◆デビルワールド◆
3種類のドットイートゲーム



発売日:1984年10月5日   発売元:任天堂   ジャンル:ACT
値段:4500円   おすすめ度:3.5(やけに宗教味があるゲーム)


任天堂が送るアクションゲーム、それもドットイート方式なのだが、他のドットイートゲームとは一味違ったものになっている。 ドットイートゲームで、一番有名なものといえばなんと言っても『パックマン』で、次に有名なのがそのゲームの基礎を作った『ヘッドオン』か。

これらのゲームのルールは、パックマンのレビューで述べたがプレイヤーに襲い掛かる敵をよけながら、ステージ中にあるドットを全て入手すればクリアとなり、 インベーダーブームが過ぎ去った後に登場した全く新しいゲームのルールとして登場した。 その立役者がヘッドオンであり、パックマンで発展して大ヒットになったドットイートゲームは、様々な形に形を変えながら現在に至っている。

ドットイートゲームのクリア方式は、先述したようにステージ中のドット全て食べるだけだから、ドットを別のアイテムに置き換えるだけで新しいドットイートゲームが誕生するわけだ。

もちろん、それはドットではないのでドットイートゲームと呼ばれず『ドットイート方式』と呼ばれるが、 ステージ中に散らばっている物全てを回収するという共通点はあるわけで、ドットイート方式はドットイートゲームの発展型であることがわかる。 インベーダーゲームにしろドットイートゲームにしろ、元となったゲームが登場した翌年にはその発展型が登場している。


さらに、一般のアクションゲームでドットイートゲームもしくはドットイート方式の概念を採用したものも登場し、 特定のアイテムを入手しなければ出口が出てこない、出口が出ていても入れないというルールもある。

同じドットイート方式である『マッピー』は、続編の『マッピーランド』において前述したアイテム回収後に出る出口に入ればクリアという方式を採用しているが、 アクションを重視しているシリーズだからこそ設定できたといえるだろう。

そもそも、ドットイートゲームと方式の中で前者のほとんどが平面であり、クリアルールもアイテム全て回収するだけなので、 プレイし続けていればそのルールゆえに飽きる可能性があるし、このスタイルが登場したのはインベーダーブームの翌年だ。

しかも、日本の技術の日進月歩はゲームにも当てはまり、数年後に登場するドットイートゲームと方式は主に家庭用ハードへの移植で行われ、 ACで出ているものの中でそういったゲームはほとんど見られず、せいぜい人気ゲームのリメイクでしかお目にかかれなくなった。

家庭用にしても、往年の人気ゲームならともかく全く新しいものとなると、ゲーム独自のルールを採用しなければ人気が出る可能性が低かった。 今回紹介する『デビルワールド』も、従来のドットイートゲームに全く新しい要素を詰め込んだものになっている。


まず、このゲームには3種類のステージ(以下場面)が用意されている。 最初の場面はドットイートゲーム、2番目の場面は四隅においてある聖書を中央4箇所の穴に入れること、 3番目の場面はボーナスゲームで画面にある6つの箱を取り、制限時間内に卵が入っている箱を取れば1UPとなる。

1つのゲームに、全く目的が違うゲームが3つ入るというのは当時としてはかなり珍しく、ドットイートゲームだけでは興味を示してくれないとはいえ、 最初から3つの内容をプレイできるあたりは、今までと違うドットイートゲームを作るというスタッフの気合がこめられているのかもしれない。

その気合のこめ方は、3種類のゲームを詰め込む他に画面のスクロールもそのひとつだろう。 基本的に、ドットイートゲームは平面上一画面でプレイできるよう収められているが、スクロールするドットイートゲームはかなり珍しい。

その要因が画面両端にあるローラーであり、画面中央上のデビルの指示により一画面ながらも、一定の間上下左右に動く仕組みとなっている。 一定方向に動いているローラーは、デビルのポーズで次に動く方向を教えてくれるのだが、強制的にスクロールする関係上壁に挟まればミスになる。 加えて、画面内との敵とも相手にしなければならないのだが、一般のドットイートゲームと違ってここぞという時以外に逃げ回る他に、常に攻撃できる態勢を作ることも出来る。

無論、プレイヤーが丸裸の状態では何も出来ないが、画面内に落ちている十字架を拾うことで火の玉を放ち敵を倒すことが可能となり、 2番目の場面ではバイブルを装備して火の玉を放つのだが、こちらは中央にある4つ穴の開いた四角に差し込むため、 火の玉を出しても消えることがないものの、クリア方式が違うためにどちらがクリアしやすいかはプレイヤーによる。

同時に、画面中に散らばっているドットを拾うことも出来るが、逆に言えば十字架を拾わなければドットを拾うことが出来ず、 ドットイートゲームながらもちょっとしたアイデアの導入で今までと違うドットイートゲームを味わうことが出来るわけだ。

火の玉で倒された敵は、目玉焼き状態になりそれを食べることで得点が増えていくあたりは、パックマンに見られたパワーエサの状態を思い起こさせる。 幸い、十字架は何度も拾える代わりに一定時間で消滅し、一度火の玉を放てば普通に持っているだけよりも消滅する時間が早くなっている。


ちなみに画面上にあるドットは、プレイヤーであるタマゴンのえさではなくデビルの力の源である『ボワボワ』で、ボワボワを消すには十字架を装備しなければならない。

丸裸の状態で、デビルの力を封じるのは無理があるため、十字架を取ってからボワボワをとらなければならないので、 設定とはいえ必要なアイテムを装備してドットを拾うというあたりは、単調なドットイートゲームに新風を入れたといえるだろう。 それだけ、ドットイートゲームの全盛期はまだゲームの発展途上で、独創的なアイデアがまだ少なかった80年代初頭と考えられよう。

もう1つ、独創的といえばこのゲームに2人同時プレイが加えられたことだが、こちらは『マリオブラザーズ』のように 対戦・協力の両方と『スパイVSスパイ』のように対戦特化ではなく、協力プレイでゲームを進めていくことになっている。

つまり、片方が敵を倒す役と片方が場面の目的を達成させる役を受け持ってプレイすることが可能であり、対戦と匂わしき要素は全く出てこない。 そもそも、1人専用が多いドットイートゲームに2人同時プレイを導入すること自体が新鮮で、緊張感を持たせるために一定時間の強制スクロールも新鮮である。

ただ、火の玉に当たると一定時間動けなくなってしまうため、敵を倒しているプレイヤーの火の玉が必死に場面の目的を達成しようとした 別のプレイヤーに当たってしまうことがあるあたりは、対戦の要素がほんのわずかに残っている証といえる。

『ファイナルファイト』などといった後のベルトアクションゲームにも、2人同時プレイ中に自分の攻撃が味方に当たってしまうため、 攻撃された後の1ミスがリアルファイトに発展する可能性もあり、デビルワールドもまた単なる協力プレイに収まらない要素を秘めている。 何しろ、必死になってボワボワ(またはバイブル)を拾っているのに、誤ってとはいえ喰らってしまった挙句敵の攻撃にやられてしまったのでは話にならない。


それこそ、対戦でプレイするよりも友情に亀裂が生じる可能性もあるわけで、なぜわざわざ火の玉を味方にも食らわせる設定を入れたのか不明だが、 マリオブラザーズや『アイスクライマー』における協力・対戦の共用など、任天堂作品の2人同時プレイを面白くさせているのは確か。

この頃、任天堂はACで近いうちにFCで移植またはFCで登場している作品を、主に対戦で楽しむというVS.システムを導入させFCに参入しているACのメーカーの一部も参加している。 この経験と意欲が、1人プレイでも面白いが2人プレイでも面白い作品を生み出している。

だが、デビルワールドがかなり人気のあった作品といえば実はそうでもなかったりする。 確かに、特定のアイテム装備での攻略と3種類のゲームの内容といった、当時のドットイートゲームにはない魅力があったのは事実。

しかし、それが人気と売り上げに直結できたとは言えず、任天堂作品の中ではマイナーな地位に甘んじているのは、 ドットイートゲームの大ヒット作であるパックマンのFC移植と、同じくACで人気のあった『ゼビウス』のFCの移植など、サードパーティーの人気に押されたためなのだろう。 幸い、現在ではWiiのバーチャルコンソールで配信されているし、中古でも知名度が低いながらも安値で売られているので、興味があればプレイしてみるのも面白いだろう。

最後に、このゲームの要素とその設定について書いておきたいことがある。 実はこのゲーム、やたらと宗教臭それもキリスト教が強く、十字架で悪魔の源を消すこととそれとバイブルで炎を吐いて敵を倒すこと、そして何より親玉のデビルの存在が大きい。

海外にも輸出され、宗教上の理由でデビルではなく『デモン』と改名して一層宗教臭くなっているが、 ここまでくると宗教が自由なゲーム制作に支障をきたす可能性があり、ゲームは世界中で楽しめるものゆえに現在でも常に宗教に縛られて制作せざるを得ないのは残念だ。


このゲームのレビューを書く5年半前、私はこのゲームの存在を初めて知ることになった。 大手サイトの画像つき一口レビューであったが、画面や一口レビューを見ただけではどういうゲームなのかさっぱりわからなかった。

ただ、別のレビュアーによるレビューではオススメとしても紹介されていたので、もしかしたら面白いものなのかなと少し期待はしていた。 とはいえ、早速プレイしてみようと思う気はなく別にどうでもいい存在として、いつの間にか存在を知ってから6年近く経過した。

そして現在、突然思い立ってプレイしつつレビューもしようと、いつも立ち寄っている中古のゲームショップでカセットのみで1200円ほどで購入。 普通、レトロゲームそれも私が知らないゲームを購入する際は、先にネットでどういうものなのか調べてからするのだが、今回に限ってなぜか調べる前に購入しプレイしてからネットで情報を調べることになった。

どうしてこうなってしまったのかわからないが、おそらく最近1984年のゲームを多くレビューしているため、ここで一気に84年のゲーム全てをレビューしてみようかという気持ちがあったのかもしれない。

とにかく調べる前にプレイした私だが、プレイした感想はドットイートゲームにしてはよく出来ているなと驚くばかりだった。 『パックマン=ドットイートゲーム』ということを既に認識していて、要はドットを全て集めればクリアだと思っていた私の常識を見事に打ち砕いた。

十字架を装備しなければドットは取れないことと、特定のアイテムを入手してそれを所定の場所に収めるプレイモード、 さらに一定時間の強制スクロールとそれにおける壁に押しつぶされるという新たなミスなど、全く新しい内容の連続が目白押しだったからだ。

マッピーやラリーXがドットイートゲームの派生版(ドットイート方式)だとすれば、デビルワールドはドットイートゲームそのものをパワーアップさせて他のアクションの要素を追加したものだと思っている。

事実、ネットで調べてみるとこのゲームに対する好意的な評価が多く、力強くオススメしているレビューこそ少なかったものの今までにないドットイートゲームであるという事実は共通していた。 しかし、好意的な評価は多いといってもレビューそのものの数は少ないので、改めてこのゲームの知名度の低さがよくわかった。

どうして、こんな全く新しいドットイートゲームが人気なかったのか最初は理解できなかったが、このゲーム登場前後に『ロードランナー』やゼビウスといったミリオン以上を達成した作品が出たことを考えれば仕方がないことだろう。

ところで、レビューの最後に宗教臭いことを書いているが、ゲームの製作者はもちろんユーザーからすれば宗教をゲームに持ち込みたくないと考えている人は多く、私も宗教で面白いゲームに横槍を入れるのはごめんだと思っている。 確かにデビルワールドは、宗教臭があるもののゲームの面白さは関係なく、デビルや彼力を弱めるための十字架やバイブルの登場は、結果として表面上はキリスト教臭くなっただけに過ぎない。

だが、イギリスでは宗教上デモンと改名していることを知った時、宗教がかなり前からゲーム制作に横槍を入れていることも思い知らされ、宗教の制約がない日本だからこそある程度のびのびとゲームが作れたのかと納得している。。



本日のまとめ



ATTACK THE DEVIL’S WORLD!

(09/2/22レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年7月19日
◆目次に戻る◆


inserted by FC2 system