に小さい頃いとこの家でプレイした程度しかなかったが、意外にもこのゲームに対する記憶や印象は深かった。

そうでなければ、ファミコンミニシリーズの登場で『アイスクライマー』、『ゼルダの伝説1』とともに買うことはなく(スーパーマリオは売り切れで買えなかった)、 GBAでこのゲームを久々にプレイした時は懐かしさと昔の興奮がよみがえってきた。

懐かしさは、いつも愛用しているゲーム雑誌の発売の頃(2003年)からで、このゲームが紹介されているページを見た時かつていとこの家で色々とプレイした記憶がよみがえってきた。

レビューでも書いているが、このゲームは一人で走ったり複数のCPUと一緒に走ったり、さらにコースを作って自分で楽しむことができるが、 複数のCPUと一緒に走ったのは一度だけで、やたら来る走者が走行を邪魔された結果次ステージクリアタイムに満たしていなかったため、 ゲームオーバーという屈辱を最初のステージで味わったことでこのゲームをレビューするまでやっていなかった。

主に一人で走るモードをプレイしていたが、デザインモードは何回かやっていてロードランナーのようにステージを作って楽しむものだとわかった時は、 普通にコースを作って挑戦するよりひとつの仕掛けを連続して設置してコースを作り、そのコースを走るのだから普通に新記録を目指すよりそれは度外視してコースを楽しむことに夢中になっていた。

ちなみに、最初はクールゾーンだらけにしてターボを使いっぱなしで遊んでいたが、ジャンプ台を連続で設置してから高くジャンプすると同時に一気にスピードが上がり、一種の快感を感じた。 このゲームの懐かしさに再び触れた先の雑誌に書いてあったが、「子供の泥遊びみたいに、でこぼこで泥だらけのコースをぴょんぴょん はね荒馬のようなバイクを乗りこなす、ロデオ感覚を楽しむゲーム」とあることから、確かに昔はそんな感じでプレイしていたなと思っていた。


それから現在、FC版をカセットで200円購入したのだが、あくまでFC版をプレイしなければこのゲームをレビューしたことにはならず、 箱と説明書を買わなかったのは説明書がファミコンミニのものが保存してあったので、わざわざ説明書を買う必要がなかった。

だが、ある程度の操作を覚えていたつもりでプレイしたためにターボで走ることをすっかり忘れてしまったので、次ステージぎりぎりで滑り込んだことが 2ステージまでありターボで走ったらあっさりと新記録達成したことから、昔F1レースをプレイした時ターボを使わずに最初のコースでゲームオーバーになった経験がまったく生かされていない事実を思い知らされた。

この後は、複数のCPU走者で走るBモードをプレイしてそれなりに結果を出したり、デザインモードで昔同様にジャンプ台だけのコースを作ったり、 それが飽きたら本格的なコースを作って挑戦したりと色々やった。

走るにおいて、メーターにいつも気を使うことが多くやはり昔同様につい夢中になってしまうが、そのメーターについて連打でメータの消費を抑える裏技など知らなかったので、 それを知って実行した時は新記録連発でうれしかったものの、連射パッドでプレイしていたからスタートしたり転倒して再開してもぜんぜん走ってくれなかったので、 このゲームだけ楽して記録を作るのはいけないことなのかとつい思ってしまった。



本日のまとめ



IT’S A NEW RECORD!

(09/4/17レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年8月2日
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