◆F1レース◆
FC初のレースゲーム



発売日:1984年11月2日   発売元:任天堂   ジャンル:レース
値段:4500円   おすすめ度:2.5(いきなり擬似3Dレース)


任天堂初のレースゲームにして、FC初のレースゲームでもあるのだが、なんとそれがF1をテーマにしている。
このゲームの登場当時、F1レースのゲームでもっとも有名かつ人気を上げたゲームといえば、かつてゲーセンなどにいってゲームをやりこんだ人にとっては、ナムコの『ポールポジション』シリーズが思いつく。

昔のレースゲームは、テーブル筐体に画面を見下ろしてのものが多かったが、ポールポジションはサーキットを走るたびに目の前に見えるものが大きくなっていくという擬似3Dを採用し、 あたかも今までのものよりもレースを楽しんでいる感じになれた。 そういう大掛かりなことを体験させるため、大型の筐体それも使用する車を似せたものが作られ、ナムコの姿勢の本気さを内外に見せ付けた。

そういうこともあってか、このゲームも含めて当時は1プレイ専用で、レースを楽しむよりレースの雰囲気を楽しむものだったといえる。 事実、ポールポジションで使用しているサーキットは富士で、コース中に設置されている看板も当時のF1のスポンサーを思わせるようなバラエティ豊かなものになっていて、 大型筐体とあわせてレースを楽しむことに特化していた。

もちろん、走ること自体と他の車を追い越すごとに得点が与えられたので、長く走ることと他の車を多く追い越すこと、すなわちドライビングテクニックが高いプレイヤーほど得点が高いわけだ。 1プレイ専用とはいえ、得点を比べることにおける対戦は可能であって、漫画版『Dr.スランプ』のおまけのコーナーで仕事仲間と共に対戦を行い、 ものの見事にビリになってしまった挙句上司は誰も気づかずに練習をやっていたことを、原作者である鳥山明先生は述べている(ジャンプコミック版のみで、それ以外のコミック版では記述されていない)。

レースを実際に体験できることと、それによる大掛かりな装置により大ヒットを記録したことで、そのことに驚愕した他のメーカーも次々と擬似3Dが体験できる大型の筐体を導入するようになり、 F1のみならずバイクやラリー車も擬似3Dの題材になった。

セガの『ハングオン』はその代表の作品の1つであり、後にそのアイデアは3DのSTGにも大型筐体が登場するようになったわけで、 同じくセガの『アフターバーナー』シリーズやタイトーの『ナイトストライカー』として別の形での人気を作っている。

それゆえ家庭用ゲームに移植することは、大型の筐体だから可能であったレースの疑似体験の魅力が少なくなってしまうのだが、 早くから家庭用ハードへ移植が行われるあたりは、その人気をメーカー側が感じ取っていたのかもしれない。


今回紹介する任天堂の『F1レース』は、任天堂が独自に制作したFC初のレースゲーム、それもいきなり擬似3Dという冒険的なものゆえに、ポールポジションの移植ではない。 ただ、後述する内容からすればほぼ間違いなく、ポールポジションの影響をもろに受けているといえ、改めてポールポジションの成功が他社にも多大な影響を及ぼしていることを表している。 事実、同じ11月発売でジャンルも同じレースながらも、その日が30日である見下ろし型の『エキサイトバイク』より先んじて発売されているのだから。

ルールは、指定されたコースを規定数走るわけだが、制限時間内に一周しなければ即ゲームオーバーになるものの、 一周するごとに制限時間も増えてクリアが容易になるので、ゲームのテクニックさえ上達できればなんとかなるはずだ。

また、状況に応じて十字キーの上下でマシンの最高速度を設定できるので、カーブや他のマシンが複数ある状況を切り抜ける場合に LOWをそれ以外をHIに切り替えることも可能で、LOWについてはブレーキで代用する手もあるものの、 急ブレーキの役割であるLOWを使ったほうが手っ取り早く、ブレーキをあまり使わなかった人は少なからずいるだろう。

ある程度練習すれば、数ステージクリアできる難易度に保たれているこのゲーム、ポールポジションにある水溜りといったトラップもないので、慣れてしまうとどこか物足りなく感じる。 それゆえ、ステージが進むごとに一周するたびに付加されるタイムが少なくなったり、 コースが複雑になるといったレースゲームにありがちな難易度変更になってしまっているし、コース自体現実のサーキットではなく任天堂オリジナルになっている。

そういうわけではないのだが、1982年のAC作品と1984年のFC作品と比べても、まだACのほうが家庭用作品よりも2年程度の差を感じさせない性能を誇っているといえる。 しかし、速度のメーターやスイッチは現実のフォーミュラカーに近いグラフィックで示され、得点と残り時間と共に画面上部に収まっていて、コースの概要も同じ画面上部に収まっている。

そのあたりは、ポールポジションより勝っているものの、コースの全景はもちろんコースの脇にある看板は貧弱なものばかりで、 看板については『NINTENDO』と表示されてあるものとカーブを示すものぐらいだが、スポンサーの看板についてはこれは多くのスポンサーと著作権などで 複雑に絡み合ってとても出せる状況ではなかったのかもしれない(ポールポジションも、『ナムコミュージアム』以降から実在するスポンサーの看板は、架空のものもしくはナムコ作品に差し替えられた)。


ポールポジションにある予選は無く、主に時間がある限り走り続けるぐらいなので、このゲームで十分テクニックを磨くことが出来たならば、 いきなり難しいコースからはじめてみるのも面白いし、カンストを狙ってみるのも面白いだろう。

最初から3つの難易度を選べるが、難しい難易度ほどプレイできるコースが変わっていくもので、レベル1をステージ構成のベースとしていることで レベル2はコース3からレベル3は5コースから始まり、アクションゲームに見られる敵の数を増やしたり敵の動きを早くしたりするという難易度上昇とは違ったやり方をプレイヤーに示している。

この手のレースゲームは、前述したようにステージが進むごとにコースがより複雑に変化していくので、障害物や他の車に接触して爆発すれば大幅なタイムロスとなるため、 中途半端なテクニックしか身に着けていないプレイヤーが難しいコースに挑戦すれば、まず間違いなく時間切れのゲームオーバーになる可能性は大きい。

もっともこのゲーム、走行距離に応じて得点が増えていくものなので、次のコースに進むほどクリアに必須な周回数が多くなると同時に それを重ねるごとに与えられる時間も減ってくるため、時間切れによるゲームオーバーも単にどれだけ得点を稼げるかだけになっている。 この時期のゲームは、エンディングがはいっているものはほとんど無く、ゲームオーバーになるまで延々とプレイするもので、レースも得点で優劣を決めるにとどまっている。

それゆえ、後に登場し対戦が出来て楽しめるレースゲームをプレイした後にこのゲームをプレイすると、物足りなくなるのは仕方がないといえる。 しかし、ゲームオーバー後に再びプレイすると背景が昼から夕方に変わったりするので、貧弱な背景を補う演出を(色変え程度だが)やってくれているのはうれしい。

最後に、このゲームの2つの裏技について書いておきたい。 共通しているのは、マシンをこうスピードで走ることが出来るのだが、前者はスピードもさることながらカーブも楽に曲がれるという安定さ、 後者は単に高スピードという概念を超えてマッハ1(1000キロ)という音速を出せるというものだ。

前者は俗に『ターボモード』と呼ばれ、直線において一定の速度で出すと突然発生するもので、後者はコロコロコミックの人気漫画『ファミコンロッキー』に登場したもの。 後者については、とてもカーブで曲がれるはずがなく明らかにネタでしかなかったが、当時の子供達がその漫画の技を必死に再現しようとしたあたりは漫画の人気を裏付けている。


かなり昔のゲームを結構覚えている私だったが、このゲームについては存在を知ったのが他の昔のゲームより遅かった。 無論、他のゲームも載っている雑誌(20年以上前)で存在を知っていたはずだったが、このゲームの項目を見ていなかったか見たがなにぶん昔なのですっかり忘れてしまっていたの2つだろう。

このため、ネット上でゲーム画面を見た時はあまりの貧弱な画面にプレイする意欲を失い、さらに数年前にプレイした『リッジレーサー』や『ロックマン バトル&チェイス』といった レースゲームをかなりプレイしたこともあって、どうしてもプレイする気にはなれなかった。

ようやくプレイしたのもレビューを書く数ヶ月前だし、ハードオフのジャンクコーナーで100円という安値で購入したのがきっかけだった。 それも、後でレビューしてみようかなという気持ちであり、そもそもカセットのみで買ったがすぐに慣れるだろうということだった。

アクセルボタンを押せば、押した時間の分だけ早くスピードが出てブレーキボタンを押せばブレーキできる、つまり現実の車で言うオートマチックに慣れていたために、 昔のレースゲームでもそういったものではないかと思い込んでいた。

しかし、いくらボタンを押しても中途半端なスピードしか出せず、そのままプレイしていたら時間切れで一周すらできずゲームオーバーになってしまったため、理不尽な内容に思わず呆然としてしまった。 それから、何度もプレイして最初のコースだけでもクリアしようとがんばったものの、結果は最初と同じ一周できずゲームオーバーだった。

結局、このゲームをプレイするのを控えて他のゲームをプレイすることにしたが、新年間もない頃から突然やりだすようになった。 使っていないボタンを押せば、何かわかるかもしれないという期待感からであって、案の定十字キーの上下を押したらギアのチェンジが出来て、 HIで高速を出しカーブでLOWをチェンジさせて切り抜けて、あっさりと最初のコースをクリアした後は5コースまでクリアできた。


早い話、説明書が無かったためにこのゲームのプレイ方法がわからなかっただけで、たった100円それも箱と説明書が無い ジャンク品扱いだからということで、躊躇することなく購入したのがまずかったのかもしれない。

いずれにせよ、ギアチェンジによるスピードの調整でのテクニックが理解できたものの、自分の勘でやったことでかなり古いゲームについては 説明書も一緒に購入することは無いと思うことが、後に今レビューしているゲームのプレイで散々な目にあうに違いない。

それでも、私は忘れやすい正確をしているから、またジャンクコーナーでカセットのみで購入し、やはり操作で混乱してしまうかもしれない。 ともあれ、操作がわかった私は猛スピードで他車の間をきれいにすり抜けたり、カーブ中にギアをHIにしたりとやりたい放題だった。

最後に、当時話題となったターボモードについてだが、レビュー前から執筆中に何度も挑戦してみたものの、一度も成功しなかった。 直線が多い最初のコースなら、いきなり出せるかなとは思っていたがやはりそう簡単には出せなかった。

急カーブでも余裕で曲がれるとのことなので、後半のステージにこそ使える裏技なのかもしれないが、カーブが多い後半ではそんなことを試そうにも 障害物や他車にぶつかってタイムロスをすることが多いかもしれないので、ゲームの腕が下手に加えて小心な私には そういった度胸をやってみるのは正直自信がないと思う(せっかく5,6ステージまでまで進んでいるのならなおさら)。



本日のまとめ



BOOOOOMB!!

(09/2/1レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年7月15日
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