◆ナッツ&ミルク◆
ハドソン参入第1弾



発売日:1984年7月28日   発売元:ハドソン   ジャンル:ACT
値段:4500円   おすすめ度:3(どことなく任天堂臭)


ハドソンFC初参入ソフトであると同時に、初のサードパーティー第1弾のソフトでもある。

サードパーティーとは、主にゲーム業界それも家庭用ハードで聞かれることが多く、FCではハード開発元の任天堂以外でFCに携わる会社、 それもソフトを供給している会社のことを表している(周辺機器しか提供していない会社は別)。

いつの世も、ハードを開発した(もしくは開発に携わった別の会社)会社が最初にソフトを数本提供し、その後(せいぜい一年以内)にサードパーティーがソフトを提供する仕組みとなっている。

しかし、FC以降のハード開発会社のソフト提供と、その後のサードパーティーのソフト提供という順序はより顕著になっていく。 それは、かつて全世界で大ヒットを記録したアタリVCSにおいて、サードパーティーにおけるクソゲーの乱発もさることながら ハード開発元のアタリ自身のクソゲー連発という、両者共にハードの雰囲気を悪くしてしまったことに原因がある。

早い話、アタリがハードの人気におごり高ぶってソフトの質の向上に努めなかったために、VCSの人気を低下させた挙句にアメリカの家庭用ゲーム市場をも崩壊させることになってしまったのだ。

これについては、『ドンキーコング』のレビューの項でも記述したとおりだが、アタリショックの惨状をつぶさに見てきた任天堂は テレビゲームシリーズの失敗を経験として、ハードはもちろんソフトもそれ以上に力を注がなければならなかった。

結果、ACで人気のあった作品をFCに移植すると同時に、しばらくは任天堂主体としてFCを支えていく一方で、 他のゲーム会社が参入した場合には高いライセンス料を支払わせて、クソゲーの乱立を出来るだけ防ごうとしたのだ。

『一人勝ち』とか『京都朝廷』という中傷を受けようとも、日本でアタリショックの二の舞になることだけはなんとしても避けたかった。 とはいえ、任天堂のみの提供するソフトで満足できるほどユーザーは悠長ではなく、目先のゲームを買ってしまう人がいたのは事実。

だからなのか、FCが登場した翌年のFC業界ではようやくサードパーティーが参入したが、 あまりの参入のハードルの高さとまだFCがメジャーの地位になかったこともあってか、参入したメーカーはナムコとハドソンの2社だけ。

それでも、ナムコはACの老舗だったしハドソンもPC界の有名どころという、まさにくるべくしてきたというものだったといえる。 これをきっかけに、ACやPCの有名どころはもちろんゲームとはかかわりの無い会社も、FCに翌年から大挙参入してくることになる。


そんな、サードパーティー初のFCソフトは前述のように『ナッツ&ミルク』。 『ロードランナー』が、サードパーティー初のFCソフトと勘違いする人が多いが、これは間違いでナッツ&ミルクがサードパーティー初のFCソフトなのだ。

では、なぜロードランナーが初のFCソフトであると勘違いする人が多かったのかというと、ロードランナーとナッツ&ミルクの発売日の間がかなり小さく (ナッツ&ミルクは7月28日で、ロードランナーは3日後の7月31日)、加えてロードランナーのほうが100万本を超えるほどの大ヒットになったことが、勘違いをさせる要因だったのかもしれない。

他にも、勘違いをさせる要素があるのだろうがそれは後述するとして、ストーリーは主人公のミルクが恋人のヨーグルの家に向かいつつ、邪魔者のナッツの追跡をかわしていくもの。 このため、ゲームタイトルは主人公と敵の名前をあわせたものになっていて、ゲームタイトルに敵の名前が入るというのは当時としては珍しい(サブタイトルを除く)。

実はこのゲーム、PCからの移植なのだがなんとPC版ではヨーグルがおらず、タイトル通りナッツとミルクしか出てこない。 ヨーグルは、FC版オリジナルの要素として登場したものといえる。


ゲーム進行は、先述したストーリーと同様でヨーグルの元にたどり着く前に、ナッツに触れればミスになるし海に落ちたり時間切れになってもミスになる。 しかも、最初はヨーグルの家にヨーグルが現れていないので、ステージ中にあるフルーツを全て取らなければ現れず、 その間にもナッツの追跡をかわしたりはしごやジャンプ台を駆使して、一番上にいるヨーグルの元にたどり着かなければならない。

丸っこいボディに足だけというかわいらしいキャラだが、ジャンプを使って離れている足場にたどり着いたり、 タイミングがよければナッツの頭上を飛び越えられるという(+得点100)、かわいらしいからこそ色合いもあわせて楽しめるゲームになっている。

だが、そのかわいらしさとは裏腹にミルクの行動を支えるはずの仕掛けは、場合によってミルクの足かせにつながりかねない要素を併せ持っている。 まずロープは、上下の足場に行くためのものなのだが、ロープの上でジャンプすることが出来ないために、ロープが連続してある足場にナッツが迫ってくるとかなり絶望的になる。

ジャンプ台は、タイミングよくボタンを押せばジャンプ距離が長くなるのはいいが、そのタイミングが難しすぎて逆に海に落ちることが多くなってしまうし、 タイミングよくジャンプできたとしても横たわる形で不時着してしまい動けなくなる(後述)。

ナッツにはジャンプ台の効果はないが(ジャンプははしごを上ったり幅が狭い時だけ)、海に落ちようがミルクが高い場所(または低い場所)にいようが 問答無用で追いかけてくるあたり(海に落ちると初期位置に復活してくる)、その追跡能力はもはや尋常ではなく、一定の距離によってナッツが方向転換してくるため、ナッツから離れていても安心できない。

これに加えて、ミルクが一定以上の高さから落ちると、ドスンという鈍い音と共にミルクが横たわって動けなくなり、ボタンを押さなければ再び行動することが出来ない。 しかも、ジャンプしても空中で方向転換できないため、後先考えずに飛び降りてその真下にナッツが待ち構えていたらもうアウトだ。

それも、ステージによっては2体いたりレベルによっては新たに飛行船が登場して共にミルクの邪魔をするのだが、そのレベルはAとBの2種類だけ。 また、ボーナスキャラのヘリコプターも登場するが、得点やナッツのことを考えるとわざわざ取るよりもすばやくクリアしたほうが高得点になりやすい。


このように、女性でも楽しめそうな色合いとデザインを設定させつつも、それを感じさせない難易度になっているのは、この時期のゲームが男の子を主体としているためなのだろうか。 それに、初のサードパーティーソフトとはいえ画面上の得点や残機数などの表示を見るに、初期の任天堂作品に非常に酷似している。

先に書いたが、このゲームはPCからの移植ではあるものの、PC版とFC版の内容は大幅に違っていて、PC版はジャンプやロープなどを主とする立体の概念が無く、 平面で壁を掘り進みながらナッツをよけてフルーツを全て取って出口に向かうもの。

それが、わざわざ別の形で移植されるあたりは、元となったPC−6001のものをそのまま移植するよりオリジナルを多分に含ませて出したほうがよかったのだろうか。 無論、そういった経緯に至るハドソンの考えはわからないが、PC版では声が出た一方で当時FCではそれが難しいと思ったことも、オリジナルに変更した理由の1つなのかもしれない。 これは別に文句は言わないが、ただGBAに移植された際にFC版だけでなくPC版も入れてもらいたかったところだ(PC版のファンもいると思われるから)。

そんな、PC版の要素があまり見受けられないFC版だが、そこは大手PCソフトメーカーのハドソン、まさにPCメーカーであることをやっている。 それがエディットモードで、1つのステージを自分なりに制作して楽しむものだが、このゲームではステージ1をある程度までしか改造できない。

主に、ナッツの数やフルーツの数の制限が目に付き、ナッツはともかくフルーツの数の制限があるというのは、クリアしたらエディットに戻るのではなく次のステージに進むためなのだろう。 一応、FC初のエディット機能搭載ゲームであるのだが、3日後に発売されたロードランナーにもエディットが付属されていて、 しかもそれは一から自分なりのステージを作るという、ナッツ&ミルクよりも高度かつ自由なステージが作ることが出来るため、初のサードパーティーの事実とあわせて地味な印象を受けてしまっている感じがある。

それでも、初のサードパーティーのソフトとしてはよく出来ているし、セレクトボタンで次に進めることによって苦手なステージを先送りできる(最大50面)。 ステージそのものにも、ロープや壁を使っての文字の表示というお遊びも用意されている。 タイミングと仕掛けがいやらしいゲームだが、それを乗り切れば前半での高得点も可能なので、その場合は面セレクトを駆使して色々なステージをプレイしてもらいたい。


プレイしたのはレビューを書く数ヶ月前だが、存在は20年以上前のゲーム雑誌で知っていたので、うろ覚えながら記憶に残っている。 ただ、いとこからもらった同社のロードランナーをかなりやりこんでいたため、どういうゲームだったのかすっかり忘れてしまった。

もちろん、ロードランナーがハドソン初にしてサードパーティー初のゲームとは思っていなかったが、それは単に発売日がわからないまたは忘れてしまったためだと思うし、 いろんなゲームをプレイしていたことで会社初のゲームなどどうでもよくなっていたと思う。 レビューする側からすれば、初のサードパーティーソフトとなったのはどれかということを調べる必要があるわけだが、

そんなことでプレイしたこのゲーム、ゲーム画面を見て驚いたのは画面上の残機数や得点が、明らかに初期の任天堂作品にそっくりだったことで、 なぜハドソンはわざわざ任天堂と同じ設定にしたのか疑問に思った。

疑問に思ったことはもう1つあり、レビューを書き始めた時はまだPC版の内容は全く知らなかったが、 ネットで検索してみてその画像と内容が紹介されているHPを見た時、FC版とPC版のあまりの内容の違いに驚き、それまでPC版の内容を知らずにレビューを書いていた私は、 すぐさま途中まで書いたレビューを書き直しをしてPC版のことも付け加えることにした。

何しろ、このゲームのタイトルはPC版の内容をそのままFC版に移植したものだから、PC版の内容など全くわからなかった私は思わず己の考えでレビューを書いてしまった自分を恥じた。 自分では、ある程度調べてなおかつプレイしてからレビューを書いたつもりだったが、もう少し調べて書いたほうがよかったなと思っている。


さてゲームのほうだが、ネットでゲーム画面を見た場合とプレイする場合とは違うことはかなり昔からわかっていたとはいえ、 いざプレイしてみると私が自分なりに作った攻略パターンとはまるっきり違う形だった。

ナッツが追跡してくるわロープの上ではジャンプできないわ、ジャンプ台のタイミングがつかめないわなどこのゲームのシステムに苦しめられた。 その分、攻略法をつかめば序盤で高得点できる喜びが得られたし、開始十数秒でクリアできて高得点が得られた時は心の中でガッツポーズを決めた一方で、 ボーナスステージの得点が低かったのはご愛嬌か(難易度も簡単だし)。

また、セレクトで苦手な面を先送りして次の面に進めることもうれしく、このゲームが最大50面まであることはちょっと驚いた。 もちろんクリアできなかったし、このゲーム自体カセットだけ購入したのでステージ先送りについてシステムだったのかわからなかった。

それと、最初のステージを作り変えて楽しめるあたりも驚いたが、それがほんの少しだけしか改造できないことにがっかりした。 3日後に登場したロードランナーが、無から自分なりにステージを作れることを考えると、ロードランナーに人気が移ってしまうのは仕方がないだろうし、 内容にしても同じPCからの移植なのにロードランナーはほとんど変わらないものの、ナッツ&ミルクは大幅に変わっていることも両者の任期の差は結構広がってしまっているのかなと考えさせられる。

慣れれば面白いから、もう少し評価してもいいのではないかと思うが、やはりロードランナーとの数日後の発売の差が大きいのだろうか。



本日のまとめ



HelP

(09/2/8レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年7月17日
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