◆テニス◆
FC初のテニスゲーム



発売日:1984年1月14日   発売元:任天堂   ジャンル:テニス
値段:4500円   おすすめ度:3(普通にシングル・ダブルス選べる)


前年登場の『ベースボール』に続く、任天堂のスポーツゲーム第2弾で、FCにおける初のテニスゲームでもある。 この頃は、全てのFCソフトはハード開発元の任天堂が行っていたためか、一応1984年登場ソフトのトップバッターを務めているものの1月発売のソフトはこれ1本という状況で、 この年は1ヶ月に1本という割合でソフトを供給していた。 まだ生まれたてと同時に、カセットビジョンやMSXなどのライバルが多いこの時期では、ソフトの量よりも質で対抗していたことがうかがえる。

FC初のテニスゲームといっても、ACではその手のジャンルのゲームはいくつか登場している。 もっとも、家庭用でのテニスゲームとなると、数が少ない上にわざわざゲーセンに行かずとものんびり楽しめるという利点がある。 ACではほとんど出ていないスポーツゲームならなおさらで、既にスポーツゲームは家でみんなとわいわい楽しむものという考えが、プレイヤーの中で一定しかけている頃でもあったのだろう。

その時期に登場した任天堂のテニス、宝島社『僕たちの好きなTVゲーム 80年代懐かしゲーム編』におけるテニスのレビューで、このゲームはブロック崩しの発展系ではないかということを書いている。 というのは、テニスプレイヤーをブロック崩しのパドルに見立てていることを指摘しており、ボールがこちらにくればそれを打ち返して向こうに送る、 書いてないがもちろん相手も打ち返してくるあたりも『相手=ブロック』であることを見立てているといえる。

さらに言うと、ビデオゲーム黎明期の名作であるアタリの『ポン』などのパドルゲームは、 パドルを操作してボールを打ち返しつつ相手陣地のポケットの落としこむので、この時点でテニスゲームの原型はほぼ出来上がっている。 そういった意味では、データイーストのAC作品『プロテニス』は現実のテニスを意識した、本格的なテニスゲームとなっているのだ。

任天堂のテニスが、プロテニスから受けた影響は不明というより受けたかどうがはわからないが、グラフィック的に本物のテニスに近づけている姿勢が見て取れ、 パドルの代わりにテニスプレイヤーが登場し、フィールドも殺風景な画面からテニスコートとその周辺に観客席、さらに審判も描き加えられているという豪華ぶりを見せている。

ちなみにその審判は、見てお分かりのように任天堂の顔であるマリオ務めていて(ルイージは『マリオブラザーズ』からの登場なので)、 服装はいつもの赤と青のオーバーオールから審判らしい白の服装に変えている。


グラフィックが、現実のテニスに一層近づけている以上ルールも同じなので、雨が降って現実のテニスが出来ない場合でも楽しむことが出来る。 テニスのルールについては各自調べてもらうとして、主に1セットでどちらかが6ゲーム取れば(6ゲーム以上では相手に2点差をつけること)そのセットを奪え、 続く2セットを奪えばその試合の勝者になれるわけだ(最大3ゲームまで用意されている)。

ポイントにしても、40到達後に得点が入れば1ゲーム奪えることも再現されている上に、40対40でのデュースも見事に再現されている。 だからこそ、デュースの連続が続くとどうも気分がなえるのだが、一定数以上のデュースでそれが無効になる処置を出してもらいたかった(AC版ではその処置はある)。

最低限のルールが搭載されている以上、パドルゲームやブロック崩しのような手は通用できず、サーブやスマッシュといったラケットでボールを打つタイミングはコツがいる。 慣れてしまえばそれほど苦労しないが、最初のうちはサーブを空振りしたり当ててもファールエリアに入れてしまったり、 相手が打ち返したボールを体で受け止めてしまったりそれを空振りしてしまったりと、まさにタイミングが命であることを思い知らされる。

しかも、対戦相手はCPUのみで友達同士による対戦は不可能。 ダブルスだけ2人同時プレイはあるものの、それは協力プレイで対戦は一切なく、片方をCPUが担当してでのダブルスができないのは残念。

ようするに、シングルとダブルス両方ともCPUが対戦相手となるわけだが、そのレベルは最低が1最高を5として5段階に分けている。 見分け方はCPUが着ているシャツの色で、レベル1が緑で最高レベルが黒である。 では、CPUの強さはどういう形で表現されているのかというと、選手の移動速度とボールが来たときの反応の速度の早いか遅いかになっている。

つまり、レベル1では選手の移動も遅ければボールの反応も遅い一方で、レベル5ではどちらも早くなっているので相手の位置の反対方向に打っても、 移動と反応の速度により難なく打ち返してくるので、それだけの違いでも強さは十分違うのである。

まだ、パドルゲームの名残が残っているので、CPUの動きを読んでこのゲームを慣れたりすれば、 最高レベルのCPUに対して善戦できるだろう(あくまでそこまでのレベルに達していれば)。


本格的なテニスゲームを名乗るにはいまひとつ不十分だが、現実のテニスにあるスーパープレイのいくつかはしっかり再現されている。 タイミングとプレイヤーの位置にかかっているが、決まればCPUに対してきりきり舞いさせられるのが面白い一方、やはりそれらのテクニックはCPUでも使ってくる上に、 スマッシュの場合は仮にできても高いレベルのCPUの場合だと逆に打ち返されることもある。

なお、サーブの場合にタイミングを合わせてAボタンを押すと、普通以下のレベルではまず打ち返せない高速サーブが打てるので、それが決まった時はかなりスカッとするだろう。 ゆえに、サーブ権がCPU側では高速サーブをする可能性も否定できず、サーブをする以上運がよければそれだけで得点できることもあるので、サーブ権のある場合のみ有利なのはつらい。

総合的に見れば、CPUのみの対戦と1人のみのダブルスは不可といった欠点はあるものの、現実のテニスにありがちなテクニックがあったりコートの存在など、 FCにおけるテニスの原型はここから始まったといっても過言ではない。 その証拠に、約156万本という上々の売り上げを記録しており、任天堂のスポーツゲームの人気が徐々に定着しつつあったといえる。


このゲームを初めてプレイしたのは、うろ覚えだが発売から2年半ぐらいだったと思う。 ただし、その時はいつもFCソフトを多く持っているいとこの家ではなく、なんと地元の床屋だった。 この頃の床屋さんは、本体とFCソフトを数本用意していたが、おそらく散髪を待っている子供達のために用意したのだろう。

私も、床屋そのものは今もお世話のなっているし、ゲームもその昔結構お世話になっていたので、突然ハードやソフトがごっそり消えてしまった時はかなりショックを受けたものの、 その頃には床屋さんの子供もある程度の年頃になっていたし、FCの人気も風前の灯だったことを考えれば(多分1993年頃か)、突然のハードとソフトの撤去は致し方なかったのだろう。

さて、その時にプレイしていた任天堂のテニスは、サーブやスマッシュといった現実のテニス同様のテクニックが使え、相手が打ち返すボールに必死に食らいつきながらも私の表情はいつもニコニコしていた。 今を考えると、そのしぐさというのはどうも動いているボールに必死に追いかけている子猫のようで、その中でテニスのテクニックというものを頭ではなく指で覚えていったのだと思う。

悲しいかな、テニスの基本的なルールを学んだのは中学生の体育の授業だったが、その頃は触り程度しか教えてもらうことが出来なかったため、 これも今考えると任天堂のスポーツゲームは最低限のルールを詰め込んでいるなと感心する。

主にタイミング重視のこのゲームでは、高速サーブやスマッシュなどプレイし続けていれば必ず身につけられるものだったので、そういったテクニックが決まったときは子供ながらにうれしかった。 だが、相手側のサーブの場合だとそうもいかず、タイミングをはずして空振りして得点を許すケースが多かったので、ルールとはいえ終始サーブ件をプレイヤーに与えてほしかったと思った。

レビューを書く現在、久々にこのゲームをプレイしたもののやはり相手のサーブに苦しめられたが、レビューの参考にした雑誌『僕たちの好きなTVゲーム』でその状況を有利に進める裏技が書いてあった。 それは、相手のサーブ中にスタートボタンの連打をすることで、サーブを空振りさせてそのファールの連続で楽に得点を奪うというものだった。

この情報を知った時は、かなり驚いた一方でテニスゲームなのだからそういった卑怯な手を使うのはいかがなものかと思った。 とはいえ、相手のサーブ時にスタートボタンを連打してみるといきなり空振りしてくれたので、相手のサーブに散々苦しめられていた私は思わずガッツポーズをして、今までの雪辱を(卑怯な手だが)晴らすことが出来た。 しかし、その確率についてはあまり高くないようで、ポーズを連打してもしっかりとサーブしてくるあたりは単なるその場しのぎかなと思ってしまい、せっかく晴らした雪辱がまた元に戻ってしまった。



本日のまとめ



IN!

(08/7/23レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年7月2日
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