◆夢工場ドキドキパニック◆
フジテレビと任天堂のタイアップ作品



発売日:1987年7月10日   発売元:フジテレビ   ジャンル:ACT
値段:2980円   Disk:両面
おすすめ度:4(野菜を引っこ抜いて投げる快感)


昔々、今の私達が住んでいる世界とはまるっきり違う世界が、どこかに存在していました。 その世界の名は夢宇界(ムウかい)、そこに住んでいる人達のことはそこの名前を取って『ムウ』と呼ばれていました。

ここは、彼らの見る夢によって天気が決まる不思議な世界で、いい夢が多い時は晴れといったいい天気が、 逆に嫌な夢が多い時は雨といった悪い天気があるというように、いい天気がくるのはムウの夢しだいでした。

そこで彼らは、いい夢を見るために『ドリームマシン』というものを開発、 それにより夢宇界の人々はいい夢を見るようになり同時に天気も穏やかになったことで、ドリームマシンに感謝した彼らは平和で楽しく過ごすようになりました。

ところがそんなある日のこと、マムーという名の怪物が彼らの夢を妨害しようとドリームマシンに細工を施し、いい夢を作り出す機械からモンスターを作り出す機械へと作り変えてしまいました。 ムウ達は、マムーによって生み出された多くのモンスターに困り果てていましたが、そのさなかにマムーの弱点を見つけました。

それはにんじんや大根といった野菜の類で、マムーにとって泡を吹くほど大嫌いなものだったのです。 ムウ達による、大量の野菜を使った反撃によりマムーは退治され、彼によっていたずらされていたドリームマシンは元通りとなり、夢宇界は再び安心して夢が見られる平和な世界になりました。

このお話は、長い間多くの人達によって語り継がれてきたため、この事実は半ばおとぎ話という認識がありました。 ある日、双子のピキとポキという名の子供達は猿のルーサから、夢宇界の物語が書かれた古い絵本をもらいました。

しかし、2人にとってその絵本は楽しみにしていたものだったので、いつの間にか絵本の取り合いにまで発展してしまい、 遂にはムウ達がマムーを退治するまでの場面を描いた最後のページを破ってしまう事態にまでなってしまいました。 すると突然、絵本からマムーの手が伸び2人を絵本の世界に引きずり込んだではありませんか。

突然の出来事に、どうすればいいのかただただ狼狽するルーサでしたが、2人の悲鳴と異変にすぐ気づいた家族は、早速絵本の中に入りマムーを退治し2人を助け出すことを決意します。 その家族は長男のイマジン君を初めとして、彼の妹のリーナとその両親、それにさらわれた2人を含めた6人家族です。 こうして、絵本の世界によるイマジン一家とマムー一味の対決は始まったのです。


1987年、フジテレビがあるイベントのために、任天堂とタッグを組んだ作品。 したがって、発売こそフジテレビであるものの、タイトル画面にもあるように開発については間違いなく任天堂である。

あるイベントとは、1987年から1991年の夏に行われていた『FNSスーパースペシャル1億人のテレビ夢列島』のことで、 それ以後も名前は変えられ現在も続いている『FNS27時間テレビ』にもそのスタンスは受け継がれている。

無論、日本テレビの『24時間テレビ 愛は地球を救う』に対抗した企画だが、1987年から始まって現在まで21年間時間は変われど、 毎年行われているのはさすがといえる(年によって色々問題を起こす芸能人とその場面もあるが)。

この年のテーマは『夢と魔法』だったようで、前年に結成されたバンド夢工場やアイドル夢工場といった夢にちなんだメディアミックスはもちろん、 夢列島開始前後に東京都大阪の2箇所で行われていた『コミュニケーションカーニバル 夢工場‘87(現在の『お台場冒険王』の前身)』では魔法をテーマにしたパビリオンが展示されていた。

初めての一大企画にしては成功を収めたわけだが、フジテレビ側としてはそれより前に先に書いた多くの下準備を行った結果といえる。 任天堂とタッグを組んだのも、そのイベントの成功を見越したゲーム制作をしたいという思惑があったからこそ、ファミコンのお膝元である任天堂に依頼したのだろう。

ただ、フジテレビ側としてはユーザーにイベントを知ってもらいたいという思惑があったが、 ファミマガやファミコン通信などのゲーム雑誌では『スーパーマリオブラザーズ』シリーズ開発スタッフによる新作という紹介ということにとどめていた。 おそらく、フジテレビの初の一大イベントに不安や不信があったのだろうか。

結果、スーパーマリオの人気と知名度があったことで、ある程度の知名度はユーザーに知らしめることは出来たのだろうが、 ゲームとフジテレビのイベントの関係を子供達が知るはずもなかったので、確かに人気もあったものの続編が発売されていないあたりそれがうかがえる。

フジテレビ側としても、そこそこの人気と知名度を得たのはいいが、そのあたりの見解を誤った方向に進んでしまったためなのか、 翌年の『小公子セディ』で別のゲーム会社に開発を依頼したばかりに散々な目に遭っているのは哀れという他ない。


ゲーム本編について語るが、このゲームもイベント同様に夢と魔法をテーマにしている。 夢を物語の舞台である夢宇界とドリームマシーンに、魔法を主役のイマジン一家とステージにおける道具などをそれぞれテーマにあわせているのだ。 道具については、ザコのドドリゲスの乗るじゅうたんや魔法のランプもそうだが、イマジン一家のスタイルを見るに魔法というより『アラジンと魔法のランプ』のオマージュにも見えるが。

内容は、イマジン一家のうちの1人を操作しながら、ステージに相当するキャプターの7つに1つのキャプターに、 これまたエリアに相当する3つのページにキャプター7のみ2ページとなった全20ページを制覇して、ラスボスのマムーを退治することになっている。

1ページごとの時間もそれほどかからないし、ラスボス間で到達する時間についてもある特殊なやり方を利用すればせいぜい15分前後だろう。 これについては後ほど説明するが、各キャプターの中ボス(いない場合もあり)や大ボスにてこずることはあれど、 自動的にディスクセーブが出来るし無限コンテニューもあるので、ゲームの難易度の低さもあわせて誰でも安定して遊べる出来に仕上がっているのはうれしい。 各ページの所々にひねった仕掛けはあるものの、それらは十字キーの下をずっと押しての大ジャンプといったテクニックを使えばそれほど悩ますものではない。

だが、このゲームの真のエンディングを見るには、イマジン一家全員がマムーを倒さなければならないため、最低全員キャプター7まで進めなければならない。 1人ではそれほどかからなかった時間が、4人全員だとそれ応のものになってしまう。

ディスクゲームとして発売されたのは、かなりの時間をプレイするためにセーブが必要になったからで、 ROMカセットの場合はパスワードがRPGを主に浸透していたり、バッテリーバックアップが登場したばかりに加えてアクションではセーブ機能の必要性のなさも関係しているだろう (長時間プレイする『スーパーマリオブラザーズ3』でもセーブ機能はなかった)。


こうなると、先にも書いたある方法でスピードクリアをしなければならないが、そのある方法とは地面にある特定の草を引っこ抜いて出るランプをある場所に投げてそこに出る扉に入るわけだ。 入ると、画面が暗くなり地形が左右逆になる裏面に突入、そこに生えている草を引っこ抜けばコインが手に入り、別の特定の場所ではライフの上限を上げるハートが手に入り、 さらに特別な壷に入れば別のキャプターにワープできるので、まさに短時間でのクリアが可能。

じっくりプレイしたい人でも、各ページクリア後に残機を増やせるスロットがあるし、最初にチェリーが出るかそれ以外の絵柄を3つそろえれば1UPとやや厳しいが、 コインは多く回収できる場合が多い上に1UPできる確立が多少あることで残機がストックできるため、初心者でも万が一ゲームオーバーになることは少ないだろう。

とはいえ、4人の能力はジャンプ力や野菜を引っこ抜いたり敵を持ち上げる力が違っているので、 前に操作したキャラでは通用できたテクニックが別のキャラクターでは通用できなくなっている辺り、1キャラでクリアした程度ではわからないほど1ページの奥が深い。

イマジン君は平均的な能力を持ち、リーナは持ち上げる力は最低な一方でAを押し続けることで空中浮遊ができ、ママは持ち上げる力は若干低いもののジャンプ力は最大で、 パパは持ち上げる力は最高であるがジャンプ力は最低と、完全に4人ともばらばらの能力だ。

しかしながら、4人全員がマムーを倒さなければ真のエンディングが見られないので、このキャラでクリアしたから次はこのキャラという臨機応変なプレイをしたほうが面白い。 もちろん、初めてプレイする人は他の3人と違って癖のある能力がないイマジン君から先にプレイしたほうがいいだろう(他の3人は操作に慣れるまで少々時間がかかる)。


先に書いたが、このゲームの開発にスーパーマリオシリーズのスタッフが関わっているため、あちらこちらでスーパーマリオの共通点が見られる。 壷に入ってそこのエリアにたどり着くことや、裏面での先のキャプターへのワープは土管ワープであるし、チェリーを5つとって出てくるスターを取れば無敵になるのも同じだ。

さらに、『ジャックと豆の木』よろしくの展開(つたとそれをよじ登っての空中エリア)や『マリオブラザーズ』のパワー床もある上に、キャラの能力の違いもスーパーマリオ2からの流用といえる。 おまけに、ジャンプやコイン入手の効果音もそっくりなので、シリーズをプレイした人ならばじっくりプレイしていればすぐ見つかるはずだ。

敵については、親玉のマムーを初めオカマのキャサリンやザコのヘイホーなど、嫌な敵だけどどこか憎めない連中ばかりだ。 とはいえ、鍵のついた扉を開けるためにわざわざ遠いところから鍵を持ってくると、突然画面外から鍵を持ったプレイヤーをしつこく追いかける(鍵を話すと画面外に消える)カメーンは、 不気味な容貌とあわせてプレイヤーのトラウマといえるだろう。

登場敵の一部は、後のマリオシリーズにレギュラーとして登場しているので、スーパーマリオシリーズ開発スタッフ制作もさることながら、いずれマリオシリーズと関係を出したかったのだろう。


そういった意味では、このゲームがアメリカにおいてイマジン一家がマリオシリーズのキャラと差し替え、シリーズのシステムを流用させてて発売したことは注目すべきことだ。 NESにディスクシステムがなかったためだし、任天堂作品にはなかった世界観がアメリカ人に受けない恐れもあったのだろう。

日本では『スーパーマリオUSA』として発売しており、マリオシリーズの知名度と後発のこともあってドキドキパニックよりもUSAのほうが有名で、 リメイク版もいくつか登場している辺り、それが裏付けられている結果でもある。

そのせいか、マリオUSA(またはアドバンス)はドキドキパニックのリメイクだったと言っても、今の子供達にはあまり信じてもらえないだろう。 しかし、それらが多く世に出回っているおかげで、元となったドキドキパニックは2008年現在中古で1100円ほどで売られている。 定価の5分の2に値下げされているので、ディスクシステムを持っていたらぜひプレイしてリメイク版の違いを比べてみるのも一興だろう。


私も、このゲームの情報源はファミマガで知ったので、当時のフジテレビのイベントなど全く知らなかった。 私がこのゲームに興味を持ったのは、テンポがいい操作と敵味方ともかわいらしいキャラだった。

しかし、このゲームがスーパーマリオシリーズ開発スタッフによって制作されたことは読んでいなかったらしく、 読んでいたとしてもそのことは忘れてしまう性格は小さい頃からあったため、その事実は数年前にリメイク版のGBA版(アドバンス1)の情報で知ることになった。

なおドキドキパニックは、発売元がフジテレビであったことと何より私はディスクシステムを持っていなかったため、 面白そうだという一方でなんでテレビ局がゲームを作っているのかという疑問もあって、仮にディスクシステムを買っても買わないなという気持ちが多かった。

結局買うことはなく、逆輸入版のマリオUSAも買わなかった私だったが、『スーパーマリオコレクション』に収録されているものはプレイした。 リメイク版という形で初めてプレイしたのがGBA版で、その時は普通のシリーズと同じくテンポよく遊べた。 それゆえ、ドキドキパニックの詳細な情報がレトロゲームサイトで知ったときは、オリジナル版がいまいちに思い込んだほどだ。

そんな私が、ドキドキパニックを初めてプレイしたのがレビューを書く2年ほど前で、やはりいとこから多くのディスクゲームをもらったことによる。 既に、オリジナル版とリメイク版の存在を知っていた私だったので、このゲームも楽にクリアできるだろうとたかをくくっていた。 ところが、Bダッシュが出来ないことと一部のキャラが違っていたりと、少しではあったが戸惑いを感じた。

何より、1キャプタークリアしなければ他のキャラに交代できないことと、1キャラにつき7つのキャプターをクリアしなければならないため、 クリアしたりやられたりしたら交代だったリメイク版と違っていたのが大きな戸惑いだった。


とにかく、真のエンディングを見たい私だったものの、リメイク版ではあまり使う機会がなかったキノピオの元であるパパを使わざるを得ず、やたらと低いジャンプにいつもイライラを募らせていた。 ママについても、高いジャンプなのはいいがどうも不安定な動きがあるので、個人的に一番クリアしやすいのはイマジン君で次がリーナ、ママ、 パパという位置づけになった(パパが一番使いやすいと思ってる人には申し訳ありません)。 それでも、スロットによる残機が大幅に増えたこともあって、時間がかかったし苦労もあったが全員クリアを達成することができた。

真のエンディングを見てほっとした私だったが、このゲームをリメイク版よりもっと早くプレイしていればよかったとも思った。 リメイクというのは、オリジナルを改良しして現代の人に親しみやすくしたもので、このゲームにおいては昔生まれの人間にはリメイク版よりオリジナル版のほうが親しみやすいと思うので、 リメイク好きの私でもこのゲームにおいてはドキドキパニックのほうが親しみがあると思っている。

もっとも、近いうちにマリオUSAや逆輸入版のリメイクを収録したマリオコレクションもプレイするので、 さすがに過去を引きずるのはいかがなものかと考えているが(雰囲気や操作が格段によくなっているならなおさら)。



本日のまとめ



THANK YOU IMAJIN

(08/7/21レビュー)
伝説のスターブロブ2への掲載:2019年6月30日
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