◆アーバンチャンピオン◆
FC初の格闘ゲーム



発売日:1984年11月14日   発売元:任天堂   ジャンル:格闘
値段:4500円   おすすめ度:2(泥くさいストリートファイト)


FC初の格闘ゲームで、当時プレイした人など一部のファンにとって何かと印象深い作品でもある。 そもそも、1991年登場の『ストリートファイターU』のように格闘ブームを生み出すものではなく、 後述するゲームの内容を見るに華やかとはいえないし、ブームを出すほどの人気があったとはいえない。

加えて、このゲームが登場した当時はACにおいて、まだアクションやSTGがしのぎを削っていて、他の家庭用ハードやFCでもアクションや STGの2大ジャンルが争っていたが、格闘という要素こそあれどまだ独立したジャンルになっていなかった。

したがって、格闘というジャンルが登場し定着したのはストU以降であって、それ以前に登場した格闘ゲームはアクションのジャンルに収まっているにすぎず、 格闘ゲームが大量にあふれてきたこの時期ゆえに、格闘の要素が多分に含まれている昔のゲームを探し出したといえるわけだ。

事実、ストUを登場させたカプコンと『ファイターズヒストリー』を登場させたデータイースト(以下デコ)との間でいざこざが起きた時、 デコ側は1984年登場の『空手道(ディスク版および海外版は『カラテチャンプ』)』を引き合いに出して「ストUは空手道のパクリだ」と、 ファイターズヒストリーのストUからのパクリ疑惑に対してこう反論している。

なお、カプコン・デコ双方ともパクリの非難合戦は、先に言い出したカプコン側が和解を持ちかけて終結している。 結局のところ、FCにも格闘ゲームの原型が色々発見されて話題になったのは、誕生から20周年という節目に特集が組まれた雑誌や企画などが登場し、 ネットでもそういった話題が多くなってきた2003年前後といえるかもしれない。

一昔前の格闘ゲームの原型、確かにストU以前に登場した格闘と呼べるジャンルのゲームはいくらでもあるが、共通点は同じ高さのキャラが向かい合って戦うということだけで、 ライフバーやジャンプの設定などストUで確立した要素はゲームによってついていなかったりしている。

それに、格闘のジャンルを知らないプレイヤーがプレイしたり、アクションという枠に組み込まれる格闘ゲームが登場していたのだから、 今でこそ再評価されるゲームでも当時はクソゲーとまでは言わないものの、面白いとはいえないものもあったわけだ。

むしろ、格闘ブーム前に作られたゲームの多くは、会社なりにシステムを独自のものに設定している、または一般のアクションの延長線上ということで 移動以外の行動をボタンで行ったりなど、格闘ブームに便乗して格闘ゲームを作った場合よりもかなり独特であり(便乗したものが独創性が無いというわけではない)、 かなりの年月がたった今でも今の格闘ゲームよりも昔の格闘ゲームの原型のものが好きだという人もいるだろう。


その原型のひとつであるアーバンチャンピオンは、FC誕生からわずか1年3ヵ月後に登場していて、同時期にはAC版も登場している。 AC版は、任天堂VS.システムの基板を使っているものの、その基板はFC本体のシステムのちょっとしたバージョンアップに過ぎないのだから、 FCで出すものをACで先に出して様子を見てそれからFCに登場させる場合と、FCでは複数プレイが出来にくいものをACではやりやすくするという場合もあれば、 ソフトの値段が高いためにACで手軽にプレイする場合もあっただろう。

もっとも、このシステム基板が国内でわずか4年しかもたなかったのは、それ以上にACでしかプレイできず内容もかなり勝るものがあったためなのだろうし、 任天堂のACの活躍自体FCの大ヒットによって85年にACから撤退してしまったことも要因のひとつだろう。 しかも、VS.シリーズ登場から撤退までの間は、ACの新作を2つしか出しておらずほとんどがVS.シリーズなので、ここがFCに完全シフトする前兆だったのかもしれない。

さて内容は、大都市の夜中の路地裏を舞台に男2人が一対一で殴り合いをするというもの。 相手を殴り続けて、端の方まで追い詰めて殴って画面外に追い出すと、場面が切り替わると同時に画面右下の数字が減っていき、 どちらかが『1』になると場面が1になってしまったプレイヤー側の端に開いたマンホールが登場し、殴り続けて相手をそのマンホールに落とせば勝ち。

勝てば、ビルの窓から女性が紙ふぶきで祝福してくれて、その後に次の対戦相手と戦い、こちらがゲームオーバーになるまで戦っていく。 要は、相手より多く殴り続ければいいだけのことだが、むやみやたらに殴り続けているだけでは勝つことは出来ず、逆にボコボコにされて敗北することもある。


このゲームでは、強弱のパンチと上下のガードおよび攻撃が出来るようになっていて、弱パンチで相手をひるませてすかさず強パンチで吹っ飛ばすというのが戦略の基本となる。 無論、その攻撃をガードしつつガードしていない部分が、がら空きになったのを見計らって攻撃することも基本なのだが、弱パンチは早く出る代わりに威力は弱く、 強パンチは吹っ飛ばせる代わりに隙が大きく、相手の弱パンチで消されてしまう。

しかも、このゲームにはスタミナが設定されているため、攻撃したり受けたりすると消耗してしまい0になっても負けにはならないが、 弱パンチを食らっただけでも吹っ飛ばされる上にこちらが繰り出す攻撃も弱パンチだけで、このゲームの勝利は攻撃のタイミングとスタミナの量にかかっているとはいえ、 さすがにCPU戦ではよほどのことが無い限りスタミナが0になることはないだろう。

むしろ、対戦のほうがスタミナに気を配ることが多く、加えてどちらかがマンホールの場面に追い詰められるかという、普通の対戦にはない緊張感が味わえる。

時間も、このゲームそれも対戦おいて緊張感が味わえる要素の1つで、その理由が時間が0になった場合にどちらかのスタミナが少ない場合、 警察に逮捕されてしまい相手にラウンドを取られてしまいゲーム終了にはならないものの、 こちら側の画面右下の残り数1の状態に警察につかまれば0になり、問答無用で相手側の勝利になってしまうわけだ。

無論、次のラウンドではスタミナと時間は全回復するので、逮捕されることと相手の逮捕の遭遇はゲームオーバーになるまでの間はめったに見られないだろう。 それゆえ、両者が同じスタミナ数値のまま時間切れになることも、時間切れよりも見ることが少ないというより見る機会がないのだが(1人で2人対戦をすれば別)、 その場合2P側が警察に捕まってしまうのは2Pをないがしろにしていまいか。 五分五分の確立で1Pも捕まって、残り数を減らすよう変更するか両者とも逮捕されて、どちらも残り数を1ずつ減らせばよかったのではないか。


ただ、時間切れによる勝敗を決める要素は当時としては斬新だし、前述したスタミナの要素も殴り合いに終始することがなく相手の行動を読む必要があるなど、 まさに人とプレイすればCPUとプレイするよりも面白い(CPUはタイミングが合えばいくらでも吹っ飛ばせるから)。

しかし、戦いの最中にビルから鉢植えを落としたりパトカーが来たりと、ストリートファイトの邪魔をするというよりまだアクションゲームの枠に収まっていることがよくわかる。 前者は、喰らってしまったら気絶状態で一定時間行動不能になり、後者はラウンド開始までいた場所に戻されてしまい、戦いを有利に進めようが不利になろうが仕切りなおしになる。 鉢植えは、当たり判定が小さくほぼ真上でなければ当たらないが、白熱している時に不意に当たってしまうことはあるだろう。

鉢植えといいパトカーといい、明らかにこのゲームの世界観を表現しているといえる。 何しろ、真夜中でのストリートファイトは裏路地で行うといっても、ストリートファイトをやること自体違法であって(大抵傷害に発展する)、 パトカーが巡回に来る際殴り合っていた2人が両端に下がって口笛を吹いてやり過ごすあたりも、違法を認識していることがうかがえる。

決闘の舞台にさせられた裏路地に住む住人も迷惑しているのか、彼らが鉢植えを落とすあたりは真夜中の時間帯とあわせて、静かにしてほしいという表れなのだろう。 勝者を紙ふぶきで祝福してくれる女性も、別の形で考えれば一番うるさいやつ(敗者)をやっつけてくれたと感謝していることもありうるだろう。

加えて、ゲームタイトルにある『アーバン』は都市という意味なのだが、同じ都市を意味する『シティ』との違いはもうひとつ意味があるかないかであり、 アーバンにはもうひとつ『都会の』があり、『アーバンチャンピオン』を訳せば『都会の王者』ということになろう。

それも、訳を細かくしていくとシティが都市全体なのに対してアーバンには都市の中であり、なるほど都会のある路地裏で勝負をやるあたりも、シティにせずアーバンにした理由だろう。 それゆえ、他のアクションゲームと比べて地味であり、まだアクションで得点を稼ぐのが主流だったから、 得点制がないこのゲームは同時につまらない印象を当時のプレイヤーに与えてしまったのも、当時の状況ゆえに無理らしかぬことである。

だが、10年近く後から得点の概念が必要ない格闘ゲームが多く登場し現在に至っているので、バーチャルコンソールで配信されたからこそ再評価できるわけであり、 さすがに今のものと比べると古臭さは否めないが、読み合いだけは他のものよりも負けないとこがいえるだろう。


このゲームを初めて知ったのは、数年前に大手FCサイトのデータベースにおいてで、コメントに『つまらない』と書かれていたので、 「このゲームってつまらないんだな」と無条件に認識してしまった。

もちろん、それは一サイトの意見なので他のサイトの意見では全く違う意見もあるのだが、 情報量が豊富で見ていて飽きないサイトにはなぜか信用しすぎていた感じがあった私は、特に疑うこともせずそのまま現在に至った。

その時は、レトロゲーム専門のサイトが少なく情報も少なかったが、現在ではつまらないゲームでも好意的に見るサイトもあるので、 色々な意見があることは他のゲームをプレイしていて既にわかっていたが、つまらないゲームを好意的な意見を見ると新鮮な気持ちになってくる。

とはいえ、いまだこのゲームをプレイしていない私はプレイしなければどう結論付けたらいいかわからないわけだし、 ほとんどのFCソフトをレビューする以上このゲームもいずれレビューしなければならないと思ったため、近くのゲームショップでカセットのみで900円で購入した。

購入自体、前にレビューした『F1レース』と同じ時期だったが、F1レースと違ってジャンクコーナーではなく普通の中古コーナーに売っているあたり、 アーバンチャンピオンがマイナーで人気も少なかったのだろう。 バーチャルコンソールで配信されているとはいえ、中古の相場が下落するにはまだまだ先といったところか。


さてプレイした感想は、どういうゲームなのかネットでよく読んでわかっていたので、すんなりと15ラウンド以上までたどり着いた。 初めてのプレイだったが、相手を吹っ飛ばして起き上がる直後をまた吹っ飛ばしての繰り返しという、CPUの行動パターンを読んでやっただけで上下のガードがある分、 吹っ飛ばせる確率は2分の1ではあるもののそれだけ決まった時は「よしっ!」と思ったほどだ。

鉢植えやパトカーといった、勝負をなえさせるものは度々出てくるも勝負自体すんなり進んでいたので、単にCPUと殴り合いに終始していた。 だから飽きてしまい、エンディングがないこともあわせて状況が一変(時間切れなど)するような、思わぬ事態になることがあまりなかった。

それだけに、対戦できる友達がいないのはさびしく、このゲーム特有の攻撃と防御の読み合いが楽しめなかったのは残念だ。 それはそれで仕方がないのだろうが、格闘は2人対戦がかなり白熱するのが常識なだけに、2人同時プレイがほとんどなかった頃に発売されたことは、 つまらないと思っても仕方がなかったと同時に早すぎた作品なのかもしれない。

ちなみに、このゲーム発売から9年後に任天堂は本格的な格闘ゲーム『ジョイメカファイト』を発売させている。 FCで、本格的な格闘ゲーム(投げや必殺技など)を登場させたことはすばらしいのだが、これはストUの人気もそうだがアーバンチャンピオンの経験も生かしているのではと思いたい。



本日のまとめ



CHAMPION!!

(09/2/15レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年7月17日
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