◆キン肉マン マッスルタッグマッチ◆
サードパーティー初の版権ソフト



発売日:1985年11月8日   発売元:バンダイ   ジャンル:プロレス
値段:4900円   オススメ度:3.5(大逆転が熱い必殺技の数々)


サードパーティー初の版権作品のFCソフトで、発売元も昔からアニメや特撮と関わりの深いバンダイである。 当然、バンダイ初のFCソフトであり版権を題材にしたソフトで、いきなり100万本の売り上げを達成した作品でもある。

元々バンダイは、そういった作品の玩具(特にガンプラ)などを販売していたわけだが、 1983年から同じバンダイグループで超合金シリーズなどで評判が高かったポピーを吸収して、名実共に玩具界を代表する会社になっていった。

それゆえ、FC業界に参入することは勇気がいるのではないかと思うだろうが、実はそれより前にガンプラ販売のさなかにLSIやさらに昔の電子ゲーム、 ホビーパソコンにも参入していたことにより、コンピューターゲームにもFC参入時にはそれなりの実力を備えていたことが伺える。

もっとも、電子ゲームとFCは内容が明らかに違うので、電子ゲームなどで実力を発揮してもそれがFCで通用するわけがない上に、 人気作品のゲーム化ということで売り上げこそ高いものの作品の内容は難易度の高さやゲームバランスの不安定、 加えてむやみな原作重視または原作無視に近い作風を多く作ったために、名作も多い一方でクソゲーも多い状況を生み出した。

現在でもそういった傾向は変わっておらず、ナムコと経営統合したり一時期ながらもセガと業務提携をしても、 名作とクソゲーの多くが版権作品に偏っているのはバンダイらしいというべきだろうか。

そんなバンダイの最初の版権FCソフトの題材は、当時男子を中心に大人気となっていたアニメ『キン肉マン』。 2008年に、肉にちなんで29(にく)周年を2009年には誕生(連載)からちょうど30周年ということで、 現在連載中の『U世』もまた様々なメディアに進出し、多くの人に愛され続けている。

ゲームでも、現在『マッスルグランプリ』シリーズがAC家庭用機種問わず人気があり、 フリーゲームにおいても『マッスルファイト』が製作者やプレイヤーに長く愛され続け、ニコニコ動画でも原作およびアニメ版を再現した動画が好評を得ている。

FCでは初登場であるキン肉マンだが、既にコンピューターゲームそれもMSXで登場しているため、FC版がゲーム作品第2弾となる。 ちなみにMSX版はサブタイトルが『コロシアムデスマッチ』とあり、一対一での試合を行うものだった。

今回紹介するFC版は、サブタイトル通り登場する超人の中から2人を選んでタッグで試合を行うもので、 この時期放映されていた夢の超人タッグ編がクライマックスを迎えており、人気も最高潮に達していたことからいいタイミングでの発売だといえる。


勝負方式は、一般の格闘ゲーム同様相手の体力を0にして勝利し、3本勝負という関係上2本先取すれば次の試合に進める。 リング外のパートナーに近づいてAを押せば交代となるが、勝利はリング上にいる相手の体力を0にすればいいので、 それだけ相手タッグの交代を防ぐかが重要で、体力が少なくなれば移動スピードが遅くなる上にかなり低い場合はジャンプすら出来ないので、 改めて交代のタイミングの重要と同時に、現実のプロレスのスタミナを再現している感覚がある。

ただ、体力がライフバーではないので格闘ゲームの黎明期であることをうかがわせているが、 攻撃しても体力が減らない場合もあるし時間が経過すれば回復することを考えれば、多少なりともプロレスをしていることがよくわかる。

攻撃方法は、通常の場合パンチとドロップキック、それにロープを利用してのジャンプ攻撃と背後に回ってのバックドロップの4つで、 パンチ以外の攻撃は攻撃をはずして着地に失敗(自爆)するとダメージを食らうようになっているあたり、 これもプロレスの要素を再現といえる(現実のプレレスはもちろん、原作でもエルボードロップなどのジャンプ技を自爆して痛がる場面が多い)。

ジャンルがプロレスゆえに、リングのバリエーションが豊富で普通のリングはもちろん、滑りやすく歩くのがつらい氷上のリングやロープに電流が走り、 触れるとダメージを食らう(ロープを利用しての攻撃は不可能)リングがある。


登場キャラクターは、キン肉マン、テリーマン、ラーメンマン、ロビンマスク、バッファローマン、ウォーズマン、ブロッケンjr.、 アシュラマンの8人で、通常技こそ一緒なれど特殊技やスピード・攻撃といった能力にも細かい違いがあるのは興味深く、 まさに能力に共通点はあれど全ての性能は一致していないという、格闘ゲームの基本も取り入れている。 だが、8人のキャラの中のうちアシュラマン以外が正義超人で、そのアシュラマンにしてもカラーがアニメの肌色ではなく漫画版の青になっている。

加えて、8人から選べるのに肝心のリキシマン(漫画版ではウルフマン)が入っておらず、代理としてなぜかアシュラマンが登録されているのは、 相撲にプロレスはあまりなじめないのではないかという考えがあったと思われ、事実作品中のリキシマンは超人オリンピック以降活躍した要素が少ないので (原作者のゆでたまご両氏も、彼の人気獲得に相当苦労したとのこと)、リキシマンが出ないのはこのゲームのジャンルがプロレスゆえの悲しい設定といえる。

なお、ジェロニモも今作には参戦していないが、登場自体最近でまだ超人になりたてゆえの未熟さがあったためなのだろう。 海外版のみの登場(後述)だが、海外に輸出するあたり作品の人気もそうだが、開発陣側としても出場させるかどうか悩んだに違いない(それはリキシマンとて同じだろう)。

それだけ、アシュラマンを正義超人だらけのキャラセレクトに入れたあたりは、原作者やファンにとってなにかと印象が残るキャラだったようだ (魔界のプリンスという素性と彼の悲しい過去、キン肉バスターを実力で破っていることなど)。

もっとも、容量の都合なのか登場する超人が8人までだったため、お気に入りの超人が出てこないという不満はあったと思われ、 景品用のROM版では好きな超人が1体ゲーム版の超人と差し替えられ、非公認のハックロム版では夢の超人タッグ編に合わせて、 多くの超人がそのシリーズにしか登場しないキャラに差し替えられている。

明らかに容量不足であるものの、その容量でも8人の超人が収録されているのはすばらしい。 最近のゲームでは登場キャラが数十人にまで膨れ上がっているが、それは容量を多分に使用したことが大きく、8人それも能力が細かく設定されていることもすばらしい。


さらに、この作品ならではの最大の要素こと必殺技があるが、それは一定時間経過するとリング外にミートが登場し、 彼が球を投げてそれを取ることで体力が一定回復+スピードアップし、加えて超人の必殺技が使用可能になるのだ。

それぞれ、超人ならではの必殺技が用意されているが、ラーメンマン、ウォーズマン、バッファローマンの3人は突進技でブロッケンjr.は飛び道具、残りは投げ技になっている。 基本的に、突進技は威力が低い代わりに技が出しやすく、投げ技は威力が高い代わりに技が出しにくいため、多くのプレイヤーは突進技を持つキャラを使っている。

技が出しにくいといっても、格闘ゲームのように複雑なコマンドを入力するわけではないが、主に相手の後ろに回らなければ技が発動しないので、 1ボタンで技が出せる突進技は投げ技より使いやすいわけだ(当たらなければ意味がないが)。

それだけ、投げ技を持つキャラはどんな状況でも、投げ技で一発逆転を秘めている。 特にキン肉マンは、新必殺技キン肉ドライバーの威力が半端でなく、一度決まればほぼ勝ったも同然となってくるし、投げ技自体最大2発発動することが可能。

とはいえ、そこまでもっていくにしても肝心のキン肉マンの足が遅く、対人戦ではほぼ決まる可能性がないため、 プレイヤーからダメ超人の烙印を押されてしまったのは悲劇である。

実はこのゲーム、プロレスというジャンルこそなっているものの攻略法がほぼ定まっていて、特にCPU対戦ではロープのそばで待機して相手が近づいたらロープ攻撃をするという、 明らかに単調な攻略になっているため、対人戦ではそれをやると冷めた試合になってしまう。 初のFCプロレス作品ということもあろうが、かなり地味であったことは事実。

そんなスタイルで試合をすれば、無駄に時間が経過するということなのかタイムリミットに近づいたり両者の体力が残り少なくなるにつれて、 ミートが球を投げる機会が多くなり結果的に必殺技で短時間の決着がつくので、その手のやり方で試合展開を面白くさせたのは見事。


さて、ブロッケンjr.の必殺技は毒ガス攻撃なのだが、これが射程範囲が広い上に食らったらダメージこそ低いものの動けなくなるという極悪なもの。 ブロッケンを極めていれば、球を取ればあっさり片がつき初心者でもある程度ダメージを食らわせるため、プレイそっちのけでこの展開に対してケンカが起き、 結果日本各地でブロッケン禁止ルールが暗黙的に成立していったのは仕方がない。

ただ、それ以外の能力はかなり低く必殺技にしてもそこまでもっていけるのは難しく、必殺技を使うにはそれを使う前の状況を何とかするしかない。 恐ろしいことに、この戦法はCPUも使用する上にその頻度も高いため、対人戦こそそのやるせなさを相手にぶつけることは出来るがCPU戦それが出来ないため、 ブロッケンの必殺技がクソゲーの要素の1つになっている。

使ってみれば、それほどたいしたことがないブロッケンが使用禁止令まで出されたのは、明らかに必殺技の性能が極悪だったことに他ならない。 現に、まだアクションゲームが流行っていた時代だから、一対一の格闘ゲームがわずかに登場したといっても、一般のアクションの性質が色濃く残っていた証といえ、 必殺技についてもクローズアップされすぎたために目先のものにとらわれすぎた感が大きい。

ちなみに、ブロッケンの余波は海外にまで波及していて、こちらはナチスのイメージに触れるとしてジェロニモを差し替えで登場しているが、やはりブロッケン同様猛威を振るっている。 キャラゲーながらも、プロレスゲームの基礎を作ったことは大きく、能力やキャラの選定に欠点はあるものの100万本以上売れたのは 人気だけでなくゲームの内容にも一定の面白さがあったためであり、一般の格闘ゲームには劣るが対人戦は今でも十分楽しめることを示している。


キン肉マンという作品自体、当時のアニメ版をほぼ毎週見ていて再放送でも必ず見ていて、この作品を掲載していたてれびくんも毎月買っていたし、 このてれびくんにもこのゲームの情報が載っていたらしいので、ゲーム版以上にアニメに必死になって見ていた。

ただ、肝心の漫画版はというと本放送が終了してから十数年後、それも続編のU世連載開始から2年近く経った時に読んだぐらいだった。 アニメ版に慣れ親しんでいた私は、漫画版の内容に驚きアニメ版になかったエピソードや話が進むにつれてギャグ要素がほとんどない展開など、やたら多いアニメ版との違いに驚きを隠せなかった。

一方ゲーム版はというと、発売当時にいとこと一緒にプレイしていたが、あまりに昔だったこととまだFCに興味がなかったため、どういうキャラでどんな対戦をしたのか完全に忘れてしまった。 2003年のFC20周年のムックでこのゲームが紹介された時、この画面に見覚えがあると感心していた一方で、 ブロッケンjr.の毒ガス攻撃が卑怯すぎて禁止令が日本各地に広がったということに納得していなかった。

プレイした感覚を忘れていたからだろうし、そんなにひどく言うものではないという気持ちもあった私は、その記事に少しばかり憤りを感じた。 したがって、その記事の事実を証明するためにはプレイするのが一番だが、久々にプレイしたのがレビューを書く現在になってしまった。


動機にしても突然プレイしたくなったことが第1で、昨年の夏頃からプレイしたいという気持ちが表れては消えていったりしていた。 その時、このゲームがどういうものなのかムックはもちろんネットで調べていたが、やはりブロッケンの毒ガスの脅威が書かれているものが多かった一方で、 ブロッケンの性能は低いので必殺技を使うがためにわざわざブロッケンを選ぶ必要があるのかという内容もあった。

もう1つプレイすることになった動機は、とある動画投稿サイトで初代のアニメ版が全話公開されていて、それをわくわくしながら見て古きよき作品に出会えてうれしかったと同時に、 同時期に発売されていたFC版をプレイしてみようという気持ちになったからだ。

さて、このゲームを始めて早速試したのが凶悪なブロッケンの毒ガスで、そこまでもっていけるのが大変でミートがボールを投げて変なところに行ってしまうというめちゃくちゃさで苦労したが、 それを乗り越えて毒ガスを出したときの威力に思わずがっかりした。 だが、その直後に連続発射してあっさり相手をKOさせたことで、かつて禁止令が暗黙の元一気に広がった理由がよくわかった。

事実、CPU対戦においてブロッケンと戦った時、CPUも毒ガスを連発しこちらが何もせずにやられたため、 その怒りをどこにぶつけたらいいという悔しさとブロッケンを使わされた相手側の気持ちもよくわかった。

もっとも、レビューにも書いているようにそこまで持っていくのは大変で、禁止令がなくとも使用する人は減ったのではないかと思うが、 目先の欲にとらわれすぎて一向にブロッケンの使用者が減らなかったために、暗黙のルールが通ったことも考えられる。

ところでキン肉マンだが、やはり足が遅くCPU戦ではロープのそばで攻撃する手段しか使えないため、必殺技の瞬間までストレスが溜まった。 それだけに、キン肉ドライバーが決まった時は他の超人の必殺技より高い威力に思わず身震いしてしまった。

もっとも、決まらなければそれまででCPU戦でも決まらないことが多かったため、使いやすい超人とすれば個人的に足が速く 状況の判断がしやすいキャラがいいのでは思っている(必殺技は投げにしろ突進にしろ、当たらなければ意味がない)。



本日のまとめ



キン肉ドライバーッ!!

(09/3/8レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年7月24日
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